「あのね……」と、口を開いてみたものの、どうしても言い淀んでしまう。 でも、江藤くんは、黙りこくる私を急かすわけでもなく、ただ黙って待っててくれていた。だから私も、勇気を振り絞って再び口を開く。 ただ、真っ直ぐに目を見ることはできず、躊躇いがちに目を伏せながらボソリと呟く。「……絶対引いちゃうよ」 「引かないよ。今まで、どれだけ辻野さんの愚痴を聞いてあげたと思ってるの?」 「私、そんなに愚痴ってた?」 「まあ、愚痴っていうか、いろいろ話してくれたよね」江藤くんは、今までのことを思い出すように、クスクス笑った。 そんな風に笑われると、そうだったのかなって、私もあれやこれや思い出して、ちょっぴり恥ずかしくなる。確かに、何かあればいつも江藤くんに話を聞いてもらっていた。 仕事のことも、プライベートなことも。 あけすけに、ペラペラしゃべっていたっけ。「どれだけ嫉妬したか知らないだろ?」 「ごめん……」 「それでも好きだから、いいんだよ」そう言って、江藤くんの握る手が強くなる。 あったかくて、大きな手。 安心する、ぬくもり。好きだから。 好きだからこそ、ちゃんと言わなくてはいけない。 もう、間違った恋愛はしたくない。この人となら、きっと、ちゃんと向き合える。 そう思えるくらいに、私はちゃんと江藤くんのことが好きだ。
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