その後、宗道のもとに、明日香から最後の手紙が届いた。そこで宗道は初めて、彼女が重い病を患い、死期が近いことを知った。文面に取り乱した様子はなく、恨み言もない。まるで死ぬのが怖くないかのように淡々としていた。人生に悔いはないが、唯一、自分を大切にできなかったことだけが心残りだと。もし時を戻せるなら、あの人になんて出会わなければよかった。明日香に残された時間がないと悟った宗道は、急いで医療チームを手配した。だが、彼が明日香を助けようとすると、山の住民たちが立ちはだかった。住民たちは医療チームを取り囲み、山へ入らせまいと妨害したのだ。「前によそ者が聖山を汚したせいで、祟りが起きて、家畜がたくさん死んだんですよ!逃げるのが遅れていたら、俺たちまで雪崩に埋まるところでした!」全てを飲み込むような雪崩の恐怖は、まるで死神の祟りのようだった。あの時の恐怖は、今も彼らの心に焼きついている。宗道は焦りで胸が張り裂けそうだった。「人命救助は何よりも尊い功徳です。もし祟りがあるなら、すべて私が引き受けます!」宗道は一生をかけて戒律を守り、ただひたすらに祈りを捧げてきた。だが人の命がかかっている今、彼は戒律を破ってでも明日香を救おうとした。それでも住民たちは引かなかった。「あれだけの家畜が死んだんです。損害賠償はどうなるんですか?」それを言われ、宗道は全財産を差し出し、彼らに握らせた。「お願い、人助けだと思って、道を開けてください!」普段から尊敬されている宗道にここまでされては、住民たちもそれ以上強くは言えなかった。ついに医療チームは、山へと足を踏み入れた。駆けつけた宗道と医療チームの姿を見て、明日香の目から涙があふれた。起き上がるのも辛い体なのに、彼女は必死に体を起こそうとした。そこで、医師が診察を行うとこう告げた。「脈が弱くて、内臓の機能がかなり落ちています」医学的に見ても、命の灯火が消えるのは時間の問題だった。言い換えれば、明日香はもう助からない状態だった。宗道は声を詰まらせた。「明日香、こんな場所じゃ治せない。もっと大きな病院へ行こう」明日香は潤んだ目で彼を見つめ返した。「来てくれて嬉しいよ。あの頃は私も若くて、勝手ばかりして……あなたの言うことを聞いておけばよかった」それを聞い
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