一瞬にして、裕司の久しく静まっていた心臓が胸の奥で激しく鼓動し、耳をつんざくほど響いた。彼はすぐさまその通話履歴を保存し、アシスタントに送信した。「今すぐこの通話の位置情報を割り出せ!」しかし、少し冷静さを取り戻した瞬間、裕司の胸に得体の知れない危機感が押し寄せた。圭司が今起きたばかりだというのなら、なぜ晴美が彼のそばにいる?まさか――頭の中に、制御できない映像が次々と浮かび上がる。つい先日、彼の下で求めに応じて、必死に抵抗して、涙ぐんでいた晴美の姿――あの艶めいた光景を思い出した瞬間、欲望と嫉妬が一気に燃え上がり、心の奥で入り乱れた。裕司は乱暴に髪をかきむしり、目を見開いた。晴美は心変わりしたのか?しかも相手がよりによって自分の宿敵だと?そんな馬鹿な!裕司は激しく頭を振った。この馬鹿げた考えを振り払うように。だって晴美はあれほど自分を愛していた。そんな彼女が、そう簡単に気持ちを捨てられるはずがない。きっと圭司と結託して、芝居を打っているだけだ。わざと彼に嫉妬させて、彼の独占欲を刺激するために。そんな考えが頭を駆け巡る中、スマホが振動した。アシスタントから音声メッセージと一緒に資料ファイルが届いた。だが、それは位置情報ではなかった。「社長、実は別の情報が見つかりました」アシスタントの声には、どこかためらいが混じっていた。「奥様が以前、社長の競争相手に拉致された件ですが……それに平山も関わっていたようです」アシスタントの言葉は、まるで晴天の霹靂のようだった。裕司の心臓が一拍遅れ、不吉な予感が胸の奥で静かに広がっていく。あの拉致事件以来、この件が彼にとって絶対的なタブーであることは周知の事実で、長年、口にされることはなかった。まさか、晴美が去ったこのタイミングで、再び過去が掘り返されるとは思いもしなかった。「わかった。今から確認する」裕司は深く息を吸い込み、アシスタントから送られてきたファイルを開いた。それは五年前の日付が記された古い監視映像だった。晴美が拉致犯の手に囚われていた、あの長い一夜の記録。あの夜、彼女は激しく殴られ、拷問を受けた。最後には全身傷だらけのまま、血だまりに倒れ、息も絶え絶えになっていた。裕司は奥歯を強く噛みしめ、
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