嗅いだことのない匂いを感じ、ゆっくりと意識が浮上する。 目を開くと見たことのない天井が目に入った。 あれ、うちの天井じゃない。 俺が住んでいるのは一DKのアパートだぞ。 こんな茶色の天井なんかじゃないし、こんなに高くもない。 俺は身体を起こして辺りを見回し、事態を把握しようとする。 なんだここ。スゲー広い。俺の部屋の四倍はありそうだ。 広いベッドにクローゼット、大きなソファーにテーブルに……って、明らかに俺の部屋じゃない。 俺は春野京佑。日本人で、大学二年生だ。 実家を出てアパートでひとり暮らし。 だけどここは絶対アパートじゃない。どこかのホテルのスイートルームみたいだ。 俺はベッドから起き上がり、ふらふらと窓に歩み寄る。 カーテンを開いて外を見ると、広い中庭が目に入った。 そして、高い城壁…… どういうことだよ、ここ、もしかして日本じゃない? もちろん俺の部屋でもない。 鏡、鏡ねえか? きょろきょろと辺りを見回して俺は、鏡台を見つけそこに走り寄った。「……!」 そこに映っていたのは、緑がかった金髪に緑色の瞳をした知らない男だった。 誰これ。 そう思いながら俺は顔に触れて頬を引っ張る。 痛い。ってことは夢じゃない? どういうことだよ。 戸惑っていると、扉を叩く音がした。 はっとして振り返ると、勝手に唇が動いた。「どうぞ」「失礼いたします」 聞き覚えのない男の声に続いて、扉が開く。 入って来たのは黒いスーツ姿の若い青年だった。 って誰? そう思うのに勝手に口が動く。「レオ」 彼はレオ。俺の侍従だ。 俺はルカ=パルッツィ。国王の弟の子供だってつい最近知った。俺は親の出自なんて何にも知らず、両親が死んだあとに国王の使いが現れて、ここに引き取られたんだ。 ちょっとまて、俺はなんでそんなこと知ってるんだ? ここは……そうだ、アラミラ王国だ。 待て、これ、聞き覚えあるぞ。 妹がやっていたゲームじゃね? なんか誕生日のプレゼントに欲しいって言ってて、親に頼まれて買いに行ったんだ。 その時、どんなゲームか調べたからなんか覚えてるぞ。 確か親がアルミラ王国国王の弟であると知って王宮に引き取られたヒロインが、王族や貴族、騎士と恋愛する話だったと思う。 なんでろくに知りもしないゲー
Last Updated : 2025-11-19 Read more