「ママ、いつ家に帰ってくるの?」「誠司があと四回寝たらだな」「……おひるねは?」強請るような目に、思わず顔が緩む。「分かっているだろう? お昼寝はノーカウントだ」膨れる誠司を抱いて立ち上がる。眠くなって、桔梗に甘えたくなったようだ。「おやすみ」「おやすみなさい」すぐに腕の重みが増した。今日は朝から病院に行って興奮したんだろう。 「蓮司様」長谷川がきて、誠司を見て動きを止める。……誠司には聞かせたくない話か。「部屋で寝かせてくる」俺は誠司の部屋に急ぎ、ベッドに寝かせる。一度眠るとあまり起きない子だから心配いらないと思うが、今日は桔梗がいない。眠るときに桔梗がいないことは何度かあるが、いま桔梗がいるのが病院であることが不安なのだろう。妊娠・出産は病気ではない。でもそれは、大人の理屈。子どもにとっては病院は怖いところだ。最近は使わなくなっていたベビーモニターのスイッチを入れる。そして布団を誠司の肩までかけると、俺は廊下に出た。「何があった?」「吉川凛花が来ています」「ここに、か?」「応接室に通しました」「なぜ入れた?」俺の問いに、長谷川は言いにくそうな表情をする。「長谷川?」「ご自分の目で見られたほうがいいかと」「つまり……会ったほうがいい、そういうことだな」「はい」大きなため息が出た。いま家にいる者たちを思うと、凛花とは会わせないほうが絶対にいい。母さんあたりが冷たく叩きだすだろう。朋美は塩をまきかねない。それでは何で来たのかは分からない。「誰にも気づかれるな。俺は誠司
Last Updated : 2026-02-09 Read more