「蓮司さん。合羽橋にきましたが、川に行きますか? それとも池に行きますか?」「隅田川のほうに向かって歩くか」移動しながらカッパは川にいるのか池にいるのかという話をしていて、カッパの川流れということわざがあるのだから流れのない池にいるのではないかという結論になったところで合羽橋に到着。俺の提案に地図アプリを見ていた桔梗が“あ”という顔をして、スマホの画面を見せて【曹源寺】という寺を指さした。ここに来るまでに見かけた合羽橋の河童伝説の場所。この寺にはかっぱ大明神がいるらしい。合羽橋道具街の近くにあるということで、立ち寄ることにした。 「蓮司さんはこの辺りにきたことはあるんですか?」「この辺りはないな。浅草や上野ならビジネスや視察で行くこともあるけれど」「落ち着いた隠れ家的雰囲気のお店も多いですね」そう言って門から店を見る桔梗の姿が一枚の絵のようで、俺はスマホを取り出して写真を撮る。写真を確認して、キレイに撮れたことに満足する。 「蓮司さんって写真を撮るのが好きですよね」桔梗のその言葉に少しだけ躊躇する。写真を撮るようになったきっかけは恐怖だから。いつか桔梗があの日を思い出したらこういう日々はなくなる。せめて思い出だけという気持ちで写真を撮るようになった。それまでは視察のメモ代わりに写真を撮るくらいだったけれど、いまの俺の写真フォルダは桔梗と誠司で溢れている。 「ん?」シャッター音がしたので桔梗を見れば、桔梗は“撮れた”と満足気な顔。俺を撮ったのか……まあ、上手く撮れていないだろうな。桔梗は写真を撮るのが下手だ。オートフォーカスのはずなのに焦点が合っていなかったり、手振れ補正をONにしているのに酷くぶれていたり。手先が器用なのに不思議だなと思うが、こういう苦手があるところは実に可愛
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