会議室に入ると、桔梗たちがいた。「蓮司さん」ほんの数時間前に自宅玄関で別れたばかり。しかし、会社という普段会わないところで桔梗に会っているからか、妙に新鮮さを感じた。 「よく来たな。ここまで何も問題はなかったか?」「いつも蓮司さんが出勤している道ではないですか。長谷川さんも一緒ですし、大丈夫ですよ」「それなら良かった。君たちも、よく来てくれたな」相沢陽菜乃と水野百花。初回の桔梗の撮影以来……ではない。 桔梗には内緒だが、俺は二人に桔梗に秘密で会っている。あの石川明梗が描いた桔梗の絵を届けてもらうためだ。俺が呼び出した形になったが、俺としては桔梗の絵を安全に届けて欲しかっただけであって……。―― すみません、すみません、出来心でついっ!―― 石川先生が、捨てるのもなんだからチャリティ的な意味合いでオークションに出してみたら? と仰ったので……。―― 「一万円くらいになるといいね」と石川先生は軽く仰っていたのに、まさか百二十万円になるなんて。まあ……彼女たちからしてみたら、出すほうも出すほう、買うほうも買うほうと言いたかったのだろう。でも、美術品の価値なんてそんなものだ。いいと思ったやつが、金を出せばいい。俺は、桔梗の絵を俺の仕事場の壁に飾れて、いま、至極満足している。 「急に予定を空けてもらってごめんなさい。でも、蓮司さんしか頼れる人がいなくて」桔梗のこの言葉。俺しか、ってところに満足感がさらにこみ上げる。我ながら単純だと思うが、この単純さも楽しめているからいいのだろう。「全く構わない。企業からの協賛の相談、だったな」桔梗の動画は注目され、あちこちのメーカーから協賛の連絡が来ているらしい。桔梗としては、チャンネルの主導権を握られたくないが、折角の話は活用しておきたい。ちゃっかりしている。本当に愛らしい。桔梗が言うには、商品を使ってほしいと依頼があるのは構わないが、それを使うかどうかの決定権は自分が持ちたい。企業単位での契約は止めて、その都度、商品ごとの契約のほうがいいだろう。桔梗が俺の妻だと分かっている以上、相手も下手な契約書は持ってこないだろうが安全はみるべきだ。 「契約についてのアドバイスの前に、相沢君と水野君で会社を立ち上げてはどうだろう?」「あの、でも、私たちまだ大学生で……」「大学生で
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