『いま診察が終わり、インフルエンザだと確認取れました。重症化はしていませんし、抗生物質を飲めば比較的すぐに熱は下がるようです。茉白は大丈夫ですか?』「まだ寝ているよ」―― やっぱり自分がいないと駄目なんだなって思いたかったりするわけよ。不意に、母さんの言葉が浮かぶ。「桔梗から電話がもらえてよかった。さっきまで、俺一人で大丈夫かと思っていたからな」『蓮司さんも、そんなことがあるんですね』「当たり前だ。いかにいつも桔梗に頼っていたのかを思い出したよ」『急いで、帰りますね』「ああ、待ってる」電話を切って、大きく息を吐く。顔が熱い……もしかして、誠司のインフルエンザがうつったか? .「マ、マ」茉白の声にベッドを覗き込めば、茉白が目を覚ましていた。ドクンッと心臓が大きく鳴る。「パ、パ」茉白がにこっと笑い、手を伸ばすから、俺も手を伸ばして自分の指を握らせる。最初は俺の手を振り回して楽しそうだったが、次第に茉白の顔から笑みが消える。「ママ?」その問いに、一瞬だけ言葉を探す。しかし、うまいこと子ども向けの理由が出てこない。「今日は誠司が体調が悪いから、ママは誠司のところにいる」茉白が首を傾げる。違う、この説明ではない。理由は要らない。もっと、分かりやすく、茉白に合わせた言葉で……。「ママは、お兄ちゃんと一緒にいる」「にに」「ああ、お兄ちゃんのところにいる」「にに?」今度は、なんだろう。誠司がどこにいるか、か?「お兄ちゃんは病院にいる」茉白の動きが止まる。顔がぐしゃりと歪む。まずい、泣く。「やー」「茉白、大丈夫だ。お兄ちゃんはすぐに帰ってくるから」「にに、やー。まま」言っている言葉は聞き取れるのに、茉白の要望が分からない。「ごめん、茉白」抱き上げると、泣き止まないものの、泣く声は小さくなる。茉白を腕の中に引き寄せる。小さな体は、思っていたよりも軽く、温かい。桔梗は、これを毎晩やってきたのか。俺が仕事で遅くなった夜も。出張でいなかった夜も。―― 大丈夫です。桔梗は、大丈夫だと思っていた。でも、桔梗だって母親をやるのは初めてだ。こうやって、大丈夫になっていったんだ。「ママ……」茉白は桔梗を呼ぶ。どうすればいい?分からない。解決策がないことに、焦る。桔梗ならどうする?桔梗なら
Last Updated : 2026-02-25 Read more