「ま、待ってくれっ!」花嶺辰治が、扉の枠に手をかけて必死に抵抗している。長谷川さんの力なら剥がせるだろうけれど、遠慮しているのだろう。「頼む、話を聞いてくれ。少しの間でいい」「……どの面を下げて」蓮司さんが呆れた声を出す。私はもう抱え込まれるようになっている。「厚かましいにも、程がありますよ。桔梗があなたたちにされたことを知って、まだ”お願い”なんて」「それでも、本当に大変なんです!」蓮司さんが、深くため息を吐く。「会社の件、でしたっけ?」「あと、家のことです」……全部じゃない。 「お願いします。週に一日、いえ、二日。桔梗を花嶺家に……」「……なぜ、増える?」そうよね。蓮司さんに同意してしまう。交渉は、減らすのが基本。「それなら、せめて一千万円」「……”せめて”への繋がりが分からない。その一千万円の用途は?」「それは……」この時期に……一千万円……。「税金の支払い。督促状が届いているんですね」「そうだ」「それが払えない、と」「ああ……一千万円あれば、払って……」思いっきりため息が出た。「花嶺家が所有している財産はどうなさったのです?」「……あれは……」語尾がごにょごにょと、なにかを誤魔化すものになった。「売ってしまったのですね」私がため息を吐くと、蓮司さんが口を開く。
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