「四連花の五枚目……それを、写真と一緒に盗んだのが白洲典正だと考えているのですね」重い話が続いたあと、戻ってきた石川先生から改めて説明を受け、ようやく話の全体像が見えてきた。ここでようやく、一息つけた気がする。「なぜ四連花は無事だったのです?」「偶然だよ。その頃、四連花は海外の美術館で展示されることになっていてね。通関手続きや輸送の関係で、僕の手元にはなかったんだ」なるほど。「つまり、五枚目だけがアパルトマンに残っていたんですね」「そうだ。五枚目は公開するつもりがなかったからね。だから、もし盗みに入ったのが白洲典正なら、写真を持っていても不思議じゃないし、おそらく絵も彼が持っている」可能性は高い。けれど、あくまで可能性だ。これだけでは警察は動かないだろう。「そこで考えたんだが……桔梗さん」石川先生が真っ直ぐ私を見る。「君の絵を描かせてもらえないだろうか」「え?」思わず声が裏返った。「私?」「そうだ」「嫌です! 困ります! そんなの……恥ずかしいです!」あんな絵を描くために?まさか私がモデルに?頭の中に例の写真が浮かび、顔が熱くなる。「そ、そうか……蓮司君を説得する方が大変だと思っていたんだが……実際かなり大変だったんだけど……」石川先生が困ったように呟く。私は固まった。そして。ゆっくりと蓮司さんを見る。「蓮司さん……私の、その……」言葉に詰まる。ええと、美術用語。確か――。「裸婦画です! 裸婦画なのに、蓮司さんは賛成したんですか!?」「……裸婦画?」蓮司さんがきょとんとする。そして次の瞬間、何かに気づいたように目を見開いた。石川先生も同じ反応をする。……本当に、この二人は似ている。「違う! 誤解だ!」「何がですか!? 私の裸の絵を描くことに賛成したなんて、信じられません!」「だから違うんだ!」「桔梗さん、本当に違うから」石川先生が慌てて割って入る。その様子に、少しずつ冷静さを取り戻した。……違う?だったら何を描くというのだろう。「僕が描きたいのは“母”だ」石川先生は静かに言った。「そして、その絵で白洲典正を呼び寄せる」部屋の空気が変わった。「白洲は五枚目を見て、“完成した”と思っているはずだ。だから、それを壊す」「壊す?」「五枚目は完成ではなかった。そう思わせるんだ
Read more