夢中でクレヨンを握った。でも、足りなかった。色が全然足りない。もっと暗い灰色がほしい。もっと乾いた白がほしい。もっと冷たい青がほしい。思った色が出せなくて、私は泣いた。泣いてお願いなんて、思い出すだけで恥ずかしいけれど、その甲斐もあって三十六色の色鉛筆を買ってもらったとき、私は世界を手に入れた気がした。色にはこんなに名前があるのだと知った。でも、それでも足りなくなった。サンタクロースを信じなくなっていた頃、それでもヨッシーはサンタの格好をして現れた。白い付け髭を斜めにずらしながら、「どうだっ」と得意げに差し出したのは百二十色の色鉛筆だった。箱を開けた瞬間、私は息を止めた。見たこともない色が並んでいた。灰色だけでも何本もある。青にも冷たい青と温かい青がある。嬉しくてたまらなかったけれど、描き始めてまた泣いた。今度は、色が増えたのに描けないことが悔しかった。頭の中には確かにあるのに、手が追いつかない。色が感情に届かない。カノンとヨッシーは、「今度は何!?」という顔で慌てていた。そして結局、「絵のことだから」という理由で石川先生が呼ばれた。今思うと、人間国宝級の画家を子どもの癇癪で召喚する二人もどうかしている。でも先生は、本当に「どうしたの?」くらいの気軽さで来てくれた。そして泣きじゃくる私の話を、最後まで聞いてくれた。 『そうか、自分の絵では満足できないのか』先生はそう言って頷き、それからカノンへ紙とペンを持ってくるよう頼んだ。そしてカノンが持ってきたのは、ボールペンと、私が小学校から持ち帰ったプリントだった。裏面が白かったからだと思う。先生はその裏へさらさらと線を描いた。迷いのない線だった。人物の輪郭。風の流れ。たった数分で現れたその絵に、私は夢中で色を塗った。完成したものは、今でも額に入って家のリビングに飾られている。よく見ると裏側に「給食だより」の文字が透けて見えるのが残念なところだ。 『何かメモするんだと思ったのよ!』カノンは今でもそう言い訳している。.それからずっと、私は白い世界へ色を置くことに夢中になっている。カノンの友人である桔梗ママが私の色使いを気に入ってくれたことをきっかけに、話は一気に広がった。動画配信。配信用アート。ライブ制作。気づけば、人気配信者を何人も抱える折々舎と繋がっていた。「石川先生、ナタ
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