家に着くころには、夕焼けが街を赤く染めていた。その刹那的にみせる色。好きだけど、今日は少しくすんで見える。私の問題。誠司と別れたあと、胸の奥に残ったざらつきは消えないままだった。――誰かを特別扱いするつもりはないよ。俺は全員公平だから。その言葉が、何度も頭の中で反響する。誠司が公平であろうとする理由は分かっている。それが、誠司の優しさであることも、私が誠司の優しさに甘えきっていることも。 ·「ただいま」玄関の扉を開けると、カノンとヨッシーがキッチンで、仲良く並んで夕食を作っていた。ふたりは振り返り、私の顔を見るなり眉を寄せた。「ナターシャ、元気ないね?」 「学校で何かあったのか?」私は笑って首を振った。嘘じゃない。だって、原因は「学校が」じゃないもの。ううん、これも言い訳だ。「それなら、いいわ」「手洗い、うがいをしておいで」ふたりは私の嘘に気づいているはずなのに、追及はしない。 その優しさが、逆に胸に刺さる。そんな私、ただのわがまま。夕食を食べながらも、私は上の空だった。 誠司の言葉が、表情が、声が、頭から離れない。――大学行って、彼女とか……できるの?自分で聞いておきながら、答えを聞くのが怖かった。 誠司が、いまの誠司がそれを望んですることはない。でも、未来は誰にも分からない。約束しあった関係ではないもの。でも、誠司が誰かと付き合う未来を想像するだけで、胸が締め付けられる。ううん。桐谷家なら、高校卒業後の『お付き合い』は婚約からの結婚まで雪崩れていく可能性はある。いやだ。でも、私は、どうしたいの?その問いが、ずっと心の中で渦巻いている。·夜、部屋の窓を開けると、冷たい風が頬を撫でた。 遠くで犬が吠える声がする。 街は静か。ざわざわと、騒がしいのは私の心だけかもしれない。スマホが震えた。 画面を見ると……誠司だ。誠司からのメッセージは、珍しいことではない。それどころか、ほぼ毎日ある。でも、今日はなんだか緊張する。【今日、なんか変だったけど大丈夫か?】胸が跳ねた。 誠司は、私の小さな変化にもすぐ気づく。それが嬉しいのに、困るって気持ちはどうしても苦しい。指が震える。答えに、困っている。返事を打とうとして、悩む。何度も消して、また打って、また消
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