All Chapters of 聖衣の召喚魔法剣士: Chapter 31 - Chapter 40

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30  深影男爵

 カリナが召喚したシャドウナイトとホーリーナイトに襲い掛かって来たレッサーデーモン共の攻撃は白騎士の巨大な盾に弾き返され、黒騎士の大剣によって次々と斬り伏せられる。呼び出された下級悪魔はあっさりと全滅した。「これで終わりか? ならもうお前に勝ち目はない。大人しく情報を吐いてもらおうか」 カリナに手下共を一瞬で殲滅されたベロン・シェイドグリムは、口に手をやって笑い声を上げる。「ククク、素晴らしい召喚術だ。だが、所詮奴らは只の下僕に過ぎぬ。さあ今度は我自らが相手をしてやろう」 そう言ってベロンは腰に差していた黒いレイピアを抜いた。どうやらまだやる気らしい。多勢に無勢だが、カリナは容赦せずに騎士達に攻撃を命じた。 襲い掛かる黒騎士達の大剣をレイピアで受け流し、ひらひらと舞う様に攻撃を躱す。伯爵レベルと言うだけあって中々やるようである。だが、どう見ても劣勢。どれだけ悪魔の膂力が無尽蔵でも、これだけ一方的に攻め立てればいつかは被弾する。「少しは我の能力を見せてやろう」 悪魔が影に沈み込み、その影が10体に分裂する。そこからベロンの分身体が姿を現した。「面白い能力だな。だが私のシャドウナイトの攻撃からは逃げられないだろう。かかれ!」 全ての分身体に黒騎士が斬りかかるが、どれもがその影の身体をすり抜ける。そしてその中の一体がカリナに斬りかかって来た。すぐさま刀を抜刀し、その攻撃を受け止める。「ほう、素晴らしい反射速度だ。だが、我の本体がどれか分からなければ攻撃を当てることなどできまい」 ガキィンッ! 刀でベロンをレイピアごと薙ぎ払う。後ろに後退ったところに白騎士の片手剣が振るわれるが、やはりこれも分身体の一つなのだろう。攻撃がその身体をすり抜ける。「なるほど、影の身体で分身体を作り出し、本体は常に何処かに移動しているということか?」「ほほう、やはり聡明なお嬢さんだ。だがそれが分かったところでどう対応するのだ?」「残念だが、その程度の能力なんて創作で腐る程目にしてるんだよ。その程度で勝ち誇るな。白騎士、私を守れ。黒騎士達は隙を見逃さず攻撃を続けろ」 カリナの命令で、白騎士達がカリナを囲む様に陣を組む。そして分身体には黒騎士達が次々と攻撃を仕掛ける。カリナはその間に召喚の祝詞を唱え始めた。「光よ、目醒めよ。闇を断つ刃となりて、この手に集え。星火
last updateLast Updated : 2025-12-04
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31  討伐完了

「よし、これで全員だな。じゃあお嬢ちゃん、俺達は組合に報告しないといけない。お先に失礼するよ」 駆け付けた応援の冒険者達はまだ意識が朦朧としている壁に囚われていた全員に肩を貸すと、その場を後にしようとした。「重くないか? 何なら私の召喚体の騎士達に運ばせようか?」 カリナの下にまだ残っていた騎士達が集まって来る。「うお、凄い力を感じるな。だが大丈夫だ。俺達は何の手助けもしていない。これくらいはさせてくれ」「そうね、それにこれ以上迷惑を掛ける訳にはいかないもの。あなたも戦いで多少は疲れたでしょ? ゆっくり戻ってくるといいわ」 男性と女性の冒険者達がそれぞれ肩に担いだ冒険者仲間を見ながらそう言った。「そうか、じゃあ一応気を付けて帰ってくれ。私も後で組合に寄らせてもらうよ」 帰還する冒険者達を見送ってから、カリナはカシューと連絡を取る。「取り敢えず終わったよ。聞こえてたか?」「バッチリ聞こえてたよ。うーん、それにしてもまだ知らない階級の悪魔が存在するとはね」「どうやらこれまで私達が知っていたのは表向きの階級だけだったようだな。しかもあの口振りだと、まだまだ知らない存在が複数あるようにも感じる」「そうだね、上から深淵公、魔界侯、災禍伯、獄炎騎士、影霊子爵、堕落男爵。そしてそのそれぞれが魔界兵団やレッサーデーモンといった使い魔族を使役してる。今回斃したのは堕落男爵だっけ? それが伯爵レベルの実力だったってことはこないだ苦労した侯爵レベルよりもっとヤバいのがいるってことでしょ? うーん、参ったな」「よくまあ一回聞いただけで覚えたな。取り敢えず情報はそこまでだな。それより上の存在の主とやらは分からずじまいだよ」「今のところアステリオンに色々調査させてるけど、また新しい情報が手に入ったし、彼にも伝えておくとするよ」「ああ、そう言えばサティアの情報も手に入ったんだった。カリンズの組合長が言ってた」「え、そうなの? やっぱ聖光国にいるのかい?」「どうやらそうらしい。あそこには初心者用に経験値稼ぎの古代遺跡があっただろ? そこに悪魔が出たんだと。サティアはそこから帰還する負傷者の手当てに追われてて忙しいらしいぞ」「あー、あの古代遺跡ね。でも初期五大国の戦力なら悪魔の数匹くらい一捻りしそうなもんだけどなあ」 ルミナス聖光国の近くにある古代遺跡には巨大
last updateLast Updated : 2025-12-05
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32  街中探索

 ケット・シー隊員を引き連れて歩くカリナの姿は街中ですぐに噂になっていた。「飼い猫が二足歩行する美少女」「それほどの珍しい猫を飼っている高位の貴族令嬢」などとカリナが隊員を連れ歩くのを見た人々は口々に噂した。「うーん、どうもいつもより注目されているような気がするなあ」「それは隊長が強く美しい召喚士のオーラを放っているからにゃ」「まあ、この見た目が美少女なのは認めるが……」 アバターボックスという課金アイテムまで使って細部にまで拘って作った己の性癖丸出しの美少女なのである。中身が自分とはいえ、街のウインドウに映るその姿に自分でさえ目を奪われる自作のアバター。性癖を垂れ流しているようなものだが、今の姿は気に入っている。風に揺れるサラサラの髪の毛。ツインテールのようなクセ毛。燃える様な赤髪は毛先が金髪でとても目立つ。「認めたにゃ。そういうのをナルシストとかいうにゃ」「うーん、本来の自分自身の姿ではないからナルシストとは違う気がするんだが……」「本当の姿? どういう意味にゃ?」「ああ、いや何でもない」 隊員にとって、いやこの姿で出会う全ての人々や悪魔に魔物さえも今のカリナの姿が真の姿なのである。現実世界の本当の姿などと言っても話が通じないのは当然なのである。中身の本当の自分を知っているのはリアルでもオフ会を開いたカシュー達エデン組。災害級魔法使いエクリアに今は行方不明の聖女のサティアや格闘家のグラザ、相克術士かつ陰陽術使いのカグラと弓術士のエヴリーヌくらいだ。サティアにはもうすぐ会えるだろうが、他の三人は今何処にいるのだろうか。 東にある神聖術が盛んなルミナス聖光国にサティアがいるのなら、それぞれの得意な術を軸に考えれば、北の陰陽国ヨルシカにはカグラ、西の武大国アーシェラにはグラザやエヴリーヌがいるかもしれない。だが、どいつもこいつも一癖のある連中である。世界中を修行と称して旅をしている可能性も高い。そうなるといよいよ探しようがなくなる。 100年前に起きたという五大国襲撃事件。その余波は他のプレイヤーが運営している国々にも多くの被害を齎した。悪魔の大軍が原因であるこの事件が再び起きようものなら、今の防衛力が低下したエデンでは壊滅する可能性もある。悪魔が崇拝する主の存在。それを暴かなくてはならない。明日向かう予定の聖光国にも既に悪魔の手が伸びている。
last updateLast Updated : 2025-12-06
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33  羞恥心

 目が覚めると、もう窓の外は暗くなっていた。どうやら思っていたよりも眠り込んでいたらしい。迷宮探索に悪魔討伐など、命のやり取りはカリナが想像している以上に精神を擦り減らすものである。カリナは目を擦りながらそのことを自覚した。 ぐいっと伸びをして、脱ぎ捨ててあったコートを羽織る。そして立ち上がってブーツを履いた。テーブルの方を見ると、ケット・シー隊員はまだ花提灯を出して居眠りしている。「起きろ、隊員。もう夜だ。夕食と風呂に行くぞ」「んにゃ?! おはようございますにゃ、隊長」「おはよう。よく寝てたな」「一度目が覚めたんですが、隊長がまだ寝てたので二度寝してたにゃ」 隊員は目を擦りながら欠伸をした。同時に身体全体をぶるぶると振るわせた。猫の仕草である。そして隊員を伴って階下の食堂に向かった。 既に食堂には街の人々が集まって飲み食いし、盛り上がっている。カリナが空いている席を探していると、聞き覚えのある声で話しかけられた。「カリナさん、こっちです」 声の方を見ると昼間に出会った組合長のジュリアが組合の受付の事務員を二人ほど伴って夕食を取っていた。「ああ、ジュリアか。ここに食べに来たのか?」「ええ、カリナさんも宿泊しているだろうし、折角なので職員達と一緒に食べに来ました」「こんばんは、カリナさん。昼間はお世話になりました。受付のコレットです」「こんばんは、ギルマスに連れられて来ました。同じく受付事務のフリッカです」「こんばんは。遅くまでお仕事ご苦労様」 黒髪ショートボブのコレットと金髪のセミロングヘアを三つ編みで一つに括っているフリッカという女性がカリナに挨拶した。「良かったら同席しませんか? ここ空いているので、冒険話など聞かせて頂けると嬉しいです」「そうだな、他に空いてる席も見当たらなかったし、迷惑じゃなければ相席させてもらおうかな」 ジュリアの左隣に腰掛ける。カリナの隣の隊員には店員が子供用の背丈が高い椅子を用意してくれた。丸テーブルを囲んで向かいにはコレットとフリッカが座っている。「ありがとうございますにゃ」 礼儀正しく店員にお礼を述べる隊員。長靴を履いた喋る猫の噂は街中で広まっているらしく、周りの客が隊員を暫く見ていたが、驚かれることはなかった。 ジュリアにこの宿のお勧め料理を注文してもらい、運ばれて来たそれらを頬張る。魔
last updateLast Updated : 2025-12-07
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34  高所の危険

 翌朝、目覚めるとベッドの中にはケット・シー隊員が丸くなって隣で眠っていた。こいつはいつの間に潜り込んだんだ? と思いながら身体を起こす。まだ眠気を孕んだ目を擦りながら、大きく伸びをした。 ベッドから飛び起きて、身に付けているちょっとセクシーなルナフレアの趣味の寝間着を脱いで、アイテムボックスから今日着る衣装を取り出す。苦労してブラジャーを身に付ける。黒で裏地は赤の、リボンが肩口や袖に施されたロングコート、インナーには黒を基調として白と紫のデザインがあしらわれたタイトなチューブトップワンピース、足元は紫に白のラインが入ったニーハイソックスに黒に白いデザインのショートブーツ。そして最後に腰に剣と刀を装着して完了。姿見で自分の姿を確かめる。いつもながらファンシーな衣装である。だが今の美少女姿のアバターには良く似合う。 鏡に映る自分の姿に満足すると、洗面所で顔を洗い、ブラシで髪を梳く。もこっと膨らんだクセ毛のツインテールにブラシが少々引っ掛かるが、サラサラの髪の毛は綺麗に纏まった。部屋のトイレで用を足して、はあーと溜め息を吐く。どうもこれにだけはまだまだ慣れない。いい加減に慣れないといけないと思いつつ、まだベッドで丸くなっている隊員の姿を見る。「起きろ隊員。出発するぞ」「うにゃ、隊長おはようございますにゃ」「おはよう。今日は聖光国に向かう。早く準備しろ」「わかりましたにゃ」 隊員はベッドから飛び降りると赤いブーツの様な長靴に青いマントを羽織り、黒いシルクハットを被った。そしてぺろぺろと毛づくろいをした。カリナはフェイスタオルを濡らして、隊員の顔をごしごしと拭いてやった。人間の感覚では自分の舌で顔を整えるのはどうにも汚く思える。「うにゃ、冷たいにゃ」「我慢しろ。唾液で顔を洗うのはどうも綺麗には思えん」「猫の常識も知っておいて欲しいにゃ」「知らん」「御無体にゃ」 互いの身だしなみを整えて、忘れ物がないかを確認、宿泊した部屋に鍵をかけて退出した。一階の食堂へと向かう。隊員と一緒にカウンターに腰掛け、女将に朝食を頼んだ。「おはよう、カリナちゃん。今日は早いんだね」「おはよう。今日は聖光国に向けて出発するから、少し早目にね」「おはようございますにゃ、女将さん」「猫ちゃんもおはよう。今朝食を出すからしっかり食べて行くんだよ」 女将はそう言うと料理を
last updateLast Updated : 2025-12-08
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35  精霊と式神

 ペガサスにもたれかかったまま暫く休んでいると徐々に体調も良くなってきた。ポーションにペガサスからの癒しの波動の影響だろう。正直思い出すとぞっとする。今後はあまり高所を飛ばないように気を付けなくてはいけない。調子に乗ってペガサスに任せっ切りだった自分の責任なのだが、しっかりと反省しないといけない。同時に高山病の恐ろしさを経験した。リアルでも体験したことがない症状である。 呼吸が辛くなって、酷い頭痛に止まらない冷たい汗。意識が薄れていくときの感覚。この世界が現実であると嫌でも実感させられた。ゲーム感覚は捨てなくてはいけないとカリナは改めて思った。「ありがとう、ぺガサス。お前の御陰で随分楽になった。きっと必死に助けてくれたんだな」 心配そうに此方の顔を覗き込んで来るペガサスの顔や鬣を撫でる。ペガサスは目を細めて心地良さそうな表情をした。「隊長、おいらも心配したにゃ」「そうだな、心配を掛けた。すまない」「ペガサスに隊長を助けるように言ったのはおいらにゃ。感謝するといいにゃ」 まるで自分の手柄の様に自慢するケット・シー隊員。まだカリナに抱き着いて離れないその頭を撫でてやった。「ああ、ありがとう。しかしお前は大丈夫だったのか?」「これでも精霊にゃ。まだあの程度の高度なら平気にゃ」 召喚体は召喚術を媒介として、カリナの魔力で姿を維持している。実体はそれぞれの住む精霊界と言われる世界にあるのである。やられてもまた召喚することができるのはそういうことだ。そしてカリナの魔力が尽きない限りは傷も自動回復する。生身のカリナとはその成り立ちが根本的に異なっているのである。 それから数刻の間、カリナは目を閉じて呼吸を整えた。吸い込む泉の近くの澄んだ空気の匂い。風が頬を撫でる感触。陽の光が木陰の隙間から差し込み、少し眩しい。地上では厚手のコートが少々暑苦しい。復調して来たカリナはコートを脱いで全身で自然の穏やかで爽やかな風を感じていた。 かなり回復したが、急いで出発してまた体調を崩すのは避けたい。周囲の安全確保のために、シャドウナイトとホーリーナイトを召喚し、護衛に当たらせた。深呼吸をしながらゆっくりと呼吸を循環させる。頭痛も引いた。手足の感覚もはっきりしている。両手を握ったり開いたりして状態を確認する。しっかりと血流が巡っているのを感じる。もう大丈夫だ
last updateLast Updated : 2025-12-09
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36  ルミナス聖光国

 門を潜り抜けて街の中へ入る。辺りはもう暗くなり始めている。組合やサティアに会いに行くのは明日にした方がいいと思ったカリナは宿を探すことにした。街中の雰囲気はどこか重く沈んでいるように感じた。恐らくは悪魔の出現が原因なのだろうか。道行く人々も大都市にしては少ない。誰かにお勧めの宿を聞こうかと思ったが、話しかけられる雰囲気でもなさげである。 カリナは仕方ないと思い、門番の所に戻って宿の情報を聞くことにした。「おや、さっきのお嬢ちゃんじゃないか? もう帰るのか?」「いや、もう遅いし何処か近くのお勧めの宿を教えてもらおうと思ってね」「おお、そうか。そうだなあ、此処の近くなら金砂の舞踏亭ってのが料理も美味くてお勧めだ。それに今は悪魔騒動のせいで旅人も少ないからな。空いてると思うぞ」「金砂の舞踏亭はここから真っ直ぐ道なりに行けばすぐ見つかるよ」「ありがとう、行ってみるよ。じゃあおやすみ」「おう、おやすみ」「気を付けてな」 背を向けてケット・シー隊員を引き連れて歩いて行くカリナを見ながら、門番達は話し始める。「可愛かったなぁ……」「俺としてはあと5年ってとこだけど、今でも充分美人だよな」「世の中にはいるんだな、あんな美人が……」「まあ俺達には縁のない話だな」「それを言うなよ……」 門番達の会話は虚しく響くのだった。 ◆◆◆ 門番達の言う通り、道なりに進んでいるとT字路になっている突き当りに探していた金砂の舞踏亭はあった。歴史を感じさせる造りで、中から漏れる灯りが温かみを感じさせる。カリナは扉を開いて中に入って行った。「あら、いらっしゃい。これは可愛らしいお客さんね。ようこそ、金砂の舞踏亭へ。食事? 宿泊?」 給仕の女性が出迎えてくれた。黒髪にツインテールでメイド服を着た女性はカリナと隊員を不思議そうな顔で見つめている。「宿泊と、夕食も頼む。で、こいつは猫だがケット・シーという私の召喚体だ。ペットではないし喋れるからこいつの分の食事もお願いするよ」「へぇー、召喚士なんて珍しいわね。分かったわ、今は悪魔のせいでお客さんも減っていてねー。どこでも好きな場所に座ってね」「ありがとう」「ありがとうにゃ」「うわ、本当に喋るんだ。2名様ご案内しますー!」 カウンター近くの小さなテーブルに腰掛ける。隊員には子供用の椅子を用意してくれた。メニュ
last updateLast Updated : 2025-12-10
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37  ルミナス総合組合にて

 ルミナス聖光国の中心部に向けて、ケット・シー隊員を連れて歩くこと一時間程。道行く人々や街の雰囲気はどこか暗い。珍しい恰好をしたカリナとそのお供の二足歩行する猫に誰もが一瞬足を止めて見入ってしまうが、すぐにまた暗い雰囲気を纏って歩き始める。思っていた以上に悪魔の影響は大きいらしい。 そうしている内に総合組合の前に到着した。五大国と言われるだけあって組合の建物も大きい。隣には大聖堂、所謂教会がある。サティアは恐らくそこにいるのだろうが、先ずはカリンズの組合長ジュリアの姉である、ここの組合長に会う必要がある。カリナは書簡を取り出して、隊員と一緒に開きっ放しになっている扉から中に入った。 内部の造りは何処の組合も同じだが、さすが大都市のものだけあって広い。カリナはその広さに少し驚いたが、周囲の雰囲気がどんよりしていることにすぐに気付いた。酒場ではまだ午前中だというのに酒を飲んでいる者もいる。装備からして冒険者達だろう。悪魔討伐が進まずにイライラしているのだ。 カリナは彼らを見ない振りをして、右奥のカウンターへと向かう。冒険者組合の周辺に屯していた者達がカリナに声を掛けて来る。「おい、お嬢ちゃん。ここはお貴族様の遊び場じゃないぞ」「今は悪魔騒動で大変なんだ。冷やかしなら帰りな」 不貞腐れた様な態度で彼らはカリナに悪態を吐いたが、カリナは相手にせずカウンターの受付嬢の所に向かった。「あら、いらっしゃい。どうしたのお嬢さん? 何か依頼かしら。でも今は悪魔が出ていてそれどころじゃないのよね」「私はカリナという。これでも冒険者だ。この書簡をカリンズの組合長から預かってきた。これをここのギルマスに渡して欲しい」 首から掛けているAランクのギルドカードを見せ、ジュリアから渡されていた書簡を受付に手渡した。「ええっ!? こんな美少女がAランクの冒険者なんて……。しかもジュリア組合長とも知り合いなのね。わかったわ、ちょっと待っててね」 受付嬢は書簡を受け取ると、ぱたぱたと走って奥へと向かった。暫く此処で待つことにしたカリナに、後ろから先程の冒険者達が絡んで来る。「へぇ、Aランクねぇ。偽造じゃないのか? こんな子供がAランクなんて査定のミスだろ?」「だな、俺達でさえまだBランクなんだ。それがこんなお嬢ちゃんがAランクとはな。ランクを金で買ったんじゃねえの
last updateLast Updated : 2025-12-11
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38  聖女サティア

 大聖堂の重々しい扉を押し開くと、冷えた空気がひやりと肌を撫でた。内へ足を踏み入れた瞬間、頭上へと伸びる無数の尖塔アーチが視界を包み込み、天へ向かうかのような圧倒的な高さに思わず息を呑む。 色彩豊かなステンドグラスから射し込む光が、床の白大理石へ幾筋もの輝きを落としていた。赤、青、金。揺らめく光はまるで生き物のように波紋を描き、静寂の中で小さな祝福を振りまいているようだった。 中央の通路を進むほどに、荘厳な気配は濃くなってゆく。祭壇の前には無数の燭台が置かれ、揺らぐ炎が淡い金色の輪郭を描きながら空気を震わせていた。その奥――。 白銀のヴェールをまとった女神像が静かに立っていた。細い指先は祈る者へ差し伸べられるように柔らかく開かれ、その顔には母のような慈愛と、どこか厳粛な威厳が同居している。光を受けた瞬間、女神像の背後にある金色の装飾盤が淡く輝き、その存在を一層神聖なものへと変えていた。 堂内を満たすのは、風が通るわずかな音と、祈りのために灯された炎の微かな揺れだけ。まるで世界がここだけ止まっているような沈黙の中、祭壇と女神像はひとつの宇宙のように荘厳な重みを放ち続けていた。 奥へと進むと備え付けられた座席に座って祈りを捧げる人々が多くいる。そしてその最前列に冒険者らしき数人の男女と彼らに癒しの神聖術を施している僧侶、その中に見知った顔があった。 聖女サティア、エデンの特記戦力であり。神聖術に聖女専用の術も扱うエキスパート。白いローブに身を包み。長い黒髪を後ろで三つ編みにして一つに纏めている。額には白銀のサークレット。ローブの前は開けており、その中にも白を基調とした水色や黒のデザインが施された、聖職者クラスが身に付けるものとしては高ランクの装備を身に付けている。 見つけた――。 彼女に何があったのかは知らないが、先ずは話を聞く必要がある。カリナはケット・シー隊員を引き連れて女神像の前で冒険者達に治療を施しているサティアに声を掛けた。「やあ、久し振りだなサティア。お前を探してエデンからここまで来たぞ」 カリナの方を見たサティアは一瞬驚いた顔をして、すぐに表情を綻ばせた。「カー、いやカリナさん?! まさかエデンからここまで来たのですか?」「ああ、今は行方不明の特記戦力であるお前達を探し出すのが私の任務だからな。それに色々と気になることも
last updateLast Updated : 2025-12-12
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39  光弧の騎士団

 サティアとの話が終わって戻って来たところ、丁度ルミナスアークナイツの面々は治療を終えたようである。戻って来たカリナにカーセルが気付く。「終わったのかい? 此方も治療はばっちりだ。でも出発は明日にしよう。まだ術士メンバーの魔力が戻っていないんだ」「そうだな、私もそのつもりだよ。それに街にまで進軍はしてこないようだしな。今日は充分休んで英気を養ってくれ。出発は明日の昼にしよう」「そうしてくれるとありがたいよ。じゃあ明日の11時頃に北門前に集合にしよう。遺跡までは徒歩で10分程度で着く。各自準備を怠らないようにしよう」 カーセルの言葉に他のメンバーも頷いた。「でも、召喚士って大丈夫なのか? 俺は未だに見たことがないんだが……」 槍術士のカインは疑問を口にした。いつものことだが、カリナは召喚士が認知されていないことにうんざりする。「大丈夫だ。明日は召喚術の素晴らしさを見せてやろう」「凄い自信ね。でもソロで悪魔を4体も斃して来たんだから、私は心配してないわ。カイン、アンタこそカリナちゃんの足を引っ張るんじゃないわよ」「分かってるよ。すまない、失礼なことを聞いたみたいだな。悪気はなかったんだ、許してくれ」 カインに突っかかる陰陽術士のユナ。そしてそれを素直に謝るカイン。こういうやり取りを見るだけでも彼らが仲が良いのがわかる。「サポートは任せて下さい。明日には万全の状態で挑みますから」 最後に僧侶のテレサが意気込みを語った。ステータスが見れないのは残念だが、かつては鉄壁を誇った五大国の戦力である。カリナは久しぶりのパーティープレイを楽しみに思った。「ありがとう、頼りにしてるよ。それにお前達は仲も良いのが感じられる。一緒に行動するのに信頼関係は大事だからな。明日一緒に討伐に行くのを楽しみにしてるよ」「ふふふ、隊長は凄い召喚士なんだにゃ。どーんと構えているといいにゃ」「うわっ、猫が喋った?!」「これってケット・シーよね、文献とかで読んだことがあるわ。こんな珍しい召喚体を常時使役できるなんて」 これまで空気を読んでいたかのように静かにしていたケット・シー隊員が急に喋ったので、カーセルとユナが驚いた。カインとテレサは咄嗟のことで声が出ないようだ。「ふふふ、隊長は魔力の自動回復の速度も凄いんだにゃ。おいらを召喚させておくことなど造作
last updateLast Updated : 2025-12-13
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