聖衣の召喚魔法剣士

聖衣の召喚魔法剣士

last updateLast Updated : 2026-03-16
By:  KAZUDONAOngoing
Language: Japanese
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召喚獣と真に心を通わせた者だけが身に纏う鎧を聖衣《ドレス》というんだ! VRが革新的な発展を遂げた西暦2125年。 それはVRMMOにも絶大な進化を及ぼしていた。 Vivid Arcadia Online VAOと呼ばれる人気VRMMOを楽しむのが日課の一色和士(イッシキ ナギト)もまたその一人だった。 メインキャラ(男キャラ)をやり込んだので、今度はサブキャラ(女性キャラ)でこれまでと違ったプレイを楽しんでいたらとんでもない事態に!? 大変なことに巻き込まれながらも前向きに楽しんでいく、 マイペースでポジティヴシンキングなゲーム内ライフ、スタートです!

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Chapter 1

0   プロローグ

لقد أمضيتُ ثلاثة أيام وليالٍ أتعذب في الفراش بفعل شهاب أبو العزم.

كان في السابق صهرًا وضيعًا، لم أكن أسمح له بلمسي فحسب، بل كنت أدفعه تحت أقدامي وأهينه.

الآن أنا في حالة بؤس بينما هو في ازدهار، وكأنه ينتقم، لديه طاقة لا تنضب يستخدمها عليّ.

زوجي هو الرجل الذي انتقل للعيش في بيت عائلتي.

في الأصل كنت أحب شقيقه، ولكن بسبب حفل اجتماع الزملاء، استغل سكري وشاركني الفراش.

وانتشر الخبر بين الجميع.

لم يجد والدي بُدًّا من تزويجي منه، لكن بشرط أن ينتقل للعيش في منزل عائلتنا.

وهو ابن والده من زوجته السابقة، بعد طلاق والده وزواجه مرة أخرى، لم يعره والده اهتمامًا يذكر.

لكن ظروف عائلتي المالية جيدة جدًا، وأنا كنت دائمًا مدللة والديّ منذ طفولتي، فطلبنا منه أن يسكن في منزل عائلتنا كان أمرًا يرغب فيه والده بشدة.

وهكذا تزوجنا.

لكنني لم أكن راضية، فأنا أحب شقيقه.

وبسبب استيائي، كنت أهاجمه على جميع الأصعدة، أجبره على النوم على الأرض ليلًا، ولم أسمح له مطلقًا بأن يشاركني السرير.

أثناء تناول الطعام، كنت أنا وأخي نستهزئ به ونضطهده باستمرار، ولا نسمح له بتناول الطعام من الأطباق.

عندما ألتقي بأصدقائي وكانت تمطر، كان يأتي بلطف ليحضر لي المظلة، لكنني كنت أصرخ عليه.

باختصار، إذا لم أشتمه، فإن قلبي لا يهدأ.

لكنه كان شخصًا غريبًا بعض الشيء، وكأنه لا يملك أي غضب، فبغض النظر عن كيفية قمعي أنا وعائلتي له وإذلاله، لم يغضب أبدًا، وكان دائمًا هادئًا.

على الرغم من أنه كان وسيمًا، إلا أنه في أيام الدراسة كان انطوائيًا للغاية، وكانت نتائجه الدراسية متدنية، وكثيرًا ما كرر الصفوف، وكان وجوده في المدرسة شيئًا يثير الازدراء.

أما شقيقه فكان مختلفًا تمامًا، كان مشرقًا وسيمًا، ونتائجه الدراسية ممتازة، وكان شخصية بارزة في المدرسة.

عندما أتذكر أن شعلة الحب التي كانت قد بدأت تتقد بيني وبين شقيقه قد خمدها هو، استولى على قلبي مرة أخرى شعور بعدم الرضا.

في منتصف الليل، نزلت من السرير وركلته ليستيقظ من نومه العميق على الأرض، وقلت إنني عطشانة.

فاستيقظ على الفور وذهب ليحضر لي الماء.

كان شديد الرعاية، ففي فصل الخريف كان يتذكر دائمًا أن يحضر لي كوبًا من الماء الدافئ.

لكن عندما تذكرت كيف استغل ضعفي في تلك الليلة، ثار غضبي ورفعت يدي وسكبت الكوب كله على وجهه.

حتى بعد كل هذا لم يغضب، بل ذهب بهدوء إلى الحمام.

بينما أنظر إلى ظهره الطويل والصامت، شعرت ببعض الذنب في أعماقي، لكنني ما إن تذكرت كيف دمر سعادتي مدى الحياة، حتى تبخر ذلك الذنب دون أثر.

وهكذا، ظللت أقمعهُ وأذله لمدة ثلاث سنوات.

لكن ثلاث سنوات تكفي لحدوث الكثير: عائلتي أفلسَت، بدأت أُحبّه، والأهم... أنه طلب مني الطلاق.

عندما قدم لي اتفاقية الطلاق، قال إن حبيبته القديمة قد عادت.

أعترف، في تلك اللحظة، كنت أشعر بألم كبير، وكأن يدًا كبيرة قبضت على قلبي، وشعرت بضيق لا يحتمل.

لكنّي، ونظرًا لنشأتي المدللة وكبريائي، لم أظهر أمامه أي حزن أو أسى، بل وقّعت على وثيقة الطلاق بلا تردد.

بعد التوقيع، سمعت صوته الهادئ والبارد بجانبي فجأة: "هل تريدين أن أرسل السائق ليوصلكِ؟"

استغرقت وقتًا حتى أدركت ما قاله.

نعم، هذه الفيلا التي عشت فيها لأكثر من عشرين عامًا لم تعد ملكًا لعائلتي بعد الآن.

فقد أفلسَت عائلتي، وتم بيع جميع الأصول.

أما هو، ذلك الرجل الذي تزوجني بحيلة واحتقرته عائلتي بأكملها، فقد أسس شركة سرًا دون علمنا، والآن أصبحت أعماله ناجحة جدًا لدرجة أنه اشترى هذه الفيلا.

لكنني لا أملك الحق لألومه، ولا لأطالبه بتقسيم الممتلكات، لأن كل ما حصل عليه كان نتيجة صبره وتحمله لسنوات عديدة، وجاء بجهوده الخاصة، حتى أنه لم يستخدم فلسًا واحدًا من عائلتنا.

كان ينظر إلي بهدوء دون أن يستعجلني.

وهذا الهدوء الذي يتحلى به جعلني أتذكر كل ما فعلته معه في الماضي، وشعرت بالخجل.

ففي مثل هذه الظروف، بعد أن أصبحت أنا في حالة بؤس وهو في ازدهار، كان ينبغي عليه أن يرد إليّ الإهانات التي تعرض لها مضاعفة.

لكنه لم يفعل، بل حتى أنه كان هادئًا كالمعتاد.

فقلت على الفور: "لا حاجة، يمكنني العودة بنفسي."

وبعد أن قلت ذلك، هرعت إلى الخارج في ذعر.

وسمعت صوت استفساره الخافت من خلفي: "هل أتيتِ لرؤيتي لسبب ما هذا المساء؟"

"لا"، واندفعت خارج السور دون أن ألتفت.

كان المطر يتساقط في الخارج، فشددت قبضتي على الهدية في يدي.

اليوم هو ذكرى زواجنا الثالثة.

لم أكن أحسنُ معاملته في الماضي، ولكن عندما أدركتُ أنني بدأت أشعر بالإعجاب نحوه، أردت أن أحتفل معه بهذه المناسبة بشكل لائق.

لكن لم أكن أتوقع أن ما كان ينتظرني هو وثيقة الطلاق.

ابتسمت ابتسامة ساخرة وتركت المطر الغزير يهطل عليَّ، حتى أصبحت في حالة مُزرية.

وفي اليوم التالي، مرضت واضطررت إلى البقاء في الفراش دون القدرة على النهوض.

وفجأة سمعت ضجة وصياحًا من الخارج.

سحبت جسدي الضعيف إلى الخارج لأرى، فشاهدت والدي جالسًا على سور الجدار المقشر، يقول إنه لا يريد العيش بعد الآن.

نحن نعيش الآن في مبنى سكني قديم، بيئته قذرة وفوضوية، لكن الإيجار رخيص.

بكت أمي بحرقة أمام والدي، قائلة إذا قفز فهي ستقفز أيضًا، ولن يعيش أحد بعد ذلك.

ذهبت لأقنع والدي برأس يكاد ينفجر من الألم، وقلت له إنه مجرد إفلاس، طالما نحن أحياء، فالأمل لا يزال موجودًا.

لكن والدي حدق في فجأة بنظرة ثقيلة، تلك النظرة الحارقة جعلت قلبي يرتجف.

ثم قال: "اذهبي لتتوسلي إلى شهاب ليساعدني، هو صهر عائلتنا، سيساعدنا لا محالة."

وأسرعت أمي قائلة: "نعم، على الرغم من أننا لم نكن طيبين معه في الماضي، لكن نظرًا لمكانتكِ، سيساعدنا بالتأكيد، لذا توسلي إليه."

ابتسمت ابتسامة مريرة، فوالداي لا يزالان لا يعلمان أن شهاب قد طلقني.

رفضت التوسل إلى ذلك الرجل، لكن والدي هددني بالانتحار مرة أخرى.

بلا خيار، وافقت في النهاية.

قبل خروجي، أنفقت أمي القليل من المال المتبقي لشراء ملابس لي: فستان طويل بخط عنق عميق، وأحذية أنيقة مدببة.

حتى أن أمي استعانت بشخص ما ليضع لي مكياجًا جميلًا ويصفف شعري بإتقان.

نظرت إلى نفسي في المرآة، وارتسمت ابتسامة ساخرة على شفتي.

لا يبدو هذا كما لو أنني ذاهبة لأتوسل، بل كما لو أنني ذاهبة للإغواء.

لكن الآن، حتى لو وقفت عارية أمام ذلك الرجل، فلن يمنحني حتى نظرة.

حتى الآن لا أفهم، لماذا شاركني الفراش في ليلة لقاء الزملاء؟ هل كان هو أيضًا سكرانًا فظنني حبيبته القديمة؟

بعد أن طردت تلك الأفكار المزعجة، ومن أجل جعل والديّ ييأسان، قررت أن أتظاهر بالذهاب للتوسل إلى شهاب.

علمت أن شهاب موجود الآن في شركته، لذا ذهبت مباشرة إلى شركته بهذا المظهر.

كان والداي ينتظران "الأخبار السارة" عند مدخل الشركة.

عندما رأيت التعبير المتوقع على وجهي والديّ، لم أعرف ماذا أقول للحظة، شعرت فقط ببعض الحزن.

عندما وصلت إلى الطابق الذي يوجد فيه، ألقى الكثير من الناس عليّ نظرات غريبة، وانتشرت في الهواء مناقشات وتعليقات سيئة.

تظاهرت بعدم السماع، شددت ظهري، وذهبت مباشرة إلى مكتب شهاب.

لكن بمجرد أن رأيته، جُبِنت، وانحنى ظهري قليلًا.

في تلك اللحظة، كان يجلس على الكرسي، بأناقة ووقار، يبتسم وينظر إليّ...
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  西暦2125年。VR技術は、人間の生き方そのものを変えてしまった。 今や、誰もが満員電車に揺られる必要はない。国が支給する専用のVR端末とネット環境さえあれば、学校も職場も、すべて仮想空間の中に存在する。 授業も会議もログインひとつ。人々は通勤の苦痛から解放され、タイムパフォーマンスという言葉が新たな価値になった。 もちろん、いいことばかりではない。交通機関の利用者は激減し、現実の商業施設や観光業は軒並み打撃を受けた。 それでも、誰もこの便利さを手放せなかった。 ——現実(リアル)なんて、ログインすれば事足りる。 そうした新時代を、誰よりも自然に受け入れている青年がいた。現在大学生活を謳歌する、一色和士。彼の日常は、ほとんどVRの中で完結していた。 朝起きて端末を装着し、仮想キャンパスにログイン。授業を受け、サークルの仲間たちと会話し、放課後には少しゲームをする。 実際に外へ出るのは、アルバイトかスポーツをするときくらいだった。だからこそ、現実の空気を吸うたびに「懐かしい」と思う。VRの生活が当たり前になりすぎていた。 ——いや、もしかしたら、彼にとって現実のほうが“逃避”だったのかもしれない。 和士には、忘れられない過去がある。 幼いころは海外で育ち、父は一流のサッカー選手だった。しかし、突然の事故で父を失い、母と共に日本へ帰国。その母も心の傷から立ち直れず、早くに亡くなってしまった。 それでも和士は、父の背中を追ってサッカーに打ち込み続けた。ユース日本代表に選ばれるほどの有望株。 けれど——試合中の事故で膝と足首を壊した。 何度も手術を受けたが、元の動きは戻らなかった。夢は潰えた。十代の終わりにして、世界から取り残されたような気分になった。 そんな和士を救ったのが、友人の一言だった。「まあ、息抜きだと思ってやってみろよ。面白いからさ」 そう言われて始めたのが、ファンタジーVRMMORPG、Vivid Arcadia Online——通称VAOだった。 最初はただの暇つぶしだった。 だが、初めて体験する“もう一つの現実”は、あまりにも鮮烈だった。 広大な世界、美しい景色、そして数えきれないほどの冒険者たち。 和士は夢中になった。サッカーで失った
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1   召喚士は絶滅危惧種?
 ログアウトできない? 不安と焦りが変な汗となって背筋を伝う。ステータスさえ見ることができない。お腹も減って来た。どうしたものかと腕を組んで考える。「あー、考え事してるところ悪いんだが……」 戦いが終わったので、騎士団のライアンが話しかけて来た。まるで本当の人間であるかのような反応。これも違和感がある。「お嬢ちゃんは召喚士なのか? しかも剣技に体術までこなせるとはな。召喚士は今や絶滅危惧種だというのに。その若さでそれ程の使い手がいるとは、世界は広いな。しかも使い魔をその身に纏うなど聞いたこともない」「絶滅危惧種? どういうことだ?」 と返答をしたところで、和士は自分の声が少々勝気な雰囲気の少女然としたものであることに気付き、今の自分がサブキャラの女性キャラだということを自覚させられた。 しまった、何でよりによってこんな状況に陥っているときに女性の姿なのだろうか。こんな目に合うのならメインの男性キャラでログインするべきだったと思ったが、最早後の祭である。まさかこのような事態になるなど誰が予想できただろうか。 もしかしてこのままログアウトできなければずっと女性のまま過ごさなければいけないのか? またしても嫌な汗が流れ落ちる。そして汗が流れる感触やエフェクトなどなかったことにも今更ながら気付かされる。「あ、ああ。召喚術は習得するのがかなり難しい。ここ数十年間はまともに召喚術を扱う人間など見たことがないからな」「? ここ数十年??? 今の年代を教えてくれ!」「? アルカディア歴2225年だ。そんなことも知らないのか?」 アルカディア歴は現実で言うところの西暦に当たる。現実と齟齬が生まれない様に西暦と同じに設定してある。今は西暦の2125年のはず、バグでなければ100年後の未来にログインしてしまっていることになる。和士は頭がクラクラしてきた。 どうなっているんだ? ログアウトできない状況、100年経っているゲーム内世界。現状理解が追い付いていかない。頼れるのは目の前の騎士ライアン達くらいである。「俺がインしたときは2125年のはず。はっ、ならエデン王国は? カシューはどうしているんだ?」 カシューは和士と一緒にエデン王国を創ったときの国王をやっていたフレンドである。100年経っていてもまだ彼が国王をやっているのだろうか?「カシュー王を呼び捨てと
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2   カシュー王との謁見
 エデン王国。 その王宮の玉座がある広間の奥にある執務室のデスクで、カシューはフレンドリストを開いていた。そしてそこに表示された<カリナ>の文字が白く光っている。これはその者がログインしているという証拠である。 ステータス機能などのゲームの機能の大半が消失してしまったが、PCなら誰もが左手首に装着している<冒険者の腕輪>に設置されている赤いボタンを押せば、今でもフレンドリストや現在位置を示すマップ、所属しているギルドなどの情報を確認することができた。だが、インしたばかりで混乱の最中にあるカリナはそのことを失念している。「あはは、まさかカーズではなくてカリナのキャラで戻って来るとはね。こいつは揶揄い甲斐がありそうだ。早く僕の元に来てくれないかなー」 騎士団の諜報部からの報告から、南の平原でゴブリンの群れと共に悪魔が出現し、それをたった一人で退けた召喚魔法を操る魔法剣士が現れたことは既に耳に入っている。 まさかと思い確認したらそれが友人であり、現在は行方不明扱いになっている、この国の騎士団長カーズのサブキャラ、カリナであったということだ。そして今は王国騎士団と共に此方に向かっているという。 VAOが突然現実になり、歳を取ることもなく100年が経過した。国に集っていたフレンドかつ重臣行方知れずの中、これは予想外の朗報だ。 自由気ままにプレーしていたカリナには特に役職を与えている訳ではないが、所属はこのエデン王国になっている。PCはゲーム開始時点では、初期の5か国のどこかに所属することに決められている。その後は他のPCが創設した国家に所属するか、自ら国家を樹立するなど、選択肢は分かれる。 問題があるとすれば、PCはどこかの国家に所属していないと様々な恩恵が受けられないということだろう。買い物をするにしても高くつくし、国家からクエストの報酬を受け取れなくなる、戦争PvPに参加できない、等々である。そのため、カリナも建前上はエデン王国所属である。 夕日が眩しくなり始めた執務室の窓の外を眺めながら、カシューはカリナの到着を心底待ち遠しく思った。  ◆◆◆  騎士団の騎馬隊の後ろをユニコーンに跨って揺られ続けること数刻、一行はエデン王国の王都に到着した。夕刻にもかかわらず、国内は帰還した騎士団を迎え、一目その勇士を見ようと多くの人々で賑わっていた。
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3   着せ替え人形
 執政官のアステリオンに連れられて城内を歩く。玉座の間を出てから廊下を右に曲がり、階段を昇った先に城仕えの役人達が住む居住区が備えられている。 かつて自分が騎士団長としてのロールをこなしていた時期に何度も来た場所だが、100年の月日の変化が感じられる。当時とは比較にならないほど快適になっていた。居住区の一番奥の豪華な一室がカーズ時代に与えられたものだった。「ここです。鍵はこれを。では準備が整いましたら迎えを寄こしますので」 カードキーを手渡され、恭しくお辞儀をするとアステリオンは来た道を引き返して行った。当時は普通の鍵だったのが進歩したものである。手にしたカードキーを扉にかざすと両開きの扉が自動的に開いた。 中に入ると、自室は当時のまま残されていた。壁には鎧姿のカーズの勇ましい自画像。棚にはカシューから受勲した数々の勲章が所狭しと飾られている。「ここはしばらく来てなかったけど、何だか懐かしく感じるな」 とりあえず謁見で無駄に疲れたので、巨大なベッドにダイヴしようかと思ったが、今の自分は返り血などで装備が酷く汚れている。飛び込みたい気持ちを抑えながら、まずはなんとなく催して来たのでトイレに向かう。今のこの状況が現実ならば、ログアウトして自宅のトイレに行くこともできない。覚悟を決めてトイレに入り、スカートをたくし上げて洋式の便器に座り、下着を降ろした。「我慢がまんガマン……」 普段とは違う感覚で小便が流れて行く。なんてことだろうか、これからはこの身体と現実的に向き合わなくてはならなくなってしまったのかもしれない。何とかしてログアウトする方法を見つけなくてはならないという思いが一層強くなった。と同時に自分の身体とはいえ何とも言えない罪悪感が駆け巡る。 自己嫌悪しながら便器に座っていると、突然トイレのドアが向こうからバタンと開けられた。独りだと思って鍵をかけるのを完全に忘れていた。「カーズ様なのですか?! え? 女の子……?」 カリナの方を見て驚いた顔をしているのは、長い銀髪ストレートで美しい翠眼にメイド服を着たエルフとは異なる妖精族のルナフレアだった。 エデンの幹部には側仕えの世話役があてがわれる。彼女はカーズに仕えていたNPCであるが、今目の前にいる彼女はまるで本当の命を吹き込まれた一人の人間の様に感情が感じられた。しかし、今はそんなことを悠長に
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4   執務室にて
 ルナフレアに見送られて、玉座の間の裏手にある王の執務室までやってきた。カリナが廊下を歩いている間、やたらと兵士や城仕えの侍女達に「可愛い」「あの子がカーズ様の妹君か」などと噂話をする声が聞こえてきた。ひらひらの衣装を着ているだけで恥ずかしいのに、何とも言えない気分になる。 執務室の入り口のドアの両脇にはアステリオンと近衛騎士団長のクラウスが待っていた。「気にし過ぎですよクラウス。陛下とも顔見知りのようでしたし、カーズ様の妹君なら滅多なことなど起こりませんよ」「いや、あの娘は何か異常な力を持っている。俺の剣が掴まれただけで動かせなかったのだ。妙な力を使ったに違いない。何かあれば我々が陛下をお守りしなければ……」「陛下がそう簡単にやられるとは思いませんが……。おや、到着ですね。カリナ様、では此方へどうぞ」 アステリオンがドアを開けて中へ導いてくれる。クラウスは憮然とした表情でカリナの方を見た。「妙な真似をするなよ。陛下に何かあれば許さんからな」「いや、ただ呼ばれたから話をしに来ただけなんだけど」「そんな衣装を着て、陛下を誘惑でもする気なのか?」 カリナの来ているファンシーな衣装を見て、クラウスは意味不明なことを言い、右手を剣の柄にかけている。カリナはそんなことを想像するだけで気持ち悪くなった。「いや、しないから。話するだけだから」 アステリオンに一礼をして、クラウスをじとーっと見た。「お前達、いつまで私を待たせる気だ!」 中からカシューが怒った演技の声を出した。「「申し訳ありません!」」 二人は謝罪をすると、カリナを部屋の中に送りドアを閉めた。 執務室のデスクにいるブルーの髪色をしたカシューがカリナの方を見て、もう邪魔は入らないなという風に笑顔になった。100年経過しているということだがまるで年老いていない。かつて共に冒険をしたときの姿のままだ。「国王のロールプレイをこなすのも大変そうだな」 デスクの前のソファーにどかっと腰掛けてからカリナが言った。「そうなんだよね、我ながらよくやってると思わない?」 カシューは恰好を崩した口調で答えた。一応国王をやっているので、配下の前では威厳のある態度で通しているのだ。それが久々に現れた友人の前で素に戻る。「そう思う。俺には無理だ」「だったらもっと褒めてよー。君達がいない間大変だったん
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5   災害のエクリア
「お、マジでいるじゃんー! しっかしすごく可愛らしい格好させられたもんだな。似合ってるぜ、ぷくくっ!」 笑いながら入室して来たエクリアはそのままカリナの向かいにあるソファー、カシューの隣に腰掛けた。「うるさいな。ってお前もいたんだな、ネカマのエクリア」「まあな、でも俺が戻って来たのは30年前くらいかな。カシュー一人でてんてこ舞いだったからなぁ、今は国の復興やら各地に湧く魔物討伐とかしてるんだよ」 この一人称「俺」の女性は旧知の仲であると共に、初期から女性キャラでエンジョイしている生粋のネカマである。今の状況は彼、いや彼女にとっては願ったりかなったりの状況であるかもしれない。ずっと女性姿で過ごせるのだから。「世界が変わっちまったから俺はずっと女のままだ。まあ部下の前ではちゃんと女言葉使ってるから安心しな」「心配なんかしてないぞ。喜んでロールプレイしてるんだろ?」 にししと笑いながらテーブルに置いてあったポットからカップに紅茶を注ぐ。一飲みしてから、また喋り続ける。「で、今まで何してたんだよ? こっちは色々大変だったってのに」「ついさっきログインしたらこの状況だったんだってさ。さっき聞いたよー」 カシューが口を挟む。彼にとっても友人達3人と過ごす時間は和やかなもので心地良い。「で、幹部はエクリアだけなのか? それに各地に魔物がそんなに大量に湧くなんてそうそうなかっただろ? それをエクリアが討伐してるのか……、毎回地形が変わって大変そうだな」 エクリアの戦いは特に派手な魔法を連発する。そのせいで周囲は毎回地面が抉られ、クレーターが出来上がる。そのせいで付けられた二つ名は「災害」。自然環境を崩壊させるその戦いぶりは周囲の仲間も巻き込みそうになる程のものだった。「しかし、サブキャラでインしたところに巻き込まれるとはついてねーな。女だと色々大変だぞー」「大変って、まさか……。これが現実ならゲームでは起きなかった体の生理現象が……?」 カリナは嫌な汗が背筋を伝うのを感じた。そこまでの覚悟はさすがにできていない。「にしし、ご名答。アレは大変だぞー。痛いのなんのって、なあ?」 自分のお腹を押さえながらカシューの方を見る。「僕に振らないでくれないかな? わかるわけないでしょ。でもエクリアが月一で使い物にならなくなるのは知ってるけどね」「マジかよ…
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6   告白
「実は伝えたいことがあるんだ」 カリナはルナフレアの目をじっと見て言った。「伝えたいこと? ですか?」 きょとんとした表情をするルナフレア。そんな彼女の手を取って自室のリビングへ向かう。そこで向かい合って座り、カリナは切り出した。「実は、信じられないかもしれないが……、俺がカーズなんだ」「え?」 当然の反応。目の前にいる少女はあのムキムキのカーズとは似ても似つかない。 さてどう説明すれば良いのだろうか? ゲームの中でもう一人作ったキャラが自分でカーズのサブキャラとでも言えばいいのだろうか? だが今のこの世界は現実である。本来NPCのルナフレアにそんな説明が通用するはずがない。まるで理解が出来ないだろう。 手頃な喋れる召喚獣を呼び出して説明してもらうか? いや、彼らも本来カリナの所有する召喚体であり、カーズとは何の縁もない。アカウント共有の倉庫は使えないので、カーズのコレクションのアイテムを見せるのもダメだ。妹という設定である以上、兄から譲り受けたと言われればそれまでである。 これはもしかして詰んだかもしれない……。「あの、もしそれが本当なら何か証拠はありますか?!」 ルナフレアが必死な顔でテーブル越しに身を乗り出して来る。「俺がカーズだという証拠……。サブキャラで同じアカウントだという証拠ならあるんだが……」「サブキャラ? アカウント?」 やはりその手の類の説明は通用しない。彼女の今の反応からして、ここが本来VRMMOの世界だという認識すらないだろう。うむむ、と頭を捻る。「ルナフレア、妖精族のルナフレアとの間の証拠……」 そのとき、はっと一つの考えが浮かんだ。同じアカウントであるということは同一人物が中にいるということにはなる。ならば……。「君はカーズに妖精の加護を与えていただろう? 俺が同じアカウントの同一人物であるなら、もしかしたらその加護の更新が可能になるかも知れない。これはある意味賭けだ。もしできなければ……、俺はただの大嘘つきだ。笑ってくれてもいい。でもチャンスをくれないだろうか?」 そう言って右手の掌を広げて彼女の方へを突き出す。「確かに、私はカーズ様に妖精の加護をお与え致しました。もしカリナ様がカーズ様と同一人物であるのなら、その加護の更新が可能になるかも知れません。試してみる価値はありそうです」 そう言ってル
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7   悪魔討伐へ
 玉座の間の入り口に立つと、衛兵たちが扉を開けてくれた。そのままカシューが座る玉座まで移動する。「よく来てくれたね。今日はちょっと厄介ごとがあってね」 砕けた口調でカシューが切り出した。王としてのロールプレイはどうしたんだ?「ほう、厄介ごととは?」「ここから西の高原に悪魔が出現したという報告があってね、ちょっと行って討伐して欲しいんだ。それと……」「私も同行する。いかにカーズ様の妹とはいえ、まだ私はその実力を認めたわけではないからな」 王の右隣に立つクラウスがそんなことを言った。それを見て、やれやれという顔をするカシュー。なるほど、召喚士としての力を示せということなのだろう。「承知した、カシュー王よ。それならば二人で向かえばいいのか?」「魔物の大軍もいるみたいだから、もう一人従者を付けるよ。エクリアの代行魔法使いのレミリアにも同行してもらう。エクリアには許可ももらってるし、彼女は今東の防衛に向かっているからね。現場まではうちで造った車で向かうといいよ。戦車隊隊長のガレオス、お前は三人を現場まで案内してやってくれ」 クラウスの隣にいた魔法使い然とした衣装にローブを身にまとった茶髪の女性が一礼する。そしてカリナの後ろから黒い軍服を着た黒髪の青年が言葉を発した。「御意。では城の前に戦車を止めてありますので、そこまで参りましょう」「ふん、小娘の化けの皮を剥がしてやるからな」 憮然とした態度のクラウス。これはギスギスした旅になりそうだなと、カリナは少々うんざりした。さっさと討伐して帰還しようと思うのだった。 ◆◆◆  城を出ると、門の前に近代的な見た目をした黒い車が止めてある。だが戦車というよりは頑丈な造りをした乗用車という感じだ。カシューはこんなものまで開発していたのかと感心するが、世界観ぶち壊しの代物に妙な違和感も覚えた。馬車とかじゃないのかと。まあ早く現場に着くのならそれに越したことはない。「さあ、こちらが我が国の技術を詰め込んだ最新鋭の戦車です。四人乗りなのでレミリアとカリナさんは後ろに乗って下さい。クラウスは助手席で構わないですよね?」「私はどこでも構わん。さっさと討伐に向かうぞ」「では私達も乗り込みましょう、よろしくお願いしますね、カリナさん。エクリア様からお噂は聞いておりますわ」「私の噂をエクリアから? どうせ碌でもないも
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8   新作と今後の予定
 悪魔の討伐が完了し、ガレウスの荒い運転で再びエデンに帰還した。カリナの力を認めたクラウスとは終始和やかな雰囲気で会話が弾んだのだった。 そして今は謁見の間。カシューがクラウスに話しかけている。「カリナの実力はどうだった? クラウスよ」「はっ、見事な召喚術に魔法剣士としての腕前でした。私の考えが至りませんでした」 カシューはくすりと笑い、カリナの方を見た。「わかればよい。私の目が節穴ではないということがわかっただろう?」「そ、それは勿論でございます。陛下の決断に素直に従わなかった私の責任でございます」 跪いて深々と頭を下げるクラウス。何はともあれ、これでカリナに無駄に反発する者はいなくなったのである。「ふむ、まあお前も近衛騎士として見ず知らずの者を私に近づけるのを危惧していたのであろう。だが、もう心配は無用だ。私はこの後カリナと執務室で今後のことについて話がある。カリナよ良いな? それとレミリアとガレウスもご苦労だった。下がっても良いぞ」「承知した、カシュー王よ」「「はっ、ありがとうございます!」」 いつもの王と配下のロールプレイを済ませ、レミリア達は頭を下げた。そのままカシューに連れられて執務室に移動する。 ◆◆◆ ソファーに二人で向かい合って腰掛けると、カシューが口を開いた。「そろそろお昼だね。何か持って来させよう。それと……」 手元にあったベルを鳴らすと、王直属のメイド隊が扉を開けて「失礼します」と入室して来た。カシューは昼食の準備と何やら隊長のリアに耳打ちした。「畏まりました。ではカリナ様はお連れ致しますね」「お、おい、何を言った?」 カリナが青ざめた顔をすると、カシューはにこやかに笑い、「いってらっしゃい」と手を振った。そのままカリナはメイド隊達に引きずられて、侍女達の部屋に連れていかれた。「何だなんだ?」 そこでリアが取り出して来たのは新作の衣装だった。昨日の今日で余りにも早い仕事である。そのまま拒否権はないと自覚したカリナは着せ替え人形と化すのであった。「これは……、また派手な衣装だな……」 頭にはメイドの被るようなヒラヒラのヘッドドレス、身体の前方が大きく空いた、袖にリボンがたくさんついたピンクのコートに、インナーはバストの上から膝上までの長さの黒と赤のボディコンの様なワンピース。下はガーターベルトに黒い
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9   お風呂
 自室の扉を開けると、奥からルナフレアが出て来て出迎えてくれた。「お帰りなさいませ、カリナ様。今日はお早いのですね」「ああ、討伐任務だけだったし、その後はカシューと今後のことについて話し合いしたくらいだけだしね」 そう言うカリナの服装が出発前とは違うことに気付き、ほうほうと眺めるルナフレア。「そうでしたか。それにしてもまた可愛らしい衣装ですね。リアさん達やりますね。カリナ様の可憐さをしっかりと引き出している素敵な服です」 服を褒められているのか自分を褒められているのかよくわからなくなったカリナは妙にそわそわした。「また無理矢理着せられたんだよ。新作だってさ。これからは新作ができる度に着せ替え人形にされる予感しかない」「いいではありませんか。私などいつもここに努めているのでこのメイド服ばかりですよ。たまにはお洒落をしてもみたくなります」「そうか……。あ、だったら明日は城下に用事があるから一緒に行くか? ルナフレアの私服も見てみたいしな」 その言葉にルナフレアは目を輝かせた。「本当ですか?! カリナ様とデートでしたら思いっきりおめかししないといけませんね」「いや、別にデートでは……、ってまあいいか。明日はギルドに用事とその他にも色々と回ってみるつもりだから。楽しもう」 喜ぶルナフレアを見るとそれ以上は何も言えなくなってしまった。これまで寂しい思いをさせていた分、明日はしっかり満足してもらえるようにしようと、カリナは心の中でそう誓った。「まだ早いですけど、お風呂になさいますか? 討伐任務だったのならどこかしら汚れているかもしれませんから」 くんくんと自分の匂いを嗅いだが、新しい衣服の匂いしかしない。だが、折角だし頂くとしようと思い、彼女の意見に同意する。「それほど汚れてはないかもしれないけど、髪の毛とかはわからないし、それならお先に頂こうかな」「はい、お風呂はいつでも綺麗になっておりますよ」 そう言って笑ったルナフレアを見て、カリナは浴場に向かった。 ◆◆◆ 更衣室。カリナは衣装を脱ぐのに苦戦していた。無理矢理着せられたので、どのようにして脱げばいいのかイマイチわからない。「むぐぐ、脱げない。どこかに紐やら留め具があるのか?」 四苦八苦していると、ルナフレアが更衣室に入って来た。「どうなさいましたか? ああ、脱ぎ方がわからない
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