その日の夜。 最後の夜だからと、ホテルの中庭で小さなパーティーを開いた。 キャンドルライトと簡単な料理、海風に揺れるライト。 華やかではないが、心が休まる空間だった。 しばらくすると、麻美が大地の腕を引っ張る。「ねぇ大地くん、ちょっとだけ散歩しない? 二人で」「え……まあ……うん」 そう言って2人は夜の回廊へ消えていった。「行ったね……あの2人」 瑛斗は小さく笑う。 玲もつられて笑った。 2人きりになったウッドデッキで、キャンドルの炎がゆらゆらと揺れ、玲の横顔を赤く照らす。 玲は炎を見つめながら、ぽつりと呟いた。「……子供のころ、短い間だけ一緒に暮らしてた男の子がいたの」 瑛斗の視線が玲に向けられる。「その子と、一緒に食事をして、一緒に勉強して……空手の稽古までしたの。 すごく優しくて、かっこよくて……お兄ちゃんみたいで大好きだった」「へぇ……そんな人がいたんだ」 瑛斗は、驚くどころか心の底から嬉しそうに微笑んだ。 玲はその笑みを見て、不思議に胸が温かくなる。「その子……今どうしてるんだろうね」「きっと、玲ちゃんのそばにいるよ。大事な時には、ちゃんと守ってくれる」 どうしてそんな確信のある言い方をするのか。 玲は不思議に思いながらも、その言葉が胸に沁みた。 瑛斗は――決して手を出さない。 けれど、目の届かない距離までは、決して離れない。 炎の向こうで揺れるその瞳は、誰よりも優しく、そして強かった。キャンドルの炎が、ぱち、と弾けた。 オレンジ色の光が玲の横顔を照らし、影が頬をかすめて揺れる。 夜風は穏やかで、昼間のあの緊張感が嘘のようだった。 けれど玲は、まだ胸の奥の震えを完全には止められていない。 刺客の足音、砂浜に響いた怒号、瑛斗と大地の動き―― 思い出すたび、心がざわめく。 そんな玲の横で、瑛斗は黙って火を見ていた。 寄り添う距離はほんの少しだけ近く、だが触れ合うほどではない。 守りたいけれど、踏み越えない。 その絶妙な距離を保つのが、彼らしい。「……さっきの話、聞かせてくれる?」 瑛斗が、玲の視線を遮らないように静かに言った。「子供のころ一緒に暮らしてた男の子のこと」 玲は少し迷い、それから火に向けて語るように口を開いた。「ほんの数ヶ月だけだったの。う
Terakhir Diperbarui : 2025-12-25 Baca selengkapnya