玲が姿を消してから、三カ月以上が過ぎた。 柊 蓮の瞳の光は、少しずつ鈍くなっていた。 毎日は仕事はこなしているものの、心はどこか空洞のままだ。黎明コーポレーション本社の応接室。 大型のスクリーンには、新規プロジェクトのプレゼン資料が映っている。 部下たちは緊張しながら蓮の顔色を伺っていたが、彼の口から出たのは、静かで的確な指示だけだった。「……この数字を見直せ。利益率が甘い。来週までに再計算して報告しろ。」「は、はい!」淡々とした声。冷静だが、どこか人間味が失われていた。 報告会が終わると、蓮は無言で席を立つ。 オフィスを出たあと、スマートフォンの画面を開いた。 “成瀬 玲”――その名前を検索欄に打ち込む。 ヒットしない。 SNSも削除、電話も不通。まるで最初から存在しなかったかのように。(……どこへ行ったんだ、玲。)その夜。 蓮はひとり、かつて玲が勤めていた「クリスタルローズ」の跡地を訪れた。 看板は外され、シャッターには「賃貸募集」の紙。 ――すべてが消えていた。 まるで時間ごと、玲の存在が街から切り取られたようだった。「……ここに、あの笑顔があったのに。」街の明かりの中、蓮は立ち尽くしていた。 そのとき、背後から声がした。「……あんた、もしかして柊さんですか?」振り向くと、黒いジャケットを着た若い男が立っていた。 「俺、前に“クリスタルローズ”でバーテンをしていた者です。名前は篠原です」蓮の表情が動いた。 「お前が……あの店で?」篠原は苦笑した。 「ええ。玲さん、店畳む直前まで頑張ってました。でも……“もうお店を続ける意味がない“って言ってたんです。だから、俺もあの夜を最後に蓮絡取れなくて。」「意味がない?」 蓮の胸に、冷たいものが走った。「ええ。自分の経営してた“クリスタルローズ”が、実は黎明の金の流れに利用されてたって。それ、玲さん知らなかったんです。知った途端、店も閉めて、全部精算して……。 “もうここにはいられない”って。」蓮は息を呑んだ。 玲が経営者だったのか――!?。 彼女がただのホステスではなく、黎明の裏の資金ルートに関わっていた事実を、 彼は初めて知った。しかし、そんな事実はない。蓮は仕事に玲を巻き込むつもりもなかったのだ。夜の風が冷たく吹き抜けた。 「……ありがとう
Terakhir Diperbarui : 2025-12-30 Baca selengkapnya