Semua Bab 黎明の風と永遠の指輪ー夜の世界で出会った二人、危険で甘い約束ー: Bab 71 - Bab 80

130 Bab

第七十一話

 夜の大阪。  蓮、隼人、そして利衣子は、路地裏を抜け、人目のない廃倉庫へと滑り込んだ。「ここまで来れば、一旦は安全だ」 隼人が息を整えながら周囲を確認する。  倉庫の外では、わずかに気配が動いた。 龍一の部下だ――蓮はそう直感した。  姿は見えない。だが確実に“影”がついてきている。 利衣子は震える体を抱え、壁に背を預けた。「はぁ、はぁ……蓮……本当に、ありがとう……」「まだ礼は早い。黒澤はいずれここも嗅ぎつける。利衣子、お前の知っていることを全部話してくれ。黒澤の動き、鷲尾の失踪、玲のこと……」 利衣子は、唇を噛みながら、震える声で口を開く。「……鷲尾さん、バリ島に行ったの……“成瀬 玲がいる”って情報が流れて……  黒澤さんは飛びついた。でもね……そのあと、急に連絡が途切れたの」 蓮の眉がわずかに動く。「“情報が流れた”って誰から?」「わからない。黒澤さんも“親切な誰か”って笑ってた……でも、その直後から黒澤さんの周り……完全にざわつき出したの。あれは……“嵌められた”って顔だった」(……桐嶋龍一か) 蓮は確信した。  龍一は、蓮には一言も言わなかったが、裏で鷲尾を“処理”したのは間違いない。 だがそれを知るはずのない利衣子は続ける。「鷲尾さんが帰ってこない。天城会長が“成瀬 玲を差し出せ”って怒鳴り込んでくる。桐嶋龍一が“大阪で会う”って連絡してきた。黒澤さん……完全に追い詰められてるのよ……私が玲ちゃんの居場所を知ってると思われて……殺されかけた……!」 利衣子は涙をこぼし、蓮の腕にしがみついた。「お願い……守って……蓮……」 蓮は迷うことなく彼女の手を外し、静かに言った。「守る。ただし条件がある。――俺の質問に全部、正直に答えること。命を賭けてもらうことになる。」 利衣子は震えながらもうなずいた。「わかった……なんでも話す……」 一方その頃――大阪市内、神威会本部。 黒澤は机の上の酒瓶を乱暴にひっくり返した。「なんでや!! なんで利衣子まで消えんねん!!どないなっとんねん、うちの組はァ!!」「す、すみません……! 今、街中に人を散らして――」「散らすやと!? アホか!アイツはなぁ……“鍵”や!!桐嶋龍一と天城壮真、両方に対して使える、唯一のカードやったんや!!それが消えたら――終わりやんけッ!!」
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第七十二話

 その頃、蓮と隼人が借りた安宿ホテルの一室で、蓮と隼人は利衣子から引き出せる情報をすべて聞き終えていた。「……なるほど。黒澤は完全に追い詰められてる。天城も、焦ってる。」 隼人が腕を組む。「鷲尾が消えたことで、黒澤の“計画”は全部崩れた。」「けど……問題はこっちです。」 蓮はスマホを見る。  数分前、龍一からメッセージが届いていた。――“女を確保したら、すぐ俺に連絡しろ。場所を送る。彼女を連れて来い”――(……龍一は利衣子から得たい情報がある。そして――俺には“別の指示”を出すつもりだ) 蓮は直感で理解した。(これは……“試されてる”) 龍一は蓮を部下にする気はない。  だが――男としての“覚悟”を問おうとしている。 隼人が利衣子に毛布を掛ける。「利衣子さん。この後、移動することになる。怖いとは思うが……俺たちを信じてくれ」「……うん……」 利衣子は小さく頷いた。「蓮……ごめんなさい……私、あなたを裏切ったのに……それでも助けてくれて……」「利衣子。お前にも事情があった。責めるつもりはない。ただ――二度と間違えるな。」 利衣子は涙を拭い、強くうなずいた。 その瞬間、廊下の外の“影”が動いた。 龍一の部下が静かに扉をノックする。「柊さん。龍一さんから連絡です。――“場所を移動しろ”とのこと。」「場所は?」「送ります。」 部下はスマホを蓮に差し出し、画面に地図が表示された。(……龍一さんの“本拠地”に近いエリアだ) 蓮は隼人と視線を交わした。「行くしかないな。」「はい。」 利衣子は不安げに蓮の腕を掴む。「蓮……どこに行くの……?」「安心しろ。お前は守る。――俺が選んだ道だ。」 蓮は覚悟を決め、深く息を吸った。 玲を守るため。  二度と裏社会に振り回される“弱い男”に戻らないため。 龍一が試すのなら――受けて立つ。 そのころ、黒澤は街中の情報網を使い、蓮たちの痕跡を追っていた。「どこや……どこに消えた……!」 その顔には恐怖と焦りが入り混じっていた。 蓮たちがこの街に着いたという情報が、黒澤の耳にもすぐに届く。「……見つけたで……柊……絶対逃がさんでェ……!」 黒澤は命を賭けて、蓮を追い始めた。――大阪の夜が、さらに混沌の渦へと飲み込まれていく。
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第七十三話

街を覆うような湿った風が、路地裏のビル群の間をすり抜けていく。 蓮たちを乗せた黒いワゴンは、人気のない倉庫街へとゆっくり進んでいた。 龍一の部下が先導し、もう一台が後方を固める。  街灯の少ないエリアは影が濃く、闇が深い。 利衣子は膝に抱えた腕を震わせながら、小さく息を吐いた。「……どこに向かっているの?……?」「心配するな。安全な場所に移動するだけだ」 蓮はできるだけ穏やかな声で言った。  しかし利衣子には誤魔化しが効かない。「蓮……蓮も怖いんでしょ……?さっきから……顔がこわばってる……」 蓮はわずかに目を伏せた。「怖いよ。それでも行く。――やられたらやり返すだけだ」 その言葉に利衣子ははっとし、泣きかけた顔をぎゅっと引き締めた。「……うん……」 一方そのころ、龍一は別の車で単独移動していた。  後部座席でスマホを耳に当て、淡々と受け答えをしている。『……バリ島での処理は、これで完了です。“鷲尾”はワタシのネットワークで処分されました。遺体の回収は不可能です。』 電話越しに聞こえるリュー・カイの声。  龍一はその報告に眉ひとつ動かさない。「分かった。玲華の安全は確保しているんだろうな?」『もちろん。“海沿いの拠点”にいます。あなたが指示した通り、外部には一切漏らしていません。』「いい。――予定通り動け」『了解しました。』 通話が切れる。 龍一はスマホを見つめ、ほんの僅かに目を細めた。(黒澤……天城……二人まとめて沈没だな) 低く呟き、視線を夜の街へと向けた。 そして黒澤は、神威会本部で荒れ狂っていた。「なんでや!!!なんで今度は“利衣子”が、急に消えんねん!!」 机を叩き、酒瓶を投げつけ、部下に怒鳴り散らす。「す、すんません黒澤さん!『スナック琥珀』から誰かの手引きで逃げたって情報までは……!」「そんなもん、犬でも追えるわボケェ!!桐嶋龍一の“影”が動いてんねんぞ!?  アイツに先越されたら終わりなんじゃ!!」 黒澤の声は焦りと恐怖で裏返っていた。 そのとき、スマホが震える。  画面には――天城壮真。黒澤は凍りつく。「……もしもし……天城、さん……」『黒澤ァ。――“成瀬 玲の居場所”、いつ教えてくれるんや?』「っ……そ、それが……今、探ってまして……!」『探っとるんは分かっとる。せ
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第七十四話

 蓮たちの車列は、やがて大きな鉄扉の前で止まった。  街の外れ、港湾地区に近い廃工場。 先導していた龍一の部下が、蓮に向き直る。「――ここが、一時拠点です。桐島社長が、お待ちです。」 利衣子が怯えた声を漏らす。「ここ……本当に安全なの……?」「桐島さんの領域だ。敵は絶対に近づけない」 蓮がそう答えた瞬間――鉄扉がゆっくりと開いた。 その奥に、黒い長コート姿の龍一が立っていた。 冷たい目で蓮を見据える。 利衣子は蓮の影に隠れるように震える。「あ、あの……」「心配はいらない。今はお前を殺さない」 龍一の全く感情のない声に利衣子の顔が青ざめる。 蓮が前に出て言った。「桐島社長。利衣子はすべて話した。黒澤の動き、天城の苛立ち、鷲尾が消えた理由……今ならまだ、先手を取れる。」「上出来だ」 龍一は微かに肩をすくめた。「だが――ここからは“俺のやり方”でやる。お前にも覚悟を見せてもらう。」 蓮は迷いなくうなずいた。「玲を守れるなら……何でもやります。」 龍一が指を鳴らすと、背後から部下がノートPCを運んできた。 画面には――バリ島にいる玲と、麻美の姿が映っていた。 蓮は息を呑む。「玲……!」 画面の中、玲は無事だった。  「彼女は友人と共に、安全な海沿いの拠点で保護されている。」 龍一が言う。「彼女は無事だ。だが――“大阪が片付くまで”、日本には戻せない。」 蓮の拳が震える。「……黒澤を……どうするつもりですか?」「決まってるだろう。――ここで潰す。」 龍一の声は、氷の刃のように冷たかった。「そのためには“餌”が必要だ。」龍一が冷たい目で利衣子を見る「お前だ。」「えっ……?」 利衣子が怯えた顔で後ずさる。「黒澤は、お前が“柊を誘惑して玲の居場所”がわかると思い込んでいる。  お前を囮にすれば、黒澤は必ず釣れる。」「ちょ、ちょっと待って……! 私、囮なんて……!」「利衣子。俺たちはお前を守る。――だが逃がしはしない。俺たちを罠に嵌めた罰だ」 龍一の目が鋭く光る。「柊、お前の“覚悟”は、ここから証明される。」 蓮は、ゆっくりとうなずいた。「分かっています。――ここで終わらせる。」 利衣子の肩が震え、隼人がそっと支える。 その瞬間、工場の外で何かが爆ぜるような音が響いた。 龍一の部下が駆け込んで
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第七十五話 雨のバリ島と胸に落ちる小さな痛み

翌朝――  玲が目を開けたのは、カーテン越しに薄い白光が差し込むころだった。 枕元の時計を見ると、もう十一時を過ぎている。(……寝過ごした) 起き上がると、静かな雨音が耳に落ちてきた。  昨日までの陽射しが嘘のように、空は重たく濁り、湿った風がガラス越しに肌を撫でる。「玲……? 起きた?」 隣のベッドで丸まっていた麻美が、寝ぼけた声で顔を上げた。  髪が少し乱れていて、頬はほんのり赤い。「もうお昼じゃん……」「そうみたいだね。昨日、遅かったから……」 麻美はゆっくり起き上がり、大きく伸びをした。「ふわぁ……昨日ね、大地くんが――」 にやりと笑う。 玲は思わず苦笑した。「そんな顔しないでよ。楽しかったんだから。あたしさ……もう決めた!」「……何を?」「日本に帰るまでに、大地くんを絶対モノにする!」 勢いよく宣言する麻美の声は、雨模様の朝でも明るかった。「玲もさぁ……瑛斗くんと楽しんじゃえば? 蓮のことなんて忘れてさ」 玲は小さく首を振る。  けれど、その動きはどこか弱々しかった。「……そういうんじゃないの。瑛斗くんとは」「ほんとにぃ?」 「ほんと」 「つまんなーい」 麻美はそう言いながらも、どこか安心したように笑った。  玲もつられて微笑む。     昼近くだったので、二人はホテルのレストランで軽いランチを取ることにした。 窓の外では、ヤシの葉がしっとりと濡れ、灰色の空が映り込んでいる。  旅行客たちも遅めの朝食をとっており、店内は緩やかなざわめきが広がっていた。「玲、これ美味しいよ」 麻美がトロピカルサラダをつつきながら言う。 玲はうん、と微笑んで返したが――心はどこか遠かった。(蓮……もう、会えないのかもしれない) 心の奥で冷たい影が疼く。 食事を終えると、麻美は椅子を蹴るように立ち上がり、晴れ晴れとした顔になった。「よし! 買い物行ってくる! 大地くん誘ってくるね!」「うん、いってらっしゃい」「玲も後で来なよ〜? スパとか寄っちゃえば? 気分晴れるって!」 そう言い残し、麻美は軽い足取りでレストランを出て行った。 玲は一人、少しだけ取り残された気分で座り続けた。(……どうやって気分なんて晴れるんだろう) 窓の外、濡れた海が静かに揺れていた。     部屋に戻った玲は、ベ
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第七十六話

落ち着いた雰囲気のカフェに入り、テラス席に座った。  雨の匂いが混じった風が、優しく吹いている。「コーヒー、飲める?」「はい……砂糖入れれば」 玲が答えると、瑛斗は微笑んで注文した。 静かな時間が二人を包む。 コーヒーの香りが湯気となって昇り、その向こうで瑛斗がゆるく笑った。「……何か訳があって、バリ島に来たの?」 玲の指が、カップの縁で止まる。「無理に話さなくていいよ。ただ……理由があるんだろうなって思って」 玲は深く息を吸った。 すべてを話すわけにはいかない。  でも、何も言わないのも嘘になる。「……日本で、婚約していた人がいました」 瑛斗は黙って聞いている。「ちょっとしたことがきっかけで……すれ違って。話すタイミングも、会う機会も失って……」 コーヒーが少し冷たくなっていく。「理由なんて聞きたくなくて……。逃げるみたいに、ここへ来たんです」 それが嘘のない“当たり障りのない事実”だった。「そっか……つらかったね」 瑛斗の声は、驚くほど優しかった。  まるで、玲が何を話しても受け止めてくれるような――そんな響き。「でもね」 瑛斗はゆっくりと言葉を続けた。「俺も……似たようなところ、あるよ」「……え?」「両親……早くに亡くしたんだ。子どものころは、どこにも居場所がなくて。施設から逃げ出したんだ、何も言わずに」 玲は息を呑んだ。「そんなときさ……とある人が俺を拾ってくれて。育ててくれた。  家族みたいに、大事にしてくれた」 玲は瑛斗の話に胸が痛んだ。 瑛斗は続けた。「だから俺は……その人に恩返しがしたくて。自分の人生を全部その人に捧げるつもりで生きてきた」 玲は、なぜか胸が締め付けられた。「玲ちゃんとはちょっと違うけど……“大切な人”を失いたくない気持ちは、わかるよ。だから、無理に彼を忘れなくていいと思う」「…………」「逃げたって悪いことじゃない。息が苦しくなるときは、逃げていいんだよ。  それって、弱いんじゃなくて――生きてくためだから」 その言葉は、優しく、静かに玲の胸に落ちていった。(……優しいな) こんなふうに自分を責めずに話を聞いてもらえたのは、何年ぶりだろう。「玲ちゃんが今、ここで息してるなら、それでいいよ」 玲は、気づけば涙がこぼれそうになり、慌てて目をそらした。「……ご
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第七十七話 ―忍び寄る影と、二つの影勢力―

バリ島のゆるやかな午後。  つい先ほどまで激しく降っていた雨は、いつの間にか小雨へと変わり、空を覆っていた厚い雲は少しずつ流れ、隙間から淡い光を漏らし始めていた。湿った空気が地面からゆっくりと立ちのぼり、椰子の葉がしずかに揺れている。遠くの海は灰色がかった青をたたえ、波は重くゆっくりと砂浜を洗っていた。 玲と瑛斗がホテルへ戻ったその頃――  島の中心地から少し離れた古い商店の裏。  観光客の賑わいとは無縁の、錆びたトタン屋根と崩れかけた石壁がひしめく細い裏路地に、国籍不明の男たちが数人、ひっそりと集まっていた。 湿った空気の中、男たちの息づかいだけが妙に明瞭に聞こえる。  そのうちのひとり、黒いキャップを深くかぶった男がスマホの画面を確認し、小さくうなずいて報告した。「……成瀬 玲。確かにこのホテルに滞在している」 薄暗い路地にその声が沈み、周囲の空気がわずかに重くなる。  報告を受けた長身の男が、建物の影から一歩だけ進み出る。彼は黒のウィンドブレーカーに身を包み、顔の大半を黒いマスクで覆っていた。その無機質な姿は、まるで街の風景に溶け込む影のようだった。 彼は足元で吸いかけの煙草をねじり消す。灰が湿った土に沈み込み、かすかな音を立てた。 男のスマホから、冷たく鋭い声が流れ続けている。「探す対象は成瀬 玲じゃない。――桐島玲華だ」 その言葉は静かだった。  だが、聞く者の背筋を容赦なく刺す氷点下の刃のような冷たさを持っていた。 天城壮真。  西日本の巨大組織「天城会」を束ねる男。 暴力を好む黒澤のような粗暴さはない。  鷲尾のように血に飢えた衝動もない。 だが、彼は――迷うことなく“切り捨てる”。  必要なものを手に入れるためには、どんな手段を選ばない。  それが天城壮真という男だった。「計画は明日の夕方実行する。騒ぎは最小限にだ。桐島コンツェルンを動かすには……“娘一人”で十分だ」 静かに告げられたその指示に、男の部下たちは息を呑んだ。  彼らは天城の冷酷さをよく知っている。  その落ち着いた口調の裏に、どれほどの計算と無慈悲が潜んでいるかも――。 男たちの中のひとりが、ためらいながら尋ねる。「黒澤はどう動かします?」「黒澤はもう動けん。後を継いだ部下どもも混乱している。鷲尾も始末された。……桐島龍一の力だ
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第七十八話

一方そのころ、ホテルのロビーでは瑛斗と大地が別行動を取っていた。「……瑛斗さん。やっぱり、あの黒い影、間違いないっすよね」 大地とスマホで話しているが、彼は声を潜めて言う。「うん。あれは“こっち”の人間じゃない」 ダークグレーの壁に背を預けながら、瑛斗は周囲の動きを自然に視界へ入れていた。  表情はいつも通り柔らかいが、その瞳の奥は鋭い。「昨日からホテル周辺を回ってる連中、三グループ。一つは龍一さんの護衛部隊。もう一つは……桐島会長が俺たちに指示した監視。そして残りの一つが――」「関西の連中、ですね」「……ああ。黒澤の残党かと思ってたけど、どうも違う」 瑛斗は天井を見上げ、淡く笑った。「黒澤の動きにしては静かすぎる。あいつらはもっと喧しいからな」「じゃ、残る一つは……」「天城壮真の一派だ」 その名を出す時だけ、瑛斗の声はわずかに低くなった。「黒澤の上に立つ、本物の怪物だよ。黒澤と違って、冷静で頭が回る。  “玲華様”の価値を、正しく理解できる男だ」 大地は顔をしかめる。「……やばいっすね。あいつら、攫う気じゃ」「攫う気だよ」 瑛斗はきっぱり言い切る。「玲華様は、柊さんや龍一さん以上に狙われる価値がある。 桐島コンツェルンの会長の心臓みたいなものだからな」そして瑛斗は続ける。「龍一さんも柊さんも、絶対に守らなきゃならない。でも……“彼女”は特別だ」 そう言ったとき、瑛斗の声に感情の色はなかった。  あるのはただ、一人の部下としての忠誠の光。「大地、今日の夜から俺たちの役目は本格的に始まる。玲華様から絶対に目を離すな」「了解っす」 二人は別々の場所で自然に立ち上がり、エスカレーターを上がった。 彼らが消えた直後、ロビーの奥から別の影が現れ、ふっと通り過ぎていく。 天城側の黒づくめだ。そのころ、玲は部屋のベッドに横たわりながら、窓越しに雨を眺めていた。(瑛斗くんも……大地くんも……優しい人) そう思う一方で、不思議な違和感もあった。 ふたりの歩き方。  人ごみを抜ける時の自然な位置取り。  背中で風を受ける時の癖。(……普通の人じゃない) 優しいからこそ、気づける“違和感”。  だが、それが何なのか、言葉にはできない。(私……何かに守られてる?) そんな考えがよぎった瞬間、胸がざわつく。 ま
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第七十九話 “裏切りの帳簿”

 ――深夜。  関西の外れにある港湾倉庫街。  海風に混ざって、鉄と油の匂いが鼻をつく。 灯りの落ちた廃倉庫の奥で、利衣子は震えていた。  照明代わりの白い蛍光灯が、時折“チッ”と不穏な音を立てる。  その前には――龍一がいた。だが、その表情は氷のように落ち着き切っている。 黒澤の部下が、先ほどまでドアを破ろうと大きな音を立てていた。車で倉庫のドアを突き破ろうとしたのか、少し曲がって港の灯が漏れている。 「……で? 俺に話すという“面白いネタ”とは何だ?」 利衣子は唇を噛んだまま、視線を逸らした。  その怯えは、龍一が怖いのではない。  ――喋れば自分の命がないと分かっているからだ。しかし、龍一の氷のような瞳と目が合った。(こっちの方が怖い)利衣子は意を決して話し出した。「……黒澤と鷲尾が、天城壮真を出し抜こうとしてるの。“天城に黙って儲ける”ための計画……」「具体的に言え」 龍一の低い声に、利衣子は大きく息を吸い込む。「……新港(しんこう)ルートよ。本来は天城の直轄。運び屋も倉庫も、天城の監査を通さないと動かせないはずなのに……」 利衣子は震える指でバッグから数枚の書類を取り出した。  黒いホチキスで綴じられた“裏帳簿”だ。「黒澤は鷲尾と組んで、新港の夜間荷揚げを“別口”でやってた。天城に流すはずだった利権の金を横流しして、裏金として貯め込んでたの……。額は――二十億以上」 龍一の瞳が鋭く細まる。「“新港ルートの裏金”か……。天城にバレたら即死だな」「分かってる! 本当は関わるつもりなんてなかった……けど、私……蓮を誘惑するよう、黒澤に命じられたのよ」「理由は?」「“クリスタルローズの成瀬 玲”から蓮を引き離すため。――黒澤はね、成瀬 玲を攫えって、鷲尾に命じたの。“黎明の命綱を握れば、天城の上に立てる”って……」 闇の奥で、龍一の表情がわずかに変わる。「成瀬 玲が、黎明の命綱……?」「……そう。蓮を玲から引き離せば、玲に隙ができる。鷲尾は“成瀬 玲”を連れ出す役、私は蓮を縛る役よ」 そこまで言うと、利衣子は肩を震わせ、膝に顔を埋めた。「私……ただ従うしかなかった……逆らえば処分される……だから……!」 しばらく倉庫に重い沈黙が響いた。  龍一は、利衣子の涙を同情するでもなく、冷えた目で見下ろす
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第八十話 “逃亡する女と、揺れ始めた均衡”

その頃。  利衣子は港湾道路を必死に走っていた。 パンプスのかかとは折れ、髪は雨に濡れて頬に貼り付き、息は荒く、肺が割れそうだ。 後ろから聞こえる黒澤の部下の怒声。「いたぞ! バラけて探せ!」 「生かして帰すなと黒澤さんが言ってたぞ!」 利衣子は涙で視界をにじませながら走り続ける。「……いや……生きたい……っ!」 その叫びは、雨と風に飲まれて消えた。 一方、廃倉庫。 蓮は焦りを隠しきれず龍一に詰め寄った。「桐島さん! あのままじゃ利衣子は殺される……!」「それがお前に何か関係があるのか?」 龍一は無感情にそう言い、タバコに火をつけた。 蓮は何も言い返せず、拳をギュッと握ってこらえた。「あの女が知り得る情報は全て聞いた。これ以上、もう価値はない」 蓮は悔しげに拳を握る。  自分のことを利用した女。それでも死ぬ姿は見たくない。「……桐島社長。お願いだ。部下を出して、少なくとも“捕まる前に確保”くらい……」「断る」 即答だった。「あの女が選んだことだ。例え夜の世界の女でも、黒澤や鷲尾などと関わらなければ、命を狙われるようなことは起きないハズだ。」龍一はタバコの煙を吐き出しながら、蓮を横目で見ながら続けた。「あの女に情を掛けている暇があるなら、お前の本命を守れ」「……本命?」 龍一は、もう一度冷たい視線を向けた。「“成瀬 玲”。黒澤も鷲尾も狙ってる。利衣子の言葉が本当なら……“玲が黎明の命綱”だという話だ」 蓮の顔色が変わる。「玲が……狙われる……?」「今さらきづいたのか?お前が関西に来た時点で、彼女はもう“餌”になっている」 蓮の胸が一気に締め付けられる。「でも………玲は無事なんだろう?」 龍一は火が付いたままのタバコを投げ捨て「柊 蓮。ではまた明日。」そう言って廃倉庫を出て行った。   その頃―― 海沿いの倉庫街の端。 利衣子は、倒れ込むように地面に手をついた。「はぁ、はぁ……も、もう走れない……」 それでも立ち上がろうとした瞬間――「見つけたぞ」 暗闇から現れた黒澤の部下が、ニヤリと笑った。「もう逃げらんねぇよ、利衣子さんよぉ」「いやっ……やめ……っ!」 男が手を伸ばす――その手が利衣子の腕に届く、その直前。 ――パンッ! 銃声が闇を裂いた。「うぐっ……!」 男が倒れ込み
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