麻美が顔を上げた瞬間―― 二人の若い日本人男性が、こちらへ歩いてくるところだった。 どちらも日焼けしたスポーツ系の雰囲気。 一人はショートカットで精悍な顔立ち。 もう一人は柔らかい髪で、笑みが少し軽い。「こんにちはー! いやぁ、まさかこんなところで日本人女性に会えるとは思わなかったよ」「よかったら一緒に遊ばない?」 玲の目が細くなる。(……めんどくさいの来たな) 男たちは明るいが、視線が少ししつこい。 南国のビーチでよくある“ナンパ”ではあるが。 ショートカットの男が名乗った。「俺は相沢瑛斗、27歳。友達は桐原大地、26歳! 二人で旅行しててさ」(……え?) 玲は、一瞬だけ心臓が跳ねた。――瑛斗。 ――桐原。 いずれも日本ではよくある名前だが…… “瑛斗”という名前は、玲にとって因縁深い人物を思い出させるものだった。(……偶然、よね) 彼らは全く違う雰囲気の旅行者だ。 玲は気を取り直して言った。「すみません。私たち、特に遊ぶ予定は――」 スッと断ろうとしたその瞬間。「ちょっと待って玲!」 麻美が突然、玲の腕を掴んだ。「え?」 麻美は昨夜の恐怖がまだ抜けておらず、周囲をキョロキョロ見回していた。「ねぇ……いいんじゃない? 一緒に行動してもらったら、心強いし……」 麻美は相沢と桐原に向けて作り笑いを浮かべた。「昨日、ちょっと嫌なことがあったから……男の人がそばにいてくれると安心で……」 相沢の表情がやわらぐ。「そっか。何かあったんだ? 大丈夫、俺ら強いから、守るよ」 桐原も調子よく頷く。「そうそう。せっかく来たんだし、一緒に楽しもうよ!」 玲は、眉をひそめた。(……麻美の気持ちは分かる。けど……) 昨夜の件は、生半可な“守る”でどうにかなる話ではない。 一般人を巻き込むことも、本来なら避けたい。 しかし麻美が小さく囁いた。「玲……お願い。怖いの……」 玲は迷い――深く息を吐いた。「……じゃあ、少しだけなら」「マジで!? やった!」 二人の男は満面の笑みを浮かべた。 その瞬間、玲の胸に、小さなざわめきが生まれた。(これが蓮だったら、大歓迎なのに……)
Terakhir Diperbarui : 2025-12-12 Baca selengkapnya