仁は顔の水滴を拭うと、濡れた床に座り込んだままの岳を複雑な眼差しで見つめた。数秒の沈黙の後、何か重い決断を下したかのように、彼はゆっくりと低い声で口を開いた。「霧島、今日ここに来たのは、お前を探すためだけじゃない。もう一つ……伝えておきたいことがあるんだ」仁は言葉を切ると、上着の内ポケットから一通の封筒を取り出し、目の前に差し出した。言いようのない複雑な感情を込めて、「自分で見てみろ」と言った。岳の指は冷たさとアルコールのせいで微かに震えていたが、ためらいながらその封筒を受け取った。ずっしりと重みを感じた。封筒を破り、中から一束の写真を取り出す。写真はカラーだったが、画質はそれほど良くなく、独特の年代物といった趣があった。彼は一枚一枚、めくって確かめていった。写真の主役は、どれも例外なく同じ人物――明乃だった。十六歳の頃の明乃。青と白の学生服を着て、無造作にポニーテールを結んでいたり、黒髪をそのまま肩に流している。どの写真の彼女も、その年齢特有のあどけなさと幼さを残しながら、驚くほど美しかった。輝き始めたばかりの真珠のように清らかで、一点の曇りもなかった。岳は胸の奥を何かに強く突き上げられたように心臓が跳ね、胸の奥がつんと痛むような切なさと痛みが絡み合って、じわじわと広がっていった。これは自分が関わることのなかった、明乃の過去だ。自分が永遠に埋めることのできない空白。見慣れた、それでいて見知らぬ彼女の顔を貪るように見つめながら、指先でその輪郭を無意識になぞった。そうすれば、過ぎ去った時間に触れられるかのように。だが、見ているうちに、彼の視線がぴたりと止まった。瞳孔が急激に収縮した!彼の視線は、写真の背景に釘付けになった。これらの写真は、それぞれ違う時間、違う場所で撮られたものだ。図書館、並木道、グラウンド、校舎の前……だが、何気ない写真の背景には、いつも、ぼやけてはいるが無視できない影が写り込んでいた。その影は遠かったり近かったり、横顔だったり後ろ姿だったりした。時には人混みの中に紛れ込んでいた。それでも岳には、一目で分かった。湊だ!今より数歳若い、湊だ。シンプルな白シャツや濃い色の上着を着て、背筋を伸ばして立っている。その眉間に宿る冷たさは、今と変わらずはっ
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