その姿を想像し、遥はどうしても笑いが堪えきれなかった。スマホを持ちながらフロアを歩き回り、遥は「àl'aube」のサブブランドを立ち上げる構想について湊に話して聞かせた。湊はそれを聞いて、軽く頷いた。「『àl'aube』の現在の運営状況は非常に健全だ。他の多くのブランドがお前たちのやり方を真似ようとしているくらいだからな。売上を見ても、新しいブランドを展開するのは確かにいいタイミングだ。数日後にゴールドジュエリーの展示会があるから、真理を行かせるといい。入場チケットは彼女のメールアドレスに送っておくよ」「どうして真理ちゃんなの?私じゃダメ?」湊は画面越しの遥をじっと見つめた。「来週の金曜日は、お前は行けないからだ」「来週の金曜日?何かあったっけ?」遥はキョトンとした顔で、画面越しの湊と見つめ合った。しばらくの間、二人とも何も言葉を発しなかった。少しして、遥のポカンとした顔を見て、湊はついに降参したようにこめかみを揉んだ。「どうしても行きたいなら、行けばいいさ」通話が切れた後、紗月は遥の目尻に笑みが浮かんでいるのを見て、肘でツンツンとつついた。「来週の金曜日、何かあるんですか?九条社長、ちょっと怒ってるみたいでしたけど」「別に何でもないわ。来週の金曜日は彼の誕生日なのよ。私が忘れてると思ったのね。それに、あの日はウェディングドレスの試着に行く約束をしてるの」結婚式の会場と日取りは、すでに去年のうちに決めてあった。準備のほとんどは湊に任せきりだったが、ウェディングフォトとドレス選びだけは、遥自身が決めなければならない。ドレスの試着日を決めた時、遥はその日が湊の誕生日であることに気づいていたのだ。彼への誕生日プレゼントのつもりだった。先ほど湊に聞かれた時、遥はわざと「知らない」と答えてみたのだ。狙い通り、彼の顔に浮かんだ深いため息と呆れたような表情を見ることができて、大満足だった。湊の誕生日を、彼女が忘れるはずがない。たとえ別れて離れ離れになっていたあの数年間でさえ、彼女は一度も彼の誕生日を忘れたことはなかった。ただ無意識のうちに記憶の奥底に押し込め、彼に関することはすべて考えないようにしていただけだ。忘れてしまおうと思っても、心に刻まれた記憶は決して消え去ることはない
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