しかし、いざ注文になると、真理は誠がいかに融通の利かない男であるかを改めて思い知らされた。首の傷がまだ治っていないからと、傷に障るような食べ物は一切ダメだと言い張り、あろうことか彼女には味のついていない蒸し野菜しか頼ませなかったのだ。怪我人だからと、居酒屋に来てまで蒸し野菜を食べさせるなんて、いったいどういう神経をしているの。幸い、後から運ばれてきたいくつかのおかずを真理もつまむことができ、その味も悪くなかった。真理が食べ終えるのを見届けると、誠は席を立って会計を済ませた。彼が真理を家まで送り届ける。マンションのエントランスに着くと、そこには真由美が結衣を連れて、敷地内のキッズスペースで遊んでいる姿があった。車から降りてくる真理を見つけるなり、結衣は駆け寄ってきて彼女の足に抱きついた。「真理おばちゃん、おかえりー!」結衣は随分と背が伸びていた。彼女がひょいと首を傾げると、車の中にいる誠の姿が目に入った。「あの人、真理おばちゃんの旦那さん?」「……違うわよ」「でもパパが、助手席に乗っていいのはママだけって言ってたもん。おばちゃんがあのイケメンのおじちゃんの助手席に乗ってるなら、おばちゃんの旦那さんなんでしょ?」真理の顔が引きつった。心の中で、湊が家で一体どんな教育を施しているのかと問い詰めたくなった。結衣が後部座席にしか座れないのは、チャイルドシートを使わなければならないなのだ。真理は腰をかがめ、結衣を抱き上げようとした。だが、今の結衣はもう体重が十五キロ近くあり、身長も一メートル近くになっている。真理が抱え上げるのはかなりキツかった。結衣は真理の肩をポンポンと叩いた。「真理おばちゃん、もういいよ。無理して抱っこして、後で腰を痛めて泣いちゃったら可哀想だもん」車に乗っていた誠が、低く抑えきれない笑い声が漏れた。真理は顔を真っ赤にして、恥ずかしさのあまり穴があったら入りたくなった。こちらへ歩いてきた真由美を見て、誠は車を降り、丁寧に挨拶をした。真由美は気さくに言った。「うちへ上がってお茶でも飲んでいかない?」「夜分遅くに申し訳ありませんので、またの機会に改めてご挨拶に伺います」今は夜の九時を回り、間もなく十時になってしまう。この時間に他人の家に上がるのは
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