บททั้งหมดของ 推しに告白(嘘)されまして。: บทที่ 81 - บทที่ 90

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81.破壊神、柚子。

マイペースな兄妹に頭を悩まされながらも、バレンタインチョコ作りは始まった。今日は生チョコタルトを作るらしい。「これなら難しくないし、お義姉様も作れるはずよ。まずは材料を計りましょう」千夏ちゃんは笑顔でそれだけ言うと、手際よく真ん中にあるテーブルに必要な材料を置き始めた。バターに、砂糖に、多分小麦粉に、謎の粉に、小瓶に入った正体不明の液体。電子はかりに、ボウル、ゴムベラ、泡立て器。千夏ちゃんがどんどん出す必要なものを私は慌てて、受け取り、一緒に準備を進めていく。いろいろなものが並べられたところで、千夏ちゃんはやっとその動きを止めた。「必要なものはざっとこんなものかしら。次は計量ね。お義姉様、計量をお願いできるかしら?」「う、うん」千夏ちゃんに頼まれて、私は神妙な顔で頷く。そんな私に千夏ちゃんは「ではこれを」と、タブレットを渡してきた。「それにはレシピを入れているわ。材料を見て、計量をお願い」「わ、わかった」ここでメモ用紙ではなく、タブレットごと私に渡すとは、金持ちはスケールが違うな…と、感心しながらも、早速タブレットを開く。すると液晶画面いっぱいに、生チョコタルトの写真と、レシピが映し出された。私に与えられた仕事は材料を計量すること。その為に液晶に触れ、軽くスライドさせて、材料欄を見る。まずはバターを60g…。電子はかりにボウルを置き、きちんと数字をゼロにしたところで、私は慎重にバターを乗せた。計量は料理の中でも特に大事な作業だ。ここを間違えてしまえば、全てが台無しになってしまう。寸分の狂いもないように、作業を続け、できたものを千夏ちゃんが混ぜる。それを繰り返すこと、数分。千夏ちゃんからついに私では絶対にできない指示がきた。「お義姉様、次は卵を割って、卵黄と卵白に分けてください」「え」淡々と出された千夏ちゃんからの指示に、一瞬固まってしまう。だが、固まっていては何も始まらないので、私は非常に申し訳なさそうに口を開いた。「ご、ごめん、千夏ちゃん。私、それはできない…というか、めちゃくちゃになる未来しか見えないというか…」「え?いくら料理が苦手なお姉様でもそのくらいはできるでしょう?大丈夫よ、少しの失敗ならわたくし気にしませんことよ?」「す、少しかなぁ…」「失敗は成功の元!よ!」「う、うん…」千夏ちゃん
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82.雅な遊戯。

千夏ちゃんの手によって手際よく混ぜられた生地。それをお情けで私が冷蔵庫へと入れたところで、生チョコタルト作りは、一旦中断となった。ここから約1時間ほど冷蔵庫で生地を寝かせるらしい。この約1時間、私たちは特に何もすることがない。そこで何か暇を潰そうと千夏ちゃんから提案されたのが、軽く楽器を触る、だった。何と雅な暇つぶしなのだろうか。そう思いながらも、豪邸内を移動し、やってきたのは、シックでおしゃれな雰囲気の楽器専用の部屋だった。部屋の中心にはL字の大きなソファがあり、その前にはテーブルがある。壁際には、学校で見るものよりも大きなピアノがあり、大きな棚には飾るように、ヴァイオリンやフルート、見たことのない楽器などが飾られていた。目に映るもの全てが洗練された美しさのある高級品で、圧倒されてしまう。お金持ち、すごい。ぱちぱちと何度もまばたきをしながら立ち尽くしていると、私の視界にヴァイオリンを持つ千夏ちゃんが入った。ここに来るまでに千夏ちゃんから聞いた話だが、千夏ちゃんは幼少期から現在まで、プロの方も指導している先生からヴァイオリンを習っているらしい。しかも千夏ちゃんはさまざまな大会で賞を受賞している実力者で、海外でもその腕を披露する機会があるのだとか。そんなすごい千夏ちゃんは慣れた手つきで、ヴァイオリンの弦をゆっくりと弾き始めた。千夏ちゃんの複雑な動きと共に、凛とした美しい音色が部屋中に広がる。「…!」聞こえてきた美しい旋律に私は感動し、一度目を見開くと、聴き入るようにその瞳を閉じた。音楽の良し悪しは残念ながら私の耳ではよくわからないが、それでも千夏ちゃんが奏でる音楽が美しいのだということは、はっきりとわかる。心地良さに身を委ね、千夏ちゃんの音楽に耳を傾けていると、ふと、ここにいる千晴の姿が思い浮かんだ。千夏ちゃんがあれだけヴァイオリンを上手に弾けるのなら、千晴ももしかしたら何かしらの楽器を上手く扱えるのでは?同じ華守のご兄妹なのだから。考え出すと気になり、千晴の方へと視線を向けると、千晴は大きなピアノに触れ、ポーン、と音を鳴らしていた。「千晴、ピアノできるの?」千晴に近づき、そう問いかけてみる。すると、千晴は無表情のまま淡々と頷いた。「うん、まぁ。6歳くらいまでは習ってたから」「へぇ」千晴の返答に私の中の興味がど
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83.仕上げ。

優雅で楽しい、そしてほんの少し恥ずかしい、そんなひと時を過ごした後。時間になったので、私たちは厨房へと戻ってきていた。いよいよ、生チョコタルト作り再開だ。次の工程は寝かせていた生地をタルトの形にする、というものだった。ちなみに千晴はまたあの座り心地の良さそうな椅子に座って、こちらをどこか楽しげに見つめていた。まるでどこぞの王族のようだ。「この生地を伸ばすのよ、慎重にね」「う、うん」千夏ちゃんに見守れながらも、木の板…いや、千夏ちゃん曰く、ペストリーボードと呼ばれるものの上に置かれた生地を、めん棒でゆっくりと円になるように伸ばしていく。最初は薄くなりすぎることを恐れて、おそるおそるめん棒を転がしていたが、千夏ちゃんに「少しずつ力を入れて。少しずつよ」と言われたので、指示通りに力をそっと加えていった。「…っ」そして少し歪だが、直径15センチほどの円がようやく一つ完成し、私はやっと息を吐いた。緊張で今この時まで息をすることを忘れていた。「あとはこの生地を型に入れて、はみ出ている生地をこのパレットで削ぎ落とすの」いつの間にか千夏ちゃんも作っていたらしい円の生地を使って、千夏ちゃんが手際よく次の作業内容を教えてくれる。私はそれを一瞬たりとも見逃さないように見て、忘れぬうちに自分の生地を睨んだ。「お義姉様、ポイントは優しく、よ」「うん…!」千夏ちゃんの真剣な声に、私は同じく真剣な声で返す。それから震える指先に力を込めて、何とか続きの工程に入った。こうして私たちは、それぞれ三つずつ、タルト生地を作った。そして形になったタルト生地はまた冷蔵庫で寝かされた。その後、オーブンで焼き、次にその焼けたタルトに、チョコと生クリームを混ぜたものを流し入れた。この工程を経て、やっと、生チョコタルトの土台が完成した。作業の途中、板チョコを刻む段階で、板チョコを木っ端微塵にしてしまうという場面もあったが、まな板の上でのことだったので、一応は大丈夫だった。千夏ちゃんに絶句され、千晴に大爆笑されたが。こうして完成した生チョコタルトの土台。次はいよいよ最後の仕上げであるトッピングだ。「あとはこちらにある苺やブルーベリーを使って、美しくトッピングするだけよ」テーブルの上にある苺やベリー系のフルーツを千夏ちゃんが丁寧に両手で指す。ボウルに入れられて
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84.最初のチョコ。

やっとの思いで生チョコタルトを完成させ、いよいよラッピングの工程へと入った。最初の生チョコタルトこそ、元気いっぱい欲張りタルトになったが、残り二つは千夏ちゃんのアドバイスのおかげで、少しはマシになった。千夏ちゃん曰く、二つ目のタルトは、〝恐れすぎ、貧相タルト〟で、三つ目が、〝バランス最悪、アンバランスタルト〟なのだが。そんな辛辣な千夏ちゃんだが、最後には「でも頑張りは認めるわ。さすがお義姉様、苦手なことにも、逃げず立ち向かう姿は圧巻だったわ」と、どこか上から目線な笑顔で拍手を送ってくれた。大きなテーブルの上には、もう生チョコ作りに使われた調理器具たちはない。それらは先ほど片付け、今は小さな箱やリボン、紙など、ラッピングに必要なものが並べられていた。そこから私は小さな箱を手に取り、生チョコタルトを入れながらも、ふと思ったことを口にした。「そういえば、千夏ちゃんは今日作ったやつ誰にあげるの?」「あら、そういえば言ってなかったわね。お父様とお兄様とそれから婚約者によ」「へぇ…。お父様とお兄様と婚約者にね…。ん?」千夏ちゃんの淡々とした答えに、一瞬、私は固まる。お父様にあげる、わかる。お兄様にあげる、わかる。婚約者にあげる…?婚約者?「え、え!?千夏ちゃん中学生だよね!?こ、婚約者がい、いるの!?え!?」「ええ。もちろん。華守の娘だもの」何でもないことのように答えた千夏ちゃんに、私は大きく目を見開き、思わず千夏ちゃんを凝視した。だが、そんな私とは違い、千夏ちゃんは平然としており、手際よく、箱にリボンを巻き付けていく。その姿に私は思った。婚約者がいるということは、千夏ちゃんにとっては、当たり前で、普通なのだ、と。お金持ちの世界、すごすぎる。庶民には全く理解できない世界だ。未知の世界に衝撃で固まっていると、そんな私に気がついた千夏ちゃんは、作業を続けながら言った。「華守と繋がりたいのよ、みんなね。つい最近まで婚約者がいなかったお兄様の方が異例なのよ?」「…は、はぁ」千夏ちゃんの説明に、つい間の抜けた返事をしてしまう。千夏ちゃんのお兄様、つまり千晴の婚約者は千夏ちゃんにとっては私なのだが、もうそこにいちいちツッコミを入れるのはやめた。「それで?アナタは一体誰にあげるのかしら?沢村悠里と、残りのものは誰に?」全ての箱のラッ
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85.数ある一つ。

千夏ちゃんとバレンタインチョコ作りをした、次の日。バレンタイン当日の放課後。今日もお互いの予定が合ったので、寒空の下、下駄箱前で悠里くんのことを待っていると、とんでもなく大きな袋を二つも下げた悠里くんが現れた。その袋からは溢れんばかりのチョコらしきものが見えている。チョコを大量に抱える悠里くんに、私は思った。私の推し、すごい。さすがバスケ部の王子様だ。人気者すぎる。「す、すごいね、悠里くん…!さすがすぎる…!」みんなから愛されている推しに、私は何だか誇らしい気持ちになった。まるで自分のことのように嬉しいと思える。私以外にも、こんなにもたくさんの人に愛される悠里くんは、やはり素晴らしい人間なのだ。ふふ、と悠里くんを見て、得意げに笑っていると、悠里くんはそんな私に苦笑いを浮かべた。「そうなっちゃうか…」どこか物欲しそうに私を見る悠里くんに、私は首を傾げる。何かを求められていることは何となくわかるのだが、それが一体なんなのかは全くわからない。推しの願いなら何でも叶えたいのに…。悠里くんの視線の示す意味がどうしてもわからず、うんうんと首を捻り続けていると、悠里くんは言いづらそうに口を開いた。「俺、柚子からのチョコ、楽しみにしてたんだけど…」じっとこちらを見つめる悠里くんは、何といじらしくて、可愛いのだろうか。全く意識していないのだろうが、私の様子を伺った結果、自然と上目遣いになっている悠里くんの視線は甘く、何とも危険なものを孕んでいた。イケメンで、かっこよくて、可愛いなんて、私の推しは反則級の要素を兼ね備えすぎている。健康に良すぎる。長生きしちゃう。100歳を軽くオーバーしちゃう。「…んん!ごめん。ここにはないんだよね、チョコ」表ではいつも通りを装っていたが、内心はお祭り騒ぎだった自分を一度咳払いで落ち着かせ、申し訳なさそうに悠里くんを見る。すると悠里くんは「…え」と短く呟いた。ショックを受けたような表情で。「…俺がいっぱいチョコ貰ってるから、柚子のはいらないって思っちゃったの?それで誰かにあげちゃった?」辛そうに眉を下げ、悠里くんが私に問い詰める。どこか仄暗い気もする悠里くんの瞳に、私は慌てて首を横に振った。「違う違う!全然違うよ!」明らかに傷ついている様子の悠里くんに、胸が痛くなる。これは言葉足らずな私が全
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86.特別な一つ。

「…ふぇ!?」突然奪われた視界に、変な声を出してしまう。しかし反射的に反撃しようとしなかったのは、その何者かが、私の推しである悠里くんだとわかったからだった。鼻に届いた柔らかくも優しい香りが、悠里くんだと教えてくれた。後ろから何故か抱きしめるように、悠里くんが私の目を覆い隠している。わけのわからぬご褒美すぎる状況に、私はどうしたらいいのかわからず、固まった。「…そんなかわいい顔、俺以外に見せないで」悠里くんがそう私の耳元で囁く。懇願するような切なげな声に、私の心臓は小さく跳ねた。か、かわいい…?私の今の顔が…?怒りで震え上がっている般若顔が…?バクバクとうるさい心臓をなんとか抑えて、平然を装う。すると、私の耳にどこか暗く、けれども甘い声が届いた。「柚子の彼氏は誰?」「え、あ、ゆ、悠里くんです…」悠里くんからの予想外な質問に、あたふたしながらも、私は何とか答える。そんな私に悠里くんは続けた。「柚子が一番好きなのは?」「ゆ、悠里くんです」「…うん、そうだよね」ぎこちなく頷いた私の耳に、悠里くんの柔らかな声が入る。それからゆっくりと私の目を覆っていた悠里くんの手が離された。視界が戻ったと同時に、今の悠里くんの様子が気になって、後ろを振り向く。「…?」そして、視界に入った悠里くんに私は首を傾げた。こちらをまっすぐと見つめる悠里くんが、どこか仄暗い瞳で、優しく笑っていたからだ。その表情が何故かとても辛そうで、胸がざわついた。どうしたんだろう…?推しの原因不明の異変に、不安が広がっていく。どうしたの、と今まさに聞こうとした、その時。悠里くんはいつもの優しい笑顔を私に浮かべた。まるで先ほどの今にも消えてしまいそうな笑顔が嘘かのように。「それで華守が言ってたこと、詳しく聞いてもいいかな。なんで華守の家でチョコ作ったの?なんで華守にもチョコをあげたの?それも俺よりも先に」あれ?怒っていらっしゃる?いつも通りの笑顔に見えた悠里くんから、何故か見えない圧を感じて、目をぱちくりさせる。き、気のせいかな…。悠里くんが怒る要素なんてないし…。よくわからない怒りを感じながらも、私はあくまで冷静に説明を始めた。「…悠里くん、バレンタインは私の手作りがいいって言ってたでしょ?でも、私の手作りなんて悠里くんにあげたら、最悪
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87.アナタの声で夢をみる。

その日の夜。私はベッドの上でゴロゴロしながら、口角を上げていた。理由はもちろん、悠里くんにチョコを直接渡せたからだ。千晴と別れた後、悠里くんと駅までの道中、私たちはずっと揉めていた。私がチョコを悠里くんの家に渡しに行くか、悠里くんが私の家にチョコを受け取りに行くか、で。本当にお互いに一歩も引かず、話は平行線だったのだが、最後の最後に、悠里くんが折れてくれた。そして私は念願叶い、この手で直接悠里くんにチョコを渡せたのだ。…もう食べてくれたかな、チョコ。天井を見上げながらもそう思う。私からチョコを受け取った悠里くんは、本当に嬉しそうに笑っていた。サラサラな黒髪から覗く、悠里くんの瞳は、私のチョコを大事そうに見つめていて、とてもとても甘かった。玄関と月の灯りという小さな光源だけでも、キラキラと輝いていた眩しい推しの姿が、まぶたに焼き付いて離れない。ああ、あんなにも眩しい存在が私の彼氏で、しかも私を好きだと言ってくれているなんて。「…〜っ」そう思うと堪らなくて、まぶたを強く閉じ、首をブンブンと勢いよく横へと振った。幸せ者すぎる。千夏ちゃんと作ったチョコだ。お父さんも千晴も美味しいと言っていたし、きっと悠里くんも美味しく食べてくれているだろう。万が一もないだろう。「ふふ、へへへ」悠里くんのことを考えて、変な笑い声を出していると、ピコンッと、スマホから通知音が鳴った。なんだろう?まさか悠里くんから何か連絡が?チョコ美味しかったよ、とかさ。…なんちゃって。幸せな気持ちのまま、なんとなく、隣に置いていたスマホを手に取る。するとスマホの画面には、連絡アプリからの通知が映し出されていた。しかも悠里くんからのだ。あ、あ、あ、当たっちゃったー!!!悠里くんからのだー!思わぬ展開に嬉しくて、私は早速通知をタップした。『すごく美味しかった。お店出せるレベル』まず最初に目に入ったのは、そう書かれたメッセージだ。それからその下には、喜んでいる様子の可愛らしいメルヘン猫のスタンプがあり、さらにその下には写真まであった。悠里くんの部屋らしい机の上に置かれている、私が確かに作った生チョコタルト。悠里くんから送られてきたメッセージと写真に、私は感動して、天を仰いだ。あ、ありがとう!世界!全てに感謝!千夏ちゃん、千晴、ありがとう!私が作
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88.不名誉な疑惑。

バレンタインからあっという間に時は流れ、三学期の終わりが見えてきた今日この頃。放課後の風紀委員室で他の風紀委員たちと仕事をしていると、ガチャリと扉が開かれた。「邪魔するぞ」そう言って風紀委員室に現れたのは、生徒会長だ。2年の進学科でクラスメイトでもある生徒会長、田中は、ファイルを抱えて、まっすぐとこちらまでやって来た。綺麗にセットされた黒髪に、ふちのない眼鏡。きちんと着こなされた制服は、まさに生徒に見せたい見本そのものだ。真面目が服を着ているような彼と私は馬が合い、生徒会長と風紀委員長という立場上、よく話をする仲でもあった。「どうしたの、田中。何か不備でもあった?」いつもの調子で書類から視線を上げ、田中を見る。すると田中はそんな私に何故かとても難しい顔をした。一体、何が田中にあんな顔をさせているのか。不思議に思いながらも田中の言葉を待っていると、田中は私の目の前で、ファイルの中にあった紙をバサァッと、何十枚も広げた。「これを見ろ。目安箱に入れられていたものだ」田中が眼鏡の奥で、私に鋭い視線を向ける。その視線の意味が全くわからず、私は首を傾げたが、とりあえず目の前に広げられた紙を手に取ってみた。目安箱とは、名の通りのもので、生徒たちの要望や悩みなどを匿名で聞くものだ。ちょっとした不憫なこと、あればありがたいこと、校則の改善案など、入れられる意見はさまざまなのだが、私が手に取った紙にはそんなことは書かれていなかった。『鉄子は誰と付き合っているの?千晴くん?悠里くん?』「…ん?」紙に書かれていたまさかの内容に見間違いか、と自分の目を一瞬疑う。…なんだ、これ?ふざけているようにしか見えない内容の紙を一度机に置き、他のものにも目を向けてみる。『鉄子先輩の彼氏は悠里先輩ですよね?』『千晴くんと鉄子はこっそり付き合っている』『鉄子は悠里くんと千晴くん、2人と付き合っているで合ってますか?』だが、どの紙を見ても、ふざけた内容のものしかなかった。目安箱にこれが入っていたというのか。全くうちの生徒たちは目安箱をなんだと思っているんだ。広げられた紙たちの内容に呆れながらも「何、これ」と苦笑する。すると田中はそんな私に淡々と告げた。「ここ1ヶ月の間に目安箱に入れられたものだ。お前の振る舞いが招いた結果だぞ」「…はぁ」まるで
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89.雨と体操服。

朝、私は駅で1人絶望していた。先ほどまで晴れていた空が、どんよりとした雲に覆われていたからだ。しかもその雲からザァザァと勢いよく雨まで降っていた。最悪だ。傘持って来てない。天気予報も見ず、のうのうとここまで来た先ほどまでの自分を恨む。「…」空を睨んでみたはいいものの、もちろんそれだけで天気が変わるわけもなく。仕方なくスマホを見れば、今日は一日中雨予報で、この雨が止むことはないようだった。…仕方ない。心の中でそう呟き、私は駅から学校へと駆け出した。*****「はぁ、はぁ」やっとの思いで学校までたどり着いた私は、下駄箱前で両膝を押さえていた。雨の中ここまで駆け抜けてきた為、全身びしょ濡れだ。さ、寒い…。三月とはいえ、まだまだ気温は低いので、普通に寒い。私は寒さに震えながらも、とりあえずスカートの端を掴み、水を絞った。続けてブレザーを脱ぎ、同じように絞る。あとはある程度絞り終えた制服をハンカチで拭きながらも、私は考えた。とりあえず、この後保健室へ行って、体操服を借りなければ。このままでは風邪を引く。「…柚子?」そんな私に後ろからとんでもなく素敵なイケボが声をかけてきた。このイケボは間違いなく、私の推し、悠里くんの声だ。  「あ、悠里くん。おはよう」声の方へと振り向けば、そこにはやはり練習着姿の悠里くんがいた。どうやら朝練前のようだ。私と目の合った悠里くんはぎょっと目を見開いた。ん?何故?「ゆ、柚子…っ!?どうしたの、それ!?」首を傾げる私に、慌てて悠里くんが駆け寄ってくる。そしてそのまま手に持っていたタオルを私の頭にかけ、わしゃわしゃと髪を拭き始めた。あー。私がびしょ濡れだったから悠里くんはあんな顔をしたのか。…じゃなくて!「や、やめて!悠里くん!悠里くんの貴重なタオルが私のせいで使い物にならなくなっちゃう!」柔らかくいい匂いに包まれながらも、私は必死で抵抗する。悠里くんのタオルは悠里くんの尊い汗を拭くものであって、決して私を拭くものではない!断じて違う!首を一生懸命横に振り、悠里くんの腕に手を伸ばすが、それでも悠里くんはその手を止めなかった。「やめないよ。このままだと柚子風邪引いちゃうじゃん」タオルで両頬を包まれて、悠里くんが真剣な表情で私の瞳を覗く。そのあまりにもまっすぐな視線に、
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90.もう少しだけ。

 その日の三限目は日本史だった。私は椅子に姿勢よく座り、先生の話を真剣に聞きながらも、ノートをとっていた。もちろん今の私の格好は、悠里くんの体操服だ。胸元にある〝沢村〟と刺繍された二文字が、あまりにも眩しすぎる。恥ずかしさ、尊さ、眩しさ、喜び。いろいろな感情を抱えて、それでも私は平然と学校生活を送っていた。「…で、ここはこうなったわけだ。じゃあ、質問するぞー、お前らー」黒板の前に立ち、気だるげに喋り続けていた、30代前半くらいの男性教師、秋田先生がチョークを持ったまま、クラス中に視線を向ける。その視線に生徒たちは、背筋を伸ばした。うちのクラスは進学科だ。誰が当てられても、まあ、答えられるだろう。当然、私も、だ。秋田先生に質問されても、すぐに答えられるように気を引き締める。すると、たまたま秋田先生と目が合った。「じゃあ、鉄崎…」そこまで言って、秋田先生の視線がどこかへ移動する。「…あ?沢村?お前、いつ沢村になったんだよ?結婚したんか?アイツと」そして、私の胸元を見て、おかしそうに笑った。「ち、違います!借りているだけです!」秋田先生からのまさかの指摘に、私はガターンッ!と勢いよく席から立ち、全力で否定する。そんな私に秋田先生は、「じゃあ、未来の沢村に質問するぞー」と、ゆるく私に質問を始めたのだった。 *****「…はぁ」三限目での出来事を思い出し、深いため息をつく。四限目は移動教室なので、私は1人で廊下内を移動していた。雪乃は何やら用事があるらしく、別行動中だ。疲れからトボトボと歩きたい気持ちでいっぱいなのだが、そんな歩き方では鬼の風紀委員長としての威厳は守れないので、私は意識して背筋を伸ばし、歩いていた。心はヘトヘトだが、パッと見はいつもの強そうな鬼の風紀委員長、鉄子…なはずだ。確かな足取りで廊下内を進んでいると、今日ずっと聞こえてくる生徒たちの話題が耳に入ってきた。「て、鉄子が悠里の体操服着てる…っ。さすが、正妻…っ」小さく、だが、興奮気味にそう言ったのは、男子生徒だろうか。彼に続く形で周りの生徒たちは、好き勝手にいろいろなことを言い始めた。一応、私には聞こえないように小さな声で話す、という配慮をして。…全部聞こえているので、あまりその意味は成してはいないが。「千晴くんがいるのに鉄子先輩酷い
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