side千晴ああ、好きだな。俺の腕の中で、必死に腕を回して俺を抱きしめる小さな頭に、愛しさが溢れ止まらない。好き、好き、好き。たくさんの愛おしい想いが胸いっぱいに広がり、ゆっくりと溶けていく。やっぱり、先輩は正義の人だ。まっすぐで愛情深くて、誰にでも平等で、優しい。そんな先輩だからこそ、自然と惹かれた。そして気がつけば、どうしようもなく好きになっていた。小さくて柔らかい先輩の体を、ゆっくり、壊さないように、けれど、もうここから逃げられないように、抱きしめる。先輩と俺は最初は住む世界でさえも違った。それなのに、何故、俺は運命的に彼女と出会えたのか。それは、遡ること約一年前のこと。*****中学3年の秋。数ヶ月前は見たこともなかった、ギラギラと俗っぽく輝く色とりどりのネオンを横目に、俺は何となく、道の端に座っていた。ここ最近の夜は、昼間ほどの熱をもう持たない。1人佇む俺の頬に、ほんの少し肌寒い風が当たる。けれど、家に帰りたいとは微塵も思わなかった。自分の人生に不満などなかったが、何もかも思い通りになることが、逆につまらなくて、周りを困らせてみようと思った。学校にはろくに行かず、家にもなかなか帰らず、こうやって、いろいろな街を彷徨ってみた。最初は、初めてのことばかりで、どれも新鮮で楽しかった。自力で電車に乗って街に出るのは、車で移動するよりも面倒だが、自分の力で移動しているようで面白かったし、見たことのない景色ばかりで、まるで別世界にでも迷い込んでいるようで、悪くはなかった。統一感がなく、ごちゃごちゃと、あちこちで〝ここにある〟と主張し続ける店の並び。コンビニも、ネカフェも、カラオケも、ホテルも。何もかもが、俺の目には新しかった。そんな世界を見ていると、よくわからない輩に絡まれた。何故絡まれたのかわからないが、俺を殴ろうとしたので、試しに殴り返すと、拳は痛かったが、これはこれで楽しかった。喧嘩は実力主義だ。どこの誰であろうと関係ない。そんな純粋な実力主義の世界は生まれて初めてだったので、つまらないと思っていた人生に、新たな楽しさを与えてくれた。予定調和を崩したくて、始めたことだったが、気がつけば、街へ出る方が楽しい、と俺は学校へは行かなくなった。その結果、学校での俺の評価や成績はぐっと落ちた。俺は何とも思わ
Last Updated : 2026-02-11 Read more