ギイッ、とドアの蝶番(ちょうつがい)が鳴る音がした。 実加が薄暗いリネン室に足を踏み入れる音が聞こえる。 小夜子は脳内でその光景を鮮明に描き出した。 リネン室に満ちる、真新しい洗剤の清潔な匂い。パリパリのシーツの山が部屋いっぱいに積まれている。傍らに並ぶのは、銀色の重いリネンワゴン。 5歳の子供にとって、そこは巨大な迷路かお城のように見えるはずだ。『おーい、レオ君? かくれんぼの時間は終わりだぞ』 実加の声は、普段の翔吾に対するような乱暴な口調とは全く違う、柔らかく親げなものだった。 口調こそ少し乱雑だが、親しみの込められた声。 携帯から微かな布の擦れる音と、しゃくりあげるような小さな泣き声が聞こえてくる。 小夜子はすぐに状況を察した。 (好奇心で勝手に入り込んだものの、ワゴンとシーツの隙間で身動きが取れなくなった。暗闇が怖くなって声を出せずに泣いているのね)『すげーな』 実加の弾むような声が響いた。『こんな難しい隠れ場所、よく見つけたな。ウチの負けだわ。降参、降参』 その瞬間、張り詰めていた空気が一気に弾けた。「わああああんっ!」 男児の大泣きする声が、マイクを通して爆発した。 実加が子供を強く抱きしめる衣擦れの音が続く。『よしよし。怖かったな。でももう大丈夫だ。母ちゃんとこ、帰ろうな』 ぽんぽんと、一定のリズムで背中を叩く音。『暗くて、こわかったの。出口がわかんなくなっちゃって……』 泣き声混じりの子供の声が聞こえる。実加が微笑む気配がした。『そうか、そうか。真っ暗だもんな、ここ。大丈夫、ウチと一緒に外に出よう。母ちゃんが待ってるぜ』 監視室の翔吾は、呆然とスピーカーを見つめていた。「あんな砕けた言葉遣い、接客マニュアルのどこにも記載されていません。お客様に対して『ウチの負け』だなんて……クレームになりますよ」 小夜子は薄く微笑んだ。「ええ、マニュアルに
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