「そうだ。5割増、1.5倍だ。さらに、我々の施設は完全冷暖房完備だよ。過酷な重労働はすべてロボットがこなし、君たちはその管理業務や簡単な案内を行うだけでいい。手足や腰を痛めるような掃除も、重い食器を配膳する必要もない。そのような雑務はロボットに任せればいいのだから」 御子柴の言葉はまるで甘い毒のように、疲れ切った従業員たちの耳に流れ込んでいく。「こんな沈みかけの船で、いつ潰れるか分からない不安を抱えながら汗にまみれて働く。それが君たちの望みか? それとも、安定した生活と高い報酬を選ぶか。答えは明白だろう」 仲居の1人が、ごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。 誰ともなく小さな声が漏れる。「ロボットが掃除してくれるなら……腰も痛くならないわよね……」「お料理の配膳をしなくていいなら、腕も腰も楽になるわ……」「それに、1.5倍の給料があれば、孫に色々買ってやれる……」 彼らは少し前まで、仕事への情熱を失っていた。 今日こそ力を合わせて働いたけれど、長年の無気力はまだ心のどこかにわだかまっている。 何の苦労もなく高い報酬が入るのなら……と、心をぐらつかせているのが手に取るように分かった。 板前も、戸惑ったようにエプロンの裾を握りしめた。「だが、俺たちの料理はどうなるんだ?」「料理? レシピを最新のAIに学習させ、セントラルキッチンで大量生産する。味のブレは一切生じない。職人の勘などという曖昧で非効率なものは、現代の経営には必要ない」 御子柴が断言する。「君たちも、無駄な仕込みの早起きから解放される。悪い話ではないはずだ」「そ、そんな」 板前がひどく落ち込んだ声で言った。 彼もまた、ほんの少し前までやる気を失っていた人間だ。 仕事へのプライドは錆びついていた時期が長い。 AIがレシピを再現すると言われても、仕事が減ると喜べばいいの
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