All Chapters of 生神様になったらめっちゃ思い通りになるんですけど: Chapter 111 - Chapter 120

201 Chapters

第112話・この先

 このモーメントで、生神である俺が最低限必要な情報はM端末に入っている。もちろんハーフリングの年齢と寿命に関する情報も端末に入っていただろう。 ただ、端末を取り出してヘルプしたり【神威】使ってたりすると高確率で俺がタダモノではないことがバレてしまう。 そこでサーラの手ほどきを受けて覚えたのが、脳内端末使用。 使われない神具は俺が干渉できる異次元に入っている、らしい。普通ならその異次元から手で引っ張り出すんだが、「頭の中で引っ張り出して頭の中で展開しろ」と言われた。 なかなかに難しかったけど、慣れると、ヘルプで必要情報だけは取り出せるようになった。【神威】とかはまだ無理だけど。 端末はチュートリアルの一部だから、本来なら端末を使わなくても念じるだけで端末機能は全て使えると言う。だから端末なしで使えるように慣れろ、と言われてはいるんだが、今のところ頭の中でヘルプページ読めるくらいしかない。しかも本当に端末の情報なのか俺の思い付きなのかがはっきりしないので困ってる。歴代の生神様はそう言うのを乗り越えて来てるんだろうなあ……。「シンゴ!」 悲鳴に近い高い声に我に返って、目の前まで迫っていた、俺一人丸のみにできる深淵の入り口のような牙の切っ先を剣の柄で突いた。「ぎゃんっ!」 魔獣が悲鳴をあげて飛びのく。俺はその後に続いて、六つ脚の魔獣の首を叩き落す。「大丈夫なの、シンゴッ?!」 独特のキーの高さは、間違いなくミクンのもの。「大丈夫! ……ちょっと考え事してただけで」「命がかかってんだから他所事考えてんじゃないわよ!」「それは間違いない! ごめん!」 ドガッ、とヤガリが魔獣の頭を叩き割り、レーヴェが別の魔獣の口の中に剣を突き刺して絶叫させた。そこをコトラがジャンプして喉笛を食いちぎる。「ラスト・ワンッ!」 しつこくミクンを狙っていた犬のような魔獣を仕留め、俺たちは息をついた。「も~シンゴ~」 息一つ乱さずやってきたミクンに、俺は剣についた血を拭いながら頭を下げる。「ごめん。そして、教えてくれてありがとう」「あんたが相当の達人だってのは分かってるけど、油断はどんな達人でも殺しちゃうってばあさんが言ってたからね? お人好しで命は買えないんだからね?」「うん、ごめん」 あれだけ魔獣の攻撃を受けていながらかすり傷一つついていないミクンに感
last updateLast Updated : 2026-01-21
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第113話・廃墟アムリア

 アムリアは、本当にボロッボロだった。 城壁は壁と言うか目ぇ閉じて歩いてても抜けられるんじゃないかってくらいだったし、かつては壮麗だっただろう城は、廃墟通り越して関係者も立入禁止って感じだった。 その周囲にあっただろう城下町もほとんど崩れて、その壁と壁の間に布を張ったりして雨風避けにしたりしている。 そこに住んでる人たちも、ほとんどがボロボロだった。 最初にシャーナに会った時よりひどい恰好でひどい身体をしている。動ける人は既に出て行って、もう動けない人ばかりが辛うじて生き残っている感じ。 ってか、こんな状態でよくこれだけ生き残ってたなあ。 そして俺たち、悪目立ちしてるなあ。 俺たち、洗う必要がなかったり浄化した服だったりできれいな服着てるし、痩せている様子もない。レーヴェもヤガリも初めて出会った時より明らかに体に肉がついている。いや、やらしい意味はないんだが。 一番彼らに近いのがミクンだけど、俺たちと一緒にパンや干し肉を食っていて、こっちも明らかに薄いけど肉がついて……いややらしい意味じゃないって。サーラの肉のつき方なんて爆発的である。これは正直やらしい意味で。……サーラが笑ってる感覚がする。 とにかく、ガリガリではない、健康的な体ってことだ。 家畜や野獣などほとんど肉にされたって言うのに、痩せてもいないブランとコトラもいるし。 だから、俺たちには視線が集まった。 だけど、視線だけ。 虚ろな視線が俺たちの後を追ってくる。 ……しかし、思ったよりいるな、生き残り。 数十人いればいい方だと思っていたけど、百人は超えている。今のアムリアにそれだけの人間を養うものはないだろうに。「裏があるな」 サーラがぽつりと呟いた。「裏?」 その言葉を聞きつけたミクンがサーラを見上げる。「そう、裏」 ゆっくりとサーラは金色の髪をかき上げながら、視線の群れにゆっくりと目を走らせる。「なあ、シンゴ」 サーラはミクンではなく俺に聞いてきた。「お前も気付いているだろう。ここに、これだけの人間を養うだけの物資はないと」「ああ」「ならば、誰かが何処かからか何かを運んできているということだ。善意か、悪意かは分からないが」「悪意で人に物を渡すのか?」「そうだ、レーヴェ」 サーラは微かに目を伏せた。「相手を傷つける意図をもって渡される贈り物と言
last updateLast Updated : 2026-01-22
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第114話・差し出す

 壊れかけた城の塀際に入って、ようやく虚ろに俺たちを追ってくる視線から解放された。「我々以外に、しかも定期的にここを訪れる人間もいるようだな」 サーラは塀の頑丈そうな場所に寄りかかって、足を組んだ。スリットから太ももがさらけ出される。……キツイです、サーラ姉さん。「しかも、誰を差し出せば、と言っていた」 レーヴェの言葉に、ヤガリも唸る。「人身売買の可能性もある」「だけどさあ」 ミクンが首を傾げた。「人を売り買いするって言うけど、何の得があるわけ?」「得?」「だって、ここにいる人間で、買って何かの役に立ちそうな人間って誰もいないよ? 何のためにあんな人間を買うの?」「そうだよなあ」 俺も唸る。 人間の中にはヒューマン以外の種族もいた。だけど、全員例外なくボロッボロ。一体誰が売れるというのか。 そして、一体何処から何を持ってきているというのか。「ここじゃ俺たち目立つからなあ……」 俺は髪の毛を掴んで考えた。「いっそのこと目立った方がよくはないか?」 代案を持ってきたのはサーラだった。「目立つ?」「私なら売り物になりそうだろう? ミクンも言っていた」「いや冗談だよ? 冗談じゃないけどサーラ姐さん本気で売れるよ? 戻ってこれない可能性大大大の大」「私を金などで買った人間がどんな目に遭うと思う?」 サーラはにっっっこりと微笑んだ。「……なんでだろう、死んだほうがマシって目に遭いそうな気がするのは気のせいかな」 うんミクン、気のせいじゃないと思うよ。「そういやミクン、聞きたかったんだけど」 俺はサーラの太ももに向いていた目を引きはがしてミクンに向けた。「アムリアから出たって人間の話は君から聞いたと思うけど、アムリアに行った人間はいなかったのか? 俺たちだけ?」「むかーしはそうじゃなかったみたいだけど」 ミクンは首をかたむけて指を頬に当てて考え込んだ。「アムリアって言えば最大の人間王国だったからねえ。世界がおかしくなりだして、結構な人数がアムリアに行ったって聞いてる。ただ、最後に王族と貴族が国を離れて逃げ出した後、アムリアから出て行く人間がほとんどいなくなったって」「王侯貴族が逃げた後……?」 逃げた、と言うことは、国を捨てなければならない何かがあったってことだ。 食糧不足か。いや違う。王族なら国民から
last updateLast Updated : 2026-01-22
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第115話・価値のある商品

「さあ、前みたいに人間の削りカスみたいなのを寄越したらろくな物はやらねぇぞ! お前らにとって食糧はどれだけ価値のあることか! お前らの王がお前らを差し出したんだから、お前らは俺たちの重要な商品なんだ! 大事な食糧と引き換えなんだから、いい人間を連れてこい!」「!」 それで、全てを承知した。 そう言うことか。 人間を連れて行くのと引き換えに、彼らは貴重な食糧を与えられていたんだ。「ってことは、ね」 ミクンは人差し指を上に向けた。「このアムリアにいる誰よりも、あたしらって、価値のある商品ってことなのかな?」「だろうなあ」 気配を感じる。気配と言うか視線だ。歩くこともできないアムリアの住人が、視線だけで俺たちを指しているのだ。「いい商品がいるのか?! いなかったら承知しねぇぞ俺はぁ!」 レーヴェとヤガリが咄嗟に武器を手にするけど、俺が止めた。「いい機会だ」「人買いに売られる機会なんて、いい機会なの?」「そーいう意味じゃないんだけど……このアムリアに何かをしている連中の正体を知ろうと言うなら、いい機会だなって」「このまま売られる気?」「……そうだな、俺とサーラだけで十分だろ。レーヴェとヤガリはコトラとブランとミクンを連れて逃げてくれ」「ついて行くつもりだったのだが?」「中から逃げ出す時に外から攻めて来られたらずいぶん楽になると思ったんだけどな」「しょうっ」 正気、と叫ぼうとしたミクンの口を抑える。「しーっ」 ミクンがこくんこくんと頷いたのを確認して手を放す。「でも、どうやって」「シンゴとサーラなら大丈夫だ」 ヤガリがミクンの手を引いた。「何処に連れてかれるかもわからないのに?」「それは大丈夫」 俺は手を後ろに回して、神具を亜空間から引き出した。「導きの球、か」「そう。これなら俺の居場所が何処であれ見つけられるだろ?」「何? 魔具? あんた魔具なんて持ってたの?」「しーっ」 もう一度ミクンがこくこくと頷いた。「じゃあ、早く行ってくれ」「ああ」 レーヴェとヤガリがミクンの手を引いて、コトラやブランと一緒に奥の方に行く。 気配。 これは……来たな。 俺とサーラは少し見つかりやすい場所に移動した。「なんだなんだなんだぁ?」 壁の向こうから声が聞こえる。「ここ数十年こんな人間の気配は感じたことがない
last updateLast Updated : 2026-01-23
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第116話・人熊

 のっそりと顔を出したのは、まるでグリズリーのような大男。 オーガ、……じゃないな。気配が人間のものじゃない。紛れもない魔物のものだ。 顔も猛獣のそれに似て、狂暴性とサディスティックな性質をむき出しにしている。「……改めて聞く。誰だ」 俺が微かに震えながらサーラを庇うように立つと、男は楽しそうに笑った。「かかかっ、本当に知らないのか。一体何処から来た? 最近牙をむいている西側か?」「シンゴ……」 サーラが俺の後ろから顔をのぞかせる。不安そうな顔。相変わらず演技上手いよなあ。「ああ、お前の問いに応えてなかったな。俺はアルクトス。ワー・ベアのアルクトスだ」「人熊《ワー・ベア》……」 こりゃあ間違いなく敵対勢力だ。 ビガスで出てきたワー・ラットと同種。しかも熊だって言うのなら、あいつ以上に強いと考えた方がいい。 いや、ここで勝つことを考えてちゃいけないんだった。それだったらヤガリやレーヴェに残っていてもらってた。 敵対勢力がどんな敵か。何を考えて世界を滅ぼそうとしているのか。さすがにこのワー・ベアから敵対勢力のトップに辿り着けるとは思えないが、その少し上には行けるだろう。相手の理由を知らないとどう対抗していいかもわからないし。 ざざざっと気配が後ろにも回った。 ゴブリンが手に手に棍棒を持って囲んでいる。 全員俺たちを見ているってことは、……ヤガリやレーヴェは逃げ切れたってことかな。ならOKだ。 俺は不安そうな顔をしてワー・ベアを見た。「俺たちを……どうする気だ」「どうする気だと思う?」「食う気か?」「かかかっ」 ワー・ベアは楽しそうに笑った。「食うだけで終わると思うか?」 結局食うのか、と思いながらも怯える顔を作りながらそれでもサーラを守ろうとする体勢を崩さない。 ワー・ベアは楽しそうに笑いながら、アムリアの人がいる方を向いた。「ここまでいい人間は初めてだ! 何も知らない旅の人間を捧げるとは、なかなかお前らもいい考え方をするようになったじゃないか! ああ、ああ、今回は特別に大放出してやるよ!」 人間たちがワー・ベアに頭を下げる。 やっぱり、少しでもマシな人間を引き渡すことによって、何もできない自分たちを養ってもらってたんだ。 ……それしか生きる方法がないからなあ。 多分、数十年って間、そうやって生きてきたんだろ
last updateLast Updated : 2026-01-23
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第117話・恩義

「本当にあんたらどうする気よ」 ミクンの声に、ヤガリとレーヴェは顔を見合わせた。「あんたらなら、戦うか逃げるかの選択肢くらいはあったのに。何であのシンゴとサーラを引き渡したりするのよ!」「そう言われてもな」 レーヴェは軽く頬を掻いた。「シンゴが決めたんだから、おれたちはそれに従うだけだ」 ヤガリも戦斧を持ち直し、シンゴから渡された水晶球を荷物の中に入れる。「何でシンゴの言うこと聞くのよ。馬鹿な若旦那に言われたら命を捨てるって言うの? 第一何それ、魔具? 魔具は世界から消えつつあるって言う最高級のお宝よ。魔法の力を道具に宿し、それを使えるようにする……失われつつある財産なのよ?」 実は、それ以上に貴重なものなのだが、もちろんレーヴェもヤガリもそれを言わない。「ミクン、お前は草原に帰った方がいい」 ヤガリは戦斧を担いで、ミクンを見た。「そうだな、君は帰った方がいい」 レーヴェも剣の柄に手をかけて頷く。「これから先は遊びでも冗談でもない」「遊びと冗談でついてきたわけじゃないもん」 ミクンはレーヴェを睨み上げた。「何であたしがあの草原から出てきたと思ってんの」「飯があるからだろう」「レーヴェ」 鋭くヤガリが名を呼んだ。レーヴェは気付いて思わず自分の口を塞ぎ、少し迷ってから頭を下げた。「……すまん。どうにも私は物の言いようが悪いんだ」「数日かでも付き合ってたら分かるよ。あんたは言葉の選び方が不適当だ」「……悪かった」「別にそれを気にしているわけじゃないよ」 ミクンは軽く足元の石を蹴った。「ハーフリングが信じられないのは今更じゃないしね。だけどね……」 キッと顔を上げ、ミクンは二人を見上げる。そこには、混じりっ気のない真剣さがあった。「ただ、だからこそ、あたしたちは信じてくれた人や助けてくれた人には絶対の恩義を持つ。命を懸けてでもそれを返すって誇り。それがあたしたち草原の民、ハーフリングの守らなきゃいけない掟だ」「シンゴに何か助けられたか?」「腹を空かせて魔獣に追われていたところを助けてくれた。全くあんたたちを信頼してなかったあたしに食糧を分け与えてくれた。そして……そして、あいつは自分じゃないと言い張ってるけど、どういう手段を使ったかいまだにわからないけど、あたしたちの棲み処を元の姿に戻してくれた。だからあたしはあい
last updateLast Updated : 2026-01-24
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第118話・演技力

「どうする?」 レーヴェがヤガリを見下ろす。「これは放っておいてもついてくるな」 ヤガリも自分の髪の毛をかき回して溜め息をつく。「勝手に捕えられて助け出すのも面倒だ。なら目の届く場所に置いたほうがいいだろう」「……そうだ、な」 レーヴェは息をついてお手上げ、と、文字通り手をあげた。「だがシンゴは了承するのか?」「それはシンゴが戻って来てからでいいだろう。とりあえずこの一件が収まるまではお目付けがいると言うだけで」「許してくれんの?」「仕方ないだろう。ここでお前が一人暴走したら二人を助け出すのが厄介になるかもしれない。そして潜入やかく乱であればハーフリングの素早さや身軽さは武器となる。……ああ、私達に恩義を感じなくていい」 レーヴェがひらひらと手を振った。「おれたちはシンゴの為にいるんだ、シンゴがこの場にいたらどう判断したか考えて結論を出しただけ。恩義はシンゴに感じておけ」 ヤガリの言葉に、一瞬ミクンの目に小さなものが光った。 だけど、それをぐい、と拭って、ミクンは二人に頭を下げた。「ありがとう……ありがとう!」 ガラガラ、ガタガタと馬車は揺れる。「何処まで行くんだ」「カッカッカ」 ワー・ベアのアルクトスは馬車の横を巨大なメイスを担いで歩きながら高らかに笑った。「なかなかに肝も太いようだな。普通ここは自分がどんな目に遭わされるか不安になって怯えるか、泣き明かすか。連れて行かれる先のことを聞くヤツは初めてだ」 はあ、と俺は馬車に転がされたまま溜め息をついた。「……あ~キツイ」 俺の両腕は腹の前でギッチリ結び付けられている。これを解いて脱出するのは骨……。 じゃあ、ないんだな。 俺が何者か、サーラが何者か知らないからこの程度の束縛で済んでいるんだ。 俺は普通の武器や防具では傷をつけられない。神具の神衣もあるけれど、一般人程度の攻撃なら生身でも傷は負わない。 そして俺以上に怖いのがサーラ。 サーラは炎の守護獣。縄を焼き切るなんて造作もないどころか、このアルクトスとゴブリン連中をまとめて焼き払えるくらいの力は簡単に放てる。 だけどそれでは意味がない。 俺たちが敵対勢力と呼ぶ、敵。 ただ、その敵の具体的な正体がわかっていない。 何故世界を滅ぼそうとしているのか、どんな力を使って魔獣や魔物を生み出しているのか、それ
last updateLast Updated : 2026-01-24
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第119話・三つの眼窩

 そこは、今まで見た何処に比べても、繁栄していた。 ゴブリンやコボルトたちが大勢賑やかに行き交っている。 子供のゴブリンやコボルトがこっちを指さして笑ってる。彼らからすれば俺たちは商品で、運が良ければ自分たちにもおこぼれが回ってくるだろうってことだ。「ほう、ほう、ほう!」 雄叫びのような声を、馬車を守っているゴブリンがあげる。「ほう! ほう! ほう!」 子供たちが声を張り上げる。「旨そうだ、と言っている」 アルクトスが楽しげに言う。 そうだろうねえ。 アムリアから連れてきた人間なんてガリッガリだったろう。捌いたら筋と皮しか残らないとかって感じなんだろうなあ。俺は中肉中背だし、サーラは……つきたいところにボンボンついてて必要な所は引き締まっているからなあ。性欲でなく食欲で見れば美味しそうだろうなあ。「お前、名は」 アルクトスは上機嫌そうに言う。「シンゴ」「シンゴか。そっちの女は?」「サ……サーラ……」「シンゴにサーラか。どちらにせよ、最後には死んでもらうが……」 楽し気にアルクトスは言う。「オレたちを楽しませてくれれば、命が伸びるかも知れないぞ?」「楽しませるって」 俺は微かに顔をしかめた。「何をしろって言うんだ?」「色々あるぜ? せいぜいよく考えて、命を延ばすよう努力するんだな」 カッカッカっと笑うアルクトスには、サディスティックな考えが宿っていた。「さあ着いた」 アルクトスは馬車に乗りあがって、俺とサーラの縛られた腕をまとめて掴み上げ、亀の子でも吊るしたようにぶら下げて歩く。元々巨体だけど怪力もすごいんだなあ。 アルクトスが入っていったのは、布で作られた陣幕のような建物に俺たちは入れられた。「我らが神……」 アルクトスは俺たちを下ろして跪く。「滅亡の神、アポス……」 手を組み、祈りを捧げ、首を垂れる。「我らを生み出し、この世界を虚無に導く偉大なる神よ……」 俺は顔をあげる。 そこにあるのは、髑髏が一つ。 人間……ヒューマンくらいの大きさの頭蓋骨が、祭壇の上に置かれている。 眼窩が三つ。普通の目の位置と、額の辺りにもう一つ。……いや、額のは普通の髑髏に後から穴を空けたのか? 無理やり空けた形跡がある。 三つ目の髑髏が彼らの信仰する神のシンボルってことか。「我らは滅亡の道を歩んでお
last updateLast Updated : 2026-01-25
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第120話・炎のスペシャリスト

「なるほど、最近オレたちに歯向かっているって言う西から来たのか。メルクが失敗したんだな」 ん?「メルク、知らないか? 西に向かったワー・ラットなんだが」 メルク? ってどっかで聞いたような……。 あ。 ビガス村のワー・ラットを【観察】して、判明した固有名。それがメルクだった。 そっか、やっぱりあいつと同類だったか。「……知らない」「まあいいか。人間が生きて西から来たってことはメルクが失敗したって証拠だ。次はオレが行けるよう進言しよう。ビガスも大樹海も無窮山脈も、オレが再び廃墟としてしまおう」 アルクトスは天を仰ぐ。 その横顔には残酷な笑み。 俺たちで遊ぶつもりだな。 遊びに付き合いながら、もうちょっと情報を引き出さなければ……。「あそこか」 レーヴェ、ヤガリ、ミクン、コトラ、ブランは、小高い丘から陣営の方を見ていた。 ヤガリの手からは伸びるほのかな光。 真っ直ぐに陣営の中を指している。「急いで助けないと」「急ぐ必要は恐らく、ない」 レーヴェはじっと陣営を見つめながら呟く。「もしシンゴの身に危険が及んだのなら、サーラが黙っていない。今頃あの陣営は火の海になっているはずだ」「そうだな。サーラはあの程度の陣営なら丸焼けにできる」「炎魔法のスペシャリストなの?」「……そう言うことだ」「炎に関しては彼女の右に出る者はいないだろうな」「そうかあ。だから大火傷とか言ってたんだ」「見た目はあれだが、恐らく我々の中では一番強いぞ」「だからシンゴを守るために囮に名乗り出たんだ」「面白がっている節もあったが」「楽しんでいるだろうなあ今頃は」「何それ、そう言うキャラなの」「そう言う存在って言えば存在だな……」 ヤガリとレーヴェは肩を竦めた。 ミクンは不審そうに二人を見上げる。「人間じゃないの?」 おっと、と二人は顔を見合わせる。「人間、じゃないの? あの人」「人間と言えば人間だし、人間じゃないと言えば人間じゃないし」「それはシンゴとサーラが戻ってきて、許可を得れば教えてやる。おれたちは言える立場ではないからな」「とにかくあの中に潜入して……」「コボルトとゴブリンのいる中に人間が潜入できるものか」 焦るミクンをレーヴェが抑える。「シンゴの頼みは、騒ぎが起きたら外から攻撃に入ってくれってことだからな。中で何か
last updateLast Updated : 2026-01-25
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第121話・シンボル

「滅亡の神って言うのは、三つの目を持つのか?」 俺の問いに、アルクトスは野太い笑みを浮かべる。「額の目は例え、だと言われている」「例え?」「そうだ。滅亡の時を知らずのうのうと生きる人間を見る目が滅亡の神の額の奥にあると言う。だから、シンボルに使う髑髏は、生きているうちに額に穴を空けてやるのさ。それによってシンボルは力を得ると言う。つまりこの髑髏はシンボルとしては無意味ってことだ。こんな人間を前に反応すらありやしねえ」 ああ、それでか。仮にも神のシンボルだとすれば、生神の存在を把握しないわけがない。 髑髏の元になってくれた人には申し訳ないけど、シンボルが弱くてよかった。もうちょっと粘れそうだ。「……生きている人間の額に穴を空ける?」「そうだ。その人間の苦痛と絶望こそが、シンボルに神の力を下ろす肝心な要素だ。そいつなど、穴を空け始めた時にさっさと死にやがった。おかげで力もほとんど宿らねえ。お前なら保ってくれると信じてるぜ?」 嬉しくない期待だな。 俺の考えが自然と表情に出ていたんだろう、アルクトスは楽しい楽しいとニヤつく。「あの女と違ってお前はなかなかにふてぶてしい。生きる希望にあふれている。その希望をへし折った時の絶望が、オレたちにとっては最高の喜びなんだ」「……魔物ってのはみんな、あんたみたいに悪趣味なのか?」「悪趣味? 何がだ」 心底不思議そうな顔でアルクトスに聞かれた。「生きている人間の頭に穴を空けるなんて、悪趣味だ」「ああ、ああ、生き物とオレたちとの考え方の相違だな」「……あんたらは生き物じゃないのか?」「正確に言えばな。人間や動植物、創造の神が生み出した全てを生物と言うのであれば、オレたちは死物かも知れん。一応生きてはいるし、生き物同様いずれは死ぬ。が、死物は世界中を破滅させて共に死ぬことが悦び。一分一秒でも長く生きようと思っている生き物とはそれが決定的に違う。死とはオレたちにとっては究極の目標。道連れに世界を巻き添えにするのが希望だ」「生物とは相いれないってわけか」「そう言うこと。そう言う人間の絶望こそが滅亡の神の悦び、そしてオレたち死物の最高の御褒美だ」 う~ん平行線。 つまり、俺が生神である限りこいつらとは絶対に相いれないってことだな。 生きたまま目の穴を空けるってのが悪いこ
last updateLast Updated : 2026-01-26
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