Masuk傍から見れば不運で不幸、と思われる人生を真面目に生きた十九年。それが、あの世に逝った瞬間に大きく切り替わった! 何と、ファンタジーな異世界で、『生神様』と呼ばれる存在になってしまう! 降臨した神殿にいた神子と共に、神様として、この世界を破滅から救い、そして新しい俺の世界として創り直して見せる! 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しております。
Lihat lebih banyak仮面の額の部分にはキャッツアイのルビー。いつか聞いた、魔神の第三の目がそれなんだろう。 それは赤々と、本当の目のように光っている。「私が下らない人間を一掃する。何もなくなったモーメントを下地に、私とお前が認めた真っ当な人間だけの世界を一から作り上げるんだ、真悟。私が教えた、真っ当で正義を愛する者たちが生きる世界に」「でも、それは……」「お前はこの世界を全てとは言わないまでも旅してきただろう。どんな人間がいた? 新しい世界に生かせる人間はいたか? ……下らない人間が、圧倒的に多かっただろう」 下らない人間。 他の人間を蔑視しているエルフやフェザーマン。 旅人である俺たちを売り飛ばして生き延びようとしたアムリアの人々。 露骨に他者を馬鹿にした大人のアウルム。 商人として訪れた俺たちを捕えたプセマ、プセマに任せれば何もないと彼の悪行を見逃して利益を得ていたケファルの人々。 確かに……下らない。 下らない人間ばかりだ。 だけど……だけどさ!「真っ当な人もいたよ……。一生懸命働いてる人もいた……蔑視されてもちゃんと生きてる人も、たくさんいたよ!」「ならば、彼らを守れ」 魔神は言った。「世界中から真っ当な人間を集め、待つがいい。下らない人間を私は一掃する。その後の世界を生神、お前が再生すればいい。それが、魔神、生神としてこの世界に派遣された我々の存在理由」「何だよ……それ……」 俺の手が震えているのを感じていた。「私は言ったな、真悟」 おじさんの、感情のあまりない声が俺の耳に響き渡る。「下らない人間を相手にしてはいけないと。他人を見下す人間にマウントを取られても放っておけと。それしか存在理由のない人間など、相手にするだけ無駄なのだと」「……言った」「そう言う人間ばかりなんだよ、モーメントは」 額のキャッツアイルビーが赤い光を放つ。「気にするな。私が手を汚す。お前は世界を作り直せばいい。正義を謳いながらも実行に移さなかった人間が、生神降臨までの整地をする。それが、私が魔神となった理由なのだろう。正義を行わなかったのだから、正義を行う人間だけを助けよと」 おかしい……おかしいよ……。 俺は思いながらも反論できない。 人間を全部殺すなんてやっちゃいけないよ……下らない人間がいい奴になることだ
「シンゴに……全てを教えたという、叔父上か?」 この中では唯一おじさんの話をしたベガが、引っかかったような声を出す。「ああ……間違いない」 今まで気づかなかったのは、濃い気配のせい。 世界を破滅に導く滅亡の神威が濃すぎて、俺とベクトルが真逆の破滅の神の存在が、三年前に死んだおじさんとなかなか結び付かなかった。 魔神の話を聞いて、ようやくそれが俺と結びついたんだ。 だけど。「何で……何で、もっと早く、名乗り出てくれなかったんだよ」「確信が持てなかったのでな。まさか魔神として送り込まれた世界の生神としてお前が来るとは予想がつかなかったんだよ……真悟」 竜介おじさんは仮面を再びつけた。 おじさんの厳しくも優しい顔立ちが隠れれば、俺と正反対の力の持ち主……魔神としか感じられない。 でも、俺はその正体を知っている。知ってしまった。 仮面の下にあるのは、俺の思考を、理想を、全て受け入れて育ててくれたおじさんであるということ。 そして、おじさんが俺を嫌がる親戚から奪って引き取って育てたのは、愛情ではなく実験の為だった……。「……今のモーメントに存在価値はない」 おじさんは魔神の仮面をつけたまま静かに告げた。 三年前に失われたと思った、何処か憂鬱そうな、しかし間違えない事実と真実を伝える声で。「人も、獣も、荒み切っている」「そんなことはないよ!」 俺は声を張り上げた。「お前は生神で、お前に従うのは神子」 淡々とおじさんの言葉は続く。「神子は生神の思想を理解している。故に、真っ当な人間として育ったお前の真っ当な考えに共感した。だが、その思想を理解し神子になれる人間はこの世界に数えるほどしかない。少なくとも、今まで出会い、滅ぼしてきた人間は、他者を蹴落として、屍を乗り越えて逃げ、最後には何でもするから見逃してくれと来た。中には共に逃げていた子供を差し出すこともあった。……そう言う人間を、生かしておいても意味はないだろう?」 俺は反論しようとした。 だけど、出来なかった。 俺の思想は、おじさんが作り上げたもの。おじさんの教えを受け取り、俺なりに解釈して実行してきたもの。 師であるおじさんを論破できるはずがない。「だけど……そんなのばかりじゃないだろ?! 真っ当な人間だっていただろ?!」「ほんの一握りはな」 おじさ
なんじゃそりゃ。そんな人間いるわけないだろ。「……ていうか、そんな実験をどうやってやるんだよ」「簡単だ」 俺と一定の距離を保って立ったまま、魔神は言う。「子供を一人、手に入れればいい。その子供を育てるのだ」「……子供」 ピリッと、うなじの毛が逆立つのを感じた。「私の言う真っ当で善良……不正に立ち向かい、正義を行う子供……それを私が作れるかどうか。それが生前の私のテーマだった」「……そんな子供を育てた人間が、何故魔神に?」「気付かれていたのだろうな……私にとっては実験に過ぎないということを」 魔神は顎に手を当て、呟く。「私には正義があった。私には思想があった。だが、それを広める気はなかった。それを実行するつもりもなかった。ただ子供に、その思想を植え付けた場合、どのような人間ができるか実験したいだけだった。正義は思うだけではなく実行しなければならないというのだろうな……思想だけの正義には何の意味もない」「……正義を抱いた人間が、何故世界を滅ぼそうとしたんだ」「それが私の役目だからな」 魔神は平然と答えた。「何かを生み出すためには古い物を壊さなければならない……そう言うことだ」「んな無茶な!」「無茶ではないだろう。お前は、来る前のこの世界を知っているか?」「……いいや」「人間の種族同士の争い。死物に赤ん坊を捧げて危地から逃れようとする親、親を捨てて飢えをしのぐ子。世界として成り立っていないと思った。だから滅ぼそうと思った」「あんたの言う正義はどこ行ったんだよ!」 俺は思わず叫んでいた。「あんたは正義を持っていたんだろう!? それを子供を使って実行しようと思ったんだろう!? それが何で、その正義を捨てて世界を滅ぼそうとするんだよ!」「私の正義は思想でしかない……自ら実行する気は欠片ほどもなかった」「正義の味方じゃなくて、哲学だった……そう言うことか?」「そう言うことだ」 俺は頭をガリガリと掻いた。「その哲学に巻き込まれた子供は……どうして手に入れた」「偶然だ」魔神は淡々と話す。「目の前で両親を失った子を手に入れた。この子供を使えば私の正義を実行する人間が育つかもしれないという興味と好奇に負けた」「じゃあ……じゃあ」 俺は叫んだ。「育てたのも、色々教えてくれたのも、全部……全部、実験の為だったのか? そうな
すぅ、と気温が下がった。 元々薄寒いこの世界だけど、この冷気は強烈な威圧感を伴っている。「来たぞ」 ベガが笑った。「魔獣の信仰が全部シンゴに渡ったのに気付いたか、大慌てのお出ましだ」 彼方の薄墨色が濃くなっていく。ゆっくりと漆黒に変わっていく。 そしてその漆黒が渦を巻き、形と成す。 魔神と言うからには巨大で凶悪な見た目をイメージしていたけど、俺と大して見た目が変わらない。顔の半分が隠れるような仮面をつけた……多分男。「生神、か……」 呟くように言った声は、何処か懐かしい響きをしていた。「魔神か」「如何にも。私は魔神」 すっと手を伸ばす魔神。 何か攻撃が……と思ったが、黒い空気が凝ったようなタイルみたいなものが空中に敷き詰められた。「降りよ」 その床に立ちながら、魔神は言った。「巨鳥の背では移動しながら出なければ話せまい。戦うにも不便であろう」「罠だよ、兄ちゃん」 スシオが警告する。「降りたら落ちる可能性だってある」「いや、その場合は浮けばいい」 魔神が受けるんだから、俺だって浮けるはずだろ。「みんなはオルニスに乗っていてくれ」「だけど!」 ヴェデーレが叫ぶ。「大丈夫だ。ヴェデーレのおかげで信仰心が増したから」 今の俺なら魔神と互角以上に戦えるはず。 俺はオルニスから飛び降りて、漆黒の床に立った。「お前が魔神か」「そうだ。初邂逅だな、生神よ」「戦う前に、聞いておきたいことがある」 俺は蒼海の天剣を抜いて聞いた。「みんなは……サーラやレーヴェ、ヤガリ、ミクン、アウルム、コトラ、ブランはどうした?」「私の身の内に、封印している」 魔神はゆったりとそう答えた。「私を倒せば、封印は解けるぞ」 ……ん?「初邂逅、って言ったな」「ああ」 憂鬱そうな……戦うのなんて面倒くさいと言いたげな声。「どこかで……会ったことはないか?」「……生神」 魔神は静かに聞いた。「お前は生前、何だった?」「な、に?」 質問の意味が分からない、と言う俺の言葉に、魔神は重ねて聞いた。「生神となる前、どの世界で何をしていた……?」「どの世界で……何って」「私もまた、魔神となる前は異世界で人として暮らしていたからな……」「地球って世界で、普通に暮らしてたよ」「そうか……」 溜め息交じりに頷く、そ
「魔物、だったんだね」「ああ、魔物だ」 ケンタウロスは頷いた。「魔獣の攻撃が剣呑になって来て、我らもできるだけ仲間とはぐれぬよう、仔馬は集団の真ん中に入れるよう、と対策をしていた。だが、唐突に十余の魔物が現れた。足が二本の魔物だ」 魔物と魔獣、手っ取り早く見分けるのは足の数だ。ワーラットやワーベアと言った変身型の魔物も、普段は二本の足で歩いている。足が四本以上あったら普通は魔獣と考えて間違いない。もちろん、人間にもケンタウロスという例外種族がいるが、もしそんな例外種だったらケンタウロスはまずそれを指摘していただろう。「彼らは魔獣を自在に操り、我らの群れを取り囲み、魔法の縄で一気に群
しばらく、【再生】したパンと干し肉と燻製魚しか食べてない気がする。これって健康的にどうなのか。野菜を取らなきゃダメなんじゃないかと主夫歴イコール親が死んでからの俺なんか考えてしまうんだが。 そこに。「せっかくまともな水があるんだ、たまには贅沢も悪くない」 サーラはアウルムの水球からミルクパン一杯の水を受け取ると、ミルクパンを自分の膝の上に置いた。「?」 アウルムがきょとんとしてるが、実はそれ俺たちも同じ。何してるんだこの人……じゃなかったっけ、この守護獣。 と、思っていたら、ぽこ、ぽこと泡が出てきた。火の守護獣が温度をあげているんだ。「ねー。それ、膝の上に置く必要あんの?」
今俺たちが目指しているのは、更に東、ハーフリングの草原でなく、地球のサバンナに似た熱帯草原地帯だ。 そこに住んでいるのは、上半身がヒューマンで下半身が馬と言う、人間の中でも珍しい四つ足の種族、ケンタウロス。 ハーフリングが草原の民の他に「丘の民」と呼ばれるのは、ケンタウロスとの区別をつける為でもある。 草原を馬の下半身で駆け獣を狩る彼らは、動物寄りだと他の人間に言われるけど、その分生命力も強く何でも自分たちで出来て、交流や品物のやり取りと言った他種族の助けも借りず自力で生きていける強い種族なのだ。 ヒューマンやエルフ、ドワーフやフェザーマンが、あの四種会議のように話し合って品物をや
「あのお姉ちゃん?」「私よりもっときれいな金の髪をしたお姉ちゃん」 サーラのことな。「大丈夫。アウルムが努力しているって分かれば、嫌いじゃなくなる」「本当?」「本当だよ」 本当、と何度も繰り返して、幼いアウルムさんはにっこりと笑った。「本当、本当……」 そこへ、結局帰ることになったフィエーヤさんとヴェルクさんを送ったレーヴェとヤガリが戻ってきた。「うお、アウルムか?」「翼も元通りだし妙に小さくなっているではないか」 俺が説明すると、二人が納得したように頷いた。「やり直しか。そんな機会が与えられただけでも神に愛されていると言ってもいい」「しかし、ここまで戻さないとやり