All Chapters of 生神様になったらめっちゃ思い通りになるんですけど: Chapter 131 - Chapter 140

201 Chapters

第132話・落ちてきた少女

「難しくないよー。コトラとおんなじようなもんだって。コトラだって好きでみんなについてきてるんでしょ?」「ぅなっ」 ミクンの隣をひょいひょいと歩いていたコトラが返事する。 なるほどねえ。 ブランたちアシヌスはドワーフに従うように俺が創った生き物だから、そんなことを考えもしないんだろうけど、コトラは誇り高き灰色虎。俺たちについてこなくても【再生】した大樹海や無窮山脈でも十分生きて行けるだろう。だけど助けたことを恩義に感じて俺の神子になって今もついてきている。「ハーフリングは野に生きる生物なんだな」「そ。だから誰より何より自由なの」 手を広げて、てててて、と走っていたミクンが、急に空を見上げた。「どうした?」「なんか、影が……あれ?」 一瞬戸惑いの声、そして。「あれ!」 立ち止まり、空を指して、叫んだ。 高空から落ちてくる何か。 何か……あれは……人だ! 俺は亜空間から自在雲を取り出した。 飛び乗る。 一気に急上昇して、人と同じ高さに至り、落ちるスピードに合わせて、雲に乗せ、スピードを落とす。 地面すれすれで、完全に落ちるスピードを殺せた。 着地成功。「すごい! 何これ雲? 雲?」「後で見せてあげるから、とりあえず今は……」 自在雲で助けた人を見る。 むき出しの腕には幾つもの傷跡。金の長い髪に、可憐と言う形容が良く似合う美少女。その背中には、同じ淡い金色をした……体と同じくらいの大きさがある翼。「フェザーマン……?」 俺の呟きに、サーラは頷いた。「回復」 俺の魔法で、あちこちを切っていた傷は治る。 ヤガリが丁寧についた血を拭ってやった。 なるほど神秘の一族と言われるだけのことがある。細い手足に不釣り合いなほどの大きな翼。「サーラ。彼女の容体は」「大丈夫、気を失っているだけだ」 守護獣である彼女の言葉に、俺はほっと息をついて、だけど疑問がすぐに出てくる。「……飛んでいる最中に気を失う?」「そうだよね、あたしもそれ思ってた」 ミクンもこくこくと頷く。「飛ぶって、落ちたら死んじゃうってことだよね。そんな時に気絶ってするかなあ」「襲われたとか」 ヤガリの言葉に、一斉に全員が首を傾げる。「空飛ぶ魔獣?」「聞いたことがないな」「聞いたことがなくてもいるかも知れない」 俺は唸った。「滅亡
last updateLast Updated : 2026-01-31
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第133話・手癖が悪い

「ん……」 フェザーマンの少女は苦し気に息を吐いた。まだ意識を取り戻していない。「サーラ、彼女、病気とかは?」「持っていない。フェザーマンとして全く健康体だ。……栄養失調を除けば」 大きな翼と、対照的に小さな足。中国の、纏足とか言ったっけ、ああいう病的なのじゃないけど、それでもとても自分の体重を乗せて歩けるとは思えない。 そして、異様な軽さ。 ……空飛ぶ生物は全般的に軽いものだけど、それでも翼の大きさを考えると有り得ない程軽かった。 栄養失調のせいだろうか。 サーラに言われて横向きで寝させているけど、苦しそうだ。「お腹空いてんのかな」 ミクンは呟いた。「栄養失調でもあると言うし、可能性はあるな」「じゃあこれ使おう」 ミクンが何処からともなく取り出したのは……。「おまっ、それっ、万年草!」 そう、アムリアで、飢えた人間たちのために創り出した、栄養たっぷり植毛繊維豊富な万年草だった。「しーっ」 サーラに言われて慌てて声を潜めてミクンを問い詰める。「何処から持ってきたんだ」「アムリアを発つ時、生えてたのを」「俺がいくつでも創り出せるって知ってるだろう」「シンゴいない時に困った人がいたら分けたげようと思って」「さすがはハーフリング、手癖が悪い」 ヤガリが悪口に近いことを感心した調子で言った。「懐に注意しておけとはよく言ったもんだ」「いりそうなものは確保してるだけだよ。あっ大丈夫、シンゴの考え方は仲間になってから良ーくわかったから」 二っとミクンは口角を持ち上げる。「隠したいものを隠しておくには、あたしみたいな手癖が悪いってのが勝手に持ってたってことにするのが一番なんだよ」 ……確かにM端末を取り出して無から創り上げているところを見られたら身バレ確実なんで、ミクンがそうやってくれることはありがたい。だけど。「ハーフリングの評判は確実に落ちるよ?」「何をいまさら。あたしそんなの怖くないもん」 鼻歌を歌いながらミクンは背を向ける。「怖いのはたった一つ。自分のやりたいことができなくなることだけ。それに、これは生えていた草を勝手に持ってきただけだもん」「そうなんだけどねえ」「……ぅ……」 小さな呻きの主がフェザーマンだと気付いて、全員一斉にそちらを見た。「……起きた?」 開いたフェザーマンの瞳は髪と同じ淡い金
last updateLast Updated : 2026-02-01
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第134話・誤解

 無礼者を叫んだ後は口を利かず、ふらふらと歩いて木の陰に隠れて、ブルブルブルブル震えながらこっちを見ている。 う~む、困った。 話も聞いてくれない。「こっちの素性明かしたほうがよくない?」「よくない」 俺は首を横に振る。「俺は歓待されたくてここに来たわけじゃないから」「そっか」 ミクンは納得したように頷き。「怪しい一団だからなあ」 少女に聞こえるように言った。「ヒューマンが二人にエルフとドワーフとハーフリング、おまけに変なロバと灰色虎の幼獣だっている。信じろって方が無理だなあ」「信じてくれとは言いにくい」 乗ったのはサーラ。「気高いフェザーマンがこの集団を信用するはずがない。一人でも空を征ける者がいればともかく、全員が両足で地面を踏みしめる地の一族。我々とは相容れない」「助けようにも助けてくれと言われなければ助けようもないし」 レーヴェも乗ってきた。「構わん、空から落ちたのを受け止めてケガの治療までしたんだから、これ以上何かする必要もない」 ヤガリも。 とするとトドメは……俺かあ。「じゃあ、奈落断崖まで送ってあげようと思ったけど、嫌だって言うなら、自分を空から落とした何かに怯えながら空を通って帰ってもらうしかないね」 チラリと視線を送ると、少女の顔がえ、え、え、と赤くなったり青くなったり白くなったり。「じゃあ、ここに置いて、奈落断崖を目指すぞー」「おー」「ぅなっ」「ふしゅう」 最後にコトラとブランもついてきて、俺たちは歩き出した。「ちょちょ、ちょっと待ちなさい」 少女が声をあげた。「助けておいて置き去りだなんて、あんまりじゃないの!」「だってさー」 俺は背を向けたままのんびりと答えた。「話を聞いてもダメ、食べ物を差し出してもダメ、なら、何にもすることないじゃないか」「お、送っていくって言ったじゃないの! この、神の使いたるフェザーマンの私を送って行けるっていう名誉を得ておいて、見捨てる気?!」「じゃあ君には助けられる気はあるの?」 え、と少女は呆ける。「空から落ちてきたのを助けて傷の手当までしたのに、何処から来たのかもなんで落ちてきたのかも言わず、食事もとらず水も飲まず。これじゃ助けられる気がないって判断するしかないじゃないか」「だ、だって、そのハーフリングが言った通り、貴方達怪しいもの! 
last updateLast Updated : 2026-02-01
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第135話・復興の噂

「だ、大樹海に無窮山脈が復興したですって?!」 うん、とレーヴェとヤガリが同時に頷く。「大樹海の聖なる泉が元に戻って、森もほぼ動植物が戻っている」「無窮山脈も鉱石が出始めて、おれたちドワーフが掘り返している」 フェザーマンの少女はしばらく難しい顔をしていた。 そりゃそうだわな、この情報が正しいかどうか、彼女に判断する基準はない。実際に西へ行けばいいだけの話だけど、フェザーマンが一日にどれくらい飛べるか、分からないし。 渡り鳥みたいに不眠不休で飛び続けられるなら誰か一人確認しに行けばいい。だけど恐らくフェザーマンにそこまでの体力はないと俺は踏んでいた。 これで納得してくれれば、送っていくことも可能かな……。 ところが。 急に彼女は言い出した。「え、ええ、嘘よ、嘘だわそれは」「その根拠は?」「神ならば、わたくしたち神に仕えるフェザーマンの住む奈落断崖を真っ先に復興させるはずですもの。エルフはともかく下賤なドワーフごときの棲み処を復興させるだなんて有り得ません。有り得ませんわ!」 う~ん、そう来たか。 この世界には種族間の蔑視が根強く続いている。空の種族フェザーマンは、大地を踏みしめるドワーフをそう言う風に見ているのか。 俺は軽く手を後ろにやった。 とんとん、と震える戦斧を叩いてやる。「あ、ああ、済まない、シンゴ」 怒りで震えていたヤガリが、息を吐いて礼を言った。「ドワーフは生活必需品や素晴らしい工芸品を作り上げる。モーメントに必要不可欠な一族だ。そんな種族を下賤とは言わないよ俺は」「……ああ」「しかし、腹立つなー」 ミクンが鼻からふん、と息を吐きだした。「あいつ、本気でこっちが奴隷商人かなんかだと思ってるよ」「思ってる?」「思ってる。でも一人じゃ怖くて帰れないから、何とかこっちを利用しようと考えてる」 ハーフリングの、相手の意図を感じ取る【察知】のスキルは信用していい。ってことは、それは彼女の本音ってことだ。 あのフェザーマン、可憐に見えてかなりしたたかと見た。 奴隷商人を利用して家に帰ろうだなんて、普通考えない。「で、どうする?」 サーラが微笑を浮かべて聞いてきた。「彼女はこちらを奴隷商人だと思っている。と言うことは、彼女を連れて帰ればフェザーマンに奴隷商人と認知されて、下手をすれば捕まるな」 全然心配
last updateLast Updated : 2026-02-02
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第136話・怒り

(ハーフリングのミクンも平等に扱ったサーラが、彼女に関してだけは何か、冷たい)(冷たい、か。ふむ、そう見えたなら私も態度を改めなければならないな)(態度はどうでもいい。……サーラはフェザーマンが嫌いなのか?)(ギリギリのところを突いてくるな。来る途中、私は言っただろう、フェザーマンは神秘の種族にして神への信仰心が篤い、と)(うん、言ってた)(だが、彼女は言った。何故ドワーフやエルフが優先されるのかと。優先されるべきは我々だと) 不意に、周囲の気温が下がったような気がした。 ……やっぱりサーラ、怒ってる……。(神の恩寵は信仰心篤き者だけに下されるものではない。懸命に働き、神の恩寵なくと乗り越えると努力する者にこそ下されるべきだと、そうは思わないか?) ……サーラの怒る理由が、分かったような気がした。 俺は助けてと頼まれれば助けてしまう人間だ。相手がどんなヤツでも、「これこれこういう理由があるんだ、頼むから助けてくれ」と言われれば断れない。地球ではそれを散々利用された記憶がある。 だけど、助けたいから助けたこともある。 それが、サーラの言う、「懸命に働き、神の恩寵なくとも乗り越えると努力する者」だ。 そう言う人たちは愚痴一つこぼさない。泣き言を言わない。ただ必死に動いて、事態を何とかしようと努力している。 そういう人たちをこそ、助けたいと俺は思う。 俺が俺を全面的に頼るエルフやドワーフから離れて世界を旅しようと思ったのはそう言う理由からだ。俺がいるから何もしなくても大丈夫、なんじゃない。俺がいなくなったらどうするか、それを考えてほしかった。彼らにはそれがなかったから、いなくなることで、考えてほしかった。(そう言うことだ) 守護獣はそう締めくくって意識を閉ざした。 あとは俺の判断次第と言いたかったんだろう。 さあて、どうするかなあ……。「分かった。君の望む所まで連れて行く」「望む、ところ?」「そう。ここから先は自分で帰れる、そう言うところまで送っていく。俺と君とはそこでお別れ。あとは何の関係もない」 少女は考え込む。「シンゴ」 ミクンが俺の太ももの辺りを叩いた。「あいつ、やっぱりあたしらを捕まえる気でいるよ」「だろうね」「捕まったらどうすんの」「逃げる」 ミクンは最初きょとんとした目をしていたが、ぶっと噴き出し
last updateLast Updated : 2026-02-02
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第137話・信仰

 どうやら飛ぶだけの体力はまだ戻っていないようなので、ブランに乗っけてぽっくりぽっくり歩く。 フェザーマンの少女はブランの綱にギッチリ捕まり。揺れながらこちらの様子を油断なく見守っている。(本気で捕まるつもりか?)(放っておくわけにはいかないだろ。結局のところ奈落断崖を目指すんだし)(奈落断崖……フェザーマンの棲み処がどのような所か、調べて見たまえ) また訓練かあ。 頭の中でM端末を動かし、ヘルプで奈落断崖を調べてみる。【奈落断崖:フェザーマンが棲み処とする大陸北東にある断崖絶壁。地球の数値で千メートル近い高低差がある絶壁に空いた穴を棲み処とする。空を移動する手段がなければその棲み処に辿り着き、出入りすることはできない】(いざとなったら自在雲を使うさ。……サーラ、フェザーマンには随分厳しいね) ハーフリングのミクンにはあれだけ優しかったのに。(私は人を信仰心では図らない) また気温が下がった……。(守護獣だから神への信仰心が第一だと思っていたけど)(無論それは必要だ。だが、人間の価値は信仰心にあるわけではない) ピリピリと電気に近い感覚がする。(どれだけ日々を真面目に懸命に生きているか。そして、どれだけ神に頼らず生きていることかだ)(神に頼らず?)(神は常に見ている、だから信仰心篤い自分は助けてもらえると彼女は考えている) それは分かる。日本人は無神教。と言うかこの世にある全ての存在に八百万の神が宿るから神は当たり前にいて見ているからこそ,「お天道様が見ている」、悪いことをしてはいけないと言う考えがあるのだとおじさんは言っていた。(シンゴの叔父の考え方は非常に正しい。神はいる。だから己を律しなければならない。それが本当の信仰心だ。神はいる。神を信じている。だから神は自分の願いをかなえてくれるという考えは、神の僕として、到底認められるものではない) つまり、サーラがフェザーマンの少女を認めないのは、神がいるから自分たちを優先にしてもらえるという考えが気に入らないからだってことだ。 ……そういやまだ名乗ってももらってない。(そう言うところも気にくわないのさ) サーラの不満そうな思念。(助けてもらっておいて名乗らず礼も言わず送って行けと言いその挙句こちらを罠にはめようとしている。そう言うところだ)(じゃあ、自在雲なんか出
last updateLast Updated : 2026-02-03
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第138話・グリフォン

 てくてく歩く俺たち、つい空に目が行く。彼女がどうして空から落ちて来たのか分からない以上、空に警戒が行くのは仕方ない。せめて彼女が落ちてきた理由さえわかればなあ……。「こっちでいいの?」 フェザーマンに聞くと、彼女はそっぽを向いたまま頷いた。 う~ん、感じ悪い。 サーラはもう話す気もないらしい。こっちもそっぽ向いたまま歩いている。 ブランも何度かいつもの鳴き声じゃなくて溜め息のような鼻息を漏らしながら歩いている。時々身をよじらせるのは、彼女を乗せているのが嫌なんだろうか。一応神獣にカテゴライズされるから、神への信仰心を持つと言いながら自分にも敬意を払わずに図々しく乗っかっているのが許せないらしい。 とりあえず他のフェザーマンに会って、彼女を託すだけでもできればなあ。捕まっても問題はないけど気分的に嫌なものがある。このまま歩いて行けば彼女に奴隷商人扱いされて閉じ込められると思うと……やっぱ気が重いなあ。はあ。 ブランの頭をぽふぽふと叩いてやると、ブランはぶふんと鼻息をついた。「分かってる」と言いたげに。「いい子だな、ブラン」 俺の腕に鼻を押し付けてから、ブランは前を向いた。「獣を手懐けるなんて」 小さな声が聞こえたので、俺は彼女の方を向いた。「手懐けたら何か悪い?」「純粋な獣を悪行に利用するなんて」「…………」 俺はブランの首筋を叩いてやって、それ以上喋ることはないと歩き出した。 本当にここから放り出してやろうかなとも思った。だけど、それは俺がやっちゃいけないことだと自分を律した。 おじさんもいつも言ってたしな。見返りを求めて人を助けるなって。 その時、空が陰った。 警戒して空を仰ぐ。 大きな翼を持った……フェザーマン? いや違う、もっと大きい! 腰に下げている剣はオレが【再生】した普通の剣だ。この程度いくらでも【再生】【創造】できるけど、剣はぶん投げて攻撃するものじゃない。「みんな、上!」 俺は叫んで警戒を促した。 全員がばっと空を見上げる。 一気に降下してくる翼持つ何か。 スキル【遠視】でじっと見上げる。 血のついた鉤爪! 咄嗟に全員散った。 落下スピードと体重を合わせた一撃を辛うじて避ける。 鷲の頭と肉食獣の胴体、そして馬鹿デカい翼を持った獣……確か昔、ゲーム好きの友達に聞いた覚えがある……グリフォン
last updateLast Updated : 2026-02-03
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第139話・家畜

「ちょ、待っ」 鉄に革を貼った小型の盾で身を守りながら、俺は少女に怒鳴り返した。「これ、あんたの飼いグリフォン、なんだろっ?! なんで、こっちを、襲って、くんだよっ」 飼いグリフォンと言う呼び方が正しいかどうかはさておいて、彼女とグリフォンの目的が分からなければ反撃にも移れない。「そ、それは……」 ごにょごにょと黙り込んでしまうから、反撃できず逃げたり防いだりするので精一杯。「ミクン!」「こいつ、怒ってる。なんか知らないけど、その娘に、すっごい怒ってる!」「怒ってるぅ?!」 小さな体で器用に爪を避けながら、ミクンはグリフォンの意図を読み取る。「うん、そして、あたしたちに! なんでその娘を助けるんだって! あ、今……」 グリフォンの頭に手を置いて飛びのきながら、ミクンは叫んだ。「その娘を置いて帰らなきゃ、全員ぶっ殺すって怒ってる!」 うわあ……。「サーラ、グリフォンはフェザーマンの家畜なんだろう?! なんでミクンが言うだけ怒ってるんだ?!」「知るか」 サーラは冷たい。だけど。 グリフォンが嘴を開いて襲い掛かってきたのを避け、サーラはそっとグリフォンに手を当てた。「ぐるる……しゅるうっ!」「落ち着け」 とん、とんとグリフォンの嘴を叩いてやる。「よし、いい子だ」 ふーっ、ふーっ、と息を吐くグリフォンの嘴を撫でてやり、頭を撫でてやる。「な……な……」「おー。落ち着いた! さすがはサーラ!」 ミクンがパチパチパチと手を叩いた。 グリフォンはぎゃあぎゃあと叫んでいる。だけど敵意は感じない。何かをサーラに訴えている。「そうか。そうなんだな。よしよし、よく耐えた。いい子だ。お前があんな主に怒って主殺しの罪を着ることはない。な?」「主殺し?」「ああ。この子はそのフェザーマンを仕留めようとしていて、守ろうとする我々が彼女の味方だと思って怒ったらしい」「な、何を、何を出鱈目言ってるのよ! グリフォンがそんな考え持つわけないじゃない!」「ううん、思ってるよ」 生物の意図を読み取れるハーフリングの言葉に、フェザーマンは青ざめる。「その子、すっごくあの子を嫌ってる。死んじゃえばいいって思ってる。でもどうして? 普通家畜になる獣って、そこまで狂暴なのはいないよ? そりゃあ世界が滅びかかって人間のほとん
last updateLast Updated : 2026-02-04
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第140話・僕と主

「共に行動する生物を大事に扱わない主が、僕に好かれるはずがない。ましてやこの窮地に共に生きる同種とも暮らしていけるはずがない。それで奈落断崖から追い出されてグリフォンにも嫌われて空から突き落とされた、そうではないか?」 うぅーわぁ。 こう来たかあ。 同種にも嫌われて僕にも憎まれて。 行く当てもなかったから、奈落断崖に連れて行けとも言えなかったんだろう。「さて、どうする、シンゴ」 サーラがグリフォンの頭を撫でながら言った。「この娘、連れて行けばフェザーマンの反感を買う。同種に追い出された娘だからな。それとこのグリフォンの処遇。如何に嫌っているとはいえ、主を害した家畜は元の家には戻れない」「自由に生きることはできないのか?」「アシヌスで考えてみればいい。ドワーフに仕えるために生み出されたアシヌスがドワーフに見捨てられて、生きていけると思うか?」「そうだな……」「な、何を言っているのよ! 主を傷つけた家畜を放置しておく気?!」「家畜を傷つけた主は放置していいか」 サーラの冷ややかな声にミクンが提案する。「ここにおいてく?」「ハーフリング如きが!」「このグリフォンちゃんにも言ったんでしょ? 捨てられたくなければ役立てって。グリフォンちゃんはあたしたちの役に立つかもだけど、あんたは何一つとしてあたしたちの役に立たない」 フェザーマンの顔色が青を通り越して白くなっていく。 グリフォンはのしっのしっと歩いて、サーラから俺の所に来た。 そして、翼を折り畳んで、地面に伏せ。 頭を下げた。「サーラ?」「僕にしてくれと言っているんだ」「この子が?」「そう。シンゴのことが分かったらしいな。レーヴェとも騎士の誓いを交わしているだろう? あれと同じ。シンゴを主としたいと言っているんだ」「わ、わたくしが主よ! 主なのよ!」「主と言うなら僕に絶望をさせるな」 サーラはもう少女の方すら見ない。 グリフォンはその体勢のまま、俺を待っている。「いい子だから、頭下げんな」 俺は膝をついてグリフォンの頭を撫でてやった。「お前は何にも悪くないから、頭下げなくていい。ついてきたいならついてくればいいし、嫌なら逃げればいい。好きにしろ。お前の自由だ」 グリフォンはパッと頭をあげた。 目を見開いて、嘴を開いている。人間で言うなら「ぽかん
last updateLast Updated : 2026-02-04
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第141話・平手打ち

「な、な、な」 ヤガリがじっとフェザーマンの少女を睨みつける。「げ、下賤なドワーフごときが、この気高きフェザーマンに……」「何処が気高いんだ」 ヤガリに言われ、フェザーマンは頬を抑えながら口を開こうとする。が。「空が飛べるから気高い? 信仰心が高いから気高い? ふざけるな。おれたちには空の知識はないが大地の知識はたくさんある。そしてお前がロバの分際で、と侮辱したアシヌスは、生神様が直々に創造して、おれたちドワーフに授けてくれた神獣だ。それが分からないのは仕方ないとしても、他人の獣に乗せていてもらってそれを侮辱するなんておれは許せない。お前を許さない」 ヤガリの形相とその手の戦斧に危険を感じたのか、地面に落ちた少女はずりずりと下がる。「い、生神様がドワーフの所に降臨するなんて……ドワーフに直々に聖獣を授けられるなんて、そんなことはあり得ませんわ! それならば今困っているわたくしの所に降臨なさるはずですわ!」「それはあり得ないな」 そっぽを向いたままサーラ。「神は信仰心で人を選ぶのではない。懸命に生きている者の所に降りてくるものだ。そもそもお前のは神を信じる心ではなく神を信じていれば何かいいことが起こるはずという我欲だ。そんな者に神は御力を授けられない」「な、なんですの、知っているように仰って! 貴方達のような下賤な者に、神を語る資格はありませんわ!」 その時。 バサッバサッと言う羽音。しかも複数。 見上げると、そこにいるのは五頭のグリフォン、しかもそれぞれ誰かが騎乗している。 おれたちと少し離れた場所に降り立ったグリフォンには、それぞれフェザーマンが乗っていた。「わ、わたくしを迎えに来てくれたのですね!」 少女は感激の涙にくれた。「グリフォンに落とされ、そこの奴隷商人に連れて行かれそうになったのです! 早く、駄獣と奴隷商人に罰を!」 一人の見た目俺とはあんまり変わりなさそうな年齢のフェザーマンが軽く翼をはためかせ、少女の所に行って……。  ぱしん! さっきのヤガリより強くその頬を叩いた。「お……にい……さま……?」 唐突な平手打ちに呆然としている少女に背を向け、青年は俺に向かって膝をついた。「申し訳ありません」 フェザーマンの青年が深々と頭を下げる。「この愚か者は私の妹です。さぞ不愉快な思いをされたことでしょう。お
last updateLast Updated : 2026-02-05
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