All Chapters of 生神様になったらめっちゃ思い通りになるんですけど: Chapter 251 - Chapter 260

305 Chapters

第252話・突然現れた

「エンドには我こそは守護者たらんとする人間が大勢集まってるんだろ? なら問題ない、フェザーマンを助けたお礼に神獣を手に入れた俺こそが守護者たらんと向かう分には問題がないんじゃないか?」「……確かに」 サーラが唸るのに、俺は首を竦めた。「このまま自在雲で行って姿を現せば、俺の正体なんて知っている人間にはあっさりバレちまう。それだったら、守護者希望として正面から行けば誰も疑わないだろう」「潜入調査か」「シンゴ一人?」 ミクンが聞いた。「アウルムならともかく、誇り高いグリフィンが同時に人間二人に忠誠を捧げるはずがない。一人蹴落とすだろう」「え? グライフに結構あたしとアウルムで乗ってるよ?」「グライフはシンゴに忠誠を捧げているからな」「ぐる、ぐる」「忠誠相手の命があれば乗せてくれるだろう」「ぐるるぅ!」 誇り高くグライフが鳴いている間にも眼下では隊商たちが傷付けられている。「じゃあサーラ、こっち任せた、俺地上ルートで行くから」「お兄ちゃん、気をつけてね」「アウルムもな。みんながいないと俺の力がなくなるんだからめいっぱい気を付けて」 手を振って、グライフに飛び乗って雲の操縦権をサーラに渡すと、俺は一気に急降下する。 悲鳴が聞こえてきた。     ◇     ◇     ◇     ◇「くっそう、勝てねぇ!」「誰だ、エンドなら商売できるって言ったのは!」「文句があんならついてくるんじゃねぇよ!」「叫んでる間があるなら戦えよ!」 愚痴と文句が次々に湧き出るのと同様に、魔獣も続々と湧き出てくる。 やっぱ、俺たち、エンドを甘く見てた! 最果ての地、守護者とも呼ばれる人間の強者たちが死物から世界を守っているある意味異世界。そこにはモーメントにはないものがあり、逆にモーメントにはあるのにエンドにはない商品を持ち込めば、と、悪友たちの計画に乗ったのがまずかった。 エンドまでまだ二週間以上はあるのに、こんな所で魔獣に襲われ、そして勝てないで……。 もしかして、ここで、死ぬのかな? 思わず天を仰ぐ。真っ当に商売していれば儲けは少なくても無事で生きられたはずなのに……。 ん? まっしぐらに、こっち目掛けて突っ込んでくる影。 まさか、空を飛ぶ死物が現れたとか? 魔物は空を飛べないと言うけれど、空を飛べる人間がいるんだから空を飛ぶ
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第253話・助けてくれた騎士

「大丈夫か? ケガは?」 グリフィンから飛び降りて聞いてくる青年に、俺はぽかんとしてその姿を見ていた。 地味なマントだけど、その下には白を基調として青のポイントが入った新品の服。 手に持つ剣は恐らく魔具。無窮山脈産と見た。 ヒューマンでありながら、グリフィンに乗って、無窮山脈の魔具を持つ……。 いや、盛り過ぎだろ。盛り盛りだろ。「おい、返事しろよ」 白いズボンが汚れるのも気にせず膝をついて俺を覗き込んでくる相手に、俺は目を見開いた。「あの……何処の……どちら様でしょうか……」 自分でも間抜けな一言だと思ったが、これしか出なかったんだからしょうがない。「ああ、自己紹介か」 相手は頷いて、人懐こい笑顔で笑った。「俺はシンゴ。守護者希望のヒューマンだ」 強そう、と言うよりは。 何て言うか、人の心にするっと入ってくるなと。「守護者、希望?」「そう。おかしいかな」「あ、いや……」「いやいやいやどうもどーうも助かりました! 貴方がいなけりゃ俺たち魔獣に食われて死んでたところでした!」 悪友の中でも一番調子に乗るハーフリングのトーノが手を揉みながらシンゴと名乗った青年の前に出た。「それにしてもすごいですねえヒューマンでありながらグリフィンに乗って魔具の剣まで持つ! 相当名の知られた方だと見ましたが如何!」「いや無名」「いやいやいやそんなご謙遜なさらずとも魔獣を散らした剣の腕は紛れもなくヒューマンの中でもトップクラスの方と見ましたが……」「やめとけトーノ」 ハーフドワーフのグルートンがトーノの首筋をひっつかむ。「命の恩人を質問攻めにするなんて失礼だ。しかも勝手な推測だ」 グルートンに言われ、トーノがしゅんとなったところで、シンゴと名乗ったグリフィン騎士は辺りを見回す。「仲間は全員無事か?」「あ……あっ」 リーダーでもあるグルートンが慌てて点呼に行き、俺も追いかけようとしてずきり、と腕が痛んだ。「あ。ケガ」 俺の右腕の引っかき傷に気付いたんだろう、彼はそう言って歩いて来た。「こんなもん、引っかき傷ですよ」「いや、魔獣に負わされたケガは注意したほうがいい」 騎士は引っかき傷で血がべとりと付いた腕に迷わず触れて。「回復」 と唱えた途端、痛みも傷口も傷跡すら消えた。「……ぇええ
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第254話・グリフィンに乗った騎士

 俺も使えるっちゃ使えるけど、擦り傷を治す程度でしかない。まず魔力の流れを言葉で具体的に治癒にイメージして、治る様子を想像しながら使わなきゃ効かない魔法を、一言、たった一言だよ? 一言で怪我を全治癒しちまった。 パねぇ。「えーと、まさかとは思いますけど……」 俺は考えて、そして口にした。「ハーフフェザーとか、そう言うのじゃありませんよね」「それはないよ。羽根ないから」 思わず騎士の後ろに回り込んでみたけれど、確かにマントのふくらみを見ても羽根らしきものはない。フェザーマンとヒューマンのハーフ、ハーフフェザーは多分この世界で一番少ない人種で、そして普段は羽根は見えないけど魔法を使う時、それが現れると言う。今魔法使ったけど羽根の気配もないし、てことはフェザーマンではないな。「……あ、あのっ」 グルートンの後を追おうとした騎士を、慌てて呼び止める。「何だい?」「俺、ヴェデーレと言います。あの……助けてくれて、ありがとうございました!」 深々と頭を下げた俺に、騎士は一瞬面くらったような顔をして、その後笑った。「気にすんな。偶然行き会って助けただけだ。守護者希望としては当然のことだろ?」 ニッと笑う彼は、最初現れた気高さとは正反対の、俺たちと同年代っぽい茶目っ気が入っていた。 結局、守護者希望の戦士三人が死んでいて、悪友共は悪友らしくしっかり生き残っていた。 ケガ人も多かったけど、騎士とクーレが手分けして治して、傭兵三人をそこに埋めて弔った。丁寧に弔ってやらないと、不死者として復活してしまう。クーレが聖域の魔法をかけて、少なくとも遺体が土に還るまで魔物を寄せ付けないようにした。騎士は両掌を合わせると言う、変わった祈り方をしていた。とても遥かな僻地に生まれて、そこでの祈り方なのだと言う。「騎士様は……」「シンゴ」 グルートンの呼びかけに、騎士が苦笑した。「俺は騎士なんかじゃないよ。シンゴ。ただのシンゴだ」「いやーただのって割には只者じゃないオーラが駄々洩れなんだけど……」 グルートンがトーノの頭を軽く叩く。軽くとは言えドワーフの母親譲りの怪力なので、小さいトーノは軽く吹っ飛ぶ。「人の言うことを聞いていたか?」「ごごごごめんなさいいいいい」 プッと騎士……シンゴが噴き出した。「エンドに行く人間
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第255話・共に

 目の前の騎士シンゴは、ニコニコと笑いながらグライフと言う名のグリフィンを撫でている。「えーと、シンゴ殿はこれからどちらへ……」「エンドに決まってるだろー?」 トーノが声を跳ね上げた。「こんな辺境、俺たちに気付いたってことは、空をまっすぐにエンドに向かってたってことだろ? 本人も守護者希望って言ってるし!」 黙れ、とグルートンが頭に一発、クーレが腹に一発入れた。「すいません、うちのお調子者が」「気にしないから。大丈夫」「あの……失礼にならなければいいんだけど……」「ヴェデーレ?」「エンドに、俺たちと一緒に行ってくれませんか?」 悪友共が目を丸くし、ふむ、とシンゴは顎に手を当てる。「空を飛べるあなたなら、ここからエンドまで……一週間くらいでつくかもしれないから、遠回りになってしまうけど……」「そ、そうだ、一緒に来ていただけないだろうか」 グルートンが慌てて口添えし、クーレがうんうんと頷く。 頷く俺たちを見て、シンゴは聞く。「どうして、俺を?」「強いからだよ」 またもやトーノ。「お前黙ってろ。俺たちはエンドに向かう隊商です。……と言っても、今回が初めて。世界を守るために戦っているエンドなら売れるものもあるか、と思ったエンド行の人間の寄せ集め。行商人ギルドが崩壊しているからこんなこともやれるんですが……」 ああ違う、言いたいのはこんなことじゃないのに。「戦闘に強い守護者希望があっさり三人殺されました。仮にも守護者希望と呼ばれる人間が、あっさりと。……決して守護者希望の三人が弱かったんじゃないんです。この三人がいれば確実にエンドまで辿り着けると思えるほどの実力者だったから。だけど、三人ともあっさり殺られた。俺たちだけで進むのは不可能。かと言って、戻ることも……」「……確かに、貴方達だけで戻るのは不可能だな。エンドへ行って、エンドを去る人たちと一緒に行った方が安全だろう」「そう、そうなんです、俺たち、前に進むしかないんです。でも、前に進む戦力がない……」「それで、俺を護衛にスカウトか……」「と言っても、今の俺たちに貴方を雇う金はない。俺たちの金はエンドで売る様々な雑貨で尽きたから、エンドに着くまで何も出せない。せいぜい食い物が出せるくらいです。それも旅用だから大して美味いものじゃないし」「うん、食べ物は自分の分持ってる」
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第256話・物好き

 う~ん、とシンゴは考える。 こっちに女が一人でもいればそれをあてがうって手段もあるけど、残念ながら全員男だ。もう泣き落としか打つ手はない、と思っていたところ。「いいよ」 シンゴはニッと笑った。 全員……悪友含め、商売、守護者希望、学者、そんな十五人は思わず手を叩いた。「報酬は要らない。そもそもエンドに行く予定だったんだから」「え? そんな。雇うって言ったのはこっちなんだから、金が出来たらすぐにでも……」「元々金に困ってるわけじゃないんだよ」 シンゴは腰の魔剣をパシンと叩いて示した。確かに。グリフィンに乗れるなら、空を翔けて何処へでも行けるしあの剣の腕前と魔法の腕前なら雇いたい人間は山のようにいるだろう。「世界を守るために何かしたいと思って、あちこちを旅して、最終的にエンドに行くのがいいと思ったから、来ただけ。エンド近くの魔物の実力を知っておきたいってのもあったし」「いや、しかし」「それでも俺を雇いたいって言うなら、吹っ掛けるよ?」「え」 トーノが絶句した。 確かに、吹っ掛けられても仕方ない状況ではある。 こっちは戦力不足で、三人の戦士の穴をシンゴ一人で埋めようとしている。一人で三人前の戦いを期待されているのだ。しかもシンゴはグリフィンで安全な空を翔け、エンドへ真っ直ぐ行くことだってできる。そうされたら俺たち全滅必至。三人分どころか五人……十人分吹っ掛けられても文句は言えない。 それを、無料で来てくれると言う。 金を出すなら吹っ掛ける……つまり金を受け取り気がないって言ってる。 これだけの好条件取引はない。 だけど……。「本当に……それでいいのか?」「いいって言ってるだろ」 にこにこと笑いながらシンゴは言う。「グリフィン空飛ばなくても大丈夫?」「グリフィンは地面も歩ける。問題ない」「じゃ、じゃあ、一緒に行きましょ! そうしましょ! 空から見えない景色が地上で見られるかもしれないし!」 トーノがずいずい進めるので、俺たちはトーノを引きずり戻した。「なんでお前は押すばっかなんだよ! 引くことも考えろ!」「幸運の女神ベネデイク様の教えには、好機はつかんで離すなと」「離さなさすぎ!」 プッと噴き出した後、高らかな笑い声。「シンゴ、殿?」「呼び捨てでいいって」 笑いすぎて出てきた涙を拭って、シンゴは言った。
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第257話・謎の強さ

 シンゴを加えて再開した俺たちの旅。 エンドがどれほど恐ろしい場所か思い知らされた。 魔獣が平気な顔をして街道に出てくる。魔族が魔獣を率いて襲いかかってくることもある。世界が滅亡に向かっていると言われている今、世界中で魔獣魔族の出現報告が聞かれるけど、エンドが頑張っているお陰で西と比べて東は侵攻が遅いと言われている。 西は森エルフの大樹海、ドワーフの無窮山脈、ヒューマンのビガスが落ち、フェザーマンの奈落断崖も危険だという情報があったけど、西から来たと言うシンゴは、何とか立ち直っているらしいと言った。 大樹海、無窮山脈、ビガスは世界でも有数の生産地だ。そこがやられたら東もアウトだとも思われたけど、シンゴの持ち物が、彼の言ったことが真実だってことを物語っている。 やっぱり、シンゴの持つ剣は無窮山脈で産出、鍛えられた魔具だった。無窮山脈の武器は何十年も前に失われたと噂になったけど、シンゴの持っている魔剣はどう見ても新品のようで、更に守護と攻撃の印、ドワーフの守護獣だと言う火蜥蜴の紋章すら刻まれていた。最高級の武器の証。そんな武器を持っているのは国クラス。それを一個人であるシンゴが持つのは、何か無窮山脈の弱みを掴んでいるかそれともそんな武器をドワーフが預けたくなるほどの功績を持っているか。 しかも、フェザーマンにしか懐かないはずのグリフィンが、シンゴに滅茶苦茶懐いてる。 シンゴはグライフに一番後ろを任せた。先頭と背後は一番危険だけど、シンゴは自ら先頭に立ち、グライフが命じられるまま一番後ろを歩いている。 普通、どんな獣でも、所有者が傍にいなければ逃げたり暴れたりするもんだけど……グライフは胸を張って荷馬車の後ろを歩いている。 グライフは敵意や魔の気配に一番敏感だから、と、シンゴは後ろにやった。「グライフ、後ろは任せた。何かあったらお前がこの人たちを守るんだぞ」 と言い聞かせたシンゴに、グライフは、「ぐるるぅ!」 と一鳴きして応えた。 ちゃんとした主従関係……いやそれ以上に深い信頼関係が結ばれている。「一体どうしてグリフィンに乗ってるんですかあ?」 と少しも躊躇わず聞いたトーノに、シンゴも躊躇わず、「助けたら懐いたんだよ」 と答えた。 何でも、旅の途中、傷付いたフェザーマンとグライフを助け、奈落断崖へ送り届けたという。
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第258話・道具箱

 人を持ち上げたりヨイショするのが得意なトーノだけど、そう言う時は大体敬語になる癖がある。そのトーノが敬語忘れるほど興奮するってどんな戦いぶりなんだ。 幌馬車の上で興奮して踊りまくっているトーノを見上げて、身体の軽いハーフノームのクーレも何とか幌馬車の上に登った。「うわ……」 クーレが絶句する。「どうなんだクーレ!」「トーノの言った通りだ、これだけ強い人間に初めて会ったかもしれない」「苦戦とか、ケガとかは?」「全然! 触れる魔獣すら存在しないよ!」「くそ、見たい」 グルートンが唸った。ハーフドワーフのせいで普通の人間よりも体重が重いグルートンは幌に登れない。俺もヒューマンだけど体重軽い方じゃないから登ろうとも思えない。 何人かの同行者も幌の上に登って、応援したり騒いだり。 で、トーノが言うには華麗に魔物をフルボッコしたシンゴは、木壁消して、苦い顔を向けた。「魔物の興味を引かないために木壁作ってるのに、上によじ登って大騒ぎされたら魔物の気がそっちに向くだろ」「……はい」「見るなとは言わないけど、あそこまで大騒ぎしちゃいけないよ。飛べる魔物はいないけど、跳ねる魔物はいるんだからね」「すいませんでした……」 さすがにジャンプする魔物の存在を忘れていたトーノはしゅんと耳を伏せた。「まあ、今回も怪我人がいなくてよかったけど」 周りを見回せば、平穏なのは荷馬車の周り、木壁があった内側だけで、外は魔獣や魔物の血であちこちが染まっていた。 十数体の魔族がそこに倒れている。 これを、あれだけの時間で、一人と一頭で、倒したって言うのか? マジすげぇ、パなさすぎ。 本当、誘ってよかった。 でないと、血に伏しているのは魔物じゃなく俺たちだったからな。「こいつら、なんか使う?」 シンゴがチラリと死んだ魔物たちを見た。 トーノが、「さて、さて、さて」と揉み手をしながら魔物の死骸を漁る。「うおうラージウルフ……こいつの毛皮は冬にいいんだ……アザーカーバンクル! こいつの宝玉は高く売れるぜ? それと……」「トーノ、あんまり時間かけるなよ」 グルートンが声をかけた。「まだまだ道のりは遠いんだ。第一、俺たちの荷馬車は一杯だ。大物は無理だぞ」「荷物だったら」 シンゴの
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第259話・最後にいい思いを

 夜が来た。 とりあえず交代で寝ることになったけど、シンゴは順番決めには入れなかった。 シンゴは出会ってから今までに五戦ほどして全勝している。 当然、疲れていないはずがない。 本当なら休んでほしい。だけど、魔物が襲って来たら……。「神獣の敏感さを舐めちゃいけない」 グライフに道具箱《アイテム・ボックス》から出した生肉と水をやりながら、シンゴは笑った。「グライフが敵の存在に気付かない時はない。君らと会った時も、気付いたのはグライフだったろ?」 自分は柔らかいパンと水と炙り肉を食べながら、シンゴは平然と言う。「グライフと一緒にいる限り不意打ちはあり得ないよ。でも心配なら起きていればいい。何か心配だったらいつでも起こしてくれ」 と、食事を終えたシンゴはグライフの腹に頭を乗せるとそのまま眠ってしまった。「エンド街道で眠れるなんてすげぇな」「実力のある人間は違うよなー……」 ぐぅ、と眠ってしまったシンゴを見て、みんな感嘆の言葉を漏らす。「じゃあ、こっちは交代で見張るかあ……」 真夜中すぎ、俺の番の時だった。「ふぁああ……」 小さな欠伸をしてシンゴが起き上がったので、俺はビクリっと反応してしまった。「て、敵?」「大丈夫。魔物の気配もなくグライフも寝ている。単に俺が目を覚ましただけ」 ほっとしたのが顔に出たんだろう。シンゴはちょっと笑って、俺が座っている焚火の向こう側に座った。 いきなり目の前に現れたグリフィン騎士とじっくり話ができる機会がやってきた。 色々聞きたいことがあったはずなのに、目の前でこの好青年を見ると、何も言葉が出てこない。 シンゴが枝先で焚火をいじりながら、口を開いた。「ヴェデーレは、何でエンドに行こうと思ったんだ?」 まさかの向こうからの質問に、俺は何と答えるか悩んだ挙句、素直に言うしかないなと思った。「悪友に誘われて」「へえ?」 ちょっと面白そうな顔をして、シンゴは先を聞いてきた。「いや、俺本当、エンドに行くみたいな真似したくなかったんだよ。俺は平和で平穏で生きてきたかったから」「うん、それ、分かる」 顔は平和に見える。こうして焚き火に当たっていると、ごくごく平穏な環境で幸せに生きてきたんだろう育ちの良さがうかがえる。 でも、この人は滅茶苦茶強い。剣も魔法も。 一体どんな人生を歩いてきたんだろ
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第260話・協力

「そんな刹那的な考えしかなかったのかな」焚き火に照らされたシンゴの表情は、何処か影を宿していた。「世界が滅びないようにしよう、とか、考えなかったのかな」「世界が、滅びないように……?」「ああ。俺は、モーメントがゆっくり沈んで行っていると思う。世界が滅びようとしていると言っても、海が荒れたとか、地面が揺れたとか山が火を噴いたとか、そう言うんじゃないんだろう? 確かに魔物の被害は甚大だけど、東の方じゃまだ人間主体の場所は多いと聞く。世界がゆっくり滅びているんなら、少しでもそれを留める方法を考えはしなかったのか。モーメントが船で、ゆっくり沈んで行って逃げる場所がないのなら、船に入ってきた水をくみ出したり、穴を塞いだり、そう言うことができるんじゃないか、とか」「……考えなかったな」「俺は考えて欲しいと思う」 シンゴの目は真剣だった。「自分たちが住んでいる世界なんだから」「……そうだな。トーノは世界の為になるとは言ってたけど……」 エンド行を提案したのはトーノだった。 絶対エンドを守っている人たちはうまいメシとか回復魔法とか女とかに飢えてるから、それを売ってエンドにしかない魔物の革とか宝石とかを手に入れて戻ってくれば大儲け、と。これなら世界を助けるためにもなるから、と。「……それって世界の為になるのかな」「俺もよく分かんない。まあトーノの言うことだから、適当な思いつきなんだろうけど、俺も確かに、ただ街でゆっくり沈んでいくのを待っているよりは、何処かへ行った方がいいんじゃないかな、と思ったんだ。だからエンド行に同意した」「じゃあ、ヴェデーレは今の状況が良くないと思ったのか?」「少なくとも、このままじゃ沈む、とか思ってた」「そっか」「……俺も聞いていい?」 シンゴが顔をあげる。「何?」「西から来たって言ったよな。西は魔物がたくさん出ているって言うけど、どんな感じ?」「種族同士が協力してる」 シンゴは西の様子を教えてくれた。 大樹海の森エルフ、無窮山脈のドワーフ、ビガスのヒューマンが生み出した木材、薬草、鉄鉱石、食糧をフェザーマンが西地域全体に行き渡るようにしている、と。魔物のいない空の輸送だから食糧も武器も魔物に渡ることなく、西は魔物と対抗する力を養っていると。「すげえ」 としか言いようがなかった。 ドワーフとエルフの仲の悪さ
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第261話・流れ流れて

「何でそう思う?」 聞かれたシンゴの腰を俺は指した。「その魔剣。攻撃と防御の護りの他に守護獣印まで入ってんじゃん。ドワーフの創る魔具としては最高級品の証だよ」「へえ。そうなんだ」「そうなんだってあんた」 思わず声を張り上げようとして、みんなが寝ているから、と口を塞ぐ。「その剣は、普通に手に入れようと思って手に入るものじゃない。金で買うなら国レベルの権力と財力がないと手に入らないんだよ」「へえ、そうなんだ。これやるって言われてもらったから」 他意があるようには見えない。本当にくれたからもらった、と言う顔だ。「やっぱシンゴ、西でデカい仕事したんだろ」「大した仕事はしてないよ」 シンゴは頭を掻いた。「大樹海の長老と無窮山脈の大親方とビガスの街長とフェザーマンの長を会わせる手伝いしただけで」「それだ」 自覚ねーってすげーな。 四種族の長を同じテーブルに付かせて協力させるなんて、半端なく大変な事なのに。 てことは、シンゴは西の四種族の救い主。三大生産地とフェザーマンにどデカい貸を作ってることになる。 そりゃー魔剣もグリフィンも持ってるわ。そんだけのことしたんだもん。 もっとも、本人にその自覚はないようだ。 当たり前のことを当たり前にやっただけ、と言う顔。「シンゴは……」 俺は思わず聞いていた。「何処から来たの」「何突然」「いや、なんか大陸の人間っぽくないから。……僻地から来たって言ってたけど、どんな場所?」「地図にも乗らないような場所だよ」「そんな辺鄙?」「うん。ヒューマンしかいない場所。でも基本はここと変わらない。いいヤツがいて嫌なヤツもいて、そこで普通に暮らしてた」「でもシンゴ、普通じゃないでしょ」「普通じゃない?」「魔剣とグリフィン持ってる時点で普通じゃない」「流れ流れて、それでも前進してここまで来たからなあ」「流れ過ぎでしょ」「元の場所に帰れなくなったから、何すればいいか分からなくて、目の前のことを必死でやってただけ。必死で一歩一歩歩いてきただけ。結果は後からついてきた」「目の前のことを、一生懸命か……」「うん、だからさ、俺、さっきみんなが刹那的になってるって言ったでしょ? 世界を救うことを考えられないかって。でも、沈んでいる船にずっと乗っているよりは、何でもいい、行動に移しているのはいいと思う。
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