All Chapters of 生神様になったらめっちゃ思い通りになるんですけど: Chapter 261 - Chapter 270

305 Chapters

第262話・盾

 魔族。 死物の中じゃ三番目……いや、魔神は存在してるかどうかわからないから、この世界では二番目に強い。 そんなヤツを相手にして……勝てるのか?「みんなを起こさなきゃ……」 動きかける俺をシンゴが止めた。「向こうにこっちの警戒がバレる」「でも、シンゴ一人で……」「俺とグライフがいれば大抵の死物は倒せる。でも、みんなの安全が確保されていなければ俺は安心して戦えないんだ」 無給の無休で俺たちを助けてくれるんだ。 どれだけお人好しなヒューマンなんだろう。「【石壁】を使う」 これまで俺たちをガードしていたのは【木壁】だったのに。 それって、つまり。「相手がヤバくて、みんなが動かない状況……つまりあの時のトーノたちのように大騒ぎされたら勝てないんだね?」「悟るのが早いね」 うん、とシンゴは頷いた。「【石壁】の方が音を通さないから。護りも硬いし。ヴェデーレは……」「俺に何かできることってない?」 俺は真剣に聞いた。 俺は弱い【回復】程度しか使えない。戦闘能力も低い。前衛にも後衛にもなれない。 でも、俺たちの危機にシンゴを巻き込んだのは俺だ。 何でもいいからできることをしなきゃ……!「ない……いや……ある、か?」 シンゴは首を傾けて考えていたけれど、俺に向き直って聞いた。「ヴェデーレは、口、堅い?」「え?」「口」「……トーノと一緒にしないでくれ。俺は、命の恩人が秘密にしてくれって頼んだことを喋り回るほど常識知らずじゃない」「そっか」 シンゴは、下に着ている服と比べたら随分地味でくたびれた印象のマントの下から、円形のものを取り出した。 なんだ、これは。 巨大な鏡のように見えるけど。「この盾の陰で隠れていてくれ。そして、俺が苦戦するようであれば、こう言うんだ。『自分も倒せないヤツがシンゴを倒せるわけはない』とね」 あ、あれって盾だったのか。だとすると間違いなく魔具だな。普通の鏡よりはっきりものを写す盾なんてないもんな。 と、考えて。 シンゴの言葉を思い出し。「それって……」 俺はたっぷり五秒、絶句して言った。「囮?」「そう。でも安心して、君に絶対害はない。この盾の陰にいる限り、君を傷つけられるものは存在しない。信じられない
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第263話・ダークエルフ

 現れた相手は、一見エルフに見えた。 整った顔立ち、尖った耳、そして凍える様な魔力。 でも、死物のエルフは存在しない。 存在するのは……。「ダークエルフか」 シンゴが呟いたのに、黒いマントを羽織ったダークエルフは笑った。「如何にも。私はダークエルフだ」「魔族……いや、魔人?」「この場で私は魔人になる」 ダークエルフはニヤッと笑った。「この場にいる人間全て滅ぼして」「おかしいな」 シンゴがぽつりと呟いた。「エンドの守護者が魔人にすらなろうと言う死物を見逃したと言うのか?」「おや、見た目と違って勘が鋭いようだ」 ダークエルフは感心したように言う。「だが、お前たちが真実を知る必要はない」 杖を突き出す。「真実を知る必要はない、か」 シンゴも剣を構えた。「なら聞き出すまで」「魔具を持っているとはいえ、たかだかヒューマンの剣士が、ダークエルフを倒せると?」 そうだ。 ダークエルフの魔力の強さは、エルフをも上回るかも、と言われている。 シンゴがいくら強くても、魔具がいくら強くても、魔法の攻撃をどうかわすのか……。「【木鞭】」 ダークエルフが呪文を唱えると、無数の木の根が地面を割って現れた。 ひゅん、ひゅんと空気を叩き、しなりながら、シンゴを狙う。 しかし、シンゴは驚いても慌ててもいなかった。 とん、た、とんっと狙ってくる鞭を足場にして空中を軽々と移動する。「ふん」 ダークエルフが機嫌が悪そうだ。「エンドまで来るだけあって、【木鞭】程度であれば逃げられるようだな」 しなり、その胴体を目掛けて飛んできた木の根を、シンゴは魔剣で叩き斬った。 先端を失った根がへなへなとしおれる。「こういう魔法は使って欲しくないんだよね」 シンゴも機嫌が悪そうに言った。「生物を死物の魔力で操るような魔法は。でもまあ、【木鞭】か。使えそうだな。覚えとこ」 そこには焦りも警戒もない。 とても、魔人にもなれるような死物を相手しているようには見えない。「逃げるだけか、ヒューマンの剣士」「そりゃ逃げるでしょ」 飄々と逃げたりかわしたりしながらシンゴは言った。「遠距離攻撃食らってる時にどうやって接近戦挑むんだよ。だから俺もこうする」 シン
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第264話・魔法剣士

「何だと?!」 流石のダークエルフが絶句する。「わ、私から支配権を奪うとは……!」「そりゃ、木の根って言う生物が死物と生物どっちの命に従うか、って言われれば俺に従うでしょ」「ぐぅう……」 ダークエルフは唸る。「貴様、【木鞭】を知らなかったはずなのに、一目見て覚えるとは……! 一体何者だ!」「生物、ヒューマンだよ。クラスは敢えて言うなら魔法剣士?」 確かに【回復】や【木壁】を操れるシンゴは魔法剣士と言うに相応しい。 魔法剣士は一般にはどっちかって言うと魔法も剣技も中途半端なイメージがあるけど、シンゴはその両方を極めている。強い。「これで接近戦ができるな」 木の根に乗ったままダークエルフの前に飛び降りて、剣を突き突ける。「さて、どうする?」「【水矢】!」 ダークエルフは水の矢を生み出して、シンゴを狙う。「おっと」 シンゴは空を切る水を剣で斬る。熱を宿した剣は水の矢を蒸発させる。「くそっ」 ダークエルフは悪態をついて水の矢を顕現する。 四方八方から、ダークエルフが立て続けに矢を放つが、シンゴは苦労せず斬り捨てる。「【水矢】ね」 シンゴはニヤッと笑う。「これも覚えた」「なっ」「【水矢】!」 シンゴが叫んだ瞬間、ダークエルフが作り出した倍近い矢が現れて、ダークエルフに曲線を描きながら飛んでいく。「【炎壁】!」 ダークエルフの炎の壁が矢を蒸発させる。「【炎壁】ね。これも覚えた」「く、ぅぅぅっ」 ダークエルフは歯噛みする。どんな魔法を使っても、シンゴに使われそうだと思ったんだろう。事実、シンゴは【木鞭】【水矢】と立て続けに学び、多分【炎壁】も覚えている。 一体どんな魔法を使ってんだ、シンゴは。 精霊系の魔法じゃない。精霊系の魔法は魔力を精霊の力によって形にする。強大な魔力がなければ、あんなに立て続けに違う魔法を使ったりできない。俺が最初シンゴを翼魔法の使い手と思ったのは、神系の魔法の使い手は弱体化していたからだ。精霊系では不可能なほど強い魔法を
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第265話・挑発

「うおおおおおおお!」 ダークエルフが吠える。「ヒューマンごときが……馬鹿にするなぁっ!」 ぞおっとするほどの魔力が溢れ出す。 まともに受ければ身体がおかしくなりそうなほどの魔力に、シンゴは平然と身をさらしている。 俺に影響がないのは、シンゴの盾のおかげだろう。 だけど、シンゴを巻き込むほどの魔法と来たら、【石壁】で守られているみんなも危ない。 シンゴに頼まれた約束、果たすのは今だ。「はっ、はんっ!」 俺は無理やり声を絞り出した。「ここにいる俺一人すら殺せないヤツが、あいつを倒せるはずないだろ!」 今まで俺のことに気付いてなかったらしいダークエルフが、俺の方を見る。「まだいたのか……人間」「ずーっといたよ、ここに! 気付かなかっただろうけどね、魔人になれそうな魔族さんは!」 ダークエルフは一瞬顔色を失った。 その後、その顔に血が上ってくる。「ヒューマンごときがっ」 ダークエルフは、俺に気付いていなかった迂闊さと、気付かなかった相手に馬鹿にされた怒りで、完璧に意識が俺の方を向いた。「ならば死ね、【炎爆!】 凄まじい熱が俺目掛けて襲ってきた。 シンゴは言っていた。この盾の陰にいる限り俺は無事だって。 信じる。俺たちのために戦ってくれたシンゴを。 信じる! 熱風が来る。来る……来た! その時、不意に。 熱風が消えた。「え?」 俺は思わず盾から顔をのぞかせた。 そこには。 炎の爆発に襲われているダークエルフがいた。「がああああ!」 ダークエルフが悲鳴を上げる。 まさか……この鏡みたいな盾が、跳ね返した? 魔法を? だからシンゴは、俺は絶対安全だって言ってたんだ。 だけど、魔法を跳ね返す盾なんて、普通身につけたら手放さないだろ? 敵の不意を突くためとはいえ、俺を守るために貸すだなんて……。「はい、残念でした。死ぬなら一人で死んでください」 シンゴはそう言うと、何のためらいもなく、剣で……。 ダークエルフの胸を貫いた。「があ……あああ……」 何も巻き込めず死ぬことを、死物たちは「無駄死に」と言う。 なら、このダークエルフは間違いなく無駄死にだろう。 せっかくエンドを抜けてモーメントにやって来たと言うのに、エンド行の俺たちに手を出したことで
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第266話・触れる

「え?」「ああ、グライフが、君が大丈夫かって」 グライフが? 神獣グリフィンが、懐いてもいない人間の心配をする?「だって、言ったろ? 初めて会った時、君、グライフにありがとうって」 初めて会った時……。 そうだ、助太刀に来てくれたシンゴが言った。気付いたのはグライフだから礼はグライフに言ってくれって。 で、俺は、ありがとうって……。 あれ? あれで? あれだけのことで、グリフィンが人のことを心配する?「グライフは律儀だから」「いや律儀って言葉で済むの?」「グライフが自分に礼をした人間を覚えていた。だから心配した。問題ないだろ?」 【石壁】を解除しながら、当たり前のことのように言うシンゴに、俺は恐る恐る聞いてみた。「あの……いい?」「ん?」「グライフ、撫でてみて、いい?」 昔から、グリフィンと言う生物を撫でて見たかったんだ。 凶暴だって言うから諦めた夢だけど。 だけど、目の前に、俺の心配をしてくれるグリフィンがいるなら、撫でることも可能だろうかと。「どうぞ」 許可はあっさり下りた。「あの。いい? グライフ?」「ぐるっ」 恐る恐る近付くと、あっちから頭を出してきた。 そっと、その頭に触れてみる。 思ったより滑らかな羽毛の手触り。 頭を撫でて、嘴を叩き、鷲の身体と獅子の身体のつなぎ目の辺りを触ってみる。 グライフの様子を伺うと、グライフは気持ちよさそうに目を細めていた。「うわ……」 小さい頃からの夢だった、神獣に触れること。 こんなところで夢がかなうなんて。 しばらく撫でまわして、俺はやっと手を離した。「ごめんな、戦って疲れてるだろうに。もう休んでいいよ」「ぐるるぅ」 軽く俺の腹の辺りに頭をぶつけると、グライフは焚火の傍で丸くなる。「俺も寝るわ。今晩は何もなかったってことで」 鏡のような魔具の盾をマントの内側に引っ込めて、シンゴも小さく欠伸する。「今晩のことは何もなかったってことで。いい?」「あ、うん」 俺は頷いて、焚火をつついて少し大きくした。「じゃあ、朝までは寝させてもらうよ。君ももう少しすれば交代だろ? それまでに気持ちを整えておくといいよ」 言うと、あっという間にシンゴは夢の中に行ってしまった。 何もなかったかのように。 そうだよな。何もなかった。シンゴ
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第267話・獣使師

 それから数日。 旅は順調に続いていた。 ほとんど戦闘素人ばかりの俺たちが前へ進めているのは、シンゴのおかげだと誰もが分かっている。悪友共も手を出さないのは、ここでシンゴに見捨てられたら生きてどこかに辿り着くことは出来ないと知っているからだ。 ……まあトーノなんかは色々ちょっかいかけて、その度にグルートンに叱られているけど。 特にグリフィンに興味を持っているようで、そっと後ろに回り込んで尾っぽの一筋もらいたいとたくらんでいて、その度にグライフに唸られて、グルートンの大目玉を食らっている。「ごめんなあグライフ」 休憩時間、シンゴに借りたブラシで丁寧にブラッシングをしながら、俺はグライフに謝った。「トーノは悪い奴じゃないんだけど……ただ金が関わると人が変わるんだ。グリフィンの尾の毛は強力な魔除けって言うから、ついでに一本抜いてやろうって考えてるんだよなあ」「ぐるる」 最初は撫でるのが畏れ多かったけど、今じゃこうやってブラッシングまでさせてくれる。そこでトーノが抜けた毛や羽毛を、と言ってくるんだけど、さすがにそれは出来ないよな。グライフが任せてくれるのは俺を信頼してるからだ。その信頼の証をトーノの懐をあっためるためには使えない。「ぐるる」 グライフが、こっちも、と腹を出してきた。「本当にグライフはいい奴だなあ!」 感動の涙に咽びながら、腹をブラッシングさせていただく。 神獣がここまでリラックスしてくれるだなんて!「ヴェデーレは獣使師の才能があるのかもな」「え?」 尻尾を左右に振りながら腹を見せているグライフを見下ろして、シンゴが声をかけてきた。「獣使師? 俺が?」 シンゴは頷いた。「だって、ヴェデーレが助けたわけじゃないグライフが、腹を見せるほど懐くなんて普通ないよ。俺に懐いているのは助けたことがあるからで、ただ会っただけの神獣にここまで信頼されるなんて普通有り得ない」「……んー……まー……確かに……」 ブラシをかけて終わったよ、と腰の辺りを叩いてやれば、グライフはくるんと反転して起き上がる。 グライフはぶるるるっと身震いすると、んー……と伸びをしている。 こんなに神獣と呼ばれる生物が、ただの獣らしい仕草を見せてくれるとは思わなかった。「今からでも|獣使師《ビース
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第277話・才能

「あー……しつこすぎたか」「俺も子供だったから、そいつが仕事中で忙しいの無視して、ただ撫でたいだけで追いかけ回したからさ……それから動物にはできるだけ触らないようにしてきた」「グライフ触りまくってんじゃん」「神獣に触れる機会なんて、今後一生かかってもないかもしれないんだぜ? そりゃ触る。後悔がないように触る。触らせてくれてるし」「今なら獣が嫌がってるかどうか分かるだろ? グライフが嫌がってないことくらい、俺でも分かるよ」 くあ、と欠伸をしようとして、グライフがぐるりと後ろを向く。「トーノ!」 俺が怒鳴ると、こっそり後ろに回り込もうとしたトーノは跳ねあがって逃げて行った。「ったく」「そのブラシについた毛の一筋くらいあげてもいいけど?」「グライフが嫌がるだろ」 何かの話で聞いたけど、神獣は己を与える存在を選ぶって言う。 羽毛、羽根、鬣、爪。それは神獣と深くつながっているので、魔力を帯びている。その魔力を与える相手は神獣が決めるらしい。例え主の命令であっても、認めない相手には渡さないとか。「これはグライフが俺を信頼してくれた証だ。こっそり抜き取られて金儲けされてたまるかよ」 ブラシに絡んだ毛や羽毛を丁寧に外し、シンゴに渡す。「これくらいあげるのに」「ダメだよ、グライフの信頼を無駄にできない。それにシンゴはいつも自分が乗っている騎獣だから気にしないんだろうけど、神獣の毛なんて魔法薬や魔具の材料になるから、かなりデカい金出さなきゃ買えないんだぞ?」「知らなかった」「まさかグリフィンで街にそのまま乗りつけたりしなかっただろうな」「してないよ。ほとんど野宿」「人間のいるところ行ったら、尾とか爪とか狙われまくるから気をつけろよ」「狙われる程になれば、世界は平和になっているってことなのかもな」「……間違いないけど、気をつけないとグライフがまだらハゲになるからな」 まだらハゲの神獣なんて見たくない。「そこまで獣の気持ちが分かるんなら、絶対に獣使師になれるよ。俺が保証する」「んー……」 ちなみに今の俺のクラスは商人。しかもギルドとかで登録したわけじゃないはぐれ者。 獣使師は数が少ないクラスだ。それは、生まれ持った才能と特殊な訓練が必要だから。それが、動
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第278話・トラウマ

「何を悩んでいる、ヴェデーレ」 グルートンに声をかけられ、俺はずっと歩きながら考え事をしていたのに気付いた。「いや、何でもないよ」「一緒に金を稼ぐと誓い合った仲間が考え事をしていれば気にもなる」「……いや俺は誓ってないんだけど」「二日前から、お前、しょっちゅう立ったまま歩いたままぼーっとしてるぞ。このいつ死物が出てくるか分からないエンド行の街道で。いくらシンゴ先生がいてくれても手が回らない時がある」 いつの間にか、グルートンはシンゴのことを「先生」と言うようになっていた。このプライドの高い男が相手を先生なんて呼ぶのは、余程尊敬していると見た。「そのシンゴが言ったんだけど……」「ンン?」「俺に、獣使師の才能があるって……」「確かに、お前、小さい頃から動物に異様に懐かれてたからな」 物心ついたころからの付き合いだから、俺が小さい頃のことも知っている。「お前も知ってるだろ。猟師のキニゴスさんのシャッスに」「キニゴスは覚えてるがシャッスは忘れた。誰だ?」「キニゴスさんの猟犬だよ……俺に噛みついた」「まだ気にしてたのか」 グルートンは呆れたように息を吐いた。「猟犬が本気で嚙めば子供の右腕くらい楽勝で持って行かれるぞ。キニゴスもちょっと強い甘噛み程度だって言っていたではないか」「俺にはショックだったんだよ……」「では何か、あのふわふわした毛並み好きのヴェデーレがあの日以来猫が懐いてきても犬が腹を見せても手を出さなかったのはその時のトラウマが延々続いていたせいか」「……そうだよ」「だけどグライフ様は懐いているじゃないか」「それは俺もびっくりだ」「いいんじゃないのか? 今から獣使師を目指しても。神獣にあそこまで懐かれてシンゴ先生が保証してくれるなら確実だ。神獣にあそこまで懐かれれば、毛の一筋や爪の一欠けもらっても問題ないだろ」「動物を金儲けの材料にしたくないんだよ、俺は」「世界が滅亡する日でも金がなければ生きては行けないのだよ、人間は」「……グルートンはブレないなあ」 グルートンが金に汚いのは、グルートンのお袋さんが女手一つで育てて苦労したままお迎えが来ちまったからだって知ってるから、俺はグルートンを本気で責めたことはない。悪友とか言ってるけど、エンド行なんて無茶なことを言い出し
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第279話・師匠

「でも、なあ。この年になってのクラス変更はキツいんじゃないかって思うとなあ」「いいと思うよ?」 クーレも足早にやってきた。「強みを生かすのはいいことだと思う。僕はそれが回復《ヒール》だっただけで、誰でも使える魔法だけどそれでも使ってくれって金を出してくれる人がいる。獣使師《ビースト・テイマー》なんて滅多にない才能なんだから、生かしなよ。神獣じゃなくても、暴れる獣を落ち着かせたりとか操ったりとか、応用効くしさ」「そう、なんだけどさ」「師匠探しなよ」「その師匠がいないんだろうが」 俺は溜め息をついた。 獣使師は特殊なクラスであるため、それを教える師匠は少ない。そして大概デカい金がいる。師匠の資格がないのにそれを偽造して適当なことを教えていると言うこともある。高い金出して嘘教わって金がなくなって追い出されるなんてよく聞く話だ。「どっちにしても、金かあ……」「だからオレに任せとけって」 トーノがひょいと現れた。「シンゴに頼んで、グリフィンの毛や爪をもらえば、師匠に収める金くらい……」 トーノは相変わらずだ……。「グライフの信頼を裏切りたくないの」 トーノは文字通りの金の亡者。金があれば何でもできると言い切る男だ。だから金儲けのチャンスとみるとすぐに乗り出してくる。「所詮獣でしょうが」「獣を大事に扱わない獣使師にどんな獣が懐いてくれるって言うんだ」「金貨百枚がゴロゴロあのブラシに唸っているって言うのに」「お前にとってのグライフは金儲けの道具だろうけど、俺にとっては大事で可愛くて愛しくてしょうがない子なんだよ」「お前のじゃないのに」「俺のじゃないのにひとかけらでももらってやろうと考えるお前の気持ちが俺には分からないよ」「おおっと、藪蛇、藪蛇」 怖い怖いとトーノは突っ込んできた頭を引っ込める。「でも、事実、獣使師は目指していいと思うよ?」「クーレはそう言ってくれるのか」「うん。昔から動物はお前の言うことちゃんと聞いてたもん」「目指すと言うなら俺も投資するぞ。才能はシンゴ先生が保証してくださったのだろう? あとは師匠だけではないか。生き残った大きな街のギルドに行けば、正式な
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第280話・試してみよう

 【木壁】の外に、俺はシンゴと一緒に立っていた。 エンド行街道のほとんどは崖を縫うように作られているので、右は上りの壁、左は下りの崖。 壁に守られずに外に立っているのは、あの夜、魔族が襲ってきた時以来だ。 グルートンやクーレは自分たちも残ると言ってくれたのだが、「ちょっとヴェデーレを試したい、絶対ケガはさせないから」と請け負ったのだ。「俺を試すって、魔獣相手に何を……」「死物が生物を操ったり、逆に生物が死物を従えたりするだろ?」「ああ、死霊術とかってヤツ?」「そう。特殊な生物は死物を操ったりできる。俺が調べたところによると、獣使師にもそれがあるんだって」「え? いつ調べて……てかもしかして」「うん、魔獣を従える獣使師がいるんだって」「む、無理無理無理無理!」 俺は首を横にぶんぶんぶんぶん振る。「魔獣を従えるなんてそんな真似……!」「魔獣を従えなくても、退けることは出来るんじゃないかな?」「しり……ぞける?」「そう。さっき、俺より早く魔獣の気配察知したろ?」「え? ……ええ?」 さっき、確かに。 グライフが反応したから……じゃない。 俺が何となく気付いた時、グライフが唸って、これは魔獣が出てきたんだと思った。シンゴが叫んで、予想は確定になった。 そう……思ったんだ。 だから……。「魔獣に下がるよう、命じて見てくれないか」「え、そんな、こと」「ここに襲撃をかけてくる死物の大半は魔獣だ。ヴェデーレが魔獣を追い返せるのなら、俺の負担も減るし旅のスピードもあがるだろ?」「でも、下がらなかったら?」「その時は俺とグライフで相手するさ」 グライフがふんふんと鼻息を荒くさせている。「とにかく、試してみてくれないか? 魔獣に、心の中で言うんだ。下がれって。こっちに来るなって」「そ、そう言われても……」 俺たちが立ち止まったのに気付いて、右側の上りの崖から魔獣たちが見えない所でこっちを取り囲んでいるのを感じる。 多分、隙を見せたら一気に襲い掛かってくるつもりだろう。 グライフが警戒しているから、なかなか近付いてこれないようだけど。 あれ? 何で俺、魔獣の考えてることが分かるの? 考えてることが分かるって言うか、なんか魔獣の本
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