Alle Kapitel von 生神様になったらめっちゃ思い通りになるんですけど: Kapitel 241 – Kapitel 250

305 Kapitel

第242話・生神様

 シャーナは俺がそんなことをぼんやり考えている間もせっせと働いている。俺が【増加】した体を拭く布を大量に用意し、服の山をきちんと一人分ずつに区別して(多分誰もこれが自分たちの着ていたのと同一とは信じないだろ)、時々女性風呂の方に見に行って「頭がぼんやりしないうちに出てきてくださいねー」と声をかけている。多分、この世界で初めてお湯に入ってのぼせた経験のあるシャーナだからこその心遣いなので、俺も見習って男風呂に「頭に血が回る前にでてこいよー」と声をかける。 少しして、ほっこほこになった綺麗な人の集団が現れた。「こんなきれいな服を着られるなんて……」「あのお湯に浸ると言うのはこんなに素晴らしいものなのか……」「実はおれたち、もう死ぬ直前で、走馬灯でこれを見ているのかなあ……」 スシオのツンツンに立っていた髪もへにゃりと垂れて、なんか大人しそうなイメージ。「あの気持ちのいい湯に俺たちなんか入れてよかったのか? かなり湯が汚れてたぞ?」「大丈夫、源泉かけ流しだから」「ゲンセンカケナガシ……?」「湧いてくるお湯をそのまま引いてきてそのまま川に戻してるだけだから。お湯は常に入れ替わっているし掃除する人もいるから」「って、さっき、湯の方に行った……?」「あ、シャーナ、もう始めてんのか」「それダメだって俺も手伝う! 俺たちが汚したんだから!」「あ、あたしたちも手伝います! 汚しちゃったし……!」 それまで汚いの代名詞みたいだった元スラム住人たちは、綺麗になって初めて自分たちがどれだけ風呂を汚したかに気付いたんだろう、慌ててシャーナの後について入って行って、シャーナの号令の下風呂掃除に勤しむ。 善きかな。 清潔な服に身を包み、風呂掃除を終えた人々は、礼拝堂に集まった。「俺たちに仕事と飯を与えてくれるって本当か?」「本当だ」「あんた一体……何者なんだ……?」 スシオの恐る恐るの声に、言っていいものかちょっと悩み。「ん~……生物を助けることが仕事」「何だそれ」「もしや、とは思うのですが……」 スラムの長老が恐る恐る口を開いた。「まさか、貴方様は……生神様、では……?」「生神って、じいさん、そんなのいるわけないだろ」「原初の神殿と言えば大陸中央にあると言います。ケファルからここまでこれだけの人数を【転移】させるためには、神系魔法の使い手
Mehr lesen

第243話・邪魔者じゃない

 ありゃ。バレたか。 まあこれは俺のせいだよなあ。でも守護獣に手を出そうとしていたプセマがいる以上、ケファルを放っておくわけにはいかなかった。「生神……?」 スシオが不思議そうに俺を見る。「神なのか?」「自覚は薄いが」 サーラが腕を組んでいた。「兄ちゃんが生神だとすると、兄ちゃんが助けに来た姉ちゃんたちは……?」「守護獣」 サーラはすらっと答えた。「私は大地と炎を守護するドワーフの守護獣だ」「え」 さっき口を挟んできたドワーフや、他のスラムドワーフたちが目を丸くした。「守護獣様?!」「ああ。無窮山脈に眠っていた守護獣様だ」 ヤガリも頷く。「こっちの黒髪の姉ちゃんもなのか?!」「私は大地と風の守護獣。ケンタウロスを守護している」「げ」 スシオは目を丸くして、慌てて頭を下げた。「す、すみ、すみま」「いや、我々は君たちに敬意を求める者ではない」 ベガは軽く手を振った。「確かにケファルには助けを求める声を聞いて行ったけど、助けを求めたのはここにいる君らだけだと判断した。守護獣と分かって捕らえに来たプセマやあんたらを犠牲にして安泰にすることを選んだ街民は助ける価値なしと判断した」「そんな、邪魔者のおれたちを助けて……」「邪魔者なんかじゃないよ」「……神様?」「神様なんて呼ばなくていい。シンゴだ。……俺が生神ってことは一部の人間を除いては内緒なんでね」「……じゃあシンゴ、俺たちに仕事と飯を与えて、あんたはどうするんだ」「どうもしないよ。俺は助けを求める人を助けるのが仕事で、ケファルに行ったら、助けてほしいのがあんたらだっただけ。後の連中はプセマがいれば街は安泰だと思ってたんでね、プセマと一緒に閉じ込めてやった。プセマが精霊魔法の使い手とは言え、あの街は外からも中からも破れない。そう言う風に俺とベガが呪縛をかけたからね。連中が反省するまでは街の中に閉じ込めさ」「だけど、死物とプセマが手を組んでいたぞ? そいつはどうするんだ」 サーラの言葉に俺はニッと笑った。「外からも誰も入れないって言ったろ? プセマがお前を売ろうとした魔族が来ても入れないよ。一応守護もかけてあるから、街民には問題はないよ」「プセマにはかけてない、と」「守護獣を売ろうとした人間に加護は必要ないだろ」 と、慌ててドワーフたちが頭を下げた。「も
Mehr lesen

第244話・これから先

「今更助けておいてなんだ、と言いたいだろうが……無窮山脈で働いてもらえないだろうか」 ドワーフたちは顔を見合わせ……そして泣き出した。「親の代からケファルにいて、ケファルで死ぬと思っていたのに……」「無窮山脈で働けるなんて……思っても見なかった……鉱山の仕事ができるなんて……」「でも、儂らはケファルで生まれて鉱山の仕事を知らねえ……」「大丈夫だ、一から教える」「無窮山脈で……働けるなんて……」「守護獣様に言ってもらえるなんて……」 おいおいと泣き出すドワーフたち。「我らの守護獣様は……目覚めていないのだな……」 エルフが心底羨ましそうに呟く。「守護獣様は知らんが、森エルフの泉は復活した」「え?」「シンゴが再生してくれた。泉は聖域となっている。シンゴと神子は入れるのだが、それ以外の者はエルフ以外には入れない。森で薬草や魔法草の育成や木を間引きしたりするのにエルフの手を借りたいが、エルフやその血を引く者はいるだろうか」 レーヴェの問いに、数人の耳の尖った人たちが手をあげた。「クォーター……人間が四分の三だけど、大丈夫か?」「ああ、エルフの血が入っていれば大丈夫なはずだ」「織物が出来そうな者はいないだろうか」 ベガが尋ねた。「興味のある者でいい」「で、でも、ヒューマンにあの超高級な馬厚織が織れるか……」「織れるとも。腕が二本あればいい。足が二本でも全然問題ない。興味があれば教えるし、世界が再生した後に草原を出て工房を開くもよし。スラムで育って何も知らないと言うのなら、織物を学んで何処かの街でそれを売るもいいだろう」「店……」「あたしでも、創れる?」 不安そうな女の子の言葉に、ベガは頷いた。「やる気さえあれば」「やる! やりたい! あたし!」 女の子がぴょんこぴょんこ飛び跳ねる。「織物作って、お店開いて、売るの!」「やる気があるのなら、最高の技術を教える」 うんうん、とやる気満々で頷く女の子や、数人の女性陣。「あとは、何かやりたいことはないか? やりたいことがある奴は」「俺……」 スシオが恐る恐る言った。「俺、兄ちゃんの力に、なれるかな」「ん?」 思わず聞き返した俺に、スシオは真っ赤な顔になってぶんぶんと首を振った。「い、いや、何でもない、忘れて、忘れ」「何だ、スシオは神子になりたいのか?」 サ
Mehr lesen

第245話・条件

「神子と言うのは」 ベガがフォローに入った。「生神と契約を結び、その信仰心で生神の力になる人間のことだ」 不老不死とか魔法とかのことを省いて要点だけを突いてくれた。「兄ちゃんの為になれるのか? 俺、正直スリとかかっぱらいとかしかできないけど」「やらないで」「神子が神にできることはたった一つ」 ベガは指を一本、スシオの鼻先に突き付けた。「神を信じることだ」「神……兄ちゃんを……?」「そうだ。シンゴを信じること。そしてシンゴが間違えそうな時、悩んでいる時に、その力になることだ」「そんなの、友達ならやることじゃん」「ああその通り。神として信じすぎてもシンゴには負担だし、苦しい時助けてやれないだろう。友達を信じて助けてやること。それが神子の一番の役割だ」「うん、うん。それなら、やれる」 うん、うんと頷いて、スシオは俺を見た。「やりたい。やる。やらせてくれ。兄ちゃん」「いや、神子にしてもいいけどさ」 食いつき気味にやってくるスシオに、俺はちょっと悩む。 別にスシオは神子になってついてくる特典を求めてるわけじゃない。ただひたすらに、俺の力になりたいと、思ってくれているのだ。それは嬉しい。素直に嬉しい。ただ。「俺は生神だ」「おう」「嫌でも死物と対決しなきゃならなくなる」「ああ」「戦えるか?」 こくりとスシオは生唾を飲み込んだ。「死物は俺たちを殺すためにいる。俺たちがいる限り、モーメントを滅ぼすことは出来ないから。そして神子は真っ先に狙われる。なぜなら、俺の力の源は神子の信仰心だからだ。神子がいなければ俺は神の力を揮えない。強くなければこの原初の神殿から出られやしない」「ええ、そうです」 風呂掃除の後片付けを終えたシャーナが戻ってきた。「私はシンゴ様の一番の神子ですが、己を護れるだけの力がありませんでした。回復と守護程度の魔法では足手まといになるしかありませんもの。私にできるのはただ信じること。生神様、シンゴ様が、世界を再生してくれると信じること。それくらいしかないのです」「…………」 最初は俺の神子になると鼻息を荒くしていたスシオも、さすがにこの神殿からは出られないシャーナの言葉が貫いたんだろう、軽く落ち込んでいる。「何故そんなにスシオを神子にしたがらない?」 意外な問いがベガから来た。「
Mehr lesen

第246話・力不足

 それは何人かの神子と行動を共にするようになってから思ったことだった。「死物は俺を狙ってくる。俺を殺せばモーメント破滅は成ったようなものだからだ。だけど、守護獣の神子までいる今の俺を真っ向から殺そうとすれば魔族……魔人クラスの死物が出てきてもおかしくない。そんな戦いに巻き込まれて、身を護る術がない神子は、下手すりゃ捕らえられて人質だ。俺はスシオをそんな目に遭わせたくない」「ふむ……力不足か」 ベガはしばらく顎に手を当てて考え込んでいたけど。「ならば、我が鍛えればよいか?」「え?」 バッとスシオは顔をあげた。「プラートゥムで引き取って、戦い方を教えよう。スシオのシンゴを信じる心は誰より強い。これを戦闘力不足で蹴るのは如何にも勿体ない」「でも、ベガはケンタウロスを守るために……」「何と言うことはないよ。やる気があって素質がありそうだ。その二つが揃っているのに今現在弱いから切る、と言うのも勿体ない。プラートゥムならば我の力の範囲内、簡単に死物も入ってこない」「姉ちゃ、いや、守護獣様」 スシオが深々と頭を下げた。「俺を鍛えてください……! 俺は、俺を助けてくれた人を、助けたいんです……!」 こうして、スシオの身の振り方も決まった。 神子契約を結び、その上でベガやケンタウロスの戦士たちが戦い方を教える。四本足の戦い方になるのかな、と思ったけど、ベガは身のこなしや魔力を使った戦い方を教えるのだと言っていた。 神子になれば神系魔法は問答無用で使えるようになるのだけれど、それ以前から神系魔法を使っていた人間は、つい自分の上限を定めてしまう。シャーナも回復程度しか使えないと言うのは「自分はこれ以上使えない」と言う思い込みがあって、それ以上の力に手を伸ばせなくなってしまうからだ。 サーラや俺もシャーナにそれを話したんだけど、やっぱりシャーナは神殿に残ることを選んだ。「私が戦いに馴染まないと言うのは間違いありません。そして、ここはシンゴ様の本拠地。シンゴ様がお帰りになる場所。ですから、私にとってはここを守ることこそが私の戦いなのです」 強いな、と思った。 時々温泉に浸かりに来るサーラにも魔法を教わって、今ではある程度以上の神系魔法が使えるようになっているとか。スシオに回復程度しか、と言ったのは、スシオの心意気を探るためだって
Mehr lesen

第247話・約束

 ドワーフたちがヤガリとサーラに先導されて無窮山脈へ。 エルフの血を引く者がレーヴェに連れられて大樹海に向かい。 特にやることのなかった者、自分の家と畑が欲しい者はミクンがビガスへと連れて行って。 ケンタウロスの元へ向かう女性たちとスシオが残った。 ここで、ちょっと心配。 ケンタウロスって、結構好色……つまり女の人好きなんだよなあ。手ぇ出したらどうしよ。ベガがいるから滅多なことは起きないと思うけど。「生神……いやシンゴ兄ちゃん」 スシオが、真剣な顔でやってきた。「俺、強くなるから。強くなって、きっとあんたの役に立つから。だから」「ああ。その為の約束だ」 俺はM端末を取り出して、「神威【神子契約】」を選んだ。【神子候補:スシオ・バーチー 信仰心レベル10000 属性:混/大地】 うお、初期値から信仰心高ぇ。ていうか神様を信じるって言うより俺を信じてくれてんだな。それは無条件で嬉しいけど、属性【混】ってなんなんだ。 まあいいか。神子認定、許可! たんっと端末を叩くと、俺とスシオの間に契約が発生した。 神子である間は神の力を使え、老いることも死ぬこともなく、生神に愛想をつかさない限りそれは続くと言う。 契約は光と言う形で俺とスシオを繋ぎ、そして、消えた。「え? 今? 何? 何して?」「神子契約を結んだんだよ」「え? でも、弱いから結びたくないって……」「神子ってのは神の力を使えるんだ」 俺は鼻の頭を掻きながら言った。「使い方に慣れといてもらわないと強くなれないからね」「シンゴ兄ちゃん……」「力の源は送ったから、後は鍛えるだけだ。ベガなら間違いない。それに、遠く離れていても神子と生神の契約は届くから、……さぼってたら分かるぞぉ?」「さぼらねぇよ! 兄ちゃんみたいに強くなって兄ちゃんを助けられるチャンスなんだ、そんなことしねぇ!」「そっか」 俺はスシオの肩をバシバシ叩いた。「期待して待ってるぜ、友達」「裏切らないぞ、友達」「スシオと彼女たちは確かに私が預かった」 ベガがやってきた。「安心してくれ。我がいる限り、プラートゥムに死物を入れはしない。そして、預かった人間も大地と風の守護獣として守って見せる」「うん、ベガがそう言ってくれるなら安心だ」 スシオはニッと笑った。「すぐに行けるよう、努力するからな! 待っ
Mehr lesen

第248話・お湯に浸かって

 反論しようとして……取りやめた。 そうだな、確かに。 一つの救いは終わった。次の救いを求める声はある。 だけど、その合間に休んでおくのも必要だな。「悪いね、掃除したばかりの風呂に入るなんて」「シンゴ様のお風呂ですから、シンゴ様がお好きに使えばよろしいのですわ」 そりゃあそうなんだけどね、シャーナには風呂だけじゃなく神殿全部の掃除管理任せてるからな。「じゃ、遠慮なく」「はい」 お湯は俺の好みのちょっとぬるめ。 効能は分からないけど、精神的にはめっちゃ効いてるし、炎水《マグマ》の守護獣の守護を得ているお湯は怪我でも病気でも何でも効きそうだ。 あ~、ほぐれる~……。 ぼーっと何も考えずにお湯に浸かっているのはとてもとても気持ちがいい。 スラムの人たちみたいに、意識を切り替える効果もあるしケガや病気にも効く。何より気持ちいい。 世界の再生が終わったら、風呂の文化をこの世界に取り入れようか。 でもなー。モーメントに温泉の文化を取り入れるにはサーラの協力が絶対必要なんだが、地熱の源であるマグマが地表近くに来るなんてヤバいかなー。サーラがマグマを制御してくれているから火山や地震と言った災害が起きないのであって、生神の俺が命じて世界がそう言う風に転がって行かれても困るしなー。「大丈夫だ」「大丈夫って言うけどなー……」 サーラの声に、心話かと思って返事したら、それが脳でなく耳に届いたことに気付いて、半眼だった目を開く。 湯気の向こうにサーラがいた。 お湯に浸かって気持ちよさそうにしている……ってことは。 ぜぜ、全裸?「ササササササーラさん?」 慌ててその肌の色から目を背ける。見たい。男としては見たい! だけど見たらお終いだって俺の本能が注げている!「こここ、ここ、男風呂ですよ?」「ああ、男性用と書いてあった」「ななななならなんでここここにいるんですかサササーラさんは女性で」「女性形と言うだけだ。本来の私に性別はない」 それとも、とサーラの声が愉快そうになった。「名付け親が創ったこの身体を見るのが照れる、とか?」 そうだよな我々は名をつけた者の理想を本能に表すしなと楽しそうなサーラの声。 しかしこっちは楽しくない! 相手が俺の好みドストライクのバインバインないすばでぃなお姉さんでも、下心を持った途端にこっちが物理的にバイ
Mehr lesen

第249話・ケダモノ?

 サーラめ、こっちをからかって楽しんでやがったな。 何とか着替えて、半分ゆでだこのような顔をして風呂から出てきた俺に、帰ってきたレーヴェやヤガリ、ミクンは目を丸くしていた。「何かあったか?」「何と言うか、その、説明が難しいんだけど……」「サーラおねえちゃんがシンゴおにいちゃんのオフロに入ったの」「いや、何の問題にもならないだろそれは」「いや、ちょっと待って。風呂って言うけど、……お風呂二つあるよね、サーラはどっちの方に入っていった?」 勘働きの鋭いミクン、でも待って今ここでその勘をアピールしないで!「男の人用」 ああアウルム素直に育ってくれて嬉しいけど今この時にその素直さを出さないで!「やっぱり」 ミクンは完全にあきれ顔。「シンゴ、サーラにからかわれてんだよ。忘れちゃダメだよ? 相手は人間の姿をして言葉を喋るけど獣だよ? 猫が入って来たとでも思ってスルーしなきゃ」 ……猫はあんなバインバインなお姉さんの姿してません。 ついでに言えば人をからかうために全裸で風呂に入ってはきません。……獣は大体全裸だけど人間の形している限り服を着ているのでサーラは論外。 でもこれ言ったら俺がケダモノになっちゃうので黙ってる。「シンゴ、その深刻な顔、まさかサーラに手を出したとか……」「してない! それだけはしてない!」 守護獣に守護されているヤガリの不審そうな目に、俺は首を横にシェイクさせる。「ていうか俺が先に男風呂入ってたの! サーラがいきなり浸かってたの!」「いや熱弁しなくてもそれくらいは分かる。あと、守護獣は名付けの者の想像した姿になると言うことも知ってる」「あ、それでサーラ、あんな体してんだ。……ベガは?」「好みの姿が二つ三つあったとておかしくはないだろう?」 サーラが神を拭いながら戻ってきた。「せっかくだから、自分の好みの肉体、じっくり観察すればよかったのに」「できません!」 からかわれているのはわかっているけど、平常心で好みの身体をまじまじと観察できるほど俺は枯れてはいません。てか男なら興奮するよな? 好みのタイプの身体と顔持ったお姉さんが全裸で風呂入ってきたら興奮するよな? そして相手が炎水の守護者ってこと知ってれば、活火山の噴火口に飛び込むような真似しないよな?「シンゴをからかうのはさておいて」 さてお
Mehr lesen

第250話・北

 あ、思い出すだけで怒りが……。 サーラと三頭にボロボロにされていたけど、俺も脅すだけにしないで一発ぐらいぶん殴っておけばよかった。個人的精神衛生上の理由で。「それが、全部北へ向かっていたと」「北、ね」 北西を支配する無窮山脈の途切れる場所、地熱の恵みがない最果と呼ばれる場所は、生物と死物の暮らす世界の境界線だという。魔物はそこから現れ、モーメントに広がっていく。だから、人間、と呼ばれる中でも、守護者と呼ばれる強者たちが結集し、そこから魔物が広がっていくのを防いでいるとか。「魔神はいなくとも、魔人クラスならばいる可能性もある」「魔神は天界にいるって言ってたような気がするけど」「天界か、黄泉かは分からないが」 サーラは顎に指を当てて考え込んだ。「そもそも今現在、天界にほとんど神はいない。滅亡の神・魔神が最上段に座った時、人間を好く神はほぼ粛清されたからな。残ったのはモーメントを終わらせるべきだと言う言葉に同意する神ばかりだ」「ほぼ?」「ああ、ほぼ、だ。残った神や守護獣は自らを世界に封印したり、己の力を封じてモーメントの生物として魔神の目を晦ませたりしている。世界に己を封印させた神の力もあって、まだ世界は完璧に破滅に近付いてはいない」「つまり、サーラやベガのように?」「そう。我々守護獣は自然の護り手として真っ先に封じられた。残った我が創造主がどうなったかはいまだに分からん。ドワーフを作り、勤勉を慈しんだ我が神はいまだに気配すらつかめん。この世界に逃れたならばいいが、天界で魔神に抗ったなら……」「殺られた、と考えるべきなのか?」「……ああ」「世界を作った神を滅ぼしてまで、このモーメントを滅ぼしたいって言う魔神の気持ちが分からねえ」「忘れるな。相手は死物だ。周囲を巻き込んで己が死ぬことを至高の幸福とする、生物とは相容れない存在だ。そんな存在を生み出す魔神を、それとは全く真逆の位置にいる生神が理解できたら怖いわ」 いや、全く分からない訳じゃない。 俺も人間だから、自分だけが苦しい思いをして、その上に誰かが立っていたら、意地でも引きずりおろして同じような苦しい思いをさせてやりたいと思う気持ちは分かる。ただ、俺は自分が死ぬのはゴメンだ。滅びたいなら一人で滅んでくれ、と言
Mehr lesen

第251話・最果てへ

 ケンタウロスの草原、プラートゥムへ跳んで、自在雲に乗って、まっしぐらに北へ向かう。 自在雲で、ある程度高度を取って、結界で見えないようにしながら進む。 飛べるグライフも大人しく自在雲に乗って羽根を閉じている。賢いのはいいことだ。 コトラが身を乗り出してクンクンしているのは、やはり空気の匂いが違うのだろうか。「それにしても、これだけ自在雲を飛ばしてまだつかないって……」「無窮山脈が巨大すぎるからな」 サーラが端末を出すように言った。 マップを出して、無窮山脈と、今まさに記入されている位置を見せた。 北東の無窮山脈は、俗にいうエンド……最果ての場所からそびえ立っている。「無窮山脈があまりに高すぎ、険しすぎて、さすがの魔物もここを越えようとするのは少ない」「なるほど……」「無窮山脈を避けるとすれば、そこの途切れる場所、北西の隙間、エンドに来るしかない」 エンドがそれだけ小さいポイントだから、世界が魔物でいっぱいになっていないのだ。 だけど、プセマが魔物と取引をして、商品と言う女性を北に連れて行ったと言うと、エンドの守護者が何をしているか分からない。 エンドの確認と、場合によっては魔族・魔人との会敵、情報収集。それが俺たちの目的だ。「に、しても、まだ道は続いてるんだな」 俺は雲から地面を眺めた。細い道がうねるながら続いている。「そうだな、空中と言う最短距離をこの速度であれば、まあ……あと四日と言ったところか」 自在雲のこの速度でそんだけかかるって、無窮山脈どんだけデカいんだ。「ぅなっ」「どうしたコトラ」「ぅな、ぅな、ぅなっ」 ブランも地面を見下ろし、グライフが雲の表面を引っかく。「敵か?」「ぅな」 すかさず俺は自在雲のスピードを落として、コトラが見下ろす先を見た。 隊商のような幌付きの馬車が五台。 この高度からははっきりわからないが、恐らくは、十頭程度の魔獣に襲われている。 しかし、自在雲を下ろすわけにはなー……まだ生神が近付いてるって知られない方がいいよなー……。「ぐるる、ぐふっ」 急かすような鳴き声に振り向くと、グライフが翼を広げて前脚を蹴っていた。「なるほど、神具よりお前の方がまだ言い訳がつくよな」「ぐるぉお」「グライフに乗るの?」 小首を傾げるアウルムに頷く。「確かに、神具に乗る人間より神獣に
Mehr lesen
ZURÜCK
1
...
2324252627
...
31
CODE SCANNEN, UM IN DER APP ZU LESEN
DMCA.com Protection Status