「バカだな」誠は夏海に答えず、ただ甘やかすように彼女の頬を揉み、目尻のところをそっと撫でた。夏海がまだ何か言おうとした時、誠は突然彼女を抱き上げ、そのままベッドルームへと歩いていった。夜は更けていたが、誠は明かりをつけなかった。二人がベッドの中に飛び込む瞬間、夏海は何かを悟り、彼の首に腕を回すと、すぐに目の前の喉仏にキスをした。この数日、二人は別々に寝ていた。夏海は少し古い考えの持ち主で、結婚する前に体の関係を持つのは望んでいなかった。誠もそれを尊重していた。二人の関係は元々急速に進んでいた。彼はむしろ、少しずつ彼女を理解し、ゆっくりと進んでいき、最も大切な瞬間を最後に取っておきたかった。だが、今は明らかに夏海が心変わりしていた。彼女は誠を離そうとせず、引き寄せては手を伸ばし、ぎこちない手つきであちこち探り始めた。誠は男だ。愛する人にこんなふうに火をつけられて、何も感じないはずがない。だが、その快楽に浸る間もなく、彼はすぐに夏海の手首を掴んで制した。「だめだ」「私は、いいの」夏海は目が潤み、声も微かに震えていた。彼女は泣きたくなっていた。体にも心にも火がついたようだ。誠はまるで掴めない風のような存在だ。やっとの思いで捕まえたと思っても、また彼はふわりとどこかへ吹いていき、不安にさせる。だから、彼女はこんな方法しか思いつかなかった。こんなことをするのが、自分らしくないと分かっていても……「気持ちは嬉しい。だが、俺はむしろ、君の中でいつまでも輝く存在でありたいんだ」誠は低い声で言い、手を離した。夏海はゆっくりと彼の下に倒れ込み、長い髪が黒い絹のように広がり、彼の骨ばった指の間に絡みついた。彼は身をかがめ、月明かりに照らされた彼女の輪郭を、じっくりと眺めた。思わず額から下へ、そっと彼女にキスをした。だが、それも触れただけのキスだった。深くは入らず、熱くなることもなく、まるで春風が頬を撫でるように淡く、欲望が全くなかった。燃え上がることのない情熱は、もう見えない月明かりのように、誠の慰めの中で静かに収まっていった。夏海は誠が離れるのを許さず、彼の腕に寄り添わなければ眠ろうとしなかった。誠も離れず、二人はその夜、同じベッドで眠った。夏海の手は、まるで彼が次の瞬間
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