「それは好都合じゃない!」綾芽は思わずとっさに本音を漏らした。しかし、浩之の自分を見つめる眼つきを見て、すぐに付け加えた。「私が言いたいのは、もしそれが事実だとしたら、私たちにとって入札が有利になるってこと」浩之は険しい表情で頷いた。「さっき、私も西園寺さんには探りを入れてみたんだが、彼女は淡々としていたよ。きっと返答する勇気がなかったからだろう。でも、わざとああいう態度を出して、私に何かあると思わせるという可能性もある。伊集院社長が何か企んでいて、今は姿を現わせないだけなのかもしれない。そしてタイミングを見て一気に動きだすとか?」浩之は多くの可能性を考えていた。伊集院家の中で、柊馬を除いて舵取りのできる人間は他にもいる。修治は会長として、入札に参加することだってできる。だから、全てを一花一人に負わせる必要などない。「この件は、そう難しいことじゃないわ。私に任せて」この時、綾芽は何か思いついたらしく、目をぎらりと光らせた。……翌日の昼、一花は会議を終わらせたばかりで、夏海から電話がかかってきた。昼休憩をとる暇もなく、すぐに西園寺グループへと急いだ。勇がすでにオフィスで一花のことを待っていた。彼の手には株式の書類があり、しっかりと準備を整えてきたようだった。この時、夏海はドアの前に立っていて、目で合図を送り、一花に注意を促した。勇の今回の登場は非常に大々的で、会社内には見物に来る人が多くいた。彼らのほとんどは社長室に集まることをためらっていたが、近くを通り過ぎる時には、ちらりとそのほうへ視線を移していた。少しでも何か動きがあれば、すぐに西園寺グループに関する衝撃的なニュースが漏れだしてしまう。一花は早い段階で心の準備をしていた。彼女は夏海に視線を送り、そのフロアの付近の人を払い、一人、オフィスの中に入っていった。勇はこの時、確かに一花に責任追究に来ていた。勇と侑李は仲違いし、侑李は西園寺家の一切の支援を断つと、二人の間で約束が交わされた。しかし、今日西園寺グループは侑李に、陸斗の副社長という席を与えることに決定した。一花がオフィスに入って口を開く前に、勇が単刀直入に言った。「一花さん、君のプライベートなことに私は一切口を出してこなかっただろう。私の家のことに君が口を挟む権利
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