心の問題には、やはり心に効く「薬」が必要だ。柊馬が今これほどまでの苦痛に耐えているのは、全て西園寺一花というあの女性のためだと、優紀はよく分かった。優紀はドアの前で三十分も立っていた。その間、柊馬は医者から少し休憩してほしいと言われるのを無視していた。全身は汗でびっしょりになっているが、それでもひと時も止まらずリハビリに励んでいる。優紀は使用人にその場を任せ、自分は背を向けて去っていった。……深夜の西園寺グループ本社ビル。この時、夏海が残業を終えて、エレベーターを出ると、ロビーの隅に人影が見えた。この時間、オフィスビルには一人も残っていないはずだ。こんなところで誰かが待っているわけがない。夏海は思わずその人影のほうへ視線を移すと、どうもその姿には見覚えがある気がした。彼女が受付に戻ってみると、当直の社員が暇そうに携帯を見ていた。「ねえ、あの人は誰ですか?こんな遅くにお客様?」夏海の声に、すぐに当直の社員はハッとした。彼は目を細めてそちらに目を向けた。「私もよく分かりません。彼は午後に来て、ずっとあそこに座っているんです。どうも西園寺社長に会いにきたらしいんですが、今社長は不在だと伝えたのに、あそこから動こうとしなくて。このまま帰らないなら、セキュリティを呼びます」一花に会いにきたと聞き、夏海はさらに気になった。夏海はその男のほうへ歩いていった。距離が近づいていくほどに、彼女は確かにその男には見覚えがあるとはっきり分かった。……それは以前、あの携帯ショップで昂輝の携帯を選んだ時に会った男だ!「あなたですか?」夏海はその男の隣に来ると、低い声で尋ねた。誠は顔をあげて夏海を見た時、少し分かっていないような顔をしていたので、夏海がすぐにこう言った。「覚えていませんか?この間、携帯ショップで私が見ていた携帯を買った……」「ああ、君か」誠はその言葉で思い出し、眉をひそめた。「君はここの社員だったのか?」彼はすぐに立ち上がった。彼は非常にだらしない格好をしていた。着古したカーキ色の上着に、ズボンも埃まみれだった。ライトの下で、彼の顔には多くの細かい傷跡が見えた。それに髭も剃っておらず、あの携帯ショップで見た健康的な彼のイメージとは、かなり違っている。「ええ……ここで
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