All Chapters of 偽物クズ夫に別れを告げ、スパダリと政略結婚します: Chapter 781 - Chapter 790

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第781話

世論が様々な憶測を出している中、さらに衝撃的な「証拠」が現れた!いくつかチャット履歴のスクリーンショットとみられる画像がネット上に投稿された。その中で、「柏木さん」と記された人物が、南関市経済速報の編集長という人物と会話をしているようだ。「柏木さん」は編集長に伊集院柊馬が死亡した情報をネットに流すよう要求し、多額の報酬を約束していた。スクリーンショットの真偽はまだ検証が必要だったが、「柏木さん」という名前と、会話から読み取れる情報から、見た人はすぐにそれは柏木綾芽だと気付いた。それから間もなく、陽菜の配信が突然始まった。彼女と柊馬は元々、多くのネット民にとって「忘れられないカップル」だった。今回、彼女は意図的かどうかは別として、配信中に柊馬がかつて山で人を助けたエピソードを語り始めた。つまり、公に一花と伊集院グループを支持することを明言していることだ。陽菜は、柊馬は非常に良い人であり、感情に対して真面目な姿勢を貫き、会社にしっかり責任を持ち、さらに国家や社会を思いやり、優しくて寛大な人間だと主張した。今回、彼女はネット民から繰り返し追及されてきた彼との感情の問題にも正面から向き合った。彼女は、自分と柊馬の間には確かに親密な関係があったが、それはとっくに終わったことだと認めた。柊馬はただ一花だけを愛しており、二人は互いに愛し合い、幸せである。彼女も心から祝福している。ネット民には、今後、自分が気の毒だと思ったり、二人に干渉したりしないでほしいと願った。陽菜の配信は、世論にさらに火をつけた。柊馬の勇敢な行動や、伊集院グループがこれまで黙々と行ってきた社会的な貢献が、一気にギャロップの社員である柏木綾芽の行いと対比された。ネット民の怒りは一瞬にして燃え上がった。それで、ギャロップが反応する前に、すでに綾芽と共に全ネット民の罵る対象となってしまった。ネット上の非難は津波のように綾芽に襲いかかった。たったの二時間で、彼女のSNSアカウントに暴言のコメントが次々と飛んできて、ダイレクトメッセージには罵倒と呪うような言葉ばかりだった。その中には彼女の住所、電話番号、家族の情報をさらす者まで現れた……そして、綾芽と浩之が共にホテルに戻った時には、二人が外で食事をしている写真も流出していた。世論は一斉に綾
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第782話

浩之が心配していたことがついに現実になった。綾芽と一花の過去のいざござが、相手の切り札になったのだ。ただ、浩之は、まさか彼女が自らの古傷をさらけ出してまで、綾芽に復讐するとは思わなかった。しかも、彼女は偽造までして、世論を利用して彼らを攻撃してくるとは……まったく人としての体面を保つこともしないのか!綾芽が感情を制御できなくなっているのを見て、浩之はまず自分の感情を抑え、彼女の携帯を奪い取った。「そんなものを見るな。事ここに至っては、まず解決策を考えよう。あの編集長にはまだ連絡が取れるのか?」綾芽は目を赤くして、首を横に振った。「彼女は手段を選ばないのよ。偽のチャット画像まで流せるんだもの……もしかしたら、あの編集長も今、彼女に脅されているのかもしれないわ!」突然、綾芽は何かを思いついたように言った。「通報しましょう……西園寺さんは私を誹謗中傷し、サイバー暴力を仕掛けているわ!通報するしかないわ!」彼女は携帯を奪い返しに行こうとしたが、浩之に一気に止められた。「落ち着け!」浩之は低く言った。その顔色はこれ以上ないほど悪かった。「今、通報して、徹底的に調査されたら、君に問題がないと言えるのか?彼女は私達が先に取った手段を使ったに過ぎない。しかも、事態は今、私達に不利だ。通報しても世論を逆転させることはできない!」結局、事がここまでになったのは、綾芽の行動が衝動的で、敵を侮り、無謀だったからだ。昨日、綾芽が戻ってくるなり彼に訴えかけ、彼も一時的に煽られ、理性を失ってしまった。この点については、彼の責任の方が大きい。しかし、今さら後悔しても遅かった。ギャロップと綾芽の評価は今一体となり、彼も一人だけ無事ではいられなくなっているのだ。一花がこれほど容赦なく仕掛けてくる以上、彼も彼女を敵とみなし、本気で臨むしかなかった。浩之は綾芽をソファに座らせ、まずは静かにしているよう命じると、自分は窓際に歩み寄り、タバコに火をつけた。煙が漂い、彼の顔からは次第に感情が消えていった。これ以上、世論をめぐって何をやっても、ギャロップに勝ち目はなく、むしろ彼自身も窮地に陥るだけだ。戦場を変えなければならない。浩之は煙草の火を消し、既に策を思いついていた。
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第783話

綾芽は声を出すこともできず、ソファに座ってまた涙を流していた。浩之は彼女にティッシュを一枚差し出し、声を優しくした。「綾芽、泣いたり怖がったりしても、何も解決しない。西園寺さんが私たちを追い詰めようとすればするほど、私たちは逆に耐えていて、彼女を倒してみせなければな」綾芽は顔を上げ、涙で潤んだ目で彼を見つめ、まるで藁にもすがる様子だった。「でも、今はどうすればいいの?このままじゃ、入札どころか……あなたがギャロップでの地位まで危うくなるんじゃ……」「君は今夜、西園寺さんに対する謝罪声明と、黒崎慶が過去に君を騙したことに対する非難する内容を発表しなさい。その後、すべてのSNSアカウントを消して、一切の反応をせず、どんなコメントも見ず、完全に姿を消すんだ。私は明日、君と会社とのすべての関係を消すようにする。君はもうギャロップの社員ではない」綾芽の目は迷いと不安に満ちていた。「浩之、あなたは私を見捨てるの?」「そうだ。しかし、私が見捨てるだけではない。君は全ての人に見捨てられなければならない。君は、全ての人からサイバー暴力を受ける被害者にならなければならない。君が受けた散々な仕打ちが、君がかつて犯した過ちを上回って初めて、世論は君を許し、場合によっては西園寺さんに不利に働くかもしれない」綾芽は理解したようにうなずいた。浩之は続けて言った。「明日、ギャロップは記者会見を開き、記者の質問に答え、声明を発表するんだ。内容は二点だけだな。まずは、君との関係を完全に断ち切り、引き起こした悪影響に対して謝罪し、ネットからの非難を全面的に受け入れる。ただし、伊集院グループに対してやったことは改めて否定し、社員の行動は会社が責任を取るが、スクリーンショットは本物だと認めない。次は、今は世論の戦場から離れる。プロジェクトに対する自信を持っていると改めて強調する。伊集院グループが如月さんを利用してネット民の好感を集めようとするなら、我々は専門分野における最先端技術を切り札とし、先に技術の展示も示す。そして、伊集院グループが自作自演で、入札のために手段を選ばずに仕掛けてきたという示唆を続けるんだ」浩之の考えに、綾芽は再び自信を取り戻した。「そうね。とにかく、私たちの目標は入札を成功させることよ。西園寺さんが世論を使うなら、私たちは
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第784話

「何が?」「伊集院さんに関する推測が正しかったということだ。そうでなければ、彼女があれほど過剰に反応し、世論でごまかさないだろう」そうだ!綾芽の目が一瞬で輝いた!一花は非常に賢い。自分も惑わされ、注意が完全に柊馬がまだ生きているかどうかという問題から逸れてしまった。「今、誰かが伊集院さんが本当に亡くなったことを証明できれば、世論は逆転できる。彼女が自作自演している可能性が非常に高くなる」綾芽は眉をひそめた。「他に誰が証明できるの?今回の件で、メディアは実際の証拠を持っていないし、これ以上情報を流すこともできないでしょう」「如月陽菜さんだ」浩之は低くその名前を投げ出した。彼も先ほど、陽菜の配信を少し見ていた。陽菜は明らかに一花と協力している。彼女も柊馬が死亡した情報を知っているはずだ。「彼女はもう明確に西園寺さんの味方についてる。たとえ伊集院さんのためでも、寝返ることはないはず。私が彼女に会いに行った時には、もうわかっていた」綾芽が陽菜に会いに行ったのには、実は別の狙いもあった。陽菜がおそらく自分を無視するだろうことはわかっていたが、柊馬の死亡情報が流れれば、一花は彼女を疑うと同時に、陽菜のことも疑うのではないか?綾芽は信じていなかった。恋敵の間に、それほどの信頼は結ばれないだろう。もし一花が陽菜を疑えば、陽菜というカードも使いやすくなる。しかし、今となっては、またもや間違っていたようだ。陽菜の配信のタイミングは絶妙で、二人は明らかに連絡を取り合い、しっかりと計画していたのだ。この点に関してはネット民にも見抜かれていた。「彼女が西園寺さんと同じ側に立っていても、彼女の家族はそう限らないだろう」浩之は腕時計に目を落とした。「ちょうどいい。如月家の年配者たちとうちには、少し縁がある」彼はそう言い終えると、綾芽に向かって口角を上げた。三条家と如月家は、かつて政界で活動していた家柄だ。ただし、如月家は筋は通っているが、高い位置には行けなかった。三条家が商売に転じてからも、如月家とは多くの付き合いがあった。縁があると言うよりは、互いの事情を知っている、と言った方が適切だった。綾芽は浩之の言葉に込められた冷酷な意味を理解し、彼に対する印象が一変した。彼は普段、温厚で
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第785話

夜も更け、同じように眠れずにいる者がいた。それは郊外のある屋敷にいる柊馬だ。昨日から今日にかけて、伊集院グループは常に波乱のど真ん中にあった。しかし、その情報を知ったのは今日のことだった。柊馬は最近、薬を多く使っているので体が耐えられず、一昨日の夜に戻ってから高熱を出していた。優紀は伊集院グループに何かあったことを知りながらも、柊馬にその情報を伝えることができなかった。今日になって、柊馬の体調がかなり良くなり、ようやく伊集院グループとギャロップの世論が激突しているのを知った。事件の発端が自分に関わるものだと知り、柊馬の一花に対する罪悪感が胸でいっぱいだった。衝動的に、彼はすぐにでも彼女に会いたくなった。しかし、最後になって、理性が彼を止めた。一花はすべてを解決していた。彼女の反応は迅速で、状況を処理する能力は一流であり、反撃も容赦がなかった。わずか一日で、完全にギャロップを劣勢に立たせた。彼女は再び彼がいなくても、彼女は十分にやっていけると証明した。柊馬は安心する一方で、ますます一花に申し訳ないと感じた。優紀は、柊馬が現在、順調に回復していながら、何度も落ち込んでいるのは、おそらく自分の感情を抑えすぎるからだと知っていた。心の病気は普通の方法は通じないだろう。もしかすると、彼が一花に会えば、体も完全に良くなるかもしれない。……翌日の午前中、ギャロップは記者会見を開いた。綾芽がこれ以上ネットに偽の情報を出さず、公衆の前から消えるということも発表された。一花はオフィスでギャロップの記者会見の配信を最後まで見ていた。その後、彼女は会議をキャンセルし、直接浩之が泊っているホテルへ向かった。一花がホテルに到着した時、浩之は記者会見を終えて部屋に戻ったばかりだった。秘書から一花が訪ねてきたと聞き、彼の目に驚きが走ったが、すぐに平静を取り戻し、スーツを整え、中に入れるよう合図した。綾芽もそこいた。一花が来たと知り、彼女はすぐに扉に張り付いて外の様子を窺った。「西園寺社長、どうしてわざわざお越しになったのですか?もう入札の場以外でお会いすることはないかと思っていましたよ」浩之は応接室の一人掛けソファに座り、リラックスした姿勢で、言い終わると手を上げた。「どうぞお掛けください」
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第786話

「これは……」綾芽は写真を見た瞬間、その顔色も悪くなった。これらの写真は……何年も前、彼女が海外で水商売のアルバイトをしていた時に撮られたものだった。「浩之、西園寺一花は私を陥れようとしているの。あなたは絶対に彼女を信じないで……」「……」浩之は黙り込んだ。彼はうつむき、彼から出る威圧感がすさまじく、彼女を恐ろしくさせるほどだった。浩之はよくわかっていた。一花が自ら彼を訪ねてきた以上、写真が偽物であるはずがない。綾芽は慌て、彼の隣にひざまずいた。「浩之、あの女は私たちを仲違いさせようとしているだけよ。彼女の目的はあなたもよくわかっているはず……」「わかっている」浩之がようやく口を開いた。その声は微かに冷たかった。「だが、君は私に嘘をつく必要はない」「私……」「君の過去を調べるのは簡単だ。ただ、私はそれを気にしていない。ただ、君には私に対して誠実であってほしいだけだ」浩之が低い声でそう言うと、綾芽の目がしばらく泳いだ後、すぐに言い直した。「そう、その通りよ。私は昔、若くて何もわからなくて、自分でもよくわからないようなことをしたことがある……今はとても後悔している!もし、あなたがそれを理由に私を嫌うなら……それも仕方ないわ」「これを、黒崎家の人たちは知っていたのか?」浩之はさらに追及した。綾芽は一瞬、言葉を失った。浩之はこれまで、慶が貪欲で、黒崎家が利益に目がくらみ、長年一花を騙し、綾芽と隠れて結婚し子供をもうけたのだと思っていた。しかし、今となっては、本当の原因は黒崎家が綾芽を受け入れられなかったからだ。少なくとも、その写真に写っているような彼女と黒崎家の大事な孫を一緒にさせることを黒崎家は決して許さないだろう。浩之は手に持っていた一枚の写真を、再びテーブルの上に置いた。これは一花が去る前に、わざわざバッグから一枚だけ取り出したものだった。彼女はこの写真を自ら浩之に手渡し、その目は嘲笑を帯びて彼を見つめていた。写真の中の老人は、慶とどこか似ていた。綾芽は何も言わなかった。彼女が口を開く必要もなかった。浩之は賢い人間だ。すぐに察することができる。綾芽の顔色は少しずつ悪くなり、そして真っ青になってしまった。彼女は氷水に落ちたように寒く感じ、涙も一瞬で引っ
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第787話

そこで一花は今日、先手を打って、綾芽の秘密を浩之に渡し、警告とした。一花には、浩之と綾芽の関係がどこまで進んだかは、確信できなかった。しかし、彼女は浩之がギャロップのトップであり、三条家の一人息子として、必ずメンツを重んじると確信している。だから一花が残した写真は、実は綾芽が隠したい最後の秘密ではなく、それは浩之の最低限の体裁とも言えるだろう。浩之が賢い人間なら、今後の行動を慎重に考えるはずだ。意外なことが起きていなければ、三条家の人々も今頃、同じ贈り物を受け取っているはずだ。残念ながら、綾芽の三条家への嫁入りの夢は、おそらく砕けるだろう。食事中、夏海は一花がずっとうつむいて携帯をいじっているのを見て、思わず注意をした。「一花さん、仕事と休憩は分けなきゃ。食事に集中しないと、胃を壊しますよ」「そうね」一花も素直に従い、すぐに携帯を置いて箸を手に取った。しかし、二口ほど食べたところで、またインターホンの音に遮られた。一花が立ち上がる前に、家政婦が応対に出た。モニターには人影が見えず、家政婦が何度か呼びかけても返事がない。一花と夏海は目を合わせ、夏海がすぐに立ち上がって確認に行った。「おばさん、仕事に戻っていいよ、私の友達です」夏海が確認するとき、見覚えのある帽子のつばが見えた。すぐに家政婦を先に戻らせた。扉を開けると、案の定、そこに立っていたのは誠だった。誠の身分は特殊だから、彼は通常、人と電話連絡を取らず、用事があれば直接会って話す。二人は時間を決め、一花の家で会うことにしていた。「いい匂いだな。食事中か?」誠の大柄な体が突然近づき、夏海が口を開く前に、彼は身をかがめて彼女の肩の辺りの匂いを嗅いだ。夏海は顔を赤らめ、思わず微かに震えた。寒い冬だというのに、誠は相変わらず薄手のTシャツに革ジャンを羽織り、黒いキャップを深くかぶっていた。彫刻のような整った顔立ちから迫力を一層強く感じさせる。それが彼女には……ちょっと格好良く見えた。「鼻がいいですね。タイミングもいいし。一緒に食べましょう」一花も誰が来たのかと察し、キッチンから茶碗と箸を持ってきていた。家政婦が中にいるので、彼女はキッチンを閉めた。一花は家政婦を信頼していたが、誠は用心深い性格だ。彼のルールでは、関
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第788話

誠はすぐに夏海を褒めた。「気に入ったならたくさん食べてください」夏海はなぜか緊張し、すぐにうつむいた。一花は夏海の表情の変化に気づき、微笑みを浮かべて、二人の皿にそれぞれ料理を少しずつ分けてあげた。「二人ともたくさん食べて、お疲れさまでした」誠はさっきまでかなり空腹だった。昨日の午後から何も食べていなかったので、胃に少し食べ物を入れて初めて、自分の食べ方が非常に汚いことを意識した。すると少しペースを落とした。「失礼したな。腹が減っていると、食べるのが速くなってしまう」「見ればわかりますよ」夏海が小声でつぶやいた。誠ははっきり聞き取れなかったが、気にせず、一花に向かって本題を切り出した。彼はここ数日、こっそりと「青空」に戻り、亮がまだ帰国していないことを知った。しかし、彼が得た情報と観察した状況からすると、柊馬はおそらく彼らには捕まっていない。誠は夏海の前で直接、情報を口にした。夏海は一瞬、反応が遅れた。「ちょっと待って……私、まだ席を外していないのに、どうして……」誠は夏海を一瞥し、鼻で笑った。一花も淡々と微笑んだ。「大丈夫よ、みんなは信頼できる仲間だから」「白川和香の件は、どうするつもりだ?」誠がさらに尋ねた。彼はついでに和香の状況も調べていた。一花が起訴を取り下げたため、彼女はすでに調査される状態から解放された。「彼女のことは、しばらく置いておこうと思います」一花の目つきが鋭くなった。彼女にとって、今最も重要なのは伊集院グループの入札の件だ。入札が終わったら、その時にすべての清算をするつもりだ。「彼女がじっとしているとは思えない。気をつけろよ」誠は一言注意をした。彼はただ柊馬を見つけたいだけで、余計なことに手を出すつもりはなかった。それに、彼の立場は微妙で、たとえ一花を助けて「青空」と対立しても、無傷で引くことはできない。一花はそのことを理解していたので、誠に表に出るよう求めることもなかった。彼女は和香に代償を支払わせるだけでなく、柊馬を傷つけた者たちにも法の裁きを受けさせたかった。だから、「青空」の連中は、当然すべて敵だ。「ええ、わかってます。ずっと部下に監視させているんです」一花が言い終えると、夏海も何かを思い出した。「そうだ、西園寺陸
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第789話

誠は食器を置き、突然顔を上げ、目を細めて彼女を見つめた。夏海は呆気に取られた。「どうして……恋愛をしたことがなければ、思ったことを口に出しちゃいけないんですか?」「いや、構わないよ」誠は笑い、だらりとした様子で、体を椅子の片方に凭れて彼女の方へ傾けた。「俺も恋愛をしたことがない。時々、本当に愛し合うカップルを見ると、やっぱり感無量だな」「あなたも恋愛をしたことがないんですか?」夏海は目をぱちぱちさせ、少し期待した様子で誠を見つめた。誠は爪楊枝をくわえ、「うん」と返事した。「俺は純情そうに見えるだろう?」「全然です」夏海は首を横に振り、真剣に彼のことを評価した。「あなたは恋のベテランに見えます」誠はポカンとしてから、笑いながら尋ねた。「恋のベテラン?それはどういう意味だ?恋に対して常に誠実で全力で向き合っている人だってことか?分からないんだ、説明してくれ」夏海は言った。「それはですね、いつも浮気して、たくさんの恋愛を経験していて、感情に誠実じゃない男のことですよ」彼女の説明に、誠の笑顔は固まった。彼はすぐに真顔になり、姿勢まで正した。「俺が恋のベテランのはずがないだろう?そんな雰囲気、俺のどこにあるんだ?」誠は言い終えると、直接革ジャンを脱ぎ捨てた。夏海は慌てて顔を背けた。「何してるんですか?」「見てみろ。俺はこんなに逞しいだろう!」誠は勝手に腕の筋肉を披露し始めた。夏海は我に返り、我慢できず視線を彼の方へと向けた。彼は確かに全身の筋肉がすごかった。以前、携帯ショップにいた時にもその逞しさに驚かされたが、今、こんな至近距離で彼の隆起した筋肉を再び見て、耳がすぐに赤くなった。彼の胸筋も力を入れると動いた。彼が話す時のその声音も少し自慢しているようだった。「俺は正真正銘の誠実で強い男だ。女を口説くことしか能のない軟弱な奴らとは違う」「べ、別に恋のベテランは軟弱な男のことじゃありません……あなたのその体つきも、十分そのような人っぽいですよ」夏海は誠とこれ以上話したくなくなり、手を振った。「もういい、もういいですよ。早く服を着なさい」誠はもともと自分の筋肉のすごい体を披露するのにウキウキしていたが、夏海がそう言うので、おとなしく服を着た。その時、一花
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第790話

湊は一花を引き留めようとしたが、彼女の決意が揺るがないのを見て、仕方なく一緒に如月家へと行った。如月家が最初に対応してくれたのは執事だ。一花が訪ねてきたことに明らかに驚いた様子だった。許可を取った後、彼らを直接、陽菜の父親である如月正秀(きさらぎ まさひで)の書斎へと案内した。一花と湊は三十分近く待って、ようやく誰かがやって来た。しかし、出されたのはお茶だけで、正秀は現在多忙で、一花に会えるかどうかは確約できないと告げられた。「私は陽菜さんに用があるんです。如月さんがお忙しくて会えなくても構いません。陽菜さんにこちらへ来るよう伝えてください。急ぎの用事があります」代わりに応対した女性の使用人は気まずそうに笑った。「西園寺さん、お嬢様はただいま不在でして。それに、お嬢様とはご連絡手段をお持ちでしょうから、事前にご連絡の上、改めてお約束なさってはいかがでしょうか?」「陽菜さんが今家にいないなら、じゃあ、やっぱりこちらで如月さんをお待ちします」湊は焦って一花を見たが、彼女の顔には慌てた様子は全くなかった。言い終えると、一花は直接腰を下ろし、お茶を一口飲んだ。使用人は少し驚いた。「西園寺さん、長らくお待たせしてしまい、申し訳ございません。しかし、事前にご連絡なくお越しになったものですから、本日はおそらく……」如月家は西園寺家を敵に回したくなかった。それに、一花は伊集院グループを預かる身でもあり、伊集院家と如月家の間にはまだいくつかの提携事業がある。だから、相手は一花に会いたくなくても、まずは時間を引き延ばそうとするしかない。「構いません。こちらでお待ちします。私の知る限り、如月さんはもう家の仕事をされておられないはずです。おられるのなら、私はいつまでも待つつもりです」一花は直接、使用人の言葉を遮った。彼女がこう言った理由は、湊でもわからなかった。彼は、一花が今、最も優先すべきことはネット上の問題を解決することで、陽菜や如月家に時間を費やすのは全く無意味だと考えていた。使用人が困っていると、書斎の扉が誰かに押し開けられた。正秀が重い足取りで入ってきた。彼は使用人と一花の会話をすべて聞いていた。一花がどうしても自分に会いたいというなら、隠れる必要もない。「西園寺社長がわざわざお越しくださった
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