All Chapters of 血の契約と魔石の継承者: Chapter 71 - Chapter 80

98 Chapters

71話 恋するAランク冒険者の家庭訪問

「か、彼氏に……甘えたってい~じゃんっ♡」 リリのその言葉に、ユウの胸は温かくなった。(そりゃそうか……任務中じゃないんだし、休みの日にまでリーダーをしていたら疲れてイヤになっちゃうよなぁ……しかも、24時間休むこともなく甘えられなかったらツラいだろうな) ユウは、リリの気持ちを理解し、自分の言葉が野暮だったと反省した。リリは、まだ残念そうな顔をしていたが、ユウは意を決して、彼女の胸に甘えるように顔を埋めた。 リリの胸は、パジャマ越しでも柔らかく、洗濯されたばかりのような清潔で良い香りと、リリ自身の温かな温もりに包まれた。「わぁっ。んんっ……ユウくん……?」 リリは、ユウの突然の甘えに一瞬戸惑ったが、すぐにその意味を悟った。 リリは、抱きしめるようにユウの頭を優しく抱え込み、その淡い金色の髪を撫で始めた。彼女の胸は、ユウの頭に押し付けられ、さらに柔らかく形を変える。その仕草は、母性的な優しさと、愛する彼を受け入れる喜びが入り混じっていた。「ふふっ、ユウくんも甘えたかったんだぁ。もう、可愛いんだからっ」 リリの言葉には、ユウを独占できたことへの、極上の幸福感が滲んでいた。ユウは、その温もりと柔らかさに包まれ、安心して目を閉じた。 ユウは、リリと二人きりで数日間の濃密な時間を過ごした後、冒険に出る前に、彼女を家族に紹介し冒険者となったことを報告しに行くことを決めた。 ユウの実家に着くと、リリは昨夜までの大胆な姿とは打って変わり、緊張で背筋をピンと伸ばし、いつもの冒険者の可愛らしいピンク色のスカートに可愛らしいブラウス姿で、ユウの後ろに隠れるように立っていた。「父さん、母さん。こちらはリリ。今、付き合ってるんだ……」 ユウが単刀直入に紹介すると、両親は驚きのあまり目を見開いた。ユウが恋人を連れてきただけでも驚きなのに、彼の口から飛び出した次の言葉は、両親に更なる衝撃を与えた。「それ
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72話 規格外の収納術と、初めての武器屋

 ユウとリリが町へ着くと、二人は冒険に備えて、パーティの活動資金で食材の買い出しを始めた。 リリは、カゴいっぱいの野菜や肉、保存食をユウの前に差し出す。「これ、お願いユウくん!」「はいよ」 ユウがそれらを手に取り、彼の特別な収納へと次々に仕舞い込んでいく。ユウの収納は、リリや他のパーティメンバーが持つ空間拡張された収納とは異なり、容量や重さを一切気にせずに収納ができる。リリたちの収納は容量に限りがあり、日用品や防具、武器やテント、着替えなども収納しているため、一度に大量の食材を買い揃えるのは難しかった。 しかし、ユウの様子を見て、リリは改めてその能力の凄さを実感していた。 数日の間、ユウと行動を共にしていたリリは、ユウがワイルドボアのような大型の獣を討伐した際も、容量を気にせずに何頭もの獣を収納し、他にも食料品に衣類やら、次々と大量のアイテムを収納していることに気付いていた。リリは、自分の収納の容量を遥かに超えるその収納能力を、横目でチラリと見ていた。「ユウくん、他の食料品も収納をお願いしても良いかなぁ?わたしの収納……容量が厳しくて……」 リリは、買い物かごに山積みになったパンや調味料を指さし、少し申し訳なさそうにユウに頼んだ。「うん。問題ないよ!まだまだ余裕はあると思うから収納は、任せて」 ユウは笑顔でそう答え、リリが差し出す大量の食料品を次々と収納していった。その手際の良い作業に、リリは改めてユウの収納能力の優秀さを感じていた。「えっと……獣の肉がいっぱい討伐をしてたけど……一頭は、パーティのみんなで食べる用にしちゃっても良いかな?他は売る感じだよね?」 リリは、ユウの収納に入っている大量の獣の肉を思い出し、尋ねた。(獣の肉は売れるんだ? 自分で食べるように収納をしていたけど……) ユウは、初めて冒険者として本格的に活動するため、獣の肉が換金アイテムになるという認識が薄かった。しかし、リリの言葉で
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73話 非常食は金貨に変わる

 ユウは正直、ワイルドボアの数を数えたことなどなかった。彼の収納は、時間経過による腐敗がないため、単に非常食としてストックしているような感覚でいた。リーナと出会ってから、徐々に討伐方法を吸収し、リーナに会えなくなってからは、収納ができるようになったこともあり、ほぼ毎日討伐をしては収納を繰り返していた。(この言い方は、なんとなく……正直に言うとリリに、引かれる気がするな……) ユウは、リリの瞳に映る自分の顔を見ながら、内心でそう思った。リリの知っている3頭だけでも驚かれているのに、正直な数を言えば、彼女をドン引きさせてしまうのではないかという不安があった。(10頭? 6頭にしておくか……。実際は、30頭以上あると思うけど) ユウは、自分の収納の正確な量を悟られないように、リリの知っている数に少しだけ上乗せした数を答えることにした。「んー……6頭くらいかな……」 ユウは、リリの目を見ながら、控えめな数字を口にした。「ふうん……もっとあるんじゃないのかなぁ……? あの調子で討伐していたらさぁ!?」 リリは、ユウの腕に抱きつきながら、信じていないというようにジト目で見つめてきた。その視線に、ユウはたじろいだ。「ま、まあ……う、うん。そ、そうだよね……多分、15頭くらいかな」 ユウは、さらに数字を上乗せし、正直なところから遠ざけようとした。「や、やっぱりぃ……ふっふーん♪ だよね、だよねー」 リリは、ユウの正直さに満足したように、得意げに鼻を鳴らし、ユウの腕に顔を擦り付けた。「だよね、だよね~! やっぱりぃーわたしのユウくんは、すごぉーい♪」 リリは、誇らしげにユウの腕に抱きつきながら、目を輝かせた。「簡単にユウくんは討伐してるけど。実は、結構ね&hellip
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74話 命の値段と、少女の教え

「えっとね、武器って……お金がないからって、ケチって安いもので考える人が多いけど。でも、武器で戦って魔物を討伐をするんだよ」 リリは、金貨二枚という値札を見て戸惑うユウの心を見透かしたように、真剣な表情で語り始めた。彼女は、冒険者として戦場に立つことの厳しさを知っていた。「安く済ませて、中古とか品質や弱い素材を使ってる武器で戦闘中に武器が折れたら、ケチっただけで実力があるのにも関わらずに命落とすこともあるんだよ……豪華な飾りとか付いて高い物は必要ないけどねぇ」 リリは、ユウの命を守るためだという強い思いを込めて、そう諭した。彼女の言葉は、単に高価なものを勧めているのではなく、武器の品質が命に直結するという、冒険者としての現実を伝えていた。ユウは、リリの真剣な眼差しから、その言葉の重みを感じ取った。 ユウは、リリが選んだ剣から放たれる淡い青白いオーラと、彼女の命を案じる真剣な言葉を聞き、深く頷いた。金貨二枚という金額は重かったが、リリの言う通り、武器の品質が命を分けることは明白だった。「わかった。じゃあ、これにするよ」 ユウが購入を決断すると、リリの表情が一気に輝いた。彼女の瞳は、ユウが自分の言葉を信じ、自分の助言を受け入れたという事実で潤んでいた。(ユウくんが、わたしの言葉を信じてくれた!) リリは、ユウから深く信用されていると実感し、胸の中に温かい嬉しさが込み上げてきた。同時に、この剣がユウの命を守る重要な道具となることに、身が引き締まるような責任感を感じていた。「うんっ! ありがと、ユウくん! 絶対に後悔させないよっ☆」 リリは、そう言ってユウの腕に抱きつき、満面の笑みを浮かべた。 店の店主は、二人の若いカップルが神聖なる武器屋の店の中で、いちゃいちゃと騒いでいるのが気に食わなかった。店主は、仏頂面で腕を組み、冷ややかな目線で二人を見つめていた。 そんな店主の視線を感じながらも、初めての高額な買い物で緊張をした声で、ユウが声を掛けた。「あの……ちょっと良いですか? あの
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75話 覚醒するドラゴンの剣、無自覚な契約

「Aランクの『バルキリー』のリリア様では……!?」 店主の口から、驚愕と畏敬の念が入り混じった声が漏れた。リリアという名、そしてAランクという事実に、彼の冷ややかな態度は一瞬で崩れ去った。「うん、うん、そうだよっ☆」 リリは、店主の驚愕に満ちた表情を見て、得意げに胸を張った。「『バルキリー』のパーティの新メンバーなんだぁー! ちゃんと覚えてねっ」 リリは、そう言ってユウの腕にさらに抱きつき、ユウを庇護下に置いていることを誇示するように微笑んだ。 しかし、店主はリリの言っていることが全く理解できなかった。(……は? Aランクのパーティが、新人で低級の冒険者をパーティへ迎え入れるのか!?) 店主の頭の中は、冒険者としての常識に反する事態で混乱していた。(明らかに足手まといで邪魔だろ。低級の冒険者なんて……いない方が、守る労力が減って効率が良いだろ……。荷物持ちとして……か? だったらパーティとしてではなく、サポーターを雇えばいいだけの話だろ。安く済むし、サポーターとしての経験のあるベテランもいるだろうに……) 店主は、Aランクパーティの行動原理に全く合致しないリリの言葉を、信じることができなかった。彼の思考は、冒険者としての効率と常識に縛られていた。 店主は、リリの言葉が冒険者としての常識からかけ離れていることに戸惑いはしたが、それ以上、詮索はしなかった。理解できなくても、最上級の冒険者である『バルキリー』のリーダーであるリリアに嫌われでもしたら、冒険者相手に商売をしている武器屋としては死活問題になってくるからだ。 当然、文句も意見もできなかった。彼女が必要と言えば、その剣を差し出すしかなかった。別に損をする訳でもないのだから。「そ、そうだったのですか……それは、失礼なことを言ってしまいましたな」 店主は、態度を一変させ、それまでの冷ややかな表情を消し
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76話 ムードメーカーの登場と、恋するリーダーの受難

 たとえユウに「仲の良い男友達」などと思われては、リリは気分が良くなかった。仲の良い異性がいるとは思われなくなかった。その勢いのある否定を聞いたカイが、困惑した声をあげた。「な、なんだよー! そこまで否定をしなくてもーだろ! たとえ事実だとしても、ちょっとショックだぞ……俺!」 カイの言葉に、リリはさらに顔を赤くし、ユウの胸に顔を埋めた。「ユウくんのイジワルー。そんなに仲の良い、男の子なんていないもんっ! ふんっ」 リリは、ユウの胸に顔を埋めたまま、恨めしそうにくぐもった声を上げた。その拗ねた様子は、ユウに抱きつきながらも、可愛らしくふてくされているように見えた。 リリとユウのやり取りを聞いていたカイは、驚きを隠せずに首を傾げた。「へぇ……リリが、変だぞ……完全に新人を意識してる感じじゃんかーっていうか、リリが男の人の腕に抱きついてるの初めて見たぞ。すげーな……新人君は」 カイは、リリが他の男性に抱きついているという、かつて見たことのない光景に、純粋な感嘆の声を上げた。 その言葉でユウが反応して、カイに視線を向けた。「パーティの仲間って、『バルキリー』の……おぉ!先輩か……」 ユウは、リリの腕から離れ、初めて顔を合わせるカイに挨拶をした。「えっと、俺はユウです……」「えーっと……俺はカイルで、多分一番年下で武器は弓矢で中、長距離攻撃が得意で近接戦闘だと無力なんでよろしくなーユウ兄!」 カイは、ユウが『バルキリー』の新メンバーだと理解すると、すぐに笑顔を見せ、親しみを込めて「ユウ兄」と呼んだ。その物腰は軽やかで、彼がパーティの中でムードメーカー的な存在であること伺わせた。「へぇ……弓矢かー俺は才能ないんだよなぁ。羨ましいや」 ユウは、素直にカイの持つ弓術の才能を褒めた。自身が遠距
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77話 「先頭」を譲った理由、乙女の特等席

「そうだ、カイル! その自慢の弓矢の腕をユウくんに見せてあげれば良いんじゃないっ☆ もっと褒めてくれると思うよっ」 リリは、ユウへの独占欲から一転、ユウとカイの仲を取り持つように促した。 リリの言うことに、まだまだ褒め足りなそうなカイルが反応した。「おぉー! んふふーっ♪ だよな、仲間に俺の技量を見せておかないとなー」 カイルは、嬉しそうに声を上げ、自慢の弓矢の腕前を見せることに乗り気になった。「ただの年下って思われててもイヤだしな」 カイルは、そう言って、ユウに自分の実力を認めさせたいという、若者らしい意欲を覗かせた。「面白そうだ! 俺、村で的あてをやらせてもらったことがあるくらいだし。猟師の人の狩も見たことないし……興味ある」 ユウは、カイルの提案に目を輝かせた。彼にとって、弓矢の技術は未知の領域であり、純粋な興味が湧いた。「おっ、ユウ兄……弓に、興味あるのかぁ……そりゃ嬉しいな。俺の腕前を見て、おどろけー!」 カイルは、ユウの興味を引けたことが心底嬉しそうで、満面の笑みを浮かべた。彼は、小柄で、エルフの血が混ざっているのか耳がツンと尖っており、光に反射して金髪のサラサラの髪の毛を揺らした。そのグリーン色の瞳を輝かせて、ユウに自信たっぷりにそう言った。 ユウは、まだ自分の袖を掴んでいるリリを見て、感謝の気持ちを込めて微笑みながら言った。「リリ、ありがとなー。カイと仲良くなれそうだ」 その言葉に、リリの頬は緩んだ。「わぁっ。えへへ~♪ リーダーとして当然でーすっ☆」 リリは、そう言いながら、さらにユウの腕に抱きつき、得意げな表情を見せた。「それに、ユウくん……警戒心の強いカイに、すんなりと気に入られてたし。すごいねぇ」 リリは、ユウの順応性の高さに感心していた。「カイはエルフの血が混ざってるから結構、警戒心が強いんだよー」 リリは、秘密を教えるように
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78話 ドヤ顔の恋人と、困惑の斥候

 カイの案内で森へと辿り着いた。一見すると普通の森に見えるが、ユウが毎日のように訓練をしていた、結界に守られた森とは決定的に異なっていた。ユウの感覚には、ちらほらと森の中から異質な気配が届いていた。それは、これまで討伐してきたワイルドボアのような獣の気配とは、明らかに異なるものだった。(……なるほど。リリが言っていた獣の気配とは違うっていう意味が分かった……これは、近づいて来れば分かるな) ユウは、自身のドラゴンのオーラによって研ぎ澄まされた感覚で、その異質の正体を把握しようとした。「魔物が出るっていっても、低級の魔物だから大丈夫だよ~ユウくん」 ユウが初めての森の異様な気配に、無意識のうちに顔をこわばらせていたことに気づき、リリが優しく声を掛けた。「そうそう。俺たちが低ランクの冒険者だった頃に訓練をしていた森だからさ」 カイも、ユウの緊張を和らげようと、明るくそう付け加えた。二人は、ユウの不安を取り除こうと、気遣ってくれているのが伝わってきた。「そ、そうなんだ……俺、無事に帰れるかな……初めての魔物と遭遇して戦うかもなんだろ?」「大丈夫だって! 俺とリリもいるんだしさー」 リリがユウの袖を引っ張り、ユウの耳元でそっと囁いた。「ユウくん、行こっ☆ ユウくんなら余裕だからさぁ……ね?」 ユウたちが森へ足を踏み入れた、その直後だった。 ユウの皮膚が粟立つよりも早く、彼の体内のドラゴンのオーラが、一瞬の殺意の波動を捉えた。森の奥、木々の陰に潜んでいた魔物が、まさに襲いかかろうと動いたその瞬間を、ユウの反射神経は正確に感じ取った。「っ!」 ユウは、その危険なオーラを感じ取ると同時に、意識することなく、反射的に手をかざした。彼の掌の中心から、圧縮された魔力が『パシュ……』と、音もなく、無詠唱で放たれた。それは、彼が日々の訓練で無意識に磨き上げてきた、ドラゴンの魔力による魔力弾だった。
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79話 鋼鉄の死神と、下敷きの少女

「……おい。これ……巨大サソリじゃないのか!?」 魔物に近づいたカイは、その姿を認識すると、目を見開いて声を上げた。「ギガスコルピオって言われているやつだよな。硬い外骨格で物理攻撃が効かなくて……強力な毒針を持っていて、物理攻撃と毒攻撃を組み合わせて襲ってくる」 カイは、魔物の知識を思い出し、その危険性を口にした。「尾の毒針は一撃で敵を麻痺させることができて、戦闘では素早い動きと強靭な防御力で獲物を追い詰めてくる厄介なやつ。こりゃ……3メートル越えの大物だな~でっか!」 その巨大なサソリは、確かに彼らが普段狩る低級の魔物とはかけ離れた、異様な迫力を放っていた。「うわぁ……硬い外骨格を避けて、弱い目を狙い一撃で仕留めるとか……ユウ兄なにものよ!?」 カイは、ユウの無自覚な一撃が、この強敵を確実に仕留めた事実に、畏敬の念を抱いた。(ユウ兄、かっこい良すぎだろ……くそっ。俺、先輩なのに……ま、そんなのは関係ないか……冒険者は、実力重視だもんな) カイは、嫉妬心と尊敬の念が入り混じった複雑な感情を抱きながらも、ユウの実力を目の当たりにしたことに、純粋に興奮していた。「んふふ♪ でしょ、でしょ~もっと褒めて良いんだからねっ☆」 リリは、カイの驚きようを見て、さらに上機嫌になり、胸を張った。自分の恋人が、こんなにも規格外の力を持っていることを、心底誇りに思っていた。「だから、なんで……リリがドヤ顔してるんだよっ……って、誰かいるっ!」 カイが、リリにツッコミを入れようとした、その時だった。彼は、倒れたギガスコルピオの巨大な体の異変に気づいた。 ユウが、恐る恐る近づき、よく見ると、サソリの巨大な腕の下に、何かが押しつぶされるようにして身動きが取れなくな
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80話 拒絶の裏側、服の裾を離せない指先

 しかし、彼女の視線は定まらず、チラチラとユウの顔を見上げて、彼の反応を気にしているのが見て取れた。彼女の内心では、ユウに助けられたことへの感謝と、素直になれない自分自身への葛藤があった。「別にお礼を言われたくて助けたわけじゃないし……気にすんなよ。この森に棲んでるんだな。一人なのか? 寂しくない?」 ユウは、彼女の強がりを受け止め、穏やかな声でそう返した。「あたしは一人で平気。誰にも頼らないって決めてるから」 彼女は、ユウの服の裾をしっかりと掴んだまま、グリーン色の瞳をそらして、強い決意を込めたかのような口調で言った。 ユウは、そんな彼女の頭を、優しさに満ちた手つきで撫で続けながら、静かに語りかけた。「そっか、一人でいたいって気持ちはなんとなく分かる。けど、仲間と一緒にいるのも楽しいもんだぞ」 その温かい手の感触に、彼女は頭を気持ち良さそうに撫でられながら、抵抗するように呟いた。「気安く……さ、触んないでよ……」 彼女は口では「触るな」と言っていたが、その手はユウの服の裾を離すことはなく、頭を撫でる手を払いのけることも、逃げ出すそぶりも見せなかった。ユウには、それが彼女の照れ隠しや強がりなのだと、優しく理解することができた。「そんな奴は放っておいて、訓練場所に行こうぜー」 カイが、待ち切れなさそうな顔をして、口を開こうとした。しかし、ユウは、服の裾を掴む彼女の無言の助けを求めているような仕草を敏感に感じ取っていたため、カイの言葉を無視し、彼女と話を続けた。「名前は何て言うんだ? 俺はユウ」 ユウは、穏やかな口調で尋ねた。「……シエラ。……あんたが、助けてくれたんだな……わたしを助けるなんて、変わってるヤツだな……」 彼女――シエラは、小さな声で自分の名前を明かした。そして、ユウの行動に対する素直な疑問を口にした。(
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