ドラゴンとは、古来から森を縄張りにし、森を守る存在だった。 シエラにとって、ユウの外見は、森を荒らす天敵ともいえる人間の男に見える。それなのに、彼に抱きかかえられ、これほどの温かい安堵感を得ることに、彼女は不思議でならなかった。 しかし、シエラの精霊としての感覚は、嘘をつかなかった。彼女は、ユウの体から発せられている、強大で、古の記憶を呼び覚ますようなドラゴンのオーラを、確かに感じ取っていたのだ。そのオーラは、彼女の故郷である森の根源的な力と共鳴し、彼女の警戒心を完全に鎮めていた。 そんなシエラを抱きかかえるユウを見たリリは、驚きに目を見開いていた。(……え!? どうして……森の精霊が抵抗もせずに抱きかかえられてるの? 森の精霊は人間を敵視して森から追い出そうとしてくるよね) リリの持つ知識と眼前の光景がかけ離れていたため、彼女の思考は混乱した。(ユウくんが、彼女を助けたから嫌がらないのかな?) リリは、そう結論づけようとしたが、精霊の人間に対する警戒心を知っているだけに、納得しきれずにいた。 ユウは、抱きかかえたシエラをそのままに、先を歩いていたカイの元へ歩き始めた。その道すがら、抱きかかえていたシエラに、ユウは優しく尋ねた。「お前も、一緒に来るか?」 シエラは、ユウの突然の提案に困惑しつつも、初めて出会ったにもかかわらず、自分に優しく接してくれるユウに、強く心を惹かれていた。「……どうしてもっていうなら……し、しかたないわね。いいわよ……」 シエラは、素直になれない強がりを交えながらも、ユウの誘いを受け入れた。その声は、小さく震えていた。 リリは、シエラの返事を聞き、さらに驚きの表情を強めた。彼女が持つ知識では、森の精霊とは森を守る存在で、その守るべき森から離れないと聞かされていたからだ。「えっと……シエラは、この森の精霊だよね? 森から離れないんじゃないの?」
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