All Chapters of 悪魔祓い(デビルブレイカー): Chapter 111 - Chapter 120

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第50話 決戦③

「…まだ立つのか?」あれだけの攻撃を受けても立ち上がるミーナを見てしぶといと思う一方、言葉が出るのに少し間があった。「…もう力の差は分かった筈だ。ミーナ、お前は確かに強くなった。それでも、俺には敵わない。」「諦めろ。…さっさと、負けを認めろ。」「認めない!」グレンの言葉を遮る様にミーナは言い返す。「私は、グレンの話をちゃんと聞きたいの!」「話?今更、何を聞くつもりだ?」「色々聞きたい事はあるけど、1番聞きたい事だけを聞くわ。グレン、あなたは世界の人達を根絶やしにするって言ったわよね?」「ああ、言った。それがどうした?」「何の為に?あなたが言う"腐った人間"を全て殺せば世界が良くなるの?それとも、ただ単純に恨みを晴らしたいだけ?」「今のグレンは目先の事しか考えていない。怒りの感情に任せてるだけの、先を見据えたビジョンがまるで無い。ただ壊したいと、我儘を言ってるだけにしか聞こえない!」「そんな事しても世界は良くならないし、ライクが言った様にあなた自身も報われる事は無い!」世界の人達を殺す事で解決しようとする考えを真っ向から否定するミーナ。「…じゃあ、話し合いをすれば解決するのか?」そう答えるグレンに対し、ミーナは返答するのに時間が掛かる。「………それは、話してみないと分からない事だと思う…。」「いや、話し合いなんて意味がない。それで解決するなら、戦争なんて起きはしない。」今度はグレンがミーナの言葉を否定した。そして続けて口を開く。「この世界にはな。話し合いの出来る人間と出来ない人間がいる。出来ない人間が国のトップになるから、戦争なんてものが始まる。」「全員が、お前みたいに話し合いで解決出来る訳じゃない!いい加減、現実を見やがれ!」最後に感情任せにそう言ったグレンの叫びは、彼が経験してきた辛い気持ちの叫びでもあった。国同士の戦争とは、対話では解決しない問題を戦争という暴力で解決しようとする愚行。命の重さを知らない人間が軍事力という力を得た為に起こされる、迷惑極まりない世界を巻き込んだ喧嘩なのである。愚かな国のトップを対話で変える事は出来ない。ならば、力で滅ぼすのみ。そう考えたグレンは、北の大国と世界の腐った人間を滅ぼす事が平和に繋がると考えたのだ。しかし、それに対してミーナは。「…確かに、戦争は国同士の複雑な問題。戦
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第50話 決戦④

ーーこの世界を作り上げた森羅万象の神、理王(りお)は悲しんだ。 世界に変化をもたらした人間がいつの日か悪魔の王を破壊してくれると願い、自身が持つ"陰"と"陽"の力を混界に残したのだが、その力は悪き心を持つ者の手に行き渡る。 託した想い(力)が、反対に世界の破滅へと導かれてしまう。 神であろうと混界に行く事の出来ない理王(りお)は、取り返しのつかない自分の過ちに心を痛め苦しんだ。 ーーこのままでは、今まで変化を重ね成長してきた混界の世界が消えてしまう。 後悔する理王(りお)は、別世界を見通す鏡を覗きながら、そうならない様に祈る事しか出来なかった。 そんな理王の姿を見ていた者達が2人居た。 2人は理王(りお)の子供達である。 1人は兄のヴィサリオン。世界の時間の流れを視る神であり、未来の選択肢を無数に見通す力を持っていた。 もう1人は妹のアナリセウス。彼女の耳は魂の囁きを聴き、心の奥底に隠れた感情の真実を知る事が出来る。相手の心を読む事が出来る神である。 ヴィサリオンとアナリセウスは親である理王(りお)に内緒で、自分達の力を人間達の居る混界へと解き放つ。 悪き心を持つ者を討つ為に、人知れず自分達の力を混界で生きる誰かに託したかったのだ。 そしてその力を最初に手にしたのは1人の女性である。 その女性は竜の民と呼ばれる種族の娘ヒスイであり、ヒスイはヴィサリオンと同じく未来を見通す力を生まれながらに持っていた。 しかし、ヒスイは約20年前に死した。 悪き心を持つ、ベリエルという男に殺されたのだ。 ヒスイが殺された事によりヴィサリオンの力は再び混界を漂い、そして再び行き着いた。 その行き先はヒスイの息子であるグレン(ルーファス)である。 ヒスイの未来視の力はヴィサリオンの物であり、その力は人知れず息子であるグレンに受け継がれたのだ。 ヴィサリオンの力が受け継がれたその後、今まで誰にも宿らなかったアナリセウスの力がある女性の肉体に宿る。 その女性の名前はミーナであった。 ミーナの読心の力は今まで謎に包まれていたのだが、本当は神の力なのであった。 未来を見通す力と、心の奥底を読む力。 2つの力を持つ者達が力を合わせる事で、理王(りお)の力をも超える可能性があった。 しかし今現在、その力を
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第50話 決戦⑤

いつミーナが上空に移動していたのか、グレンは気付く事が出来なかった。ライクとニケルとネル。3人との勝負には勝てたものの、3人と勝負してる間は流石のグレンも余裕は無かった。特にネルと戦っている間は、かなりネルを警戒していた。まさに4人の連携が今の状況を作り上げていたのだ。「(くそ…悪魔の手を出したせいで。悪魔の手を解除しても、身体に纏われた悪魔の魔力が残留している。)」ーーこの攻撃を喰らえば、俺は負ける…。「…いや、まだだ!まだ終わりじゃない!」グレンは上空から急降下してくるミーナを迎え撃つ為、右拳を作って殴る構えを取る。ーーさっきあいつ(ネル)に竜挐(りゅうだ)を喰らわせた。今なら倍増したこの竜挐によって対抗出来る筈だ。そしてグレンは右拳に竜人の魔力を纏わせる。「竜だ……。」しかし、グレンは寸前で右拳が止まる。ーー出来ない。俺は、ミーナを本気で殴れない。そう。グレンは反射的に止めてしまった。グレンはミーナとの戦いの間、竜挐(りゅうだ)や心眼点睛など、拳での攻撃を使用しなかった。その他にも、グレンにはもう一つ力がある。それは、怒りによって発動する真紅の炎。これも、この戦いにおいて使用していない。何故なら、ミーナに対して怒りなどある筈が無いからだ。寧ろ、最初から答えは決まっている。ーーもう、終わりにして欲しい。グレンは右拳を止めたまま微動だにせず、まるでミーナの斬撃を受けようとしていた。それを読心によって感知したミーナは一瞬戸惑うも、そのままグレンに向かって刀を振り下ろす。振り下ろされた刀から、巨大な光の魔力が発生する。光はグレンの全身を覆い尽くし、グレンに纏われた竜の鱗や翼を全て剥がし取った。剥がされたグレンは普段の魔導士のローブ姿に戻り、そのままその場に倒れそうになる。ーー終わった…まさか、俺がミーナに負けるとは思いもしなかった。そして仰向けに倒れたグレン。意識を失いそうになる中、グレンは今までの事を振り返る。ーーミーナ。俺は、お前が羨ましかった。ずっとお前の様になりたかった。けど、俺は変われない。いつも間違えてきた。ーーそうなれないのは、俺が悪魔祓いになってしまったからだと。今までずっと言い訳してきた。けどそうじゃ無い。ーー俺がそうなれないのは俺自身、自分の事ばかりで他人の気持ちを考えようとしなかった自分
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第51話 残酷な絶望の世界

時は1日前に遡る。東の大国で東北魔導大戦が始まってる中、北の大国に1人で潜入するグロード。北の大国の軍上層部が滞在するウンディーネ軍政府(ぐんせいふ)内に潜入したグロードは、地下にあるとされる軍事兵器を破壊しようと考えていた。「やめて下さい!それだけは…ここを破壊されると、我々北の大国は!……」軍事兵器が地下にあると口を割ったウンディーネ王。グロードの空間移動によって何故か一緒に連れて来られたのだ。「そうだな。大変な事になるだろうな。」グロードは目の前に広がる軍事兵器の数々を全て感知しながら言った。「この国は軍事産業で成り立つ軍事国家。当然、軍事兵器の損失はそのまま国家経済の損失に繋がる筈だ。」「ここにある軍事兵器だけじゃ無い。今回失うものは、東の大国に攻め入った軍人達に加えて五十隻もの魔導戦艦。その他にも戦闘機など。いずれにせよ、大きな損失だ。」「通常の国家予算じゃ、国家を再建するには到底足りない。この国の国民達に頼らなければ追いつかないだろう。だがそうなれば更に国民の生活と国内の生産力が崩れ、自ら経済破綻に追い込む事になる。」「俺の言ってる事が分かるか?軍事国家の敗者は終わりしか無いって事だ。馬鹿が国のトップになるから、国は破滅の道を辿る事になる。」グロードが言った様に、北の大国が軍事力を無くす事は単純に「戦力がなくなる」だけではなく、国家経済全体に深刻な影響を及ぼす事になる。軍事兵器の喪失は経済だけでなく、国家資産とその抑止力が無くなるという事。軍事再建に必要な増税と軍備再建。魔力資源政策により、国民を犠牲とした魔力徴収を再び行うだろう。しかし、兵器を失えば不満を抱えた国民達の暴動や他国からの報復が待ち受けており、再建するにしても弊害となる要因は多くなるだろう。つまり北の大国は軍事力を取り戻そうとすれば自らの国を破滅へと導き、更に敗戦による引き金がそれまで隠れていた経済的な無理が一気に表面化する事となる。ウンディーネ王はそうなる事を理解していた為、必死になってグロードを止めようと彼の右足に縋っていた。そんなウンディーネ王を無視し、グロードは目を開眼させる。開眼しただけで、この場にある感知した軍事兵器全てを一気に破壊した。「うわぁぁ!!!やめでぐださい!!」ウンディーネ王は泣きじゃくりながら止まる様に求めるも、グロードは
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第51話 残酷な絶望の世界②

場面は東の大国に変わり、時刻は午前0時過ぎ。現在もこの国では戦争により負傷した人達を、医療班が必死になって治療をしていた。という訳でも無く、今この場にはグロードが居る為、グロードが重症者を全て引き受けて治療していた。グロードの回復魔法は神級レベルである事に加えて、医療的な知識までも兼ね備えている。その知識レベルは、並の医者を遥かに超えている。グロードは重症者の身体に手を当てるだけで、外傷部分はみるみる消えていき、損傷した内臓部分も元通りに治っていた。「凄い…数箇所の内臓破裂の修復とその周辺にある血管の縫合。欠損が激しい部分は体内の細胞を増殖させて再生力を促す。これを同時に行うなんて。」回復魔法は身体強化と同じで誰にでも扱える基本魔法であるが、その性能は魔導士の技量によって変化する。普通の人であれば魔力や体力を回復させる人が殆ど。その中でも技量の高い人であれば、大きな怪我や病気を治す事も可能となるが、重症者になればなる程、治せる箇所が限定的になりやすい。体内の繊細な臓器や血管の修復はそれだけ繊細な回復作業になる為、同時に回復させるのは至難の技である。故に、それらを同時に行ったグロードは規格外であり、彼が持つ魔力操作技術と医療の知識が神掛かっているのだ。そんなグロードの神掛かり的な回復魔法を、東の大国の医療班達は目を食い入る様にして見学していた。グロードによってエミルやフィナは勿論、重症であった八握剣(やつかのつるぎ)の水刃(すいじん)、スイゲツも完全に回復した。スイゲツはロゼアの痛み共有(シェア・リンク・ペイン)によって首を刺された為、腕に麻痺が少し残っていた。(第49話参照)だが、グロードの回復魔法によってその後遺症も全て無くなり、完全回復を遂げた。後遺症の無くなったスイゲツは涙を流しながらグロードに感謝していた。一方、竜の遺跡には行かず東の大国に残ったカイルとエミルとフィナ。3人は竜の遺跡に行ったミーナ達を心配していた。「ミーナ達、大丈夫かな?」救護所で用意されたベッドに座っているエミルは心配そうな表情で言った。「…もう、そろそろグレンさんに会った頃かな?」時刻は既に午前0時30分頃であり、ミーナ達が空間移動で出発してから既に30分が経っていた。フィナは続けて言った。「エミルちゃん、大丈夫よ。ライクやニケル。ネルが
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第51話 残酷な絶望の世界③

一方、グロードは単独で魔導兵器を追っていたのだが、中々捕まらない。「(クソ!俺が現れたら空間移動でその場から逃げやがる。何だ、俺を避けてるのか?)」魔導兵器は空間移動をしては、様々な地点で殺戮を繰り返していく。しかも、5秒も掛けずにその地点で殺戮を終えて空間移動をする為、グロードの空間移動も間に合わず、イタチごっこを繰り返すだけ。この魔導兵器が意図的にグロードを避けているのが分かる。理由は分からないが、この魔導兵器は戦闘力が低めの大多数が居る場所に転移している様であった。効率的に殺戮する為に改造された脳の思考回路が、この魔導兵器をそうさせているのだろう。既に100人以上の侍達が跡形も無く殺されている。このままでは、侍達が全滅するのも時間の問題だと感じたグロードは魔導兵器の思考を逆手に取ろうとした。グロードの魔力操作技術は大国規模にまで及ぼす事が可能。(技之乖離に近い力を発揮出来るため)。今回、魔導兵器が現れればその地点に増援を送り、一気に魔導兵器を撃破する算段であったが、相手が空間移動出来ると判明する。グロードは、大国規模に自身の魔力を放出する。そして東の大国の侍達だけを選別し一箇所に集めようと空間移動の魔法を使用すると、侍達は全員意図せずに集められた。「…ここは?」「…どうやら、グロードさんによって集められたみたいだ。」突然空間移動した事により、光刃のバンジョウは辺りを見渡しながら周囲を確認する。その理由を炎刃のギンジが推測して答えると、全員の頭の中にグロードが語り掛けてくる。(ギンジさん、その通りだ!ノームの侍達よ。どうやら今この国に居る魔導兵器は空間移動で転移する事が可能らしい。点でバラバラになるよりは集まって居た方がまだ良い!)そしてグロードも侍達が集められた場所に空間移動すると、魔力感知しながら魔導兵器が今どこに居るのか感知しようとする。「(来るなら来い!殺戮が目的なら必ず大人数に引きつられて来る筈だ!)」グロードは魔導兵器の習性をこの短時間で見破っていた。しかし、グロードは気付けなかった。魔導兵器は効率良く殺戮する為なら、相手が誰であろうと関係無い。例え非戦闘員であっても、効率良く殺せるならそうちらの方へと移動する。魔導兵器が次に現れた場所はグロード達の所では無い。上空に配置された飛行艇の近くに空間移動し
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第51話 残酷な絶望の世界④

昨夜、グロードとフィナは話をしていた。「そうなんですね。もう1人、グレンさんにはお兄さんが居たんですね。」「ああ。ラウスと言ってな、物覚えが早くとても優しい子だった。それに母親譲りの体術。きっと生きてたら、俺なんか足元にも及ばないくらい強くなってたんだろうな。」グロードは自身の息子であるラウスの話をしながら、昔の記憶を懐かしんでいた。ーーもう戻らないあの頃の日常。もう一度で良いから、あの頃に戻ってやり直したい。「…ラウス。」そして現在、グロードは目の前の魔導兵器となったラウスを感知してポツリと言った。無造作に跳ねた白銀の髪に、透き通った青緑色の瞳。白い肌に整った目鼻立ちを備えたその顔は端正なヒスイと目鼻がしっかりしてるグロードの息子だと一目見て分かる。身体つきは細身ながらも、肩や胸元には無駄なく鍛えられた筋肉が漆黒の服から浮かんでいる。更に髪色と目の鋭さ以外であれば、弟である現在のグレン(ルーファス)と殆ど変わらない姿であった。しかし、ラウスは目の前の父を前にしても無表情のまま反応しない。人としての情を消されている為、その目には父であるグロードの事を殺戮対象としてしか写っていなかった。グロードは拳をプルプル震わせながら、怒りに任せて怒号を放つ。「どこまで人の命を愚弄すれば気が済むんだ!!北の大国め!!」グロードの声は国全体に届くのでは無いかと思うくらい、大きな叫び声が国全体に鳴り響く。感情が昂った事により、グロードの周囲から大量の魔力による気圧が発生する。侍達はその気圧に吹き飛ばされない様に踏ん張って耐えようとしていた。しかし、今のグロードは怒りによって侍達を気に掛ける余裕が無かった。そしてグロードは空間移動でラウスの目の前に現れる。しかし、それに反応した魔導兵器のラウスはグロードに左回し蹴りを喰らわせる。ーー心眼点睛(しんがんてんせい)空間移動してきたグロードの右腹部に、ラウスの"蹴りの心眼点睛"が炸裂する。「ゴハッ!…」グロードはモロにその蹴りを受けてしまう。元々、体術に限局すればグロードよりも竜の民である妻のヒスイの方が強かった。その息子であるラウスは7歳の頃から無意識に龍技の真髄を扱えた上に、その実力を子供の頃のヒスイより上だと言われていた。(第39話参照)そんなラウスは潜在能力を極限まで引き上げられた状
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第51話 残酷な絶望の世界⑤

「部隊長!!」ロゼアは吹っ飛ばされたアルバスの方を見て叫んだ。この5年間、アルバスがこんな風に吹き飛ばされる姿を見た事が無かったロゼア。怒りよりも驚きの方が勝っていた。しかし、ラウスは再び視線をエミルとロゼアの方へと向ける。もうカイルの影による避難とアルバスの高火力の白炎を出す事が出来なくなり、残るはエミルとロゼアの2人。着実に厄介な人から先に倒していくラウスの戦術。魔導兵器の殺戮プログラムによる学習機能とラウスの戦闘における学習能力が組み合わさっている。戦う程、相手への対策を重ねながら完成した強さへと到達していく。正しく殺戮の神であった。「来るわよ、ロゼア。」「ええ。私が突撃するわ。だからエミルは私の援護して!」ロゼアは全身に身体強化魔法を纏い、そのままラウスの方へと突き進む。エミルも同じ様に少し斜め後方からロゼアに付いて行き、いつでも援護出来るようにしていた。ラウスはその場から動かず、右手から魔晶壁を細かく散布し、そこから技之乖離(ぎのかいり)によって風を発生させながら魔晶壁の斬撃を飛ばす。エミルはその魔晶壁に対し、ロゼアの周囲にある水蒸気を凍らせながら魔晶壁を凍らせていく。凍った魔晶壁の斬撃は殺傷力を失い、ロゼアの進行の邪魔にならない様エミルが凍らせた魔晶壁を魔力操作で避けさせる。魔晶壁の障害が無くなったロゼアはそのままレイピアをラウスに突き刺そうとする。「魔力操作"極(ぎょく)"!!」エミルはラウスの動きを鈍らせる為、ラウスの関節の節々を凍らせていく。それによって初動が遅れたラウス目掛けて、ロゼアの身体強化を纏った強烈なレイピアがラウスの胸部に目掛けて飛んでいく。しかし。ガキィィン!!ラウスの胸部は魔晶壁が発生し、レイピアは突き刺さらなかった。当然と言えば当然。自分の急所になり得る場所は守ろうとするものだ。特に学習能力の高い魔導兵器のラウスであれば、直線的な攻撃がそう何度も通用する筈も無い。そしてラウスは再び攻撃モードに入る。自身を中心に半径100m以上の範囲で技之乖離を使用し、魔晶壁の斬撃の嵐が発生する。流石のエミルでも、これだけ広範囲の嵐を防ぐ事は困難であり、斬撃を干渉しきれ無かった。至近距離で喰らったロゼアはズタズタに切り裂かれていく。痛み共有(シェア・リンク・ペイン)を試みるも、痛覚の無い魔
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第52話 兄と弟

ミーナ達はネルの空間移動でカイルやエミルの救出に向かっていた。エミルはアルバスとロゼアを氷で作った台車に乗せて運んでいたが、その途中で見つけられる。意識を失っていたアルバスとロゼアはミーナの光の回復魔法によって意識を取り戻した。「あれ、ここは…。」目を覚ましたロゼアはゆっくりと目を開ける。「お、気が付いたか!大丈夫か!?」視界に入ってきたライクは心配そうに声を掛け、その声で徐々に意識がハッキリしてきたロゼア。「え…何で…?ライク?」「ああ。俺達は丁度さっき戻ってきた所だ。大丈夫か?」「…心配、してくれてるの?」今まで北の大国では心配される事の無かったロゼア。半分信じられないといった感じでライクに聞いた。「ああ。お前も俺達の代わりに戦ってくれてたんだろ?俺達が不在の中、良くやってくれたぜ。本当に感謝してる!」ライクは笑顔でロゼアに言うと、ロゼアは嬉しさで左目からジワッと涙が溢れてきた。ライクの笑顔を見れて良かったと、安心していたのだ。ネルも同様に、目を覚ましたアルバスに一言声を掛ける。「…僕との約束、ちゃんと守ってくれたね。」「…ごめん。倒す事は出来なかった。」「仕方ない。後はあの男(グレン)に任せよう。」短い会話ではあるものの、ネルは約束を守って戦ってくれたアルバスに感謝した。そして次はカイルの所にも空間移動した。転移した場所でカイルはボロボロの状態で倒れていた。ミーナとニケル。2人の回復魔法を使ってようやく意識を取り戻したカイル。普段タフなカイルであるが、意識を取り戻してもその声はか細く弱々しかった。「…みんな…帰ってたのか?…」「カイル君!エミル、カイル君が目を覚ました!」意識が戻った事を確認したミーナは慌ててエミルを呼んだ。エミルも慌てながらカイルの顔に近づいた。「カイル!」「エミル…良かった…無事だったのか…。」「馬鹿!いつもいつも!自分の事を後回しにして!本当に馬鹿!」ボロボロと涙を流しながらカイルに対して言うエミル。それに対してカイルは一言。「…ごめんな。」そうエミルに言うと、エミルは更に号泣しながらカイルの胸元で泣きじゃくった。「カイル君。連絡してくれてありがとう。今ね、グレンが戦いに行ってるの。」「グレン…そうか。なら、安心だな。」そう言うとカイルは安心した様に目を閉じて眠った
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第52話 兄と弟②

真っ暗な暗闇の中。1人の女性が下を向きながら何かを覗き込んで泣いていた。「…ラウス……ルーファス……どうして、こんな事に…。」その女性はヒスイであった。ここは死後の世界であり、この暗闇の空間は死後の世界へ行く前の道。死後の狭間である。ヒスイは死後の世界へは行かず、死後の狭間にある暗闇の空間で家族を見守りながら待ち続けていたのだ。そして現世を見ながら自身の息子達が戦う姿を見て涙を流していた。すると後ろから。「…2人が戦っているのか?」その声の主はヒスイの父親であり、グレンに龍技の真髄を教えた竜の民のドグマであった。後ろからドグマに言われたヒスイは、涙を流しながら振り返る。「…お父さん。」「ヒスイ。…お前も辛いのは分かるが、今の俺達には見守る事しか出来ない。」そしてヒスイの隣に座り、現世で戦うグレン(ルーファス)とラウス。2人の戦いを覗き込む。「信じるしか無い。グレン…いや、ルーファスの事を。そして、あいつの強さを。…きっとあいつが兄を救ってくれる筈だ。」ヒスイはグレン(ルーファス)が生後3ヶ月の時にこの世を去った。ドグマもヒスイが家を出てから、自分に孫が居る事も知らずに30年間虚しく過ごしてきた。しかし、その孫であるグレン(ルーファス)は偶然にもヒスイの父であるドグマと出会い、龍技の真髄を教えてくれた。運命が知らない内に引き合わせてくれたのだ。そして今、ドグマに教えられた龍技の真髄によりグレンは、魔導兵器となり殺戮の呪縛に囚われた兄ラウスを救う為に戦っている。自分の弟子であり、孫でもあるグレンをドグマは信じていた。「(グレン。お前の生き様を、今こそ見せてくれ。)」ドグマの墓前で言ったグレンの誓いに対し、心の中で返答した。信じる事しか出来ないヒスイとドグマは、ラウスとルーファスの行く末が少しでも救われる様に、両手を合わせて祈る。あの世でヒスイとドグマが見守る中、現世ではグレンとラウスの死闘が繰り広げられている。戮力体竜変(りくりょくたいりゅうへん)によって竜人化したグレンは先程とは違い、身体機能が大幅に強化される。自然魔力を体内に取り込む戮力体竜変。それにより身体に現れた竜の鱗は鋼をも上回る強度を誇る。その拳でラウスの胸部を殴る。バコォォォン!!!グレンの拳により、ラウスの硬い胸部は拳大の大きさに凹んだ。グレ
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