王都ベルシニアの陽光の下で 朝靄が晴れ、王都ベルシニアの街並みが黄金の陽光に照らされる頃、イザベラはあやめを伴い、石畳の大通りを歩いていた。 王城を中心に広がる都は、歴史の風が磨き上げた宝石箱のように輝いていた。遠くそびえる城壁は、壮麗な金銀細工の縁取りを施された蓋のように、この街を優しく包み込んでいる。大小の建物が入り混じる街並みは、職人が丹精込めて嵌め込んだモザイクのように美しく、それぞれが異なる歴史を秘めていた。 靴音が単調だがどこか上機嫌なリズムを刻む。石畳を踏むたび、コツコツと乾いた音が響き、その上を市場の喧騒が塗りつぶしていく。商人たちの威勢のいい掛け声、焼きたてのパンの香ばしい匂い、甘く熟れた果実を割ったような芳香、そして遠くから響く楽器の音色――ベルシニアの市場は、まるでひとつの巨大な生命のように鼓動していた。 イザベラは、薄水色のワンピースの裾を優雅に揺らしながら歩いた。陽光を浴びて微かに透ける生地が、風にたなびく青い睡蓮のように涼しげに揺れる。柔らかな布が足元に触れるたび、心地よい感触が広がる。後ろには、白いエプロンと黒いメイド服に身を包んだあやめが、一歩引いて静かに控えていた。彼女の足取りは驚くほど軽く、まるで影が滑るように音もなくついてくる。 ふと、街の喧騒がわずかに沈んだ。 人々の視線が、一斉にイザベラへと吸い寄せられる。 刺すような視線の洪水が、肌にじりじりと絡みつくのを感じた。「なんて美しい方……どちらのご令嬢かしら?」「……良い女だな……ゴクリ」 女たちの囁きは、夜風にそよぐ花びらのように微かだったが、男たちの喉を鳴らす音は、まるで獲物を前にした獣のように露骨だった。 イザベラは、わずかに唇を噛みしめる。(……しまったわね) この世界に来てまだ日が浅い。だが、彼女の顔立ちはすでにこの世界の基準を超えた美貌であることを思い知らされた。前世では、それを武器にして男たちを手玉に取った。だが今は、むしろ枷になっている。 かつての麗子は、自分の美しさを武器にし、男たちの視線を愉しんでいた。高級レストラ
Last Updated : 2025-12-26 Read more