山頂に築かれた荘厳なる王城。その南側、雄大な山並みに護られた平野に広がる王都ベルシニア。赤煉瓦の舗装道が碁盤の目のように張り巡らされ、十数万の人々が暮らすこの都は、まさに熱狂の渦に包まれていた。ベルシオン軍の大勝利という歓喜の知らせが、街全体を揺るがすように響き渡る。 中央大通りには、人々が溢れんばかりに押し寄せ、王国軍の帰還を迎え入れていた。黄金色のビールを掲げ、赤ら顔で陽気に叫ぶ男たち。戦士たちに向かい、涙ぐみながら手を振る女たち。無邪気に駆け回る子供たちの笑い声が、祝祭の鐘の音と混ざり合う。すべての人々が、家族の無事を、愛する者の帰還を、そしてカーネシアン軍の敗走という安堵を、身体いっぱいに表現していた。 そんな歓喜の渦の中、凱旋の先頭を行くのは、漆黒の軍馬に跨るルーク・ベルシオンその人。濃紺の軍装に金糸で施された王家の紋章が陽光を受けて煌めき、背に翻る白銀のマントは、勝利の象徴のように風をはらんでいた。その眼差しは、王としての誇りと自信に満ち、民衆の声援に応えながらも、堂々たる威厳を湛えている。 そのすぐ隣、栗毛の馬に軽やかに跨るのは、ケインズ・ヴァレンス。洗練された黒の騎士装束を纏い、肩には銀の鎖帷子が鈍く光る。彼の穏やかな微笑みは、戦いを終えた安堵と、王都に帰還できた喜びを静かに物語っていた。手綱を操る仕草すらも優雅で、時折、民衆に手を振るたびに歓声がひときわ高まる。 そして、その背後に続くのは、圧倒的な存在感を放つ巨漢、ガリオン・ヴォルグ。分厚い鎧に刻まれた無数の傷跡は、彼が戦場で刻んできた歴戦の証。その肩に掛かる赤いマントが、まるで燃え盛る炎のように揺れる。豪快に笑いながら、民衆に大きく手を振り、名前を呼ばれるたびに力強く頷くその姿に、熱狂はさらに高まっていく。「何度見ても、この光景は胸が震えるな」「お前は人気者だからな、ガリオン」 群衆に手を振り、次々と声をかけられるガリオンを見て、ケインズが微笑を浮かべる。そして彼もまた、誇り高く右手を掲げた。 勝利の凱旋。ベルシオン軍の行列は、王城へ続く壮麗な大通りを、堂々と進んでいく。兵士たちの表情には、戦を生き抜いた者だけが持つ安堵と、誇らしげな輝きがあった。
Last Updated : 2026-01-29 Read more