「それじゃあ、お言葉に甘えて。千聖さんは、これから帰る予定?」「えぇ、そうよ。途中でコンビニにでも寄って、お酒買って帰るつもり」「もし嫌じゃなかったら、一緒に呑まない? もちろん、おごるよ」斗真は茶封筒が入っているポケットを叩きながら言う。「遠慮なくご馳走になるわ」こうしてふたりは、居酒屋に向かった。「てっきり、静かなバーが好きなのかと思った」「あぁいうところはキザったらしいイメージで、あんまり好きじゃないんだ。なにより、冷奴がない」メニューを見ながら真面目な口調で言う斗真に、千聖は笑った。「いいわ、変にカッコつけてないで。私も居酒屋の冷奴は割と好きよ」千聖は笑いを堪えながら店員を呼び止めると、冷奴2つと生ビールを頼んだ。「枝豆と芋焼酎を」斗真の注文に、千聖は肩を震わせる。店員が厨房へ行くと、千聖は声をあげて笑った。「なにがそんなにおかしいんだい?」「だって、おじさんくさい注文なんだもの。似合わないわ、最高」「それはお互い様でしょうよ。千聖さんはさっきから、僕のことを意外だなんだって言ってるけど、僕からしたら千聖さんがそんなに笑う方が意外だよ」斗真は苦笑しながら、ちょうど運ばれてきた芋焼酎をひと口呑んだ。「そう? あぁでも、合コンの時はとっとと帰りたかったし、紅玲がうっとうしかったからね……」「アイツはなぁ……。昔からあんななんだ」紅玲の名前が出ると、斗真は困ったように笑う。「昔から? ってことは、付き合い長いのね」「あぁ、高校と大学が一緒なんだよ。でも、紅玲から女性にあそこまで積極的になるのは、初めて見たな……」斗真は煙草を咥えながら、穏やかな笑みを浮かべた。「いつもあんな女たらしじゃないの?」「むしろ女性が苦手なんだよ。ほら、アイツは顔がいいし金もあるだろ? だから、昔から女に囲まれてたんだ。特に大学生の頃は、彼女が途切れなかったっけなぁ……。でも本人は、常に寂しかった……」斗真は芋焼酎に視線を落とした。「それってワガママじゃない?」千聖は不機嫌を隠さずに言うと、生ビールを半分近く飲んで、枝豆を口に放り込んだ。
Last Updated : 2025-12-16 Read more