「本当にね……。母さんは何をしたかったんだか……。それでも父さんは、オレを施設に入れたりせずに手元に置いた。オレが小学生になるまで、世話係を雇ったんだ。その後2年くらいかな? 教育係を雇ってたのは……」「教育係? なにそれ」「料理や家事を教えてくれる人。……って言っても、父さんの部下の奥さんを雇ってたんだよ。教育係のおかげで、小学3年生になる頃には、一通りの家事をこなせるようになったよ。つまり、家政夫になったわけ」紅玲は自嘲気味に笑った。「家政夫って……。そんなの……」あまりにも事務的で非道な行いに、千聖は言葉が見つからない。「父さんよりはやく起きて、ごみ捨て行って朝食作って、帰ったら洗濯物や夕飯の準備。土日は家の掃除……。完璧主義者の父さんは、成績もトップクラスでいろって言うから、勉強だってしないといけなかった。最初はそれでいっぱいいっぱいだったけど、半年もすればそんな生活にも慣れちゃってね。そしたら今度は、株の取引……」「はぁ!?」驚いて素っ頓狂な声を出すと、紅玲は声を上げて笑った。「あっはは、普通はそうなるよね。小学生が株だなんて。でも父さんは、“稼がぬ者食うべからず”なんて言ってさ、オレに株取引のいろはを叩き込んだ。自頭はいいからね、覚えるのは早かったよ。父さんより稼いだことだって、何回かある」「神童だったのね……」「うん、よく言われた。しばらくは株でどうにかしてたけど、次に教わったのはFX。こっちもすぐに覚えて、ある程度稼げるようになったよ。晴れてオレは人間として、父さんに認められるようになった」「人間としてって……今までは……」千聖が震える声で言うと、紅玲は彼女を抱きしめた。「人型のゴミ、汚物。金食い虫。父さんからすれば、オレはかなり目障りだったと思うよ? オレを見る度に、きっとあの夜を思い出しただろうから」「そんな……。酷すぎる……」「まぁ、ある程度の歳になるとね、煽りスキルが身につくわけ。“オレが生きてるだけで、ロボットみたいな父さんが不快そうな顔して楽しい”って。だから案外楽しかったところあるんだよねぇ」ざまぁみろ、と紅玲は笑う。
آخر تحديث : 2025-12-16 اقرأ المزيد