All Chapters of 独占欲に捕らわれて2: Chapter 71 - Chapter 80

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策士愛に溺れる8

「寝室まで運んでくれたのね、ありがとう」「そんなの当然でしょ? そんなことより、躯どこか痛かったりしない?」紅玲は心配そうに千聖の顔をのぞき込む。(ホント、大事にしてもらってるわよね、私)過保護なまでの心配が嬉しくなり、頬が緩む。「節々が少し痛むけど、大丈夫。それより、お腹すいたわ……」千聖はおなかをさすりながら紅玲を見上げる。昨日は朝食しか食べていない上に、あれだけ激しいセックスをしたせいで、普段なら考えられないほどの空腹感に襲われた。「それなら台所行こっか。オレもおなかすいたし、なんか作ったげる」紅玲は優しく千聖の髪を撫でると、彼女を抱き上げる。千聖は抵抗することなく、紅玲の首に腕を回す。台所に着くと紅玲は千聖を指定席に座らせ、目の前に紙袋を置いた。「お土産の八つ橋と金平糖だよ。出来上がるまで、これで我慢してね」「あら、お土産買ってくる余裕はあったのね」千聖が嫌味ったらしく言うと、紅玲は首を横に振る。「京都についてすぐに買ったんだよ。じゃないと、絶対それどころじゃなくなるの分かってたし。せっかくだから、お茶淹れようか。チサちゃんと飲みたくて、美味しそうな茶葉買ったんだ」紅玲は急須を食器棚の奥から引っ張り出すと、緑茶を淹れて千聖の前に置いて台所に立った。「ありがとう、いただくわ」息を吹きかけて冷ましてからひと口飲むと、緑茶独特の香りが鼻を抜ける。苦味の中にほんのり甘さがあって、落ち着く味だ。八つ橋との相性もよく、手が進む。小気味よい包丁の音を聞きながら、千聖はどこから話をしようかと思考を回す。「ねぇ、紅玲。あなたは青髭になりたかったの?」千聖の問いに、包丁の音が止まる。「チサちゃんは、どう考えてるわけ?」紅玲は質問返しをすると、再び包丁を動かした。「そうね……。私に仕事を辞めて欲しかった紅玲は、どうやって辞めさせようか随分頭を悩ませたんじゃない? 普通に頼んでも、私は辞めないって分かってたから」紅玲の反応を見ようと言葉を切るも、紅玲は無言でいる。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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策士愛に溺れる9

「青髭を読んで、同じことをして寂しい思いをさせた上で、私が書斎に入るのを待った。私が思うに、あの部屋のどこかにもカメラが隠してあって、あなたはそれを証拠に弱った私を言いくるめて、仕事を辞めさせようとしたんじゃないかしら? 結局寂しすぎてこうして帰ってきた。違う?」「さすがチサちゃん。よく分かってるねぇ」紅玲は切った食材を鍋に流し込むと、拍手をする。「でも、分からないこともあるの」「それは、なにかな?」紅玲は自分の緑茶を淹れると、千聖の向かいの席に座った。「どうして斗真の口止めをしなかったの? あなたらしくないミスよ?」「トーマの家も職場も、チサちゃんの職場から離れてるし、通勤ルートも被らないから大丈夫だって思ってたんだよねぇ。なにより口裏合わせようとしたら、トーマ怒るだろうし」緑茶をひと口飲むと、紅玲はうんざりしたようにため息をつく。「どうして斗真が怒るのよ?」「そういうの、あんまり好きじゃないからね……。マダムキラーやってるくせに、変なところで真面目っていうかさ」「あぁ、確かに真面目そうね」納得した千聖は大きく頷く。「ねぇ、オレからも聞いていい?」「何かしら?」いつになく真剣な目付きの紅玲に、千聖は背筋を伸ばした。「今日は平日なのに、どうして午前中から家にいたの?」その質問を密かに待っていた千聖は、得意げな顔をする。「辞めてきたのよ」「えぇっ!? あの仕事大好き人間のチサちゃんが!?」紅玲は珍しく大声を上げ、目を見開く。(思ったよりいい反応ね)滅多に見られない紅玲の反応に、千聖はにんまり笑う。「だって、一昨日の電話で紅玲がものすごく寂しそうにしてたじゃない? それでなんとなく、取材旅行の本当の理由が分かった気がしたの」「恐れ入るよ……。さて、そろそろかな?」紅玲は立ち上がると、調理を再開する。何度か味見をしながら調味料を足すと、スープ皿を2枚出して野菜スープをよそる。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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策士愛に溺れる10

「はい、おまたせ」「ありがとう、いただきます」千聖は手を合わせると、野菜スープを口にする。「作り置きも美味しかったけど、やっぱり出来たてが1番美味しいわ」「そう言ってもらえると、作りがいがあるね」紅玲は嬉しそうに、スープを食べる千聖を見つめる。「もう、そんなに見られてたら食べにくいんだけど」「だって、美味しそうに食べるチサちゃん見てると、幸せな気持ちになるから」「はやく食べないと冷めるわよ」千聖が照れ隠しでそっけなく言うと、紅玲は小さく笑って手を動かした。軽食を終わらせると、ふたりはホットココアを持ってリビングのソファに並んで座る。「はぁ、会社を気にしないで夜中にこうしてゆったりできるなんて、幸せねぇ……」千聖はしみじみ言いながら、紅玲に寄りかかる。「だからって、夜更かしばかりしちゃダメけどねぇ、今日は特別」紅玲は千聖を抱きしめる。「ねぇ、チサちゃん……。これからはずっと、オレのそばにいてくれるんだよね?」「当たり前でしょ。なんのために仕事を辞めたと思ってるのよ?」千聖はそう言って不意打ちにキスをすると、イタズラっぽく笑ってみせた。「全部、あなたのためなんだから」「ありがとう、チサちゃん。愛してるよ……」紅玲はさらに強く千聖を抱きしめると、今度は彼からキスをした。「紅玲、取材旅行の件とは別で聞きたいことがあるの」「なぁに?」「書斎以外にもいろんな部屋を見たんだけど、どうして金庫を地下室に置かないで、1階と2階にわけてるの?」何がおかしいのか、紅玲はクスクス笑い出す。「あれね、全部オレの財産が入ってるんだよ。といっても、現金じゃなくて純金だけどねぇ」「純金!? なら、尚更地下室に入れておいたほうがいいんじゃ……」千聖は驚き、紅玲をまじまじと見る。紅玲はそんな千聖の頭に、骨ばった大きな手を置いた。「泥棒だって、まさか2部屋にあると思わないでしょ? だから1階の金庫を荒らされても2階の金庫は無事ってわけ。その逆もしかりだよ。それに、地下室はあれでも活用してるし」「活用って、なにに使ってるのよ?」紅玲は質問に答えず、楽しそうに千聖の髪を撫でる。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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策士愛に溺れる11

「なんで答えないのよ?」「普通に答えるのもなんだかなぁって。今度トーマが遊びに来た時にでも教えたげる」「なによ、もったいぶっちゃって……」なかなか教えてくれない紅玲に、千聖はむくれる。「あっはは、ヒント出すから自分で考えてみて」「ヒントねぇ……」千聖はうんざりしながらも、ヒントを待つ。「ほとんど引きこもりのオレが、どうして体型維持できてるのか。これがヒントだよ」「体型維持……?」千聖は紅玲の躯を、手のひらで確かめるように触れる。細い躯には、筋肉がしっかりついている。「言われてみれば、程よく筋肉ついてるものね。筋トレするにしても、コンクリしかない部屋じゃ限度あるでしょうし……」紅玲の躯を触りながら、千聖は小さく唸る。「そんなに触られたらくすぐったいよ」紅玲は笑いをこらえながら、千聖を抱き上げた。「きゃあっ!? もう、なにするのよ。考えてる最中なのに……」「それはまたあとで。もう寝よう」拗ねたように言う千聖の頬にキスを落とすと、紅玲は寝室へ向かう。「まだ眠くないわ」「ダーメ。明日は出かけるんだから」紅玲は千聖をベッドに寝かせると、彼女を抱きしめて眠った。翌日、ふたりは腕を組んで街を歩く。「ねぇ、どこに行くのよ?」「ついてからのお楽しみ」千聖はやれやれと肩をすくめるが、それでも楽しそうに紅玲の腕に頬を寄せる。「あ……」紅玲は立ち止まり、一瞬だけ気まずそうな顔をする。「おや、帰ってきたのか」手前にあるコンビニから出てきた斗真は、冷ややかな目で紅玲を見る。「あら、斗真じゃない。ちょうどいいところわ、あなたに聞きたいことがあるの」「……その様子だと、嘘は許してもらえたようだな、紅玲。聞きたいことって?」斗真は笑顔を貼り付けて紅玲に言うと、千聖に向き直った。「うちの地下室で、紅玲と何をしているのかしら?」斗真は一瞬目を丸くし、呆れ返って紅玲を見る。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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策士愛に溺れる12

「紅玲、僕が出入りしてること言ってなかったのか? 旅行の件といい、酷いんじゃないか?」「だって、努力してるの自分で言うのなんか嫌だしさぁ。旅行のことは反省してるって。お詫びにあとで1杯おごったげるから」言葉では反省しているが、悪びれる様子もなくヘラヘラしている。「僕は実害がなかったからいいが、恋人を置いてけぼりにするのは感心しないな。……地下室の話だが、僕と紅玲は剣術の手合わせをしているんだ」「剣術!?」予想だにしていなかった答えに、千聖は大声を出してふたりを見比べる。「剣術っていっても、チャンバラごっこみたいなものだけどね。中学時代に剣道部だったんだけど、ルールが煩わしくなっちゃって、自由に木刀振り回してるだけ」「充分すごいじゃない。今度見てみたいわ」千聖は目を輝かせて、紅玲を見上げる。「あっはは、それならトーマには是が非でも勝たなきゃ」「言っておくが、手加減はしないぞ。さて、僕はそろそろ行くよ。ふたりとも、お幸せに」斗真は優しく微笑むと、千聖達が歩いてきた道を辿った。「オレ達も行こうか」「えぇ」紅玲は再び目的地を告げないまま、歩き出した。10分ほど歩いてついたのは、ドレス専門店だ。「次はお姫様が出る物語でも書くつもりなの?」紅玲がシナリオを書く度に、キャラクターのイメージにあった衣装を着せられている千聖は、今回もそうなのかと思いながら店を見上げる。「お姫様が出る物語を書くのも悪くないけど、今回は違うんだよねぇ」そう言って紅玲は、千聖の肩を抱いて入店する。「いらっしゃいませ。本日はどのようなドレスをお探しでしょうか?」店に入るなり、30代の上品な女性店員がふたりに声をかけてきた。「この子のウエディングドレスを仕立ててもらいたいんだ」「えぇ!?」驚いて紅玲を見上げると、彼は静かに微笑んでいる。「オレと結婚してくれるでしょ?」「なんて強引なプロポーズなの……。とても嬉しいし、もちろんするけど……」千聖が頭を抱えながら言うと、店員はクスクス笑う。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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策士愛に溺れる13

「10年以上のこ仕事をしていますが、目の前でプロポーズなさるお客様は初めて見ました。ご婚約、おめでとうございます」「ありがとう」「ありがとうございます……」店員に祝福され、千聖は頬をほんのり染めながら礼を言う。「ウェディングドレスって1回しか着ないのに、わざわざオーダーメイドすることないと思うけど……」「チサちゃんは特別な人なんだから、ウエディングドレスもレンタルなんかじゃなくて、特別なものを着てもらいたいんだ。お色直しのドレスも作っちゃおうか」「素敵な旦那様ですね。まずはベースとなるドレスから見ていきましょうか。どうぞこちらへ」ふたりは店員に連れられ、シンプルなウエディングドレスの前へ行く。「奥様はとてもスタイルがいいので、こちらのマーメイドラインやスレンダーラインがお似合いかと。フリルやレースの追加も可能ですし、お色も選べますよ」店員はフリルやレースが少ないウエディングドレスを手で示しながら、説明する。「チサちゃんはどれがいい?」紅玲はほかのドレスに目をやりながら、千聖に声をかける。千聖は紅玲につられてほかのドレスを見たあと、マーメイドラインのドレスをまっすぐ見つめる。「このマーメイドラインがいいけど、せっかくだし、もっとふんわりしたものがいいわ」「ではマーメイドラインをベースに、デザインを決めていきましょうか。どうぞ、あちらにおかけください」店員に促されてソファに座ると、彼女は写真付きの資料を次々と並べていく。千聖は店員の話を参考にしながら、自分の理想のドレスを彼女に伝える。最初は多少の戸惑いがあった千聖だが、目の前でドレスのデザインを描いてもらいながら決めていくうちに楽しくなり、中盤からはスラスラと要望を伝えることができた。そうして完成したラフを見て、千聖は目を輝かせる。「素敵……。こんなに綺麗なドレスを着れるなんて、夢みたい」ラフは正面と後ろから見たデザインが並んで描いてある。肩や腕はシースルーで透けており、胸元はVネックで大きく開いている。腰より下には大きなリボンが斜めにかかっている。紅玲の要望で、背中もかなり開いている。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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策士愛に溺れる14

「実物出来上がるのが楽しみだね」紅玲は千聖に寄り添うように、ラフをのぞき込む。「このデザインは奥様だからこそですね。誰でも着られるようなデザインではありません」店員は目を細める。「チサちゃんは特別だからねぇ。じゃあ次はお色直しのドレス決めてもらう?」「その前に、ベールやブーケを決めてはどうでしょう?」どこから取り出したのか、店員はウエディングドレスを着てこちらに微笑む女性が表紙のカタログをふたりの前に置いた。店員はとても博識で、花言葉や色の組み合わせでどのように印象が変わるかなどを説明してくれる。千聖は彼女の知識に感心するばかりだったが、紅玲は真剣に聞き、時々質問をしてはメモを取る。「熱心な旦那様ですね」「これはただの職業病ですよ。こう見えてもシナリオライターなんです」「まぁ、そうなんですね」(敬語になるもの、職業病かしら?)千聖は少し前までは店員にすらタメ口だった紅玲を思い返しながら、首を傾げる。ベールやブーケをなんとか決めると、次はお色直しのドレスを決めることになった。「お色直しのドレスは、オレが決めてもいい?」「えぇ、いいわよ。ところで、紅玲のタキシードとかは決めなくていいの?」千聖の言葉に、紅玲は固まる。「すっかり忘れてた」ドレスにばかり熱心な紅玲に、千聖と店員は吹き出した。「当店はタキシードのオーダーも承っておりますよ」「ですって。私も紅玲のタキシード決めたいわ」「じゃあ、ドレスが終わったらタキシード選びしよっか」紅玲はタキシードを着てズラリと並ぶマネキンをチラリと見ると、ウエディングドレスを眺めた。結局千聖のドレスや小物を決めるだけで半日が過ぎ、この日はそれらの見積もりをもらって帰ることにした。ふたりはレストランに入り、昼食をとることにした。「とても楽しかったし、嬉しいわ。改めてありがとう、紅玲」何度も足を運んだフレンチレストランの個室に入ると、千聖は改めて礼を言う。「どういたしまして。正式に婚約ができて、オレも嬉しいよ」
last updateLast Updated : 2025-12-17
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策士愛に溺れる15

「でも、お色直しのドレスは少し派手すぎない?」「嫌だった?」「そんなことないわ。あなたが似合うって思って考えてくれたんだもの」千聖はほんのり頬を染める。紅玲が考えたドレスは深紅のプリンセスラインで、スカートの部分は幾重にも重なる深紅の中に、1枚だけ黒い生地が使われている。「ホント、チサちゃんはオレを喜ばせるの上手だよねぇ」「私は思ったことを言ってるだけよ?」「知ってる。だから尚更嬉しいんだよ」紅玲は言い終わると、真剣な眼差しで千聖を見る。「ちょっと、どうしたの?」「チサちゃん、手を出して」どちらの手を出していいのか分からない千聖は、両手をテーブルの上に置く。紅玲は左手を取る。(もしかして……)左手に触れられ、千聖は淡い期待をする。紅玲はあいてる手をポケットに入れると、指輪を出して千聖の薬指にはめた。「オレと婚約してくれてありがとう。永遠に大事にするよ」「紅玲……。私も、永遠にあなたのそばにいるし、大事にするわ」千聖は熱くなる目頭をおさえる。「泣くほど嬉しいんだ?」「当たり前でしょう。不思議ね、さっきまで一緒にドレス考えたりしてたし、こんな日が来るって分かってたのに……。怖いくらい幸せだわ」「これからもっと、幸せな日々が続くんだよ」紅玲は優しく微笑むと、千聖の左手にキスをした。「ふふっ、そうね」千聖は涙を拭い、微笑んでみせる。翌日、ふたりは紅玲のタキシードをオーダーしに、昨日の店へ足を運んだ。この日も半日かけながらタキシードを決めると、家に帰ってふたりでノートパソコンを開いた。「式場、どこがいい? いっそのこと、思い切って海外でもいいし」「あなたパスポート持ってないでしょ?」浮かれ気味の紅玲に、千聖は苦笑する。「そんなの、結婚式の前に取ればいいよ」「初めての海外が結婚式っていうのも、素敵よね」千聖はまだ見ぬ異国へ思いを馳せる。「もしかして、チサちゃんも海外は行ったことない?」「えぇ。一応国内旅行する時に、優奈と悪ノリでパスポート買ったんだけどね……」
last updateLast Updated : 2025-12-17
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策士愛に溺れる16

「そうだんだ。じゃあせっかくだし、海外にする?」「いいけど、人来るかしら?」「ふたりだけの結婚式にしようよ。綺麗に着飾ったチサちゃんを、誰にも見せたくない」紅玲は千聖を抱きしめ、触れるだけのキスをした。「それ、すごく素敵……。あーぁ、優奈に怒られるわ。式に呼んでって言われてたのに」「オレも、トーマに怒られそー……。人様に心配かけたのにってさ」ふたりはどちらからともなく笑った。「じゃあ国内でもやりましょうよ。ドレスもタキシードもレンタルで、格安の結婚式。それで、海の向こうでふたりだけの式を挙げるの」「珍しいね。チサちゃんがお金を使いたがるなんて。まぁ、それくらいのお金ならあるけど」「バカね、私も出すわ。紅玲の足元には及ばないだろうけど、ちゃんと貯金あるんだから。私ね、ふたりには感謝してるのよ。優奈がいなければずっとあの田舎町で暮らしてただろうし、斗真がいなかったらあなたのこと、誤解したままだったもの。だからこそ、ふたりには幸せな姿を見せて安心させてあげたいの」千聖は穏やかに微笑むと、紅玲に寄りかかる。「チサちゃんは律儀でいい子だねぇ。そういうところ、大好きだよ。いいね、感謝を伝えるための結婚式。さっそく探そうか」「えぇ」紅玲は軽快にキーボードを叩き、都内の式場を検索する。ふたりは雑談を交えながら、2つの式場を探すのだった。2ヶ月後、ふたりは都内で結婚式を挙げた。と言っても、ホテルのスイートルームでだ。「紅玲さん。あなたは今、千聖さんを妻とし、神の導きによって夫婦になろうとしています。汝病める時も健やかなる時も、悲しみの時も喜びの時も、貧しい時も富める時も、これを愛し敬い、慰め遣え共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」牧師に扮した斗真は、紅玲に問いかける。「はい、誓います」シックなブラウンのタキシードを着こなした紅玲は、千聖を見つめながら力強く頷く。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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策士愛に溺れる17

「千聖さん。あなたは今、紅玲さんを夫とし、神の導きによって夫婦になろうとしています。汝病める時も健やかなる時も、悲しみの時も喜びの時も、貧しい時も富める時も、これを愛し敬い、慰め遣え共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」「はい、誓います」千聖も紅玲をまっすぐ見つめながら、力強く頷く。「では、指輪の交換を」ふたりは指輪を外すと、紅玲から千聖に指輪をはめる。千聖が紅玲に指輪をはめると、紅玲は少しかがんで千聖にキスをした。千聖は目を丸くし、優奈はスマホを片手にニヤニヤしながらふたりを見ている。斗真は呆れ返ったように紅玲を見ると、咳払いをする。紅玲が慌てて背筋を伸ばすと、千聖は小さく笑った。「……改めて、誓いのキスを」千聖は紅玲の肩に手を添え背を伸ばし、紅玲は彼女の背中に手を回してキスをした。優奈と斗真は、ふたりを祝福して拍手をする。「ふたり共、今日はありがとう」「ご馳走を用意したから、食べてって」6人掛けのテーブルの上には、ご馳走が並んでいる。「ご馳走もいいけど、ブーケトスは?」優奈は千聖が持っている白百合がメインのブーケを見つめる。「あぁ、一大イベントだものね」千聖は優奈の前まで歩くと、優奈にブーケを差し出す。「はい。次は優奈が幸せになってね」「ありがとう、千聖!」優奈はブーケを受け取ると、千聖に抱きついた。「絶対幸せにしてもらうのよ」涙声の優奈に、千聖はあたたかい気持ちになりながら苦笑する。「えぇ、もちろんよ。だから、優奈もいい人見つけて幸せになってね」「うん!」優奈は涙を拭って、笑顔で頷く。千聖は涙脆い旧友の肩を抱き、テーブルへ移動した。紅玲と千聖は隣同士に座り、ふたりはそれぞれ旧友の前に座った。「はぁ、千聖すっごく綺麗! ねー、食べ終わったらたくさん写真撮ろう」優奈は目を輝かせる。「さっきたくさん撮ってたじゃない……」「それは紅玲くんとふたりだったり、式中の写真でしょ? ふたりで撮りたいの」「そう言えばそうだったわね。そうね、せっかくこんなにいい部屋にいるんだし、たくさん撮りましょう」千聖は優しく微笑みかける。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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