千聖が寝室に入ったのは9時半。昨晩のようにベッドに寄りかかると、今度は千聖から紅玲に電話をかける。『もしもし、チサちゃん。こんなすぐにかけてきてくれるなんて、嬉しいなぁ』紅玲の声は入浴前より明るくなっているが、それでも元気がないのはすぐに分かる。「お風呂もご飯も終わったの。ねぇ、今夜もしてくれるんでしょ?」千聖は挑発的な笑みをカメラがあるであろう場所へ向けた。『んー……これからトーマと夕飯食べるから、今はまだ無理かなぁ……。10時半くらいになると思うんだけど、大丈夫?』まだ嘘がバレていないと思っている紅玲が可愛く思えて、千聖は必死に笑いをこらえる。「えぇ、大丈夫よ。きっとそっちの料理は美味しいだろうから、ゆっくり楽しんでね。愛しているわ」先程のお返しと言わんばかりに、千聖の方から一方的に電話を切った。「さてと、1時間弱もあれば大丈夫かしら?」千聖はスマホを充電すると、1階に降りて台所へ行く。紅茶を淹れて洋菓子をいくつか手に取ると、リビングに行ってコンビニで買ってきた便箋にボールペンを走らせる。時折幸せそうに笑いながら、すらすらと文章を綴っていく。30分もすると躯を伸ばして、満足げに便箋を見る。「これでいいわよね?」便箋を封筒にしまうと、漢字2文字を大きく書いて、仕事用のカバンにしまう。約束の時間に紅玲とテレフォンセックスをすると、明日を楽しみにしながら就寝した。翌朝、千聖はいつもよりはやく起きると、朝食だけ作る。朝食と身支度を済ませると、取っておいた大きな紙袋をふたつカバンに入れて、家を出た。いつものようにまっすぐ出勤せず、途中でコンビニに寄ると、菓子折りを3つ買って出社する。千聖の部署では彼女が1番乗りらしく、オフィスは静まり返っている。「好都合だわ」千聖は課長のデスクに菓子折りを3つ置くと、持ってきた紙袋に自分の荷物を整理しだす。あまり荷物を置いていなかったので、紙袋1つにまとまった。
Terakhir Diperbarui : 2025-12-17 Baca selengkapnya