All Chapters of 独占欲に捕らわれて2: Chapter 81 - Chapter 90

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策士愛に溺れる18

「やったぁ!」「大丈夫だとは思うけど、SNSにはアップしないでね。本当なら、こんなに可愛いチサちゃんを誰にも見せたくないんだから」紅玲は張り付いた笑顔で、優奈に釘を刺す。「うっ……分かってるわよ」優奈が目を泳がせると、3人はため息をついた。酒も入り、4人は話に花を咲かせる。「ところで紅玲、君はよくこんな服を持ってたな。それに祈祷書まで……」斗真は紅玲から借りている牧師の服を見ながら言う。「ブラウン神父を読んでたら、牧師と神父の違いが気になっちゃってさぁ。ついでに仕事で結婚式のシーン書く予定だったから、買っちゃった」「君は学生時代から本の虫だったからな……。にしても、後半は理解し難いぞ」斗真は苦笑しながら言うと、シャンパンを一気に飲み干す。「そう言えばふたりは古い付き合いなのよね? 紅玲の学生時代って、具体的にはどんな感じだったの?」「真面目で成績は常に僕と1、2を争っていたよ。口数少ない本の虫で、こんなチャラチャラしてなかった。まったく、いつからこうなったんだか……」斗真は嘆かわしいと言わんばかりに頭を抱える。千聖は以前見せてもらったふたりの写真を思い出し、納得する。「トーマ、いくらなんでもそれはないんじゃない? オレをこんなにしたのは、他でもないトーマでしょ?」「え、なにそれ? どういうこと?」優奈は好奇心で目を輝かせ、身を乗り出す。「めんどうなところははしょるけど、うちの親が面倒な親でさぁ。家出するためにはどうしたらいいんだろうって考えてたら、トーマがオレをグレさせたんだよ」「それこそ語弊があると思うけどな」斗真は気難しそうに、メガネを直しながら言う。「確かに僕は親から見放されやすいように、V系ファッションやピアスをすすめたが、結局自分でこうなったんだろ? 僕だって紅玲が髪にメッシュ入れたり、唇にピアスを開けるとは思ってもみなかった」「それだけ本気で出ていきたかったんじゃない?」事情を知っている千聖は、紅玲をフォローする。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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策士愛に溺れる19

「あぁ、紅玲のことだからきっとそうさ。つまり僕のせいではない。第一僕はその場だけだと思っていた」「まったく、トーマは堅物だなぁ。冗談だって」「冗談だと分かってても、僕のせいにされるのは心外だ」紅玲がクスクス笑うと、斗真はふてくされてそっぽを向く。(マダムキラーのくせに、ホント、変なところで真面目ね)千聖はふたりのやりとりを見ながら、ホテル街でばったり会った時のことを思い出した。あの時の斗真は眼鏡を外し、紅玲のような服装をしていた。「そんなにお堅いと、婚期逃すよ?」「結婚だけが人類の幸せではないって言ってたのは、どこの誰だったか」ニヤニヤしながら言う紅玲に、斗真は冷たい目を向ける。「ちょっと、ふたり共……。こんな時に言い合いしなくていいでしょ?」優奈はむくれながらふたりを見る。「あぁ、ごめんね? これがオレらのコミュニケーションだからさ」「こんな日くらい、まともな会話をすべきだろうな」ふたりは苦笑しながら言う。(優奈ったら、ずいぶん成長したじゃない)千聖は感心しながら優奈を見る。少し前の優奈なら、自分で止めようとせずに千聖に助けを求めていた。「千聖? 私の顔になにかついてる?」千聖に見られていることに気づいた優奈は、不思議そうに自分の顔を指さす。「ううん、成長したなって思ったのよ。今までだったらこんなふうに誰かが言い争いしても、止めようとしなかったじゃない?」「ちゃんと変われてるならよかった」優奈は照れくさそうに微笑んだ。「ねぇ、優奈ちゃん。学生時代のチサちゃんって、どんな感じだったの?」紅玲は好奇心で目を輝かせながら、優奈に聞く。「歯に衣着せぬ委員長様だったよ。成績は中の上くらいだったけど、しっかり者だし人望あったから、性格悪いガリ勉ちゃんより票集めてクラス委員長だったし、生徒会会長もやってたの」「へぇ、やっぱり人気者だったんだねぇ。男子にもモテてたんじゃないの?」紅玲が質問すると、優奈は吹き出す。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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策士愛に溺れる20

「え? なに?」「優奈、世の中言わなくていいことがたくさんあるのよ。というか、さらっと失礼なこと言ったわね」紅玲は身を乗り出し、千聖は優奈を制止する。「えぇ、いいじゃん。あれは伝説だったもん。きっと今も語り継がれてるよ」「そこまで聞くと、僕も気になるな」斗真は頬杖をついて優奈に目をやる。「千聖が生徒会長になってはじめて全校集会で壇上に立った時にね、男子が“会長、俺と付き合ってくれー!”って叫んだの。そしたら千聖ったら、顔色変えずに“あなた達のようなおこちゃまと付き合うつもりはこれっぽっちもありません”って」楽しそうに話す優奈に千聖は頭を抱え、紅玲と斗真は笑った。「なんというか、すごいな……」「チサちゃんってば、そんな面白エピソードどうして隠してたの?」「話すわけないでしょ、こんな黒歴史……」千聖はシャンパンを一気に飲み干した。にぎやかな食事が終わると、4人はたくさん写真を撮った。特に優奈は、千聖と2ショットの写真を何枚も撮っていた。「もう夕方だし、そろそろお開きにしよっか。ドレスとか返しに行かないといけないし」ある程度落ち着いてくると、紅玲が切り出した。「そういうことなら長居するわけにはいかないな……」「名残惜しいけど、またね」斗真と優奈は少し寂しそうに、別れの言葉を言う。「えぇ、またね。今日は来てくれてありがとう」「おかげで楽しい時間を過ごせたよ」「帰る前に、着替えさせてもらおう。服は洗ってから返す」斗真は服をつまみながら言う。「こっちで洗うから大丈夫。オレとチサちゃんは、明後日から新婚旅行でいないし、明日は仕事でしょ?」「……では、お言葉に甘えさせてもらうとしよう」斗真は少し考えてからそう言うと、浴室へ行く。「私は先に帰るね」「気をつけてね」「うん、ありがとう。じゃあね」優奈はスイートルームから退室した。「チサちゃん、疲れてない? 休んでてもいいよ」紅玲は労わるように千聖の髪を撫でる。「大丈夫よ。ちゃんと見送りさせて」千聖は微笑みながら紅玲を見上げる。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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策士愛に溺れる21

紙袋を持った斗真が、浴室から出てくる。「祈祷書もこの中に入っている」斗真は紙袋を紅玲に差し出す。「オーケー。落ち着いたら連絡するよ」「あぁ、分かった。もう妙な嘘をついて花嫁を泣かせないように」斗真は紅玲の言葉を待たずに、部屋から出ていった。「あーぁ、釘刺されちゃったよ」「ねぇ、紅玲。どうして嘘ついてまでふたりを追い出したの? レンタルしたものは明日返す予定なのに」苦笑しながら言う紅玲に、千聖は首をかしげながら聞いた。「チサちゃんが可愛すぎるからだよ。1番似合いそうにないドレス選んだのに、似合っちゃってるし……」紅玲は千聖を抱き上げると、ベッドの上に寝かせる。「ちょっと紅玲? ……んっ」紅玲は千聖の唇を塞ぎ、言葉を遮った。「オレの可愛いチサちゃん。ずっとオレの腕の中に閉じ込めて、誰にも見せたくない、触れさせたくない……」千聖の頬に手を添え、何かに取り憑かれたかのように、うっとりと彼女を見つめる。「紅玲……」千聖の瞳が、不安に揺れる。「それこそ地下室に閉じ込めたいくらいだけどね、安心して。そんなことしないよ」紅玲はいつもの余裕ある笑みを浮かべた。「実は私、仕事を辞めて結婚したら、あの家に閉じ込められると思ってたの」「へぇ、閉じ込められる覚悟で辞めてくれたんだ?」「えぇ、そうよ。だから、聞かせてちょうだい。どうして私を閉じ込めるのを、我慢してくれるの?」紅玲は千聖を抱きしめると、ベッドに横になった。「我慢、か……。我慢とはちょっと違うかもね。人間刺激がない生活を続けたら、人形みたいになっちゃうから。チサちゃんは言葉が通じないペットでもなければ、お人形さんでもないからね。それに、恋人にしろ夫婦にしろ、お互いを尊重するのは大事でしょ? オレはチサちゃんの意思を尊重したいんだ」「嬉しいわ、そんなふうに考えてもらえて」千聖は紅玲の背中に腕を回し、胸板に顔を埋める。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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策士愛に溺れる22

「大切なチサちゃんだからねぇ。あとは取材旅行の間、ずっとチサちゃんのこと考えてたんだ。チサちゃんとここに来れたらとか、あそこに一緒に行きたいとか。それを叶えるためにも、チサちゃんを閉じ込めておくなんてできないよ」「紅玲となら、どこに行っても楽しそうね」紅玲を見上げて微笑むと、彼はじっと千聖の顔を見つめる。「何よ?」「やっぱり可愛すぎて、我慢なんてできないなって」紅玲は妖艶な笑みを浮かべると、再び千聖に覆いかぶさる。「まずはこれ脱がなきゃ。汚したり破れたりしたら、買い取らなきゃいけないのよ?」千聖は紅玲のタキシードを軽く引っ張った。「別に買い取りになってもいいけどね。そもそも、そう簡単に破れたりしないけど。それとも、そんなに激しくして欲しい?」ニヤリと笑う紅玲に、千聖は顔を真っ赤にする。「そんなんじゃないわよ。万が一のことを考えて……」「あっはは、本当にチサちゃんは可愛いな」紅玲は千聖の唇を塞ぎ、舌を侵入させる。「んぅっ!? ふ……んんっ、はぁ……」突然のキスに驚きながらも、千聖は舌を絡ませる。ゆっくり口を離せば、銀色の糸をひき、ぷつりと切れる。蕩けた目で自分を見上げる千聖を見て、紅玲は口角を上げた。「なんだかんだ言って、キスひとつで物欲しそうな顔しちゃって。そういうところ、ホント好き」紅玲は千聖の背中に手を回し、ジッパーを下ろす。「あなたがその気にさせてるんでしょ」千聖は困ったように言いながらも、紅玲のネクタイとシャツのボタンを外していく。「まぁね。その気にならなきゃ、チサちゃんだって楽しめないだろうし」そう言いながら千聖の胸元に赤い花弁を散らし、ドレスを下げていく。「あぁ……! ねぇ、やっぱり脱ぎましょうよ……」「ヤダ」紅玲はドレスをおなかまで下げると、乳首を吸い上げる。「んあぁ……! や、ああっ……」「ドレスが気にならなくなるくらい、気持ちよくしたげる」乳首を甘噛みしながら、もう片方の乳輪を触れるか触れないかの絶妙なタッチで、クルクルとなぞっていく。「や、いやぁ……! それ、ダメ! あぁっ」それぞれの胸にまったく違う快楽を与えられ、千聖は躯を小刻みに震わせる。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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策士愛に溺れる23

「なにがイヤなの? オレにどうして欲しい?」紅玲は意地悪く質問すると、口で愛撫している乳首を吸い上げながら甘噛みした。「ひあぁっ! こっちも、ちゃんと触って……」千聖は乳輪を弄んでいる紅玲の手を握りながら、潤んだ瞳で訴えかける。「よくできました」紅玲は千聖の髪を撫でると、乳首をつまみ上げてくにくにとひねるように動かし、もう片方は相変わらず口で愛撫し続ける。「あぁんっ! は、ああっ……! いいの、気持ちいのぉ! ああぁっ!」「乳首だけなのにすごい声……。こっちはもう、トロトロになってるんでしょ?」そう言って千聖の腰回りを、ねっとりとした手つきで撫であげる。「んんっ……はぁ、そうよ……。もう紅玲が欲しくて、はしたなくトロトロに濡れてるの……」千聖は恥ずかしがる素振りもなく言いながら、腰をくねらせる。「ふふっ……それじゃあ、こっちも満たしてあげないとね?」耳元で低く囁かれ、千聖は悩ましげな吐息を漏らす。紅玲はドレスの中に手を入れると、パニエを引き抜く。ボリュームを失ったスカートは、千聖の美脚ラインをくっきりうつし出す。「布越しで見ても、チサちゃんの足は綺麗だねぇ」うっとりしながら、千聖の足を撫であげる。「ふふっ、くすぐったいわ」千聖は小さく足をばたつかせると、自分でスカートをたくしあげて足を開く。ヴァギナからは愛液が溢れ、太ももまで濡らしている。「ねぇ、はやく……」「まったく、チサちゃんにはかなわないよ」紅玲は苦笑しながら言うと、千聖の太ももをおさえて、ヴァギナに顔を埋める。ラビアに沿って下から上へ舐め上げると、クリトリスを舌先で小刻みに刺激する。「ひゃうぅ! んぁ、あっ、あああぁっ!」千聖は涎を垂らしながら、仰け反り悶える。それに気をよくした紅玲は、クリトリスを吸い上げた。千聖は声にならない声を発しながら、絶頂を迎える。「オレの花嫁さんは淫乱だなぁ」肩で息をする千聖を眺めながら、紅玲はうっとりする。「はぁ……あぁ……お高くとまった聖女よりは、よっぽどいいでしょ?」「その聖女がチサちゃんだったら、それはそれでアリだけどね」紅玲は千聖の太ももにキスをすると、タキシードのポケットからコンドームを取り出して、ペニスに被せた。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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策士愛に溺れる24

「まさかタキシードにそんなもの入れてると思わなかったわ」「備えあれば憂いなしって、よく言うでしょ?」紅玲は冗談めかして言うと、千聖のヴァギナにペニスをあてがう。「んっ……あぁ、はやく……」「たまらないな……」熱にうなされたように言う千聖に、紅玲は息を呑んで腰を落とした。「あああぁっ!!」千聖はシーツを強く握りしめながら、紅玲を受け入れる。「くぅっ……いつもより、キツい……。もしかして、この格好でのセックスに興奮してる?」紅玲は千聖を抱きしめると、意地悪く笑った。「だって、本当に紅玲と結婚するんだって、嬉しくて……。それに、今のあなた、とっても素敵よ」千聖は紅玲の頬に手を添えながら言う。「あぁ、もう。どうしてそんな可愛いこというかな……。手加減出来なくなる……」どこか苦しそうに言うと、紅玲は千聖をさらに強く抱きしめて、激しく突く。「ああぁっ! そんな、激しく……っ! ひぅ、ぁ、あああっ!」「チサちゃん、オレの背中に腕回して?」余裕のない紅玲の声は、千聖にとっては極上の媚薬だ。千聖は紅玲の背中に腕を回すと、彼の動きに合わせて腰を揺らす。「んあぁ……! 紅玲、紅玲っ……! 好きぃ、あぁんっ! 愛してる!」「オレも、チサちゃんのこと誰よりも愛してるよ……」ふたりは求め合うように、唇を貪り合う。混ざりあった唾液が溢れ、千聖の頬に伝う。「んぅ、ふ、はぁんっ! ふ、あぁ……! は、紅玲……もうダメ、イッちゃう!」「オレも、イッちゃいそう……」「あ、んああっ! 一緒に、ああっ、一緒にイきたいの……! あああぁっ!」「いいよ、一緒にイこっか」紅玲は千聖のオネダリを嬉しく思いながら、彼女の唇に触れるだけのキスをすると、ラストスパートをかけた。「ああああぁっ!!! イク、イッちゃうぅ! あ、んぁ、ああああああぁっ!!!」絶頂を迎えた千聖は、紅玲のペニスを締め上げる。紅玲はその締めつけに小さく呻くと、欲をゴムの中に叩きつけた。「くっ……! はぁ、はぁ……」千聖の上にくずおれると、彼女の鼻先にキスを落とす。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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策士愛に溺れる25

「ドレス、買い取らなきゃね」紅玲は千聖の耳元で囁くと、彼女を抱きしめて横になる。「紅玲のせいってことにしておくわ。私は脱ぎましょうって何度も言ったもの」千聖はおかしそうに笑いながら、紅玲の胸に顔を埋める。「あっはは、そうだね。オレのせいだよ」紅玲もおかしそうに笑いながら、千聖の髪を撫でる。「買い取りの理由、一緒に考えてくれる?」「えぇ、いいわよ。その前に、シャワーを浴びましょう」「賛成」紅玲はコンドームをティッシュに丸めて捨てると、千聖を抱きかかえて浴室へ行った。ふたりは互いに躯を洗うと、湯船に浸かる。「ねぇ、どんな理由で買い取ればいいと思う?」「うーん……、こんな汚れは前代未聞だろうからねぇ。でも、普通の洗濯で落ちるような汚れなら、そのまま返しても請求されないよ?」「そういう問題じゃないの! 他の人も着ると思うと恥ずかしいし、申し訳ないのよ……」千聖が気まずそうに言うと、紅玲はクスクス笑う。「なに笑ってるのよ。こっちは真剣なのに……」「ごめんごめん。そっか、レンタルだから次に着る人いるもんね。そう考えると、あのドレスは是が非でも買い取らなきゃね」「それはどうして?」先程とは違う意見の紅玲に、千聖は首を傾げる。「だって、チサちゃんの愛液がついちゃったものを、他の人が着るなんて嫌だから」紅玲に囁くように言われ、千聖は顔を真っ赤にする。「あー、もう! 恥ずかしいから言葉にしないでよ……」「あっはは、可愛い反応。ま、どうにかして買い取っておくから、チサちゃんは心配しなくていいよ」紅玲はなだめるように、千聖の髪を撫でる。「えぇ、お願いね……。そろそろ帰りましょうよ。おうちが恋しいわ」「ふふっ、そうだね。帰ろっか」紅玲は千聖を抱き上げると、浴室から出た。ふたりはバスローブを着て互いの髪を乾かすと、普段着に着替えてホテルから出た。空は藍色と茜色のグラデーションで染まっている。「夕飯食べてから帰ろっか」「えぇ、そうね」紅玲は千聖の手を引いて歩く。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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策士愛に溺れる26

紅玲が千聖を連れて来たのは、思い出深いフレンチレストランだ。「私、あなたと知り合うまではこういう店は自分と無縁だと思っていたの。まさか、こんなに思い出ができるだなんて思ってもみなかったわ」千聖は愛おしげにメニュー表に触れる。「オレも。ここにはチサちゃんに会う前から何度も来てるけど、特になにも考えずに来てたから。思い出のレストランがあるって、こんなに嬉しいものなんだね」紅玲は優しく微笑み、千聖を見つめる。「初めてここに来たのは、契約の話をした時だったわね」「あの時はまだ、チサちゃんに嫌われてたっけなぁ」楽しそうに言う紅玲に、千聖はバツが悪そうな顔をする。「だって、見た目からして苦手だったんだもの。イマドキの若者って感じで」千聖の言葉に、紅玲は吹き出す。「チサちゃんだって、イマドキの若者でしょ」「そうだけど、若い人独特のノリが苦手なのよ。それに……」千聖はなにか言いかけて、口を噤んだ。「それに、なに?」「なんでもないわ」「そんなこと言われると、余計気になっちゃうんだけど」紅玲にじっと見つめられ、千聖は観念したようにため息をつく。「若い子はセックス下手くそだし、お金ないから嫌いだったの」千聖が気まずそうに言うと、紅玲は声を出して笑った。「あっはは、なにそれ」「あら、怒らないの?」てっきり嫉妬されたり怒られたりすると思った千聖は、キョトンとする。「怒るわけないでしょ、オレのことじゃないんだから。いくら金を積もうが過去は変えられないし、なによりチサちゃんは、今オレのことしか考えられないでしょ?」紅玲は自信たっぷりに言うと、メニュー表を広げた。「そろそろ注文しよっか」「そうね、お喋りしすぎたわ」ふたりは値段が書かれていないメニュー表を見ながら料理決め、注文した。そして思い出話に花を咲かせながら、夕食を楽しんだ。食事が終わると、ふたりは腕を組んで夜の街を歩く。「千聖ちゃん?」柔らかくも芯のある声に振り返ると、高級スーツを着こなした男性が立っている。
last updateLast Updated : 2025-12-17
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策士愛に溺れる27

「あら、ヨシさんじゃない。久しぶりね」千聖は中年男性に微笑みかける。彼は芹沢義和。紅玲と付き合う前の千聖の“パパ”だ。「チサちゃん、この人は? 昔の恋人かなぁ?」紅玲は明るい声で言うが、千聖はその声に違和感を覚える。(もしかして、嫉妬してくれてる?)そう思うと嬉しくもあるが、ヒヤッとする。「はははっ、そうだったらよかったんだけどね。私はみつぐ君ってやつだよ。そういう君は、紅玲くんかな?」義和はおおらかに笑いながら、紅玲に声をかける。「そうだよ。チサちゃんから悪口でも聞いてたかな?」「ちょっと……」いたたまれなくなった千聖は、紅玲の裾を引っ張る。「あぁ、最初は本当に嫌ってたみたいだけど、途中からは好きなのに気づいてなかったようだよ。それは恋だって教えても頑なに否定してたんだけど、結ばれたようでなによりだよ」義和の発言に、千聖は頭を抱える。「あっはは、予想通り。オレ達、婚約したんだよ」紅玲は千聖の手を持ち上げ、婚約指輪を見せつける。「それはおめでとう」「ありがとう」「……ありがとう、ヨシさん」紅玲は張り付いた笑顔で、千聖は困り顔で礼を言うと、義和は笑った。「さて、私はお暇しよう。紅玲くん、私は今後一切千聖ちゃんに関わる気はないから、安心したまえ」それじゃあと片手を上げて、義和はその場を去った。「あー……、生きた心地がしなかった……」躯の力が抜け、千聖はその場にしゃがみこむ。「いい人そうだね、あの人」紅玲は義和が消えた方向を見ながら言う。「もうこの話はおしまい! 帰りましょ」「あっはは、そうだね。帰ろっか」ふたりは腕を組み直して、帰宅した。千聖は帰って早々風呂を沸かし、紅玲は用事があるからと書斎に篭ってしまった。「はぁ……まさか紅玲といる時に、ヨシさんと遭遇するなんて……」先程のことを思い出し、大きなため息をつく。
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