その知らせが夢乃の耳に届いたとき、礼はそっと彼女の手を強く握りしめた。「様子を見に行きたいなら、今日の式はいったん止めてもいい」彼はやわらかな声で、彼女に選択肢を差し出す。けれど夢乃は、ふっと笑って首を振った。「いいわよ。だって、私の結婚式は、新郎が欠席したわけじゃないもの」そう言って送り出され、礼がステージへ向かい、彼女を迎える準備をしに行ったとき。夢乃の胸の中は、ほんの一瞬、暗い影に覆われた。スポットライトの下で、親族や友人たちの祝福を浴びながら、白いドレスをまとった自分が、ゆっくりと愛する人のもとへ歩いていく。そんな夢を、彼女は何年も何年も見続けてきた。そして今日、その光景は、ほとんど当時思い描いていたとおりに目の前にある。ただ一つだけ違うのは――ステージの上で花束を抱え、自分を待っているその人が、かつて心の中で思い描いていた「その人」ではない、ということだけだ。両親の深い愛情を見て育ち、自分自身も骨の髄まで焼きつくような恋を経験した。けれど最後に残ったのは、悪意に囲い込まれた「感情の罠」だったのだと、思い知らされただけだった。自分を笑うように小さく息を漏らしたちょうどそのとき、宴会場の大扉が開く。ライトが彼女の顔に落ちた瞬間、夢乃は口元にきちんとした笑みを浮かべ、ゆっくりとステージへと歩み出した。目の前にあるのは、風雅とまったく同じ顔。それなのに胸の奥には、もう何の期待も湧き上がってこない。……だが、冷え切ったその手を礼が受け取った、その一瞬。彼は彼女の手のひらに、素早く小さなカイロを滑り込ませた。「ドレス一枚じゃ寒いだろ。お前は冷え性だからな。これを握ってた方がだいぶマシになるだろ」夢乃は、きょとんと目を瞬かせる。一瞬、現実感がふっと薄れた。自分の記憶の中で礼と深く関わったことは、決して多くない。幼い頃は、三人で一緒に育った。けれどそのあと、父の浮気で母親が傷つき、離婚に至った。子どもの親権は一人ずつに分けられ、礼は母親と一緒に「海市」の夏目家へ戻った。それからずっと、母方の祖父母のもとで暮らしていた。何年も経ち、父が病で亡くなったあと。祖父がその機会に彼を佐藤家へ呼び戻した――そこまで思い返したところで、会場に音楽が流れ始める。司会
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