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Lahat ng Kabanata ng 月灯りの花嫁。: Kabanata 121 - Kabanata 130

143 Kabanata

15話-5 月の姫。

* * *天へと続く果てなき階段の頂きへ登りきった先で、リリシアは思わず息を呑んだ。そこは、空と地の境界が曖昧な、幻想的な天界のような場所だった。ひらひらと白銀の雪が冷たい夜風に乗って舞い、足元に広がるのは、天空をそのまま映し出したかのような静謐(せいひつ)なる水鏡の地。その水面に点在する緑の大地を5名の影が駆け抜けている。紛れもない、あの人達の姿だった。エルシーの弾むような足取り。アルベルトの華やかな身のこなし。テオの荒々しい闘気。リゼルの静かなる風。そして、ハノの流麗な駆け足。その頭上には、空を覆い尽くす程の巨大なイーグルの怪異が翼を広げて君臨し、禍々しい影を落としている。まるで雲の上を駆けるようにして必死に立ち回る彼らの姿に、胸が締め付けられた。けれど――。隣にいるルファルの、凍える程に冷たい空気に触れながらも感じる確かな温もりに、リリシアは救われる。この方がいれば、どんな呪いもイーグルの怪異さえも恐れることはない。「ルファル!」「リリシアちゃん!」緑の大地を疾駆するハノとエルシーが、リリシアとルファルを見つけて叫んだ。アルベルト、そしてリゼルとテオも熾烈な戦いの合間にこちらを一瞬振り返った。「チッ、ようやくお出ましかよ」「良かった」テオが毒づき、リゼルが静かに安堵の言葉を零す。直後、張り詰めた空気を切り裂くように、アルベルトの切迫した声が響いた。「まずい! ルファル、リリシア!」イーグルの怪異がリリシア達の方を向き、邪気の満月を作り出し、隕石のようにルファルとリリシアへ放つ。けれど、ルファルは眉ひとつ動かさず、瞬時に結界を張ってそれを跳ね飛ばした。その横顔は、夜を纏ったかのように静かで冷たく、そして息を呑む程に凛として美しい。空で爆発音が響き渡る。だが、イーグルの怪異はするりと攻撃を回避した。するとアルベルトが、空のイーグルの怪異を鋭く指差す。「ルファル、奴が避けたおかげでようやく見つけ出したぞ! 奴の弱点は、胸部にある心だ!」心――。その言葉に、胸の奥がちくりと痛んだ。もしかしたら、このイーグルも、ほんの少し前までの自分と同じように、闇に支配され、救いを求めているのではないだろうか。「そうか。ならば、アルベルト、エルシー、ハノ、リゼル、テオ。イーグルの動きを封じろ。そこで私はリリシアと共に討つ
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15話-6 月の姫。

* * *清廉なる神々しい光を纏ったドラゴンが、イーグルの怪異の醜悪な胸部――その核心ごと貫いた。凄まじい衝撃と共にイーグルの怪異は形を失い、光の粒子となって霧散する。それはまるで、長きにわたる穢(けが)れが天へと還っていくかのようだった。やがて光が収まるのと同時に、リリシアの体から温かな光が溢れ出し、体がふわりと宙へ浮かび上がる。ルファル達が息を呑んで見上げる中、リリシアは導かれるまま、空中でまるで寝ているかのような姿勢を取った。纏(まと)っていたはずの傷ついたドレスは、降り積もったばかりの雪のように白く、柔らかな月の純白なドレスへと姿を変えていく。背中から広がった純白の翼は、一瞬で無数の羽となって天へと舞い散り、ヴェールのような柔らかな光の布へと形を変えた。後ろ髪の一部が繊細に編み込まれ、その両側からは、まるで天界の衣が翼のように優雅に広がっている。ただその姿に心奪われ、綺麗だ、美しいと瞳で語るかのような表情で見つめ続けるアルベルト、エルシー、ハノ、リゼル、テオ。その体勢でゆっくりと光に包まれたまま地へと降りゆくリリシアをルファルが駆け寄り、受け止めた。そして、地へと降ろされる。「ルファル様……わたし、一体……?」リリシアの瞳が困惑に揺れる。するとルファルは穏やかな表情を浮かべた。「……ようやく、呪いが解け、月姫となれたようだな」サァッと風が吹き、互いの髪が揺れる。10年もの間、暗く、冷たい絶望の淵に囚われ続けてきた日々。それが今、解き放たれたのだ。わたしが、月姫に……。互いを確かめ合うように歩み寄り、抱きしめ合う。けれど至福の瞬間は、長くは続かなかった。足元の地面が、まるで世界が引き裂かれるかのように激しく震え始めた。* * *フェリカディア宮殿、皇帝の間。その玉座に座すシャイン皇帝は、冷徹なまでの静けさを纏ったまま、ただ天を見据えていた。
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16話-1 望む世界。

* * *闇に落ちていく感覚は、永遠に続くかと思われた。だが、どれ程そうしていたのだろう。視界を覆っていた闇がすうっと晴れ、気づけばリリシアは、見たこともない壮麗な宮殿の玉座の間に立っていた。チリン――。静寂の中、鈴の音が響く。震える足で振り返った先――玉座には窓から差し込む月光を纏(まと)ったかのような白銀に輝いている長い髪をたなびかせた青年、世異(せい)が足を組んで座していた。この世のものとは思えぬ程整った、冷酷なまでに美しい容姿。氷のように冷徹な瞳。その圧倒的な威圧感に、ぞくりと、背筋に冷たいものが走る。リリシアは震える体を必死に抑えながら、小さく息を吐いた。ここが世異の宮殿だったのだと理解すると同時に、月姫となったことで分かってしまう。あれは、絶対的な「怪異」の気配だと。この御方に抗い、逆らうことは、許されないのだと。その奥底から溢れ出るのは、生きとし生けるもの全てを拒絶するような、圧倒的なまでの威圧感だった。「……お前が月姫となるこの時を、永い永い刻(とき)をかけて待ちわびていた」世異は静かにそう告げた。その声には、人間には計り知れない歳月が滲んでいた。「これまで私は長い時を孤独に生きてきたが、月姫に至る者は皆無だった。だがお前は、呪いに呑まれることもなく、自ら解き放った。私が求めていた唯一無二の光……月姫よ」世異は玉座から身を乗り出し、氷のような冷徹な瞳でリリシアを射抜いた。その視線に射すくめられ、リリシアは一歩も動けなくなる。「――リリシア。私の花嫁となれ」頭が真っ白になった。断らなければ。――断らなくてはならないのに、恐怖が喉を締め上げ、声が出ない。もし拒絶したら、この御方は何をするのか。そう思うだけで、指先が氷のように冷えていく。「ここには財(ざい)も、力も、人の望む全てがある。特別に、お前の望むものも全て与えよう。……何が欲しい?」リリシアは首を横に振りながら、声を絞り出した。「何も、要りません」「そうか。では、お前が花嫁となれば、ラルファル達の命は助けてやろう」「っ……!」心の中を見透かされたことに、息が止まりそうになる。これまで、自分ひとりが犠牲になればいいと、そうして生きてきた。けれど、大切な人達の命を盾に取られては――それでも幸せになることを諦めたくない。「……お断り、しま
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16話-2 望む世界。

* * *「……ここが、あやつの世界――あの男の掌の上か」宮殿の中層、凍てつくような冷気に包まれた大理石の回廊で、シャイン皇帝は静かに呟いた。周囲を包み込むのは、死と昏迷の気配。あの傲慢な男が作り上げた、歪な異空間だ。「陛下」背後から名を呼ぶ声に振り返れば、自身の影とも言うべき側近、その傍らにはラズエラ、そしてカイスとソフィラが、自身を守るようにして控えていた。どうやら、この4名と共にこの忌まわしい閉鎖空間へ招かれたらしい。側近が不意に目を閉じ、周囲を探り始める。「騎士団は最下層にて、出現した怪異と交戦中とのこと。……激しい攻防が続いております」「そうか」シャイン皇帝は短く答えると、視線をカイスへと移した。「ルファルは……、上層か」「はい。間違いございません。ルファル様の気配が、上層より色濃く漂っております」カイスは表情一つ変えず、淡々と報告する。ならば、リリシアはすでに奴の手中にあるということか。その事実に、胸の奥で静かな怒りが燃え上がる。突如、空気が震えた。「――っ! シャイン皇帝、お下がり下さいませ」ソフィラの鋭い声が響くと同時に、空間が歪み、回廊の闇から巨大なイーグルの怪異が音もなく現れた。「きゃあっ!」ラズエラが悲鳴を上げて身を竦ませると、その動揺に呼応するように足元の床が大きく揺れ出した。シャイン皇帝はすぐさま、ラズエラの肩に手を乗せる。「ラズエラよ、気を静めよ。これまで陰で己の心を整える修行を積んできたそなたならば、この程度の乱れ、鎮められよう」「……はい」シャイン皇帝の言葉に、ラズエラは深く息を吐く。すると震えは瞬く間に収束し、周囲の狂乱も沈静化した。「イーグルの怪異、だと……? 既にルファル様達が消滅させたはずでは?」カイスが訝しげに眉をひそめる。シャイン皇帝はその悍ましき怪
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16話-3 望む世界。

* * * 暗く、冷たい鳥籠の中。リリシアは膝から崩れ落ちたまま、内側からじわじわと蝕んでくる禍々しい邪気に、ただ息を吐くのが精一杯だった。 「はぁ、はぁ……っ」 「苦しいだろう? 痛いだろう? 無駄な足掻きはいい加減やめて、『私の花嫁となる』と言え」 頭上からぞっとする程の冷たい声が降ってくる。 その冷徹な眼差しを向けたまま、鳥籠の外――宮殿の玉座の間で世異が静かに見下ろしていた。 そう言えば、この耐え難い苦しみからすぐに解放されるのだろうか。 けれど、そんな甘い言葉に屈する訳にはいかない。わたしの心はすでにルファル様のお側にあるのだから。「従うことは、出来ません……っ」 リリシアが震える声でそう拒絶すると、世異はより一層冷酷に邪気を強めた。 「はっ、がっ……!」 両手を冷たい床に突いたまま、倒れそうになる体をリリシアは必死で支えた。 そして視界が歪む中、濁りきったその瞳を見据え、震える声を振り絞って宣言する。 「わたしは、ルファル様の、花嫁となります……っ」 「――――だそうだ」 突如として、リリシアの耳に、凛として響き渡る声。 玉座の間の重い扉が開き、そこに立っていたのは――。 「ルファル、様……っ」 (今の、聞いて――――わたしを救いに来てくれたのですね……) 「ラルファル」 世異が鋭く睨みつけたその先には、ルファルだけでなく、ハノ、エルシー、そしてユエリアが立っていた。 (ハノ様、エルシーさん、そして――) 視界の端に映ったのは、大切なあの人だった。 「お姉……さま……」 「リリシア」 その名を呼ぶ声はあまりにも優しく、リリシアがずっと知っているいつもの姉、ユエリアだった。 (お姉さまも、あの呪いから解き放たれたのだわ……良かった……) ユエリアは「必ず救う」と言葉にはせずとも強い瞳でこちらを見つめる。 リリシアは小さく頷き返した。 「ハノ、エルシー、ユエリアは奴を足止めしろ。その間に私はリリシアを救出する」 ルファルの毅然とした命令に、ハノは「分かった」と静かに答え、エルシーは艶やかに剣先を世異に向けた。 「前皇帝だけでなく、リリシアちゃんを無理やり花嫁にしようとするだなんて、絶対に許さないんだからぁ! みんな、行くわよ! キラサマ!」 「全解放するです」 エルシーの呼びかけに合わせ、肩
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16話-4 望む世界。

* * *「リリシア!!」ルファルは思わず叫んでいた。目の前で、リリシアが邪気に蝕まれ、そのまま冷たい床へと倒れ込んだ。ルファルの声など聞こえていないかのように、リリシアは体をその床に横たえたまま動かない。胸の奥底で、沸き立つような激しい怒りと焦りが黒い渦を巻いた。「良い絶望の表情だ。前皇帝も、全く同じような顔をしていたな」忌々しい世異の笑い声が、耳障りに響く。前皇帝――――父上。あの日の記憶が脳裏をかすめる。幼き頃からシャイン皇帝とは家柄同士の付き合いであったが、いつしか気置けない親友のような関係となっていた。そして、皇太子の儀を終えた際にルファルは彼に仕えるようになった。「お前は料理を不味そうに食べるな」「不味そうで悪かったな」しかしながら、幼い頃から人一倍、月の魔術に長けていたルファルは、言い寄る女達に囲まれる度に心底うんざりしていた。そんな女嫌いなルファルを前皇帝はよく心配してくれていたが、その心配の本質が何であったのか──その本当の意味を知る日は、あまりにも残酷な形で訪れた。宮殿の静寂を打ち破り、世異が皇帝である父を倒す為に現れた、まさにあの悪夢のような日。前皇帝は世異に倒され、世異は忽然(こつぜん)と姿を消した。「父上……っ!」シャインが前皇帝の元へと駆け寄る。「不甲斐無い父ですまない……」「そんなことっ……!」ルファルはシャインの隣にしゃがみ込み、冷たくなっていく手を支えた。その時、前皇帝は、ルファルの知らなかった真実を告げた。「ラルファル……お前の本当の名はラルファル、ラルファル・フェリカディア。シャインの、腹違いの弟だ」母は父のことを尋ねても何一つ語らなかった。宮殿の隅で、皇帝の愛人の子ではないかという黒い噂は耳にしていたが、それがまさか本当だったとは。「私が、シャイン殿下の……?」「ラルファル……シャインを、頼む……」それが、前皇帝である父の最期の言葉だった。遠い過去の記憶の底から現実へと引き戻されたルファルは、険しい眼差しで目の前の元凶――世異を、殺意を込めて睨み据えた。その凍てつく沈黙を破るように、重厚な扉が音を立てて開く。まるで時間が引き延ばされたかのようなスローモーションの中、静寂をまといながら、シャイン皇帝が圧倒的な威厳を帯びてゆっくりと歩みを進める。世異は冷ややかな視線
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16話-5 望む世界。

シャイン皇帝の、威厳に満ちた姿を目にした瞬間、ルファルはようやく安堵の息を吐いた。「――シャイン皇帝、ご無事であらせられましたか」シャイン皇帝の背に続き、信頼厚き側近――ラズエラ、ソフィラ、そしてカイスが足音高く室内に踏み込んでくる。不意にシャイン皇帝とルファルの視線が交錯する。静かな頷きが返された後、その厳たる瞳は一瞬にして敵――世異へと据えられた。「光が降りた。世異、そなたは我の代で終わりを迎える」シャイン皇帝の瞳の奥に、揺るぎない怒りの炎の光が灯る。「これより我が、そなたを滅する」その宣告に、世異は吐き捨てるように言い返した。「黙れ。光に頼り続けるお前に、私が滅せられるはずがない」冷酷な世異の眼差しがシャイン皇帝を捉える。「私の望む世界に、お前の光など不要だ」宣言した直後、世異は背の翼の一片を鎌のように鋭く変形させ、容赦なくシャイン皇帝へと放った。だが、シャイン皇帝は僅かに眉根(まゆね)を寄せただけに過ぎず、その剣で一瞬にして鎌を完全に跳ね飛ばす。「チッ、実に小賢(こざか)しい力よ」忌々しげに吐き捨てる世異をよそに、シャイン皇帝は凛とした声で命じた。「ルファルよ、そなたはリリシアを救い出せ」「はっ」ルファルは短く、しかし決意を込めて応じる。その直後、扉付近でソフィラ、シャイン皇帝の側近、そしてカイスが揃って世異へと剣先を向け、詠唱を紡ぎ始めた。「木の精霊よ、茨を張れ」「空の精霊よ、包み込め」「氷の精霊よ、今ここに封印せよ」重ねられた魔術が、一瞬にして世異の身体を茨の蔦で縛り上げ、重圧の空気がその身を包み込み、最後には厚い氷の晶壁の中へと封じられ沈んでいく。その硬質な力が響く中、シャイン皇帝は剣を携えて静かに歩み出す。ルファルの視線はすでに異様な冷たい鳥籠の柵の奥――囚われたリリシアへと向けられていた。――リリシア。今度こそ必ずお前を救い出す。ルファルは硬質な柵を見据え、強く剣を握り締め、高く掲げた。そして、一息に振り下ろし、呪われた鳥籠の柵を一刀両断に斬り伏せる。ガキィン、と耳障りな金属音が響いた。その直後。内部に澱んでいたどす黒い邪気が猛然とルファル目掛けて襲いかかる。だが、ルファルは即座に展開した結界でそれを完全に遮断し、瞬く間に浄化した。そのままルファルは、鳥籠の中へ足を踏み入れる。暗く
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17話-1 願う先には。

ルファルは腕に抱えたリリシアをしっかりと護(まも)りながら行く末を見守る。だが、世異は瞬時に身を翻してシャイン皇帝の剣を躱(かわ)し、片腕のみが斬られながらも背の4つの翼を同時に鎌のように鋭く変形させて放った。その禍々しい翼はシャイン皇帝の周囲を通り抜け、ラズエラ、皇帝の側近、ソフィラ、そしてカイスを容赦なく斬り伏せる。一瞬にして、4名がその場に倒れ込んだ。「私の腕、そしてリリシアを奪った報いだ」冷徹に吐き捨てる世異の声に、シャイン皇帝の厳(げん)たる瞳が静かに、しかし激しい怒りの光の炎を纏った。「そうか。ならばそなたは今まで無慈悲に命を奪ってきた者達の、そして前皇帝である父上の報いを受けよ」告げた瞬間、シャイン皇帝の身体から、日の如き神々しい光が烈しく迸(ほとばし)った。それに応えるかのように、世異もまた、邪気で鎖の先に分銅が付いた鎖鎌を作り出し、その身を禍々しく光らせる。次の瞬間、シャイン皇帝と世異が床を同時に蹴り、神速で激しく剣と鎖鎌がぶつかり合った。火花が散り、ルファルは腕に抱えたリリシアを庇いながら、息を呑む。まるで神の姿のようだ。あの気高くおわす御方こそが、シャイン皇帝の本当のお姿――真の力とはこれ程までに圧倒的なものなのか。シャイン皇帝は迫り来る分銅を紙一重で交し続ける。が、圧倒的な殺気の中、互いの頬や身体に着実に傷が増えていく。「チッ、前皇帝の姿がちらつく」吐き捨てる世異の僅かな隙をシャイン皇帝は見逃さなかった。見事なまでの剣閃(けんせん)が世異の身体をナナメに斬り裂いた。「くっ……! 前皇帝をも超えるというのか。あの男は私を傷つける間もなく終わったというのに……」世異が苦悶の声を零す。それでもなお不敵に笑う世異を確実に滅する為、シャイン皇帝は高く飛び上がり、静かに、だが強烈な殺意を込めて剣を構えた。「腕のみならず、私の身体までも傷つけたこと、褒めてやろう。だが――」その頭上から迫る致命的な一撃を前に、世異は分銅が付いた鎖を投げつけ、剣を持つシャイン皇帝の腕に絡みつかせた。「――っ!」世異はそのまま力任せに引っ張りシャイン皇帝の体勢が僅かに前のめりになる。「お前では私を滅せられない」勝ち誇ったように世異は鎖を解き放ち、鋭い鎌でシャイン皇帝の身体を深く斬りつけた。「シャイン皇帝――っ!!」ルファ
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17話-2 願う先には。

* * *――いけない、このままでは、あの優しく気高いシャイン皇帝のお命が消えてしまう。リリシアは恐怖に震えそうになる心を必死に抑え込み、ルファルを見上げるようにして呼びかけた。「ルファル様……っ」名を呼ぶと、ルファルはハッと我に返ったようにこちらを見る。「わたしを下して……! 早く、シャイン皇帝の元へ……っ!」「あぁ。だが、離れるな。私の腕にしっかりとしがみ付いていろ」ルファルはリリシアをそっと床へ下ろす。リリシアがその腕にしがみ付くとその身を護るように支えながら、床に倒れたシャイン皇帝の元へ風のように駆け寄った。しかし、その直後。地を抉るような冷酷な世異の声が響き渡る。「ラルファル、シャイン共々、そのまま塵(ちり)となって滅びろ」絶対なる命のように告げると、狂気と殺意を纏った世異は冷酷な眼差しでその凶悪な禍々しい鎖鎌をルファル目掛けて放った。「ルファル様……っ!」リリシアは反射的に掌を前へと突き出す。シャイン皇帝を、愛しい人を守りたい。その一念だけで、おふた方──ルファルとシャイン皇帝を守るようにして眩い結界を展開し、鋭い鎖鎌を激しい音と共に跳ね返す。「リリシア、邪魔をするな」吐き捨てるような声音。世異は背から生えた4つの翼を、悍ましい鎌の形状へと変化させ容赦なく放つ。だが、その凶刃が届くより早く、3名の頼もしい影がリリシア達の前へと飛び出してくる。起き上がったハノ、エルシー、そしてユエリアが、素早く駆け付け、鋭い剣閃をもってその攻撃を跳ね返した。「ハノ様、エルシーさん、お姉さま……っ!」リリシアは思わず名を呼ぶ。「ここは私とユエリアが命に代えても守り抜く。エルシーは急ぎ、ルファル達と共にシャイン皇帝の応急手当を!」ハノの静かで凛とした声が響く。エルシーは迷いなくその指示に頷いた。「分かったわ!」リリシアはエルシーの指示に従い、彼女やルファルと自身の力を繋ぎ合わせ、震える手でシャイン皇帝の傷口へと命の光を注ぎ込み始めた。 その時――緊迫した空気を切り裂くように重厚な扉が音を立てて開かれ、アルベルト、リゼル、テオの3名が飛び込んできた。彼らの視線は、一瞬で床に倒れるシャイン皇帝へと向けられる。「シャイン皇帝――っ!!」3名の叫び声が、張り詰めた空間を切り裂いた。「貴様ぁぁぁぁぁぁぁっ!!」「許さな
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17話-3 願う先には。

だが、世異はその銃弾を紙一重でかわし、冷酷に鎖鎌を投げ放った。3名はその猛攻を神業の回避でかわしつつ、同時に渾身の一撃を振り下ろす。しかし、世異は背の3枚の翼をそれぞれ鎌のように鋭く変形させて容赦なく迎え放った。その予測を超えた反撃に、アルベルト、リゼル、テオの3名は深く斬り裂かれ、激しく弾き飛ばされた。だが、すぐ近くの床に投げ出されたリゼルの姿に気付いたラズエラが崩れ落ちた痛む体を起こして倒れ伏すリゼルに必死に呼び掛ける。「リゼル様! リゼル様……っ! わたくしがもう一度! 天の願いを……!」ラズエラが祈りを捧げようとした瞬間、世異は背から広がる片翼を冷酷な鎌へと変形させ、彼女へと放つ。――ラズエラ様っ……!リリシアが心の中で叫んだその瞬間。リゼルが身を起こしてふらりと立ち上がり、ラズエラを我が身を盾にして抱き締めた。直後、背中を深く斬り裂かれたリゼルは、ラズエラを庇うようにしてそのまま崩れ落ちる。「リゼルくんっ……!」エルシーが悲鳴に近い声で叫ぶ。怒濤の狂気の中、世異は更に背の翼を2枚増やし、6枚全ての翼を殺戮の鋭利な鎌へと変化させ、無慈悲にリリシア達へと放った。「……っ! させねぇ!!」アルベルトとテオが同時に叫び、身を起き上がらせ立ち上がると、瞬時に駆け付け、ハノとユエリアの前に身を挺して飛び出し、剣で必死に1枚ずつ弾き返していく。だが、取り零した2枚の翼の鎌で斬り裂かれて深手を負い、その衝撃で弾き飛ばされる。直後、4枚の翼の凶刃が再び襲いかかり、それに向かって、エルシーも加勢し、ハノやユエリアと共に剣で必死に応戦する。が、弾ききれなかった2つの鎌がエルシーとユエリアの身体を捉え、深く切り裂く。ふたりは紅の飛沫と共に弾き飛ばされ、床へと叩きつけられた。リリシアの瞳が微かに揺れる。(――エルシーさん! お姉さまっ……!)「エルシー! ユエリア
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