ふわり、と――ただ、優しく包み込まれるかのように触れられただけのはずだった。けれど。その白く冷ややかな掌から零れ落ちるかのような、あまりに強烈な殺気に、リリシアの全身が凍りつく。目の前の青年――テオの整った貌(かお)が、まるで本物の「悪魔」であるかのような、底知れない恐怖に支配される。冷たい汗が、一筋、首筋を伝った。あまりの恐ろしさに声すら出ない。抗いがたい威圧感に、意識が遠のいていく。けれど。(……いいえ、逃げてはいけないわ)リリシアは震える手を伸ばし、自らの首元に触れているテオの手の甲に、そっと掌を添えた。そして、逃げ出したい心を必死に抑え込み、凛と背筋を伸ばして、その冷たい瞳を真っ直ぐに見据える。テオは、ほんの一瞬、意外そうに目を見開いたが、すぐに唇の端を吊り上げた。「……神魔術隊以外で気絶しなかったのは、お前が初めてだ。どうやら、そのか弱い見た目に反して、根性だけはあるみてぇだな」テオはリリシアの手を振り払うように、首元からパッと手を離した。直後、恐怖から解放された安堵に、リリシアはその場に崩れ落ちる。そのまま、けほっ、とむせ返すリリシアをよそに、テオは冷たく背を向けた。「……明日もここへ来い」* * *それからというもの、日々のテオの元での修行は苛烈を極めた。されど、18日目となる今日。テオが、初めて剣を鞘から抜いた。その瞬間、周りの空気が一変し、落雷のような轟音を響かせ、雷光を纏った一撃が放たれる。リリシアは清浄な結界を必死に張り、それを弾き飛ばそうとする。だが、テオが雷光の連続魔術を続けざまに放ち、そのあまりに強大な力と天才的な剣さばきの前では、リリシアの結界など無力に等しかった。――――パリ、ン。テオの右手の剣によって、結界は容易く斬られ、粉々に砕け散る。テオは、はー、と退屈そうに息を吐いた。「まだこの程度か。もういい」テオが左手をリリシアへ向
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