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月灯りの花嫁。 のすべてのチャプター: チャプター 131 - チャプター 139

139 チャプター

17話-4 願う先には。

「――断る」ルファルは、一瞬の迷いもなく即答した。その凍てつくような冷たさと、絶対に揺るがぬ強い意志が宿る涼やかな声が、張り詰めた空気をピリッと凍らせる。「リリシアは私の、私だけの花嫁となる。誰にも渡しはしない」「ルファル様……っ」胸がいっぱいになる程の熱い嬉しさが込み上げる一方で、この場に倒れ伏したルファルの姿が一瞬脳裏をよぎり、ぞっとするような恐怖が背筋を駆け抜けた。――もしも、わたしを選んだせいで、ルファル様を永遠に失うことになってしまったら?「そうか。ならば」ルファルの姿をした偽者――世異の冷徹な視線が静かにこちらへ向けられた。その悍(おぞ)ましいまでの圧に、息が詰まりそうになる。「リリシア、最後の命令だ。こちらへ来い。そして――『私の花嫁となる』と言え」「わたし、は……っ」縋(すが)るような思いで隣のルファルを見上げる。すると、手の震えに気づいたのか、冷えた手をルファルが強く、温かく握り締めてくれた。その掌の温もりが、今の自分の微(かす)かな救いだった。「リリシア、奴の言葉など、聞く必要はない」けれど――このままルファル様を失う訳にはいかない。だからどんな手段を使ってでも、この人だけはわたしが必ず守り抜く。ルファルの温もりが離れていく恐怖に耐えながら、リリシアは意を決してルファルの手を自らそっと振り解(ほど)いた。そして、これ以上ない程の拒絶を示すように、ふいっと顔を逸らす。全ては選んだのは貴方ではないと見せかける為。冷たい闇の先にあるかもしれない一筋の光を掴む為に、リリシアは覚悟の足を一歩踏み出した。「リリシア、っ……!」両目を見開くルファルの驚愕の声を背に受ける。けれどもう、振り返ることは許されない。世異は勝ち誇ったように、ぞっとする程の冷酷な笑みを浮かべた。「それで良い。ようやく私の花嫁となる決意が出来たか」リリシアは震える足を一歩、また一歩と動かし、世異へと近づいていく。――許して下さい、ルファル様。どうかわたしの真意に気づいて――。世異との距離が縮まった瞬間。躊躇うことなく世異の間合いに飛び込むと、その身体をしっかりと両腕で力強く抱き締めた。世異が驚愕に目を見開く。その胸元で、ほんとうの願いを今度こそ届けるようにと、リリシアは全身の力を込めて結界を展開した。「……っ!? くはっ…
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17話-5 願う先には。

命懸けの、必死の願いが込められたリリシアの叫びに呼応するように、ルファルが鋭く息を呑む。直後、愛刀を強く握り締め神速の身のこなしで駆け、高く飛び上がり、月の光を纏ったその刀を閃かせ、無防備となった世異へと容赦なく剣を振り下ろした。しかし、世異はリリシア達の想定を遥かに超えていた。リリシアの展開した結界を真っ向から打ち破る程の凄まじい邪気を爆発させる。その衝撃でリリシアとルファルはまとめて激しく跳ね飛ばされた。「あっ……」投げ出される身体と共に、轟音で、小さな悲鳴が虚しくかき消される。天井付近で鮮やかにバク転し軌道を捉えたルファルの強い腕が、扉に向かって吹き飛ばされるリリシアの体をギリギリで抱き止め、そのまま一緒に床へと転がった。「リリシア、大丈夫か?」「わたしは……大丈夫です。ルファル様こそ、お怪我は……っ!」ルファルは痛みを堪えるように眉を一瞬ひそめながらも、乱れた髪をそっと優しく撫で、強く抱き締める。「私は、平気だ。全く……奴だけでなく私までも欺くとは。大した度胸だな」「申し訳ありません……。どうしてもルファル様を失いたく、なくて……っ」「……もう、2度とお前の命を危険に晒すな。あんな無茶をするな」ルファルの言葉に胸がいっぱいになり、溢れそうな涙を必死に堪えて頷く。「だが――お前のその命懸けの力は、確実に奴に届いたようだ」ルファルに支えられながら、リリシアは共にゆっくりと起き上がる。見れば、先程までの圧倒的な威圧感を放っていた世異の身体はボロボロに傷つき、荒い息を吐いていた。「おのれ……リリシア……め……!」世異は憎々しげにこちらを睨みつける。「リリシア、ここで見ていろ」「はい……っ」ルファルは
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18話-1 覚醒、そして。

* * *冷え冷えとした空気の中、ルファルの身体の奥底から、肌を刺すようなパリッとした殺気が弾けた。この男を――跡形もなくこの世界から消し去る。「この私を完全に消滅させるだと?」その殺気に応えるように、世異は手にしていた鎖鎌を黒い邪気へと変え、歪な剣を創り上げて不敵に構える。「やれるものならやってみろ」吐き捨てるような言葉が消えるよりも早く、ふたりの剣先が激突した。直後、世異は背中から広がった6枚の翼を鎌へと変形させ、同時にルファルへと放つ。されど、そんなものに惑わされるか。ルファルは瞬時にその刃の先を全て斬り落とした。そのまま神速に踏み込み、ふたつの剣が激しく火花を散らす。身を翻し、横に一回転して、更に鋭く踏み込み剣を振るう。そして再び剣と剣が激しくぶつかり合ったその瞬間。ルファルは怒りを込めて言い放つ。「父上を、シャイン皇帝を、この場にいる皆を、そして――」ルファルは全身の力を込め、剣で世異の剣をぐっと押し返す。「リリシアを、長きに渡り呪いで苦しめたお前を――絶対に許しはしない!」世異は力任せに剣で押し返し、ルファルは体勢を立て直すべく、一度距離を取る。そして床を蹴り、一直線に駆け、一気に高く跳び上がった。「消え失せろ」シャイン皇帝と同じ軌跡を描き、世異の背中をナナメに切り裂く。「がっ…………」世異が苦しみの声を上げ、その身体がぐらりと前に傾いた。ルファルは華麗にバク転し、軽やかに床へと着地する。――だが。世異は凄まじい執念で床に踏み留まり、瞬時にルファルの方へと振り返る。そのまま体の向きを変え、光の速度で床を蹴り――気付いた時には、世異はすぐ目の前にいた。そして、冷徹な闇を帯びた世異の剣が、ルファルの右肩を容赦なく貫いていた。「っ……!」熱い痛みが全身を駆け巡る。剣が引き抜かれた瞬間。右手の力が抜け、ルファルの右手から剣が
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18話-2 覚醒、そして。

* * * 床に冷たい倒れ込んだまま、リリシアはすぐ傍らにいるルファルの姿を見つめた。 目の前では、ルファルの姿をした偽者の男――世異が、片膝をついたルファルの額へとゆっくりと掌を近づけていく。 そして、世異の禍々しい掌が、ルファルの額に触れた瞬間。 「う、わああああああああ!!」 ルファルが激しく身を震わせ、苦悶に身をよじらせ絶叫した。 苦悶の声は玉座の間全体に響き渡り、その姿を見ただけで、胸が張り裂けそうになる。 (ルファル様っ……!)ルファル様を奪わないで。 どうか、この方をこれ以上苦しめないで。「このまま苦しみながら永久に眠れ」 世異の冷徹な声が冷たく響く。 「させ……ない……」 リリシアは震える手を必死に伸ばす。 冷たくなった指先を這わせてでも、リリシアはこの方に触れたかった。 「ルファル様は……わたしが、お守りします」 リリシアの指先がルファルの身体に触れた瞬間、胸の奥底から溢れ出た強い想いに応えるように、ふわりとルファルとリリシアの身体を優しく包み込む温かな光が広がった。 ルファルを守ろうとする清浄な結界が張り巡らされ、世異は舌打ちをして僅かに距離を取る。 「はぁ、リリ、シア、っ……」 リリシアを気遣うように紡がれたそのルファル声に、リリシアは胸がいっぱいになりながら、せめて安心してもらえるよう、優しく微笑みかけた。 大丈夫です、わたしがついていますから――そう伝えたくて。 「おのれリリシア、まだラルファルを守るか。リリシアに守られて情けない奴め」 吐き捨てるような世異の言葉に、床に倒れていたエルシーが悔し涙を流しながら泣き叫ぶ。 「ルファル様を馬鹿にしないでよぉ!」 エルシーの瞳から大粒の涙が零れ落ちる。 その声には震えが混じりながらも、誰よりも熱い想いが込められていた。 「ルファル様は最強魔術師! 誰よりも強いんだからぁ!!」 エルシーは絞り出すような叫びと共に、眩い星の魔術の精霊の光をルファルへと飛ばした。 「……っ、ルファル」 同じように床に倒れていたハクもまた、苦痛に耐えながらルファルの名を静かに、けれど強く呼び、海の魔術の青く美しい精霊の光を託す。 「隊長」 「受け取れ」 テオとアルベルトが、圧倒的な雷の魔術の精霊の光、そして鮮やかな焰の魔術の精霊の光を続けて放つ。 「僕らの
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18話-3 覚醒、そして。

――――皆が、死んでしまった……? ルファルの身体に触れていたリリシアの手が、力なく冷たい床へと滑り落ちてゆく。 そんなはずが、ない。 夢だと、どうか嘘だと言って。 (皆様が、ルファル様を守る為に張った最後の結界が、あんな一瞬で破られてしまうなんて――) 「――リリシア、大丈夫だ」 そんな冷たい絶望の中、不意に耳に届いたのは、紛れもない、あの方の、ルファルの落ち着いた低い声だった。 縋(すが)るような、希望を見出すような思いでうつ伏せのまま少し顔を上げると、背中に気高い白い翼を広げたルファルが、息を呑む程に美しい姿で傍らから静かにリリシアを見下ろしていた。 「皆の魂の気配を奴の中から微かに感じる」 「で、では……?」 「まだ奴の中で“生きている”」 ルファルはそう告げると、優しくリリシアを抱き起こし、床に落ちていた月紐を拾い上げて、左の手首にしっかりと巻き付ける。 (ルファル様の月紐のおかげか……不思議と、あんなにも凄まじかった左肩の痛みが嘘のように引いていく……。それどころか、体の奥底から温かな力が湧き上がってくる……) この温もりを感じているだけで、心の震えが少しずつ収まっていくのが分かる。 「リリシア」 ルファルのその凛とした一言に、リリシアは力強く頷いた。 (もう怯えない。わたしも、ルファルと共に) ルファルと立ち上がり、今度は一層強く、清浄な光を宿した結界を彼の周りに張り巡らせる。どうか、わたしのこの光がルファル様を守り抜いてくれますように。「ルファル様」 リリシアの呼びかけに、ルファルは静かに頷き返してくれた。 気高い光の結界に包まれたまま、ルファルは悪鬼のような形相をした世異の元へと風を切るように飛んでいく。 そして、ルファルが剣を振り下ろすと同時に、夜空の月をなぞるように清浄で神々しいドラゴンが顕現する。 直後、ルファルがそのまま剣を横薙ぎに引くと、ドラゴンは禍々しい気配を放つ世異を鋭く睨(にら)み据えた。 すると世異は顔を歪め、言葉を吐き捨てる。 「光を放つな。奪おうとするな。壊そうとするな」 世異の姿は狂気に満ち溢れ、怒りを剥き出しにして更に続けて叫ぶ。 「私とリリシアの、ふたりきりの幸せな世界の訪れの、邪魔をするな!!」 狂気そのものの叫びと共に、世異は両手で剣を高く振り上げた。 その目
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18話-4 覚醒、そして。

そうして世異が完全に消滅した直後、リリシアの両掌に皆の魂が降りてきて――。気づけば、見慣れたフェリカディア宮殿の庭らしき場所に立っていた。「リリシア」不意に名を呼ばれて振り返ると、ルファルも同じ場所に立っていた。そして、その視線の先には――。騎士団の人々。ハノ。エルシー、ユエリア。テオ、アルベルト。リゼル、ラズエラ。カイス、ソフィラ、シャイン皇帝の側近。更にシャイン皇帝までもが雪の降り積もる冷たい地面に静かに倒れていた。その光景に胸がぎゅっと締め付けられる。「ルファル様、戻ってこられたのでしょうか?」「ああ。間違いなくここはフェリカディア宮殿の庭だ。リリシア、その魂を皆に」ルファルに促され、リリシアは頷き、あの温かな日常を取り戻す為、両掌をそっと天へと掲げた。すると、リリシアの掌から暖かな精霊の光を纏った魂たちが、それぞれの心の元へと優しく還ってゆく。それと同時に、月姫の力の光が天から雪降る庭へと降り注がれた。月姫の神聖な光に包まれると、皆の深い傷がみるみるうちに治っていく。不思議なことに、凍てつく地面の雪は嘘のように溶け、その跡から名も知らぬ美しき花々が芽吹いていく。そうして朝日が差し込む中、庭一面にその花が鮮やかに咲き誇った。「ルファル様、花が……こんなにも綺麗に……」「月姫の力の光の影響だろう。とても美しいな……」「はい……」夢のような景色をふたりで見つめながら、リリシアはようやく確信し、言葉を告げた。「ルファル様、全て、終わったの、ですね」「あぁ。ようやく全て終わった。……長かった」ほんとうに、そう呟きかけて、リリシアは言葉を失った。ルファルが、今まで見たこともない程に優しく、愛おしそうな瞳でこちらを見つめていたから。「――お前がいてくれたからこそ使命を果たすことが出来た。
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19話-1 光の下で。

* * *深い眠りの底から、すぅっと光に導かれるかのように、リリシアは目を覚ました。月の光が、優しく窓辺を照らしている。――この天井に見覚えがある。ここは以前、宝石の魔術を体に馴染ませる儀式を済ませる為、シャイン皇帝が用意してくれた秘密の部屋。あの夜、確かにここで一晩を過ごしたのだと思い出す。ふと、手に優しい温もりを感じてそっと視線を向けた。そこには、両膝を床についたまま、自分の手をぎゅっと握り締めた状態で布団に顔を埋(うず)めて眠っているあの方の姿があった。「……ルファル、様……?」掠れた声で名前を呼ぶと、それに反応するようにルファルがゆっくりと瞼を持ち上げ、布団から身を起こした。「リリシア、良かった……ようやく目を覚ましたか」「よう、やく……?」「倒れてから、丸3日眠っていたのだぞ」驚きのあまり、リリシアは思わず目を見開いた。「丸3日も、ですか……?」「ああ。お前が倒れてからの宮殿は大変だった。この部屋に運び込んで寝かせた途端、エルシー達が一斉に詰めかけて大騒ぎになったかと思えば、ユエリアやラズエラ、ソフィラ、それにカイスまで酷く心配して駆けつける有様で……。挙句の果てには側近を制して入ってきたシャイン皇帝が自らお前を診て下さったのだからな」ルファルは、ふぅ、と小さく息を吐き出す。「シャイン皇帝のお言葉によれば、皆を癒やしたせいで月姫の力が急速に枯渇し、危険な状態ではあるものの、私の方から月の魔術を送り続ければいずれ目覚めるだろう、とのことだった。だから、ずっとこうしていた」「え……これまでずっと、ですか? ルファル様、お身体は大丈夫なのですかっ!?」リリシアは慌てて上半身を起こそうとする。けれどルファルが、すっと手を伸ばし、リリシアの背中を優しく支えながら起こした。「おい、無茶をして一人で起き上がろうとするな。お前
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19話-2 光の下で。

* * *それからの日々は、あまりにも目まぐるしく、まるで夢の中にいるようだった。秘密の部屋の扉が勢いよく開いたかと思うと、リリシアの意識が戻ったことを知ったエルシー達が次々と押し寄せて来た。「リリシアちゃん、良かったよぉ~っ!」エルシーはリリシアの胸に飛び込び、顔をぐしゃぐしゃにしながら、まるで子供のようにわんわんと泣きじゃくる。その温かさに胸が締め付けられると、アルベルトとリゼルが両手いっぱいの見舞いの品を抱えて近づいてきた。リリシアはそのふたりの姿に思わず圧倒される。「まずはしっかり栄養付けねぇとな!」「リリシアの為に、吟味して選んだんだ」アルベルトとリゼルは、次々と気遣いが込められた菓子や花等の見舞いの品をリリシアのベッド脇のテーブルへと積み上げていく。ふたりからの不器用な優しさに、思わず笑みが零れる。けれどそんなふたりを横目に、テオは腕を組みながら呆れたように大きく息を吐き出す。「全く、勝手に何日も眠りこけて、勝手に目を覚ましてんじゃねぇよ……!」あまりの剣幕に驚きつつも、その声音の端には確かな安堵が滲んでおり、どこかホッとしてしまう自分がいた。そんなリリシアにハノが静かに微笑んで声をかける。「リリシア、こうして目覚めてくれて、本当に良かった」「……ハノ様も、ありがとうございます」リリシアは胸がいっぱいになりながらも、やっとの思いでそう言葉を返した。その直後のことだった。再び扉が開く。少し遅れて訪れたユエリアの姿を見た瞬間、互いに言葉を失った。駆け寄ってきたユエリアとぎゅっと強く抱き合い、互いの温もりを確かめ合うように、ふたりはただ静かに涙を流す。そこへ訪れていたラズエラが気品ある佇まいで歩み寄り、そっと声をかけてくる。「リリシア様、ずっと心配しておりましたが……本当に良かったですわ」その美しい瞳が潤んでいるのを見て、胸が熱くなった。するとそこへ、ソフィラが温かい眼差しで近づいてくる。そして、手を握り、名を呼んだ。「リリシア様……」リリシアもすぐさま名を呼び返す。「ソフィラ、さん……」互いの名前を呼び合った瞬間、溢れる想いに堪えきれず、ふたりして涙ぐんでしまった。だが、それだけに留まらず驚くことに、今度は気高い気配と共に、側近を制したシャイン皇帝自らがこの部屋へ足を運ばれた。その神々しいお姿の
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19話-3 光の下で。

リリシアは胸が締め付けられるような想いでルファルを見つめる。(ルファル様……そんなにはっきりと、おふたりの前で……っ)リリシアの胸は言い知れない不安できゅうと締め付けられるのと同時に激しく波立った。――ずっと頭では分かっていたことだ。身分の不釣り合いなわたしではなく、『天の願いの力』を持ち合わせるラズエラ様こそがルファル様の花嫁となるのが相応しい、と。そしてラズエラ様こそが、ずっとルファル様の婚約者として定められているお方なのだから。どう考えても、血筋を重んじる母君様はきっと目の前に座る気高く美しいラズエラ様をお選びになるに違いない――――。「ラルファル、頭をお上げなさい」ヴァイオレットの落ち着いた声に促され、ルファルはゆっくりと顔を上げる。「……ですって、ラズエラ」ヴァイオレットが視線を向けると、ラズエラはどこか晴れやかな、そして優美な微笑みを浮かべた。「――はい。ルファル様のお考えをこうして直接お聞き出来て、本当に良かったですわ。……元よりわたくしは、身を引くつもりでしたから」「え……? ラズエラ、様……?」予想もしなかったその言葉に、リリシアは思わず信じられない思いで声を零した。「実は、あの世異に魂を奪われていた影響で……天の願いの力も奪われてしまったようで。わたくしの中の力が、すっかり失くなってしまったのです。ですのでもう、あの神秘の力は残っておりませんの」「そんな……取り返しのつかないことになってしまうなんて……ラズエラ様、わたしのせいで、ほんとうに申し訳ありません……っ」「謝罪などなさらないで。決してリリシア様のせいではありませんわ。……それに、なんの力もない今のわたくしでは、これからのルファル様のお力には到底なれません。ですから――リリシア様、どうかこれか
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