歩みを進める度に周囲の視線が集まってくる。その中心にいるのは、常にリリシアの隣を凛と歩く、冷酷無慈悲な月のお方だ。「まあ、ご覧になって。ルファル様よ」「本当だわ。なんてお美しいのかしら……」貴婦人達の囁く声が耳に届き、リリシアはいたたまれず肩を少しだけすぼめた。人々が目を奪われるのは無理もない。ルファルは月の光を透かしたような、うるわしき髪を持つ絶世の美青年なのだから。リリシアは、はぁ……と小さく息を吐く。気後れから自然と視線は落ち、控えめに自分の足元を見つめるようにして歩く。「……どこを見ている。前を向け」不意に降ってきたのは、ルファルの低く、けれど拒絶を許さない声だった。「私の隣にいるのであれば、凛としていろ」「は、はいっ」リリシアは弾かれたようにすぐさま顔を上げ、背筋を伸ばす。そうして視界が開けた先には、眩いばかりの賑わいが広がっていた。ルファルに導かれたそこは、帝都名物の露店街の真っ只中。所狭しと並ぶ出店は、まるで迷路のようにひしめき合っている。香ばしい食べ物の香りに、見たこともない異国の日用雑貨から、冷たく光る精緻(せいち)な武具に至るまで、此処に来れば見つからないものはないとでも言いたげな、この世のすべてがここに集められたかのような光景だ。「名物のハンバーグサンドですって」ふと耳に届いた令嬢の声と、美味しそうなお肉の焼ける香りに誘われ、リリシアは思わず視線を引かれた。(ハンバーグサンド……パンに平たく丸められたお肉が挟まっているようだけれど初めて見るわ……)物珍しさに、つい視線を奪われていたその時。「それを、ふたつ貰おう」「えっ……」唐突なルファルの言葉と行動に、リリシアは目を丸くした。店主もまた、驚きに目を見開く。「こりゃあ、ルファル様ではありませんか! こんなにたくさん頂くのは…&h
Last Updated : 2026-03-10 Read more