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All Chapters of 怖い話まとめ2: Chapter 11 - Chapter 20

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架空先輩

中学校にいた先輩の話。私が通ってた中学校はちょっと変わってて、女子はスカーフ、男子は襟につけてるバッジの色が学年ごとに違った。 赤、青、白の3色があるんだけど、赤いものを身に着けた3年生が卒業したら、次に入ってくる1年生は赤って具合。バッジやスカーフの色で、相手が何年生か分かるようになってる。 私の学年は白で、2年生が青、3年生が赤だった。 たぶん、あったかい時期だったかな。生徒の大半が自転車通学で、ほんの一部が徒歩だから、学校には自転車置き場がある。 部活も終わって帰ろうと、友達と自転車置き場に行ったら、蜂が来て、軽くパニックになってた。「騒いじゃダメ、じっとして。蜂はじっとしてたら襲ってこない。黒いものを着て動いてると、クマと勘違いして刺してくる」 冷静な声が聞こえてそちらを見ると、赤いスカーフの先輩がいた。先輩はすごく美人で、どこか儚い雰囲気がある。長くてサラサラの髪をポニーテールにしてた。 先輩の言う通りじっとしてると、蜂はどこかに行った。「先輩、ありがとうございます」「いいの。刺されなくてよかったね」 先輩は微笑みかけて、颯爽と去っていった。「誰だろ?」「初めて見たね」 私と友達は、先輩の話を少ししてから帰った。 それから困ったことがあると、その先輩が助けてくれたり、助言をくれたりした。友達も何度もお世話になってるので、お礼がしたいということになり、部活の3年生の先輩にそれぞれ聞くことにした。 ちなみに私はバレー部で、友達は吹奏楽部。 部活が始まる前、先生が来るまで時間があるから、その時にA先輩に聞いてみた。いつも助けてくれるポニーテールの綺麗な人と伝えると、A先輩は、「あぁ、架空先輩ね」と言った。なんで先輩は同級生なのに「先輩」というのだろう?「カクウ? 変わった名字ですね」「名字じゃないよ。架空の人だから、架空先輩。詳しい話は部活が終わってからしてあげる」 単純に名前とクラスを聞いて終わると思ってた。この日部活に集中できなかったのは、言うまでもない。 部活が終わると、A先輩は架空先輩について教えてくれた。 話を遡ること、親の世代。もしかしたらもう少し前かもしれない。当時の校則は今よりももっと厳しかった。 例えば、女子は肩につくほど長い髪は禁止で、少しでもついたら勝手に切られたり、パーマ禁止で、天然パーマの人
last updateLast Updated : 2025-12-21
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自称霊感少女

 私は生まれつき霊感がある。最初は見えるだけだったけど、師匠に出会って、今では祓い師として働いてる。 話が変わるけど、クラスにひとりは自称霊感ある子っていなかった? 私のクラスにもいてね。その子の話をしようと思う。 私が自称霊感少女と出会ったのは、小学5年生の秋。彼女は転校生で、私のクラスに転校してきた。 転校生ってだけでチヤホヤされるのに、彼女はそれだけじゃ満足できないのか、霊感があると言い出したの。 その頃ちょうど、ほん怖とかが流行ってた時期だったから、結構盛り上がったのよね。 誰かが教室のなにもないところでコケると、「そこに霊が座ってる」って言ったり、木が密集してるところを指さして、「あそこに女の幽霊がいる」とか言ってたの。 もちろん幽霊なんてそこにいない。というか、この学校は割と新しいし、悪霊も呪縛霊もいないのよね。生霊なら時々いるけど。 それと、霊とお話できるフリをして、なにもないところに話しかけたりしてるの。見える私からしたら、本当にヤバイ奴だったけど、見えない子達は転校生が本当に見えるって信じてるから、「すげー」って見てるのよね。 自称霊感少女の何が厄介って、無意識に呼んじゃうことなの。幽霊にはざっくり2種類あるんだけど、自分が死んで霊になったって自覚してる霊と、死んだと気づいてなくて自覚してない霊。「ここに幽霊が」っていないところでやると、「そこにいていいの? いてほしいの?」って、霊が寄ってきて、そこに居座ることがある。それだけなら害はないんだけど、霊は寂しがりや。 普通の人間だって、呼ばれたと思って行ったのに、スルーされたらムカつくでしょ? それは霊も同じ。だって、元は人間なんだから。 案の定、転校生は霊を学校に連れ込んだ。もちろん本人は自覚してない。霊は転校生に取り憑いて、ずっと話しかけてる。でも転校生には見えないし聞こえないから、無視をする。 無視され続けた悪霊になってない霊がどうなるか? 悪霊になって暴走し、本格的に取り憑く。もしくは呪う。 転校生に取り憑いてた霊は残念ながらものすごく短期みたいで、帰り際は既に怪しかった。翌朝、悪霊になって、転校生の顔色も悪くなってた。 転校生は日に日にやつれていって、授業中にいきなり叫びだしたと思ったら、窓から飛び降りてそのまま死んだ。 当時の私は見えるだけで祓う力がなか
last updateLast Updated : 2025-12-21
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手を貸した末路

 俺が住んでる村には、霊感がある人が多い。むしろ、ない人の方が珍しい特殊な村。 俺は見える程度だけど、友達のAは、霊と会話できるし、手を貸すこともあった。この手を貸すっていうのは、力になるとかじゃなくて、文字通りの意味で、霊に自分の手を使わせるんだ。 こういうことできるのはほんの一握りで、Aは子供だけど村の有名人だった。 Aにはサボり癖があって、宿題も俺のを写したりしてる。そんなサボり癖のあるヤツが、霊に手を貸す力を持つとろくなことに使わない。 勉強やピアノが得意な霊を引き連れて、学業は霊任せ。 体育だけは得意というのもあるけど、全身を使うスポーツで、手だけどう動くか分からないのはキケンなので、体育だけは自分でやってる。 なんてずるいヤツなんだと思ってたけど、少しだけ羨ましいとも思ってた。だって、自分で勉強しなくても勝手に百点取れるんだから。 でも、そう思ったのは一時期だけ。今はむしろ、見える程度でよかったと思ってる。 Aは、最初はお礼を言ってたけど、怠るようになっていった。それどころか、奴隷のように扱うようになった。 合唱コンクールで、生徒がピアノを弾くだろ? Aがよく弾いてたんだけど、楽譜を広げて「これ暗記しとけ」って放置したり、霊が予習のために教科書を見せてほしいと言うと、「勉強しか取り柄ないくせに、俺の貴重な時間を奪うな」と言ったり。 秋、合唱コンクールの季節だ。Aは霊の力を借りてピアノを弾く。ピアノ弾きの霊は知名度こそ低いけど、プロのピアニストだった。 学生とは思えない腕前に、誰もが聴き惚れる音色。プロの実力も相まって、うちのクラスが優勝候補だった。 合唱コンクール当日、Aは順調に合唱曲を弾き、皆がピアノに歌声を乗せる。2番を歌ってる途中、異変がおきた。 じゃーん! 鍵盤を乱暴に叩き、誰もがAに注目する。Aは困惑してた。 Aの手は勝手に動き、聴いたことのない曲を弾き始める。後からピアノ習ってるヤツから聴いたんだけど、ドミトリー・ショスタコーヴィチの交響曲14番・死者の歌の一部らしい。 先生が慌ててステージに駆け上がって声をかけるけど、霊は弾くのを辞めないし、Aは涙目で先生を見た後、俺を見る。村出身は俺しかいないからだ。でも、見えるだけの俺にはどうすることもできない。 先生は無理やり止めようとするけど、手は止まらない。3分
last updateLast Updated : 2025-12-21
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くるた

「くるたって知ってる?」 学生の頃、友達のAちゃんが聞いてきました。「何? くるたって」「うーん、知らない」 Aちゃんは自分から聞いてきたくせに、そんなことを言うのです。「くるた、くるた……。なんかこの言葉が頭から離れなくて」「変なの」「でしょ? なんだろう、くるたって。いつどこで聞いたのか覚えてないんだよね。そもそも、聞いたのかな?」 Aちゃんは時々おかしなことを言うので、気にしないことにしました。 なのにくるたという言葉が頭から離れなくなったのです。「くるた、くるくる……くるた……」 気がつけば、こんなことを口にするくらいには、くるたのことで頭がいっぱいになりました。 家に帰ると母さんとお婆ちゃんがテレビを見ながらお菓子を食べてます。私もこたつに入ってお菓子を食べながら、ぼんやりテレビを見ます。昔の刑事ドラマの再放送が流れてました。「そういえばさ、くるたって知ってる?」 私が聞くと、お婆ちゃんが血相を変えて立ち上がり、私と母さんはポカンとしてしまいました。「お前、どこでそんな言葉聞いた!?」「何よ、くる……」「言うな!」 母さんが言いそうになるのを、怒鳴り声で封じるお婆ちゃん。普段はにこやかで冗談ばっかり言ってて、こんなに怒ってるお婆ちゃんは初めて見ます。「それは呪いの言葉だ。1度口にしたらその言葉に憑き殺される」 お婆ちゃんは私を台所に連れて行くと、塩水を作って飲ませ、その後私の口に手を突っ込んで、無理やり吐かせました。 母さんが止めようとすると、「この子が死んでもいいのか」と脅し、黙らせました。 塩水で軽くうがいをしたあと、お婆ちゃんの知り合いの霊能者のところに連れて行かれ、線香の煙が充満する小さな和室でお祓いしてもらいました。 翌日、Aちゃんの様子が明らかにおかしいのです。私が「おはよう」と言うと、「おはるた」と返すし、言葉のところどころに”くるた”が入るのです。 そんなんだから、誰もAちゃんに話しかけません。というか、先生が書いたのか、黒板に【くるた禁止】と書かれていて、皆Aちゃんを不気味だと思って、近寄れなかったのです。 授業中、Aちゃんは勢いよく立ち上がったと思うと、「く、くる! くるたくるたくるたくるた!」と叫びながら、窓から飛び降りてしまいました。 幸い2階だったことと、地面が芝生だったため、
last updateLast Updated : 2025-12-21
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墓場の樹木

 異動命令で田舎に住んでた頃の話。よく、都会の人は冷たいとか、都会の人は他人に興味を持たないから楽とか言うけど、社内は別なのか、蹴落とすための情報戦やら派閥やらでめんどくさい。 なので、田舎への異動命令は私にとって好都合だった。 田舎というものをテレビでしか知らなかったから、隣の家との距離が数百メートルあるのかな、コンビニまで車で何十分なんだろう、なんて思ってたけど、異動先は割と色んな店があったし、お隣さんと数百メートルの距離があるわけでもなかった。 住んでるアパートの周辺は無人駅、駄菓子屋、コンビニの他に、住宅やアパートがそこそこあって、田畑もそれなりにある。建物6割、田畑4割と行ったところか。 車で10分弱の隣町に行けば、スーパーも飲食店の他にも様々な店があって、大半はここで揃いそうだ。 病院や遅くまでやってるドラッグストアがあるのはありがたい。 ご近所さんも会社の人達も、穏やかな人が多く快適だ。 休日、徒歩で行ける店が他にないか調べるために、散歩をした。アパートから見える立派な木を目指して歩いてみる。植物の知識は皆無だから、その木が何かは知らないけど、そこそこ離れたところにあるのに存在感を放っていることから、樹齢は私より上だと思う。 10分くらい歩くと、巨木のところについた。墓場の中央に、堂々とその木は生えている。墓も見慣れたものと違う。外柵や芝台などがなく、ボロボロの墓石が卒都婆に囲まれている。まるで何かを封じるように。「なんでこんなところに墓場?」 このへんの土地はマス目みたいになってて、マスの中に田畑か家が並んでいて、線がアスファルトの道。幅はギリギリ車がすれ違える程度。 墓場の向かいには住宅がある。普通、こんなところに墓場が作られるだろうか?「あら、探検?」 木を見上げながら考えてると、後ろから声をかけられた。大家さんだ。大家さんはふくよかな中年女性で、面倒見のいい人で、引っ越してきたばかりの私に色々教えてくれる親切な人だ。「あれ、大家さん。どうしてこんなところに?」「この家の人と友達なのよ。だからちょっと遊びに来てたの。ところで、墓場の前で何してるの?」「どうしてこんなところに墓場があるのか考えてました」「あぁ、お墓が先にあったのよ。私の友達……、この家の一族が、墓守をしてるの。墓守と言うか、見張り番ね」「見張り
last updateLast Updated : 2025-12-21
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神宮駅

異界駅っていうんだっけ? きさらぎ駅が有名よね。実在しない駅で電車が停まったって話。アタシも1回だけ異界駅に迷い込んだことがある。 ガクセーの頃、よく東京に行って遊んでたの。地元はそこそこ栄えてるし、大きなショッピングモールもあるけど、高校生は東京に憧れる生き物だから、バイト代が入ればすぐに東京行く予定立ててた。 うちの最寄駅から東京まで、電車で8駅。地名とかは伏せさせてもらうけど、アタシが乗る駅がA駅。それからB、C、D、E、F、G、H駅。H駅が東京のどこか。よくH駅で山手線に乗り換えて、渋谷とかに行ってたっけ。 A駅からH駅までの快速は少ないし、あっても満員だから、いつも普通電車に乗ってた。この日も、いつも通り普通電車に乗って、今日はどこに行こうかワクワクしてた。 前日寝不足だったのと、体育の授業で張り切りすぎたのもあって、電車の揺れが気持ちよくてウトウトしてたの。 大きく揺れて起きると、夏の夕方なのに外が暗い。 驚いて見回すとアタシ以外いないし、液晶も真っ暗で、いつもは小音量で広告を流すのに、静か。 唯一いつも通りなのは、電車がどこらへんなのか、次の駅はどこなのか知らせる細長い液晶のみ。 そこには「次は神宮駅」って書かれてる。実際にそういう名前の駅は存在するんだろうけど、アタシが乗ってる電車では、そんな名前の駅はない。「次は神宮駅。神宮駅。出口は右側、右側です。お気をつけてお降りください。お人好しの方は特にお気をつけて」 子供の声でアナウンスが流れて、神宮駅とやらに停まったけど、窓の外は霧で見えない。 アタシの友達にオカルト好きな子がいて、その子が前に話してたきさらぎ駅のことを思い出してね。怖いけど、怖いよりも楽しそうって気持ちが勝っちゃって、降りてみたの。 そうそう、ドアが開いたら普通は外見えるじゃない? 降りるまで外は見えなかったの。だから恐る恐る足を地面につけたっけ。 不思議なことに、降りたら霧が晴れてよく見えるようになった。そこに駅なんてない。 地面は普通に土だったし。まだ明るい時間なはずなのに、見たことないくらい綺麗な星空が広がってて、月も見たことないくらい大きくて、白くて綺麗だった。 人がそれなりに歩いてたんだけど、皆着物。大河ドラマで見た、平安時代の貴族が着てるようなやつを、皆着てた。 女の人は十二単だし、男の人
last updateLast Updated : 2025-12-21
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湖の怪

 大学生の頃、真夏にダチのAと出かけた。Aはボンボンで、別荘を持ってる。その別荘の近くに湖があって、昔から湖に化け物がいるらしい。夜にうめき声とか不自然な水音が聞こえてきて、翌朝外に出ると、ドブ臭い上に、水草や小魚が混ざった泥が、何か引きずった跡のようにあるらしい。 そのせいで昔は軽井沢ほどではないが、長期休暇の時期は人がたくさんいたのに、今ではあまりいないと言う。 別荘を手放した人が大半だけど、幸いAの家は別荘を手放してないらしい。俺はAに肝試ししたいって言ったら、親に電話した。・別荘を使う前に掃除すること。・帰る前に綺麗に掃除しておくこと帰る前の掃除が終わったら、証拠写真か動画を送って、OKが出てから帰ること。・水道や電気は自由に使っていいけど、無駄遣いしないこと。(つけっぱなしとか禁止)・飲食物や日用品はすべて自分で用意すること。 これらの条件が守れるなら別荘を使っていいとのこと。 条件を了承すると、数日後にAと一緒に掃除をしに行くことになった。というのも、年に1回は掃除しているけど、最後に掃除したのは半年以上前のことだから。それと、必要な備品は何か見たりする予定だ。 別荘は少し埃っぽいけど、結構綺麗だった。空気の入れ替えをしつつ、ざっと掃いたり拭いたりする程度で充分。 Aには弟がいて、別荘の2回にはA、弟、両親の寝室がある。俺は弟の部屋を借りることになってたので、弟の部屋にあった布団を干した。 別荘内を見回して必要な備品をメモしたあと、件の湖を見たり、布団を取り込んだりした。 1週間後、俺とAは再び別荘に来た。肝試しをするために。できればもう少し人を連れていきたかったけど、Aの両親が寝室を使われたくないって言ってたし、ベッドを巡って喧嘩になるのもだるいから、ふたりで。 日中はバーベキューしたり、デカい風呂をプール代わりにして遊んだりしてた。 そして夜。午前2時になると、俺達はそれぞれ懐中電灯を持って湖に行った。夜の湖は不気味で、夏特有の生ぬるい風が、余計に気持ち悪く感じた。「どうする?」「とりあえず湖に石でも投げ込んでみるか」 俺達はそのへんに落ちてる石とか枝を投げてみた。いくつか投げると、湖からうめき声が聞こえた。恐怖と期待で口角が上がる。 湖をふたりで照らしてみると、奥の方が揺れた。スマホで動画を回す。「あそこじゃ
last updateLast Updated : 2025-12-21
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川の主

 これは爺ちゃんから聞いた話。爺ちゃんも、自分の爺ちゃんから聞いたらしい。 今はないけど、昔は川の主を祀っていて、年に4回も川の主のための祭りが開かれたらしい。 よく、釣り人がその土地で釣れる異様にデカい魚を川の主とか海の主って呼ぶイメージあるけど、ニュアンス的にはそれと同じ意味らしい。ただ、迷信じみた話がくっついてくるけど。 昔の人はデカい魚を、本当に川の主って思い込んでて、何十年、何百年も生きてると考えていた。そして天災は川の主が機嫌を損ねたせいとも。 だから祀って、機嫌を損ねないようにするんだと。信心深い人は、毎日お供えをしてたらしい。 爺ちゃんの爺ちゃん、高祖父でいいのか? Aとする。Aが子供の頃、Bっていうガキ大将がいた。Bはかなりの問題児で、神様なんて信じないし、馬鹿らしいって思ってた。 それは川の主も例外ではない。 当時、川の主を祀る祠が川のすぐ近くにあって、祠の中には魚の頭を模したでかい石像みたいなのがあったそうな。その石像は大きく口を開けていて、ふだんは口の中にお供え物を置いてたらしい。人の頭が入るくらいでかかったとか。 川の主の怒りを買うと、天災が起きると言われていた。石像に悪さをしたら呪い殺されるとも。 BはAや他の子達を連れて、祠に来た。祠に入ること自体がタブーだけど、Bは「そんなの馬鹿げてる。なにもないからお前ら見てろ」って言って祠に入ってった。 石像は祠の外からでもよく見えるらしいんだけど、Bは石像の頭を叩いた後、「腹が立ったら俺を食ってみろ」って唾を吐き捨てて、石像の口に頭を入れた。 石像はBの頭を噛み砕いた。A達は怖くて動けなくなって、Bが食い殺されるのをみることしか出来なかったらしい。 Bは首なし死体になって倒れた。 石像の目がぎょろっと動いて、「お前達では難しいだろうから大人を呼んでこい。ここを綺麗にしたら、許してやる」と言った。 A達は慌てて村に戻ると、目についた大人に事情を話した。大人は顔を真っ青にして村中にこのことを伝え、皆で掃除をしに行った。行きたくなかったけど、何故かAも無理やり連れて行かれた。 不思議なことにBの死体はないが、血痕や肉片が残ってる。大人達は祠を掃除すると、手を合わせてお祈りした。Aも一緒にお祈りさせられたらしい。 掃除とお祈りのおかげか、しばらく天災はなかったらしい。
last updateLast Updated : 2025-12-21
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山奥の……

 子供の頃の話。元々都会住みだったんだけど、親の都合で田舎に引っ越してきたんだ。最初は物珍しいと思ったけど、だんだん飽きてきて、何もないつまらない場所にうんざりしてた。 ただひとつ、絶対に入るなって言われてる山があった。まだ7歳の弟を連れて、こっそり入ってみることにした。 山の中はなんかワクワクして、楽しい。弟も楽しんでるみたいで、いつもならグズりそうな距離を歩いても、楽しそうにしてた。 気がつけばだいぶ奥まで進んで、薄暗くなってきた。弟は泣きそうになってるし、俺も不安だった。 どうしようか考えてると、祭りの楽しそうな音が聞こえた。「お祭りかな?」「行ってみるか」「うん!」 俺達は音を頼りに進んでいった。でも、いくら進んでも音は近くならない。もう疲れてきたから帰ろうと、向きを変えた。 後ろから何かが動く音がして、怖くなって弟の手を引いて必死に走った。弟が何度も「もう走れない」って言うけど、気にしてあげる余裕なんてなかった。 木々の向こうに村が見えてくると、涙が出そうになる。ていうか泣いた。「おーい!」 下の方から俺達を呼ぶ大人の声がしたから、「ここだよー!」って叫びながら降りると、爺ちゃんがいた。「何日もなにしてたんだ!」 爺ちゃんに怒鳴られ、げんこつを食らったあと、家に連れて帰ってもらった。 爺ちゃん達が言うには、俺達は5日も行方不明だったらしい。村人のひとりが、俺達が山がある方面へ歩いていくのを見たというので、皆で山まで探してくれてたらしい。「俺達、ほんの数時間しか山にいなかったよ」「お祭りの音聞こえてね、音の方に行ったんだけど、音近くならなくてね」「後ろから物音して、急いで逃げてたら、爺ちゃんに会えたんだ」「そりゃ狸囃子だな」 爺ちゃんは腕を組みながら言った。 あの山には悪い狸がいて、彼らは鬼に仕えている。鬼は人間の子供と女が大好物で、女子供が山に入ると狸囃子で呼び寄せてたくさん歩かせ、疲れたところを鬼が食い散らかすと言う。「じゃあ、俺達の後ろにいたのって――」「鬼かもしれんな。食われないでよかった」 怖さが込み上げてきて、俺も弟も爺ちゃんの胸で泣いた。 その後父ちゃん、母ちゃん、村長さんにめちゃくちゃ怒られた。
last updateLast Updated : 2025-12-21
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はなちゃん

 まず、私の名前を覚えてほしい。この話に深く関係してるから。私の名前はゆかり。あだ名はゆかりんとかゆっちゃん。稀にゆかちゃんって呼ぶ子もいる。 私が幼稚園生から、小学校低学年くらいまでの話。近所にAというおばちゃんがいた。いつもにこにこしてて、子供好きなのか、よく私達に話しかけたり、お菓子を持ってきてくれたりする。 何歳かは知らないけど、親とおじいちゃんおばあちゃんの間くらいに見えた。たぶん、40代とか50代くらい? 何故かAさんは、私のことをはなちゃんって呼んでた。ママが「ゆかりです」って訂正しても、私が、「ゆかはゆかりだもん」ってむくれても、はなちゃんはなちゃんって可愛がってた。 たぶん、年長さんくらいの頃だと思う。ランドセルの話をしてたから。「来月ランドセル見に行こうね」ってママが言ってた気がする。 その1週間後くらいだったかな。うちにトラックが来て、荷物を届けてくれたの。中は真っ赤なランドセルで、送り主はAさんだった。 ママが電話でお礼を言ったらAさんが来て、「はなちゃん、背負ってるところ見せて」って言ってきたから、ランドセルを背負って、ママにベルトを調整してもらったの。 気がついたら、ちゃんとゆかりちゃんって呼んでくれるようになった。たぶん、小学校中学年の頃にはそうだった気がする。 オチがなくてごめんだけど、ふと思い出すとなんだか怖くて。 まったく違う名前で呼ばれてたこともそうだけど、なんでランドセルを買ってくれたんだろう? 親戚の人ならまだ理解できるけど、ただのご近所さんがランドセルなんて高価なものを送るなんて変じゃない?
last updateLast Updated : 2025-12-21
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