中学校にいた先輩の話。私が通ってた中学校はちょっと変わってて、女子はスカーフ、男子は襟につけてるバッジの色が学年ごとに違った。 赤、青、白の3色があるんだけど、赤いものを身に着けた3年生が卒業したら、次に入ってくる1年生は赤って具合。バッジやスカーフの色で、相手が何年生か分かるようになってる。 私の学年は白で、2年生が青、3年生が赤だった。 たぶん、あったかい時期だったかな。生徒の大半が自転車通学で、ほんの一部が徒歩だから、学校には自転車置き場がある。 部活も終わって帰ろうと、友達と自転車置き場に行ったら、蜂が来て、軽くパニックになってた。「騒いじゃダメ、じっとして。蜂はじっとしてたら襲ってこない。黒いものを着て動いてると、クマと勘違いして刺してくる」 冷静な声が聞こえてそちらを見ると、赤いスカーフの先輩がいた。先輩はすごく美人で、どこか儚い雰囲気がある。長くてサラサラの髪をポニーテールにしてた。 先輩の言う通りじっとしてると、蜂はどこかに行った。「先輩、ありがとうございます」「いいの。刺されなくてよかったね」 先輩は微笑みかけて、颯爽と去っていった。「誰だろ?」「初めて見たね」 私と友達は、先輩の話を少ししてから帰った。 それから困ったことがあると、その先輩が助けてくれたり、助言をくれたりした。友達も何度もお世話になってるので、お礼がしたいということになり、部活の3年生の先輩にそれぞれ聞くことにした。 ちなみに私はバレー部で、友達は吹奏楽部。 部活が始まる前、先生が来るまで時間があるから、その時にA先輩に聞いてみた。いつも助けてくれるポニーテールの綺麗な人と伝えると、A先輩は、「あぁ、架空先輩ね」と言った。なんで先輩は同級生なのに「先輩」というのだろう?「カクウ? 変わった名字ですね」「名字じゃないよ。架空の人だから、架空先輩。詳しい話は部活が終わってからしてあげる」 単純に名前とクラスを聞いて終わると思ってた。この日部活に集中できなかったのは、言うまでもない。 部活が終わると、A先輩は架空先輩について教えてくれた。 話を遡ること、親の世代。もしかしたらもう少し前かもしれない。当時の校則は今よりももっと厳しかった。 例えば、女子は肩につくほど長い髪は禁止で、少しでもついたら勝手に切られたり、パーマ禁止で、天然パーマの人
Last Updated : 2025-12-21 Read more